人材育成の目標とは?目標を立てる重要性や手順などを解説
更新日: 2025.10.30 公開日: 2025.4.15 jinjer Blog 編集部

人材育成における目標設定は、従業員の成長につながり、企業の継続的な発展にも貢献する重要な要素です。企業は、職種や従業員の階層に応じて、適切な目標を設定しなければなりません。
目標を明確に設定すると、育成の方向性がずれるのを事前に防ぐことができるので、教育効果も高まります。人材育成の目標設定を通じて、組織のエンゲージメント向上や離職防止にもつなげましょう。
本記事では人材育成における目標設定の重要性や手順、職種や階層ごとの目標例を紹介します。目標を設定する重要性やポイントを正しく理解して、従業員の成長を促していきましょう。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 人材育成の目標とは

人材育成の目標とは、従業員が身につけるべきスキルや知識、そして企業として目指すべき人材像を明確にするための指針です。目標を設定することで、育成の方向性が具体化され、教育プログラムの設計や評価がしやすくなります。単にスキルを高めるだけでなく、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上、さらには企業全体の生産性向上にもつながる点が大きな特徴です。
また、目標が明確であればあるほど、育成の成果を可視化できるようになるので、従業員も自分の成長を実感しやすくなります。特に近年は、多様な働き方や人材が増えており、従業員一人ひとりに合った育成目標の設定が求められています。
組織全体としての一貫した育成方針と、個人に寄り添った柔軟な目標設定を両立することが、効果的な人材育成につながります。
1-1. 従業員のスキルアップ
人材育成の目標として、最も基本かつ重要なのが従業員のスキルアップです。企業を取り巻く環境が急速に変化する中、常に最新の知識や技術を身につけることは、企業競争力を維持・強化する上で欠かせません。業務に必要な専門知識やITリテラシー、コミュニケーションスキルなど職種に応じた能力を高めることが求められます。
また、個々のスキルアップは、本人のキャリア形成や自信にも直結します。目標を明確に設定することで、従業員は自分が「何を学ぶべきか」「どの水準を目指すか」がわかりやすくなり、意欲的に学ぶ姿勢が育ちやすくなります。
スキルアップを目的とした研修やOJTと連動させることで、より実践的な育成が可能になります。
1-2. エンゲージメントの向上による企業の成長
人材育成の目標は、従業員の「エンゲージメント向上による企業の成長」も必須です。
従業員のエンゲージメント向上につながる目標を明確にすることで、従業員は「自分が会社にどう貢献できるのか」を理解しやすくなり、働きがいを実感しやすくなります。こうしたエンゲージメントの高まりは、離職率の低下や生産性の向上といった、企業全体の成長にも直結します。
また、育成を通じて成長実感が得られれば、従業員のモチベーションも維持しやすくなります。目標を明確に設定し、進捗を共有することで、上司との信頼関係やチームの一体感も高まります。人材育成は「人に投資する経営」の一環であり、企業の持続的成長にとって欠かせない施策です。
1-3. 求める人材の明確化
人材育成の目標設定では、企業として「どのような人材を求めているのか」を明確化することも重要です。
求める人物像や能力要件が明確になれば、育成計画も具体的に立てやすくなるだけでなく、採用活動のミスマッチの防止にもつながります。例えば、「将来のリーダー候補が欲しい」という目標であれば、マネジメントスキルを重視したり、「最新技術の習得」という目標であれば、専門職に最新の研修を実施したりするというように、具体的な育成方法を選定できます。
また、人材像を共有することで、部署間での認識のズレを防ぐこともできます。企業として一貫した方針で育成を進められるため、組織力の強化にも貢献します。人事評価や採用戦略との整合性もとれるため、戦略的な人材マネジメントの基盤にもなります。
2. 人材育成で目標を設定する重要性

人材育成において目標設定が重要視される理由は、以下のとおりです。
- 従業員の目標と役割が明確になる
- 業務の効率化につながる
- 企業のビジョンが浸透しやすくなる
- 従業員のモチベーション向上につながる
- 人事評価の透明性が高まる
目標を設定することで、従業員一人ひとりの達成すべきことが明確になり、足りないスキルや知識がわかりやすくなります。従業員は、目指すべき方向性が具体的になるため、業務に取り組みやすくなるでしょう。
また、目標の設定は人事評価にも役立ちます。目標が設定されていると評価基準が明確になり、人事評価の透明性と信頼性を高められるためです。
客観的な評価ができるので、企業と従業員双方にとって納得感のある人事評価が実現します。従業員の満足度が高まれば組織全体のパフォーマンスが向上するため、結果的に企業の成長につながるでしょう。
3. 人材育成の目標設定が形骸化してしまう3つの理由

人材育成のために目標を立てても一向に成果が現れないのは、目標設定のやり方に問題があるかもしれません。原因が分からなければ、いくら目標を立てても同じ過ちを繰り返すだけです。人材育成の目標設定が形骸化する3つの理由を通じて、自社のケースに当てはまる原因がないかチェックしましょう。
3-1. 目標が抽象的で行動につながらない
人材育成の目標設定でありがちな失敗が、抽象的な目標設定です。たとえば、「リーダーシップを発揮する」「主体性を高める」といった目標設定は、一見すると立派な目標に見えます。
しかし、具体的に「明日から何をすればよいのか」が従業員に伝わらないため、日々の行動につながりません。その結果、形だけの目標となり、実際の成長や成果にはつながらないのです。
効果的な人材育成をおこなうには、抽象的な言葉を具体的な行動レベルに落とし込むことが欠かせません。たとえば「リーダーシップを発揮する」であれば、「後輩の業務進捗を週1回確認する」といった形に変換することで、従業員も取り組みやすくなるでしょう。
3-2. 達成困難な目標設定でモチベーションが下がる
人材育成の目標を立てる際に、成果を急ぐあまり、つい高すぎるハードルを設定してしまうケースも少なくありません。たとえば「1年以内に管理職として独り立ちする」といった目標は、現実的なプロセスや支援がなければ、従業員にとっては無理な挑戦に映るでしょう。こうした状況は、特にトップダウン型の目標設定で起こりやすい傾向にあります。
目標が非現実的だと、従業員の心理的な負担が大きくなり、モチベーション低下を招く恐れがあります。人材育成を実効性あるものにするには、従業員の現状やスキルに合わせ、段階的にステップアップできる目標設定が重要です。手の届くレベルの目標を積み重ねることで、達成感とモチベーションの両方を高められるでしょう。
3-3. 目標管理が現場に任せきりで改善が進まない
人材育成の目標を設定しても、その後の進捗管理やフィードバックを現場任せにしていると、次第に形骸化してしまいます。特に多忙な職場では、目標の振り返りが後回しになり、「とりあえず立てただけ」で終わるケースが目立ちます。上司側も部下任せとなってしまい、十分なサポートがおこなわれないことが多いのです。
本来、人材育成の目標管理は、組織と個人が一体となって進めるべきものです。上司が定期的に面談をおこない、進捗や課題を共有することで、従業員は自分の成長を実感しやすくなります。人材育成の目標を形骸化させないためには、適切なサポートも欠かせません。
4. 人材育成の目標を設定する手順

人材育成の目標を設定する手順は、以下のとおりです。
- 具体的な目標を設定する
- 目標を達成するための策定
- 目標達成までの期限を設定する
- 人材育成の目標管理シートを作成する
ここでは、これらの手順について解説していきます。
4-1. 具体的な目標を設定する
まず、目標の種類を確認しましょう。主に以下の2種類があり、どちらの目標を設定すべきかの検討が重要です。
| 種類 | 内容 | 具体例 |
| 発生型目標 | ・すでに発生している問題や課題を解消するために定める目標
・マイナスをゼロにする |
・赤字を黒字にする
・残業時間を削減する |
| 設定型目標 | ・現状をもとに個人が自発的に定める目標
・ゼロからプラスを目指す |
・6ヵ月以内に売り上げを10%向上させる |
発生型目標を設定する際は、問題や課題を洗い出し、しっかりと分析する必要があります。根本的な原因を突き止め、解決するための目標を立てましょう。一方、設定型目標は、具体的な目標数値を決めることが難しい場合があります。そのため、目標数値に悩む従業員をサポートするための体制を整えておくとよいでしょう。過去のデータや事例をもとに具体的な数値の提案により、目標設定を現実的かつ達成しやすくなります。
次に具体的な目標を設定します。目標を決める際は、フレームワークを活用すると効果的です。代表的なフレームワークの一つに、SMARTの法則があります。
| SMARTの法則 | 内容 |
| Specific(具体的) | 明確で具体的な目標を設定する |
| Measurable(測定可能) | 成果を測定できるようにする |
| Achievable(達成可能) | 現実的な目標を設定する |
| Relevant(関連性がある) | 業務や企業の方針と関連する目標にする |
| Time-bound(期限がある) | 達成までの期限を明確にする |
目標を決める際は、一つに絞り込むことが重要です。複数設定すると、やるべきことが不明瞭になり、どの目標も達成できない結果になりかねません。複数の目標がある場合は優先順位を決め、重要なものから取り組んでもらいましょう。
4-2. 目標を達成するための策定
目標を設定したあとは、達成に向けた具体的な施策を考えなければなりません。例えば「プレゼン能力を高める」という目標を立てた場合は、「社内研修の受講」「発表のロールプレイ」「先輩社員によるフィードバック」などが挙げられるでしょう。「3ヵ月以内に社内の業務フローを改善すること」を目標に設定した場合は、「従業員から意見を収集し業務の標準化マニュアルを作成する」などが現実的です。いずれも達成できるレベルで、具体的な施策を設定をすることが重要です。
施策は現場の実情やリソースに合わせて無理なく実施できるものが望ましく、個人任せにしない企業側の支援が鍵となります。また、施策と目標の整合性を確認しながら、必要に応じて柔軟に見直すことも重要です。こうした丁寧なプロセスが、目標達成への実効性を高めます。
4-3. 目標達成までの期限を設定する
どのような行動をすべきか明確にしたら、目標達成までの期間を設定しましょう。期限があることで「いつまでに何をするか」が明確になり、行動に移しやすくなります。また、短期・中期・長期の段階を設けることで、進捗を段階的に確認しやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。
例えば「半年後に資格取得を目指す」のであれば、「1か月目に参考書を読み終える」「3か月目に模擬試験を受ける」といった中間目標を設定すると効果的です。期限を設けずに曖昧なまま育成を続けると、成果の検証ができず形骸化するリスクがあるため、期限設定は必須のステップです。
ただし、目標達成までの期限は目標内容によって異なり、数ヵ月単位の目標もあれば、年単位の長期的な目標になる場合もあるでしょう。期限が長くなる場合は、中間目標を定めておくと状況が把握しやすくなります。また、中間目標を達成できれば小さな成功体験を積み重ねられるので、モチベーション維持にもつながります。
4-4. 人材育成の目標管理シートを作成する
目標達成に向けた管理を効率よくおこなうためには、「目標管理シート」の活用がおすすめです。
目標管理シートの項目は自社で決められますが、設定した目標や達成期限、具体的施策、進捗状況、評価などを記録するのが一般的です。このシートを育成対象者と上司が共有することで、定期的な確認や見直しがしやすくなります。
目標管理シートは、Excelやクラウドツールを使ってシンプルに作成できます。ポイントは、定期的な更新と振り返りができるようにすることです。また、評価の基準や成果の記録を残すことで、後の人事評価やキャリア設計にも活用できます。育成を“やりっぱなし”にしないためにも、目標管理シートは有効なツールです。
5. 人材育成の目標の管理方法

人材育成の目標を管理する際は、以下の点を意識しておこないましょう。
- 目標管理シートで定期的に進捗状況を確認する
- フィードバックやフォローをおこなう
ここでは、これらのポイントについて解説します。
5-1. 目標管理シートで定期的に進捗状況を確認する
目標設定後は、定期的な進捗状況の確認が欠かせません。個別に管理を任せると、目標達成に向けたアプローチがズレていたり、問題が発生したりした場合に早期にサポートできなくなるため適切ではありません。
設定した目標の「進捗管理」に活用したいのが目標管理シートです。これは、従業員ごとに目標・行動計画・進捗状況を一元管理できるツールであり、育成プロセスの可視化を実現します。
例えば、「目標」「現在の達成度」「次のアクション」「フィードバック欄」などの項目を設けて、定期的に更新・確認することで計画倒れを防ぐことができます。進捗確認の頻度は、月1回や四半期ごとなど、業務特性に応じて設定するとよいでしょう。
また、進捗に応じて目標を柔軟に見直したり、必要に応じて支援内容を変更したりすることで、従業員が継続的に成長しやすい環境が整います。単なる形式的なチェックにせず、対話とフィードバックを重視した活用がポイントです。
5-2.フィードバックやフォローをおこなう
人材育成の目標を管理する上で、フィードバックやフォローの実施は非常に重要です。進捗状況を把握したうえで適切なフィードバックをすることで、従業員は自分の成長を実感し、次のステップに自信を持って進めるようになります。目標達成に向けてスムーズに進んでいない場合は、従業員を責めずに一緒に達成方法を考える姿勢をとりましょう。
フィードバックは定期的におこなうのが理想で、面談では「できている点」と「改善すべき点」を明確に伝えると効果的です。また、単なる評価にとどまらず、次にどう取り組めばよいかという“指針”を伝えましょう。従業員の成長の機会を逃がさないよう、すぐに答えを教えるのではなく、解決のためのヒントを与えることが大切です。
フィードバックによって自分で考え行動させることで、目標達成に対する自主性を維持しながら、問題解決能力を育てられます。
6. 人材育成の目標例

人材育成の目標は職種や階層によって傾向が異なるため、従業員の状況に合わせた目標を設定することが重要です。
- 営業職
- 技術職
- 事務職
- 人事総務職
- 新入社員
- 中堅社員
- 管理職
ここでは、職種・階層別に目標の例文を紹介します。
6-1. 営業職
営業職の人材育成では、業績目標と連動した実践的な目標が効果的です。例えば「月間商談数の増加」や「受注率○%以上の達成」など、数値で測定可能な目標を設定することで、達成度が明確になります。また、「提案書の品質向上」や「顧客との関係構築力の強化」など、質に関する目標も併せて設定するとバランスが取れます。
若手の営業社員には「同行訪問を月5回実施し、先輩からフィードバックを受ける」など、成長プロセスに焦点を当てた目標が有効です。営業職は成果が明確に見える反面、精神的な負担も大きいため、無理のない達成可能な目標と支援体制の整備が重要となります。
営業職の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- 既存顧客にフォローアップを実施しリピート率を10%向上させる
- 1日の商談件数を5件増やし月間3件の成約を目指す
営業職は、具体的な数値を目標に掲げやすい職種です。過去の実績や目標達成率などを見ながら、現実的に達成できる数値を設定しましょう。
6-2. 技術職
技術職の育成では、専門知識やスキルの向上が中心となります。例えば「最新のプログラミング言語を3か月以内に習得する」「品質基準を満たした設計書を提出する」など、成果物に紐づいた目標が有効です。技術力の向上に加え、「チーム開発への貢献」や「後輩育成への参画」など、組織への貢献度も重視されます。
また、技術の進歩が早い分野では「年1回以上の技術セミナー参加」「社内技術勉強会の開催」など、継続的な学習を促す目標も重要です。技術職においては、自主的な学びを支援する環境づくりと、成果を客観的に評価できる目標設定がポイントです。
技術職の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- 来期までに新たな技術を3つ使えるようにする
- タスク管理ツールを活用し納期の延期をゼロにする
技術職は、技術面の向上が主な目標になります。個人作業が多くなりがちですが、チーム内での知識共有や業務改善も重要な目標になるでしょう。
6-3. 事務職
事務職の人材育成では、正確性や効率性、業務改善力が主な焦点になります。例えば「月内の書類ミス率を○%以下に抑える」「業務マニュアルを3か月以内に見直す」というような定量的な目標が有効です。日々の業務の中で改善できるポイントを洗い出し、小さな成果を積み重ねることが成長につながります。
また、「RPAやExcelマクロを活用した業務効率化」などのスキル習得も目標に組み込むと、付加価値の高い事務職へと育成できます。業務がルーティンになりがちな事務職だからこそ、主体的に改善を提案・実行する姿勢を育てる目標設計が重要です。
事務職の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- データ入力ミスをゼロにするためチェックリストを作成し1ヵ月ごとに見直す
- 業務フローを見直し作業時間を20%削減する
事務職は、数値目標を設定しにくい傾向があります。業務の効率化や正確性が求められるため、改善案や新しいツールの積極的な活用などが目標に設定しやすいでしょう。
6-4. 人事総務職
人事・総務部門は、新規採用や人材配置、労務管理など、従業員に関する業務を幅広く担う部門です。円滑な組織運営を支える役割も大きいため、業務の正確性に加え、高い管理能力や調整力が求められます。例えば、「内定辞退率を○%減らす」「残業時間を○%減らす」といった定量的な目標が設定できるでしょう。
一方で、担当業務によっては成果を数値で表しにくいこともあります。その場合は、具体的な行動や仕組みづくりに落とし込むことで、達成度を可視化しやすくなります。例えば、「新しい教育研修を企画・実施する」「従業員アンケートの結果をもとに職場環境の改善施策を立案する」といった目標が効果的です。
人事総務職の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- 新入社員の定着率を1年以内に90%以上に引き上げる
- 有給の取得率を前年比から○%以上アップさせる
人事・総務部門は、全従業員に関わる情報や制度を扱うため、正確さや改善力などを軸に目標を設計することが重要です。組織全体のパフォーマンス向上を支える立場として、日々の業務改善を積み重ねる姿勢が求められます。
6-5. 新入社員
新入社員の育成では、社会人としての基礎力と企業文化への適応が主な目標となります。「ビジネスマナーの習得」「配属先業務の基本理解」「3か月以内に報連相を自分から実施できるようになる」など、段階的な目標がベストです。
また、業務面だけでなく「月1回の振り返り面談を通じて悩みや課題を共有する」など、メンタル面でのフォローも含めた目標設定が有効です。早期離職を防ぐためにも、成果よりも成長プロセスに焦点を当てた育成が求められます。
新入社員の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- 入社3ヵ月以内に業務フローとシステム操作を習得する
- 半年以内に新しい企画を1本提案する
新入社員は、基礎を身につけ、自己成長のために積極的に学ぶ意識を持たせることが重要です。成功体験を増やすために実現しやすい目標を設定すると、モチベーションが上がりやすくなります。
6-6. 中堅社員
中堅社員には、専門性の強化とチーム貢献力の両立が求められるので、「業務効率化の提案を四半期ごとに1件以上実施」「後輩へのOJTを月1回実施」というような目標が主流となります。業務の質と量をバランスよく担うことが期待されるポジションのため、周囲との連携やリーダーシップを育む目標も有効です。
また、「将来的な管理職候補として社内研修を受講する」など、キャリアパスを見据えた目標を設定することも大切です。中堅社員は、成長が停滞しやすい時期でもあるため、自身の役割を再認識できるような目標設計がカギとなります。
中堅社員の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- 3ヵ月以内にチームで活用できる効率化ツールを導入する
- 1年以内に業務に関連する外部研修を3回受講し、学んだ内容を社内でシェアする
中堅社員は、次世代のリーダーとして組織に貢献できる能力を身につけることが重要です。
6-7. 管理職
管理職の人材育成では、マネジメントスキルや戦略的思考の強化が主な焦点です。例えば「部下との1on1を月2回実施」「チームの目標達成率○%以上を維持する」など、チーム全体を巻き込んだ目標が求められます。さらに、「部下の育成計画を策定する」「業務改善提案を半期に1件実施」など、組織全体の成果に貢献する目標も効果的です。
管理職には役割の幅が広く、育成も複雑になりがちですが、定期的な振り返りと支援体制の整備により、育成効果を高められます。管理職の具体的な目標例は、以下のようなものが挙げられます。
- 1年間でチーム全体の業績目標達成率を10%以上向上させる
- 業務フローを見直し、無駄なコストを5%削減する
管理職は自身の目標だけでなく、部下の成長やモチベーション向上、チーム全体の目標達成を重視した目標を設定することが求められます。
7. 人材育成の目標を立てる際のポイント

人材育成の目標は、ただ設定するだけでは効果を発揮しません。目標の内容や運用方法によっては、従業員のモチベーションが下がったり、成果が得られなかったりする可能性もあるので注意しましょう。
適切な目標を立てるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、目標設定時に注意したい点や、実行をサポートする工夫についてご紹介します。
7-1. 達成不可能な目標にしないこと
人材育成では、「達成不可能な目標」を設定しないことが重要です。
従業員のスキルや経験に見合わない無理な目標は、やる気を失わせたり失敗体験を積ませたりする原因となります。目標を立てる際は、業務レベルや個人の成長段階を踏まえ、段階的に達成可能な水準に設定しましょう。
また、「SMARTの法則」(具体的・測定可能・達成可能・関連性がある・期限が明確)などのフレームワークを活用することで、現実的で実行可能な目標が立てやすくなります。目標が「ちょっと頑張れば達成できる」水準であれば、従業員のモチベーションも高まり、継続的な取り組みにもつながるかもしれません。
人材育成では無理のない範囲で、成長を実感できる目標を設定することがポイントです。
7-2. 目標を数値化する
目標を立てる際は、できる限り数値化することもポイントです。そこから逆算して具体的な行動計画を立てやすくなるメリットがあります。例えば「アポイントを10件取る」という目標であれば、アポイント率から逆算して月にどのくらい電話セールスを実施すればよいのかが容易に割り出せるでしょう。
また、数値化されていることで進捗状況も確認しやすくなり、取り組みの見直しやその後のアクションの改善にも役立ちます。
評価の際にも、数値目標があることで成果を客観的に判断しやすくなります。感覚的な評価に頼ることが減り、上司・部下の双方が納得しやすい評価が可能になります。また、成果が明確に見えることで、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
7-3. 達成を従業員任せにしない
人材育成の目標は、設定しただけで放置してしまうと機能しません。よくある失敗の一つに「目標を立てたら、あとは従業員に丸投げ」というケースがありますが、それでは従業員が孤立し、達成の意欲やモチベーションを失ってしまう可能性があります。
目標の達成には、上司や人事部門、育成担当者からの適切なサポートが不可欠です。例えば定期的な面談で進捗を確認したり、業務とのバランスを見ながら支援策を提供したりすることで、従業員は安心かつ積極的に取り組むことができます。
さらに、必要に応じて研修やメンター制度を導入し、成長の道筋をしっかりと描けるようにすることも大切です。目標を会社全体で支援する姿勢が、育成の成果を左右します。
7-4. 従業員の意見を取り入れる
人材育成の目標は、従業員の意見を取り入れながら設定することが望ましいです。企業が一方的に目標を決めてしまうと、本人のやる気や納得感が得られず、目標が形骸化する可能性があるので注意しましょう。
目標設定の段階で従業員と対話をおこない、本人の希望やキャリアビジョンを踏まえることで、より実効性の高い目標が立てられます。やり方はいろいろありますが、1on1面談やキャリア面談などを活用して、「何に挑戦したいか」「どのスキルを伸ばしたいか」といった本人の声を引き出すことが大切です。
従業員の意見を反映させた目標は、自発的な学びや取り組みにつながりやすくなるので、組織の方針と個人の意向をうまくすり合わせることが、人材育成の成功のカギとなるでしょう。
7-5. e-ラーニングなどのツールを導入する
人材育成の目標を効率よく達成するには、e-ラーニングやオンライン研修ツールの導入も効果的です。これらのツールは、業務が多忙であっても、従業員が自分のペースで学べる点が大きなメリットです。時間や場所に縛られずスキルを習得できるため、目標達成の手段として幅広い企業で活用されています。
また、動画やクイズ形式など多様なコンテンツが搭載されているツールを使えば、楽しみながら学習できるので定着率も高まります。管理者側も、学習履歴や理解度を可視化できるため、進捗に応じたフォローが可能です。さらに、全社的な教育方針に基づいて共通のプログラムを受講させることで、組織全体のスキルレベルを均一に底上げすることもできます。
育成目標に沿ったツールの選定と運用により、効率的で効果的な人材育成が実現できるでしょう。
8. 人材育成の目標を効率よく管理する方法

従業員数が多い企業では、個々の目標設定や進捗管理を手作業でおこうなことは非常に負担が大きく、目標の確認や評価にも課題が生じがちです。こうした状況を改善する方法の一つが、人事評価システムの活用です。
人事評価システムを導入することで、従業員ごとの目標や達成状況を一元管理できます。システム上で数値目標や行動目標を登録し、上司と部下が共有できるため、進捗確認やフィードバックの漏れを防ぐことが可能です。また、進捗の見える化により、目標達成度に応じた評価や次のステップへのアクションも迅速に決定できます。
さらに、目標管理シートの配布や回収、評価未対応者への通知など様々な便利機能を搭載したシステムもあるため、このような機能を活用すれば、目標管理に関わる多くの業務を効率化できます。
人事評価システムを活用することで、従業員数の多い企業でも少ないリソースで目標管理をおこない、組織全体の成長につなげることができるでしょう。
9. 人材育成の目標を設定して従業員の成長につなげよう

人材育成の目標設定は、組織と個人の成長を結びつける重要な施策です。目標を明確にすることで、従業員が「今、何をすべきか」「どこに向かって成長すればよいか」がわかり、日々の業務にも目的意識が生まれます。また、目標が設定されていると評価基準が明確になるため、人事評価の透明性と信頼性を高められるでしょう。
ただし、目標を形だけ設定しても意味がありません。従業員の意欲を引き出し、着実に成果へつなげるには、現実的で納得感のある目標を立てることが大切です。加えて、進捗管理やフィードバックの仕組み、e-ラーニングなどのツールをうまく活用し、会社全体で成長を支援していく姿勢が求められます。
本記事で紹介した手順やポイントを参考に、ぜひ自社に合った人材育成の目標を設定してみてください。適切な目標設定を通じて従業員の成長を促し、企業の持続的な発展を実現させましょう。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
当サイトではそのような企業のご担当者に向けて「人事評価の手引き」を無料配布しています。
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