人材育成で大切なこととは?階層別育成ポイントやおすすめのフレームワークを紹介
更新日: 2025.8.4 公開日: 2025.4.13 jinjer Blog 編集部

人材育成は、企業の成長と持続的な発展に欠かせない重要な取り組みです。人材育成の目的は、組織の成長や経営目的に合わせて、従業員の能力やスキルを最大限に引き出して育てることです。そのため、育成計画は数年後を見据え、どの部分を育成すればいいかを戦略的に推進していく必要があります。適切に育成できれば業務効率が高まり、自社の発展に活かせるでしょう。
しかし「何から始めればいいのかわからない」「計画してもうまくいかない」と悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、人材育成の基本から実践に役立つ8つの重要ポイント、階層別の育成方法などをわかりやすく解説していきます。
目次
人的資本の情報開示が義務化されたことで人的資本経営への注目が高まっており、今後はより一層、人的資本への投資が必要になるでしょう。
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1. 人材育成とは

人材育成とは、従業員の専門的な知識やスキル、能力を計画的に高め、企業の成長に貢献できる人材へと導くための取り組みを指します。人材育成というのは、業務に必要なスキルはもちろん、主体性や協調性、問題解決力などチームや組織で活躍するための総合的な能力開発が対象としています。
短期的な人材教育とは異なり、中長期的な視点でおこなうというのが特徴で、従業員一人ひとりの強みや課題を把握し、それぞれに合った育成方法を実施することが人材育成を成功させるポイントです。
また、時代や事業・職場環境の変化に合わせて、育成内容や方針を見直すことも重要です。
組織全体のパフォーマンス向上はもちろん、従業員のエンゲージメントや定着率向上にもつながるので、企業が戦略的に取り組むべき領域が人材育成です。
1-1. 人材育成の重要性
どれだけ優れたビジネスモデルや技術があっても、それを活用して発展させていくのは「従業員」です。働き方や社会情勢の変化が激しい現代においては、環境適応力の高い人材を育てることが、企業の持続的成長のカギとなります。そのため、人材育成は、企業の競争力を維持・強化するうえでとても重要な取り組みといえるのです。
また、人材育成は従業員の満足度やモチベーション向上にも直結します。自分の成長を実感できる職場では、働きがいやエンゲージメントが高まり、離職率の低下にもつながります。
このように人材育成は、企業経営においては「コスト」ではなく「投資」として位置づけるべき重要な活動なのです。
2. 人材育成で大切な8つのこと

人材育成で大切なことは、以下の8つの項目です。
- 人材育成の目的と目標を明確化する
- 中長期的な育成計画を立てる
- 従業員のスキルを可視化
- 従業員のモチベーション管理
- 人材育成システムを整備する
- 指導する側の育成も実施する
- 達成できない目標は設定しない
- 人材育成に有効なフレームワークを利用する
ここでは、これらの項目について解説していきます。
2-1. 人材育成の目的と目標を明確化する
人材育成を成功へと導くためには、目的をはっきりさせたうえで、目指すべきゴールを設定することです。
従業員をどのような人材に育てるのかをあらかじめ決めておかなければ、育成の方向性が定まらず、成否も判定できません。全社的な取り組みとして、経営陣とも連携を取りながら、企業のビジョンに則した育成を実施するのが大切です。企業が目指す方向と、育てる人がぶれないように留意しましょう。
設定した目的と目標は、従業員本人に理解してもらうことも大切です。
このとき、難易度が高すぎる目標を設定するのは避ける必要があります。努力しても届かない目標では、従業員のやる気をそぐでしょう。いきなり高い目標を掲げるのではなく、段階を踏んでクリアできるような目標設定をおこなうのが大切です。
2-2. 中長期的な育成計画を立てる
人材育成は、一朝一夕で完成するというものではありません。そのため、短期的な研修やOJTだけでなく、数年単位で成長を見据えた中長期的な育成計画にすることが需要です。
計画を立てる際は、企業のビジョンや人材戦略に基づいて、どの階層の従業員に、いつ・どのようなスキルや経験を積ませるかを明確にしてください。また、育成計画は現実に基づいた施策をおこなうことも大切です。例えば、「3年後にはマネジメント層を◯名育成する」など具体的な目標を立てたうえで、年次ごとに教育内容や対象者、評価指標を定めましょう。
このように、定期的に振り返りや見直しをおこなって、育成の進捗を把握し、必要に応じて軌道修正できる柔軟性も持たせることが成功のポイントです。
2-3. 従業員のスキルを可視化
人材育成を効果的に進めるには、従業員のもつスキルを見える化し、現状を把握することが重要です。評価シートやスキルマップを活用して、各従業員の能力や成長段階、現時点でのスキルレベルを押さえることで、従業員に不足しているスキルや育成するべきポイントが明確になります。
可視化することによって育成ポイントが見つかるのはもちろん、従業員も自分の課題に気づきやすくなり、主体的な成長につながる効果が期待できます。また、可視化をすると認識がずれることもなくなるので、上司や人事担当者とのコミュニケーションもスムーズになり、適切なフィードバックやキャリア支援がおこないやすくなります。
企業としても、どの部署にどのようなスキルを持った人材がいるかを把握できるので、戦略的な人員配置や人材開発につなげることが可能になります。
2-4. 従業員のモチベーション管理
人材育成において、従業員自身が「成長したい」と思える環境を整えることはとても重要です。
いくら内容の優れた研修や制度を整えても、本人の意欲が低ければ効果は限定的になってしまいます。そのため、モチベーションの維持や向上を意識した仕組みづくりが成功のポイントになります。
例えば、成長実感を得られるように達成可能な目標設定にしたり定期的なフィードバックをおこなったり、成功体験を積ませるなどの工夫が有効です。
また、キャリアパスを可視化することで、「自分は将来このポジションを目指せる」という前向きな期待を持たせることもモチベーション向上に効果的です。従業員のモチベーションは、人材育成を成功させる重要なポイントとなるのでしっかり管理しましょう。
2-5. 人材育成システムを整備する
人材育成の成功のためには、システムを整備することも重要です。
育成のシステムが整っていれば、育成計画もスムーズに進めやすくなります。システムといっても必ずしもITツールを指すわけではなく、「誰に・いつ・何を・どう教えるか」といった教育の流れやルール、評価方法を体系化することが大切です。例えば、階層ごとの社内研修制度やOJT制度のルールづくりをおこなっておくだけでも効果を実感できるでしょう。
また、学習内容の定着率を正確に評価できるよう、人事評価制度を導入するのも効果があります。努力に見合った評価を得られれば、従業員のやる気にもつながるでしょう。
面談ではただ成否を評価するだけでなく、適切なフィードバックをおこないます。研修を受けただけでは実践的なスキルは身につきにくいため、フォロー体制を用意してサポートしましょう。
2-6. 指導する側の育成も実施する
人材育成を成功させるには、指導される側だけでなく、指導する側の育成も欠かせません。OJT担当者や上司の指導力によって、育成の質や従業員の成長スピードは大きく変わります。例えば「教えることに慣れていない」「伝え方がわかりづらい」「一方的に押しつける」などの状況を放置したまま育成しようとしても、当然ですが人材の育成効果は実感できません。そのため、指導者にはコーチングやティーチングのスキル、フィードバックスキルなどを学ばせることが重要です。
また、育成方針や会社の期待をしっかり理解してもらうために、指導者向けの研修をおこなうというのも良いでしょう。指導者自身が「育てること」の目的と意義を理解し、部下と共に成長していく意識を持つことが、人材育成を成功させるポイントです。
教える側の能力不足があれば、教えられる側は伸びないので、業務都合で時間が取れない場合には、いつでも学べるe-ラーニングを活用するなどの工夫をしてみましょう。
2-7. 達成できない目標は設定しない
人材育成では、目標の設定が重要な要素となりますが、「高すぎる」「漠然としている」など現実的でない目標は、かえって従業員のモチベーション低下や挫折につながるリスクがあります。
企業側からすると、達成したことのない目標を立てて達成を目指してもらえる方が、企業利益につながるというイメージがあるかもしれません。しかし、現実的ではない目標だとやる前からあきらめてしまう人の方が多いのです。例え成長が緩やかになってしまうとしても、具体的かつ達成可能な内容で、期限と評価基準が明確になっている目標であれば、従業員は目指すべきゴールに向かって成長していきます。
また、目標の難易度は「ややチャレンジング」なレベルが理想です。成功体験を積みながら段階的にレベルアップする仕組みが、育成への意欲を高めるので、達成困難な目標ではなく、成果につながる「意味のある目標」を設定することがポイントです。
2-8. 人材育成に有効なフレームワークを利用する
人材育成を体系的に進めるには、フレームワークを活用するのが有効です。フレームワークとは、育成を設計・評価・改善するための「型」であり、育成の質と再現性を高めるために役立ちます。
フレームワークはいろいろありますが、例えば教育成果を測る「カークパトリックの4段階評価モデル」や組織ニーズに合った育成方針を考える「70:20:10の法則」、個人の能力開発に活用できる「コンピテンシー評価」などが挙げられます。
このようなフレームワークを導入することで、個人的な判断ややり方ではなく、より科学的・戦略的な育成が可能になります。自社の目的や課題に応じて適切なフレームワークを選び、継続的に活用したり改善したりしていくことが人材育成のレベル向上にもつながります。
3. 階層別|人材育成のポイント

人材育成というのは、すべての従業員に同じ施策を取れば良いというものではありません。従業員というのは年齢やキャリア、役割に応じて、必要なスキルはまったく違います。
そのため、階層ごとの特性を理解し、それに応じた育成方針を立てることが重要です。新入社員には社会人基礎力や会社理解を中心に、中堅社員には専門性の深化やリーダーシップの強化を、管理職にはマネジメント力や戦略的思考が求められます。
このように、階層別に育成テーマや手法を分けることで、従業員一人ひとりが自分の役割を理解し、成長を実感しやすくなります。
ここでは、各階層における具体的な育成ポイントをご紹介します。
3-1. 新入社員
新入社員は、社会人としての第一歩を踏み出す重要な時期です。そのため、この段階では、業務スキルを成長させるよりもまず、ビジネスマナーや報連相の基本、組織で働くための価値観や姿勢の育成を優先しましょう。
また、自社の理念や文化、仕事の意義を丁寧に伝えることで、エンゲージメントや帰属意識を高める効果が期待できます。ここでしっかりと土台を築ければ、その後の成長スピードが大きく変わります。
さらに、OJTとOFF-JTを組み合わせた育成や、先輩社員によるメンター制度なども効果的です。新入社員が安心して挑戦できる環境づくりと、適切なフィードバックを通じて、自律的な成長を促すことが大切です。
3-2. 中堅社員(勤続3年以上)
中堅社員は、業務にも慣れ、一定の成果を上げられるようになっている反面、伸び悩みやモチベーションの低下が起きやすい時期です。そのため、この層に対しては、スキルアップや視野の拡大を目的とした育成が求められます。
そのためには、専門知識の強化に加え後輩育成やプロジェクトリーダーの経験など、役割の広がりを意識した機会提供をするのが効果的です。また、自身のキャリアプランを考えるワークショップや1on1面談も有効です。
このタイミングで「次期管理職の候補生」としての意識を育成できれば、将来的な管理職候補としての成長にもつながります。中堅社員の可能性を引き出さるような施策は、組織全体の活性化にも貢献するでしょう。
3-3. 管理職
管理職は、チームや部門の成果を担うキーパーソンであり、単なるプレイヤーではなくマネージャーとしての役割が求められます。そのため、部下育成や業務管理はもちろん、今後経営に携わる幹部候補生としての経営に関する知識など、多角的なスキルの習得が必要です。
管理職を対象とした人材育成では、意思決定力や課題解決力、部下との信頼関係構築が重要なテーマになります。特に、心理的安全性を高めるコミュニケーション力は、現代のマネジメントにおいてとても重要です。
さらに、自身の業務を俯瞰し、チームをどう動かすかという視点を持たせるためには、他部門との連携経験や経営層との対話の場も効果的です。管理職が育つことで、組織全体のパフォーマンスが底上げされます。
4. 人材育成の課題とは

人材育成は企業の成長に欠かせない活動ですが、実際の現場では多くの課題に直面することがあります。どれほど計画的に進めたつもりでも、思ったように成果が出なかったり、現場からの理解や協力が得られなかったりするケースも少なくありません。
よくある課題としては、指導者側の育成意識の欠如や業務に追われて育成の時間が確保できないといった物理的な問題、さらには育成される側の成長意欲の低下や、育成ノウハウ・知識の不足などが挙げられます。
ここでは、人材育成における代表的な4つの課題について解説していきます。
4-1. リーダーや管理者の指導意識不足
現場での育成を担うリーダーや管理職が、「人を育てる」という意識を持っていないと、どれほど優れた育成制度を整えても機能しません。
育成を「自分の仕事ではない」と捉えてしまうと、結果として育成機会の放棄や形だけのOJTに陥ってしまいます。また、部下に任せきりで指導を怠ったり、逆に細かく指示を出しすぎて部下の自主性を奪ってしまったりするなど、極端な対応になってしまいこれが育成の障害になります。
このような意識のギャップを埋めるためには、管理職研修や育成責任の明文化、育成を業績評価の一部に組み込むといった仕組みが有効です。指導する側が「人を育てることの意義」を理解することが、人材育成を推進するための第一歩となるということを覚えておきましょう。
4-2. 育成する時間的な余裕がない
育成を担当するとしても、担当者にも日々の業務があるため、「育成する時間的な余裕がない」というのは多くの企業で共通する悩みです。特に人員が限られている中小企業の場合、日々の業務を回すことが優先になるので、育成は後回しにするしかありません。
しかし、短期的な効率を優先して育成を怠ってしまうと、長期的には組織力が低下することで、業務の負担増につながる可能性もあります。
この課題を解決するには、育成を「業務の一部」として捉え、日常業務の中に組み込むのがおすすめです。例えば、日報や定例ミーティングに育成要素を加える、OJTの計画をルーチン化するなど、小さな積み重ねでわざわざ時間を作らなくても人材育成が可能になります。時間がない中でも実行できる工夫をすることは、持続的な育成にもつながります。
4-3. 従業員の成長意欲の低下
人材育成を成功させるには、従業員自身の「成長したい」というモチベーションが不可欠です。しかし近年は、「頑張っても評価されない」「教わっても現場に活かせないから意味がない」などの声が聞かれるようになっており、育成のモチベーションが低下している企業も少なくないようです。
このようにネガティブな意見が出る背景には、過去の経験による失望感や上司との関係性、キャリアパスの不透明さなどが影響していることもあります。
こうした成長意欲の低下を防ぐには、日々のフィードバックや評価制度、キャリア支援の充実など成長を実感できるシステムが重要です。また、一方的な指導ではなく、対話を通じて本人の目標や価値観に寄り添う姿勢も必要なので、従業員としっかり向き合うことが意欲向上のカギとなります。
4-4. 人材育成に関する知識がない
人材育成を担当する人事や現場リーダーの中には、そもそも「どう育てたら良いかわからない」と悩む方も少なくありません。人材育成には専門知識やスキルが必要ですが、それが十分に共有や継承されていない企業も多いのが現状です。
属人的なノウハウや経験だけに頼ると、育成にばらつきが出たり、再現性のある仕組みが構築できなかったりするリスクがあります。
この課題には、育成担当者向けの研修実施やマニュアル・ガイドラインの整備、外部の専門家との連携などが効果的です。また、社内にナレッジを蓄積・共有できる仕組みを作ることも有効です。知識と仕組みを整えることで、組織全体として安定した人材育成が可能になります。
5. 人材育成に必要なスキル

人材育成に必要となるおもなスキルは、以下の4つが挙げられます。
- コミュニケーションスキル
- 観察力
- 論理的思考
- 批判的思考
ここでは、これらのスキルについて具体的に解説します。
5-1. コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、人材育成において基本かつ重要なスキルです。コミュニケーションというのはただ伝えるだけではなく、相手の話を「聴く力」や「共感する姿勢」も含まれます。企業は、人と人とのつながりで成立しています。何を伝えられているのか把握できなければ、意図と異なる挙動を取り、育成が円滑に進められません。
育成においては、相手の理解度や状況に応じた言葉選びやタイミングが求められます。また、一方的な指導ではなく、対話を通じて信頼関係を築くことで、従業員のやる気や安心感を引き出すことができます。
日常的にフィードバックを行ったり、1on1ミーティングで丁寧に対話したりすることも、育成の質を高めるポイントです。伝える力・聴く力の両方を磨くことで、より実践的な育成が可能になります。
5-2. 観察力
観察力は、人材育成の指導者側にとって肝となるスキルです。教育相手の本質を見抜く目がなければ、的外れな指導をおこなう可能性があります。
日々の言動や表情、成果物などから相手の変化や成長の兆し、困りごとなどをいち早く察知し、言葉に表れていないサインを読み取ることで適切なタイミングでのサポートが可能になります。
例えば、新入社員が質問を控えている場合や中堅社員がモチベーションを失っている兆候などは、観察力があれば早期に気づけるので、適切な対応を取ることが可能です。
また、観察に基づいたフィードバックは、従業員にとっても納得感があり、信頼関係の構築にもつながります。観察力は経験と意識によって磨かれるため、日頃から「見る・気づく・考える」を習慣化することが大切です。
5-3. 論理的思考
論理的思考とは、物事を筋道立てて考え、伝える力のことです。
人材育成では、相手にわかりやすく説明するために必要なスキルであり、特に業務の背景や目的を理解してもらう場面で効果を発揮します。例えば、「なぜこのスキルが必要なのか」「なぜこの方法で進めるのか」といった点を論理的に説明できると、相手側の納得感が高まるので、自発的な行動につながります。
また、従業員が課題に直面したときは、筋道を立てて一緒に解決策を探るためにも役立ちます。論理的思考は、実務経験やトレーニングによって強化できるスキルなので、わかりやすく伝える工夫を重ねることが、育成効果を高めるカギとなります。
5-4. 批判的思考
批判的思考とは、物事を鵜呑みにせず、前提や情報の信頼性を疑いながら多角的に考える力です。人材育成においては、より良い育成手法を検討したり、部下の思考を深めたりするうえで重要なスキルとなります。
例えば、これまでのやり方が本当に最適なのか、従業員の行動にどんな背景があるのか、といった問いを立てることで、育成の質を高めることができます。また、部下自身に問いを投げかけ、自分自身で考えたり反省したりさせることも批判的思考の応用です。
このスキルは、一見ネガティブなように思えるかもしれませんが、教える側や教わる側の一方的な押し付けを防ぎ、より深い学びを引き出す力があります。「批判的思考」というのは柔軟でクリティカルな視点を持つことなので、人材育成の在り方そのものを見直すうえでも役立ちます。
6. 人材育成に活用できる3つのフレームワーク

人材育成の質を高めるためには、計画的・体系的なアプローチが欠かせません。そこで役立つのが、目的や状況に応じて活用できる「フレームワーク」です。フレームワークを使うことで、育成の方向性が明確になり、効率的かつ再現性のある育成が実現します。
人材育成に活用できる代表的なフレームワークとしては、以下の3つが挙げられます。
| フレームワーク | シーン | 概要 |
| カッツモデル | 人材育成計画の立案 | 3つの階層ごとに、3つのスキルの学習割合を設定
下層:テクニカルスキルを重視 上層:コンセプチュアルスキルを重視 中間層:ヒューマンスキルと上記2つをバランスよく設定 |
| SMARTの法則 | 目標設定 | 以下を検討
Specific(具体的か) Measurable(数値化可能か) Achievable(現実的に達成できるか) Relevant(業務との関連性があるか) Time-bound(期限を設定しているか) |
| カークパトリックモデル | 教育効果の評価 | レベル1(反応):満足度
レベル2(学習):スキルの習得度 レベル3(行動):業務への活用度 レベル4(結果):企業への成果 |
人材育成の各フェーズで活用し、効果的に計画を推進しましょう。
7. 人材育成で大切なことを把握し自社の発展に活かそう

人材育成は、単に知識やスキルを身につけさせるだけではなく、企業全体の成長戦略の一環として取り組むべき重要な活動です。従業員一人ひとりの能力を引き出し、適材適所で活躍してもらうためには、目的や目標の明確化、育成計画の設計、指導者のスキル向上などさまざまな視点が必要です。
また、現場ごとの課題や階層ごとの特性を理解しながら、柔軟に育成手法を選ぶことも重要です。フレームワークやスキルを活用しつつ、自社の社風や従業員に合ったアプローチを見つけていくことが成功のカギとなります。
ここで紹介した考え方を踏まえて、自社の育成体制を見直し、持続的な人材の成長と組織の発展を目指しましょう。
企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。
資料では、欧州欧米の動向や企業価値を高める観点から、人的資本経営が注目される理由を簡単に解説しています。「人的資本経営への理解を深めたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
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