契約書を訂正するときの方法や注意点を詳しく解説
更新日: 2023.1.11
公開日: 2022.9.9
MEGURO
契約書を作成して当事者の署名捺印が済んだあと、内容に間違いを見つけることは珍しくありません。間違いを見つけたときは訂正をする必要がありますが、どのような手続きをとるべきなのでしょうか。
この記事では、契約書を訂正するときの方法について解説します。訂正できるケースとできないケース、トラブルを防ぐための注意点も説明するので、業務の基礎知識として目を通しておきましょう。
関連記事:契約書の作成から郵送までの手順・ルールは?押印や保管の方法も詳しく解説! | jinjerBlog
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
1. 契約書を訂正できるケース・できないケース
そもそも、契約書は訂正してもよいものなのでしょうか。まずは、訂正できるケースとできないケースについてみてみましょう。
1-1. 契約書に訂正できない箇所はない
紙の契約書には、基本的に訂正できない箇所はありません。たとえ署名や捺印が終わっていても、当事者の合意があれば項目の追加や削除、内容の変更などを行えます。
また、訂正は何度でも行うことが可能です。複数回訂正するときは、履歴や内容をわかりやすくしておくことが大切です。
1-2. 契約書を訂正できないケース
紙の契約書であれば基本的に訂正できないものはないと説明しましたが、例外的に訂正できないケースも存在しています。それが、以下のケースです。
・契約そのものを変更したい
・訂正箇所があまりにも多い
・当事者の同意が得られない
契約書は、軽微な訂正のみ行うことが原則です。訂正があまりにも多いと、契約内容を確認するときに混乱が生じてしまうおそれがあるためです。
そのため、「契約自体を変更したい」「変更があまりにも多い」というときは、訂正での対応は難しくなります。この場合は「変更契約書」を取り交わすか、一度契約を終了させて新たに契約書を締結するという対応が必要になります。
また、変更内容に当事者の同意が得られないときは、当然のことながら訂正はできません。必ず、当事者全員に確認を取ってから訂正を行いましょう。
1-3. 電子契約は訂正できない
近年は業務の電子化が急速にすすんでいるため、電子契約を導入している企業も多いかもしれません。電子契約では、電子ファイルそのものを訂正することはできません。したがって、この場合も「変更契約書」を作成するか、一度契約を終了させて新たに契約を締結することになります。
電子契約は、軽微な内容であっても紙の契約書のように柔軟に処理できないため、より念入りに確認してから締結することが大切です。
2. 契約書を訂正する方法
契約書を訂正するときは、どのような手続きをとればよいのでしょうか。ここでは、具体的な方法を3つ説明します。
2-1. 訂正印を使う方法
採用されることが多いのが、訂正印を使った方法です。処理の流れは、以下のとおりです。
1. 訂正箇所に二重線、もしくは「V」を記入する
2. 誤った記載の上に訂正内容や加えたい文字を記載する
3. 訂正内容の右側に「10行目 3字抹消、2字加入」などと記載する
4. 上記文字数の横か下に当事者全員が訂正印を押す
5. ここまでの処理を作成したすべての契約書に対して行う
なお改ざんを防ぐために、文字数を「参字抹消、弐字加入」といったような大字で記載しても問題ありません。
以上の処理を間違いなく行うことで、改ざんされることを防ぐことができます。
2-2. 捨印を使う方法
捨印とは、あらかじめ契約書の余白に捺印しておくことを指します。捨印があれば、間違いが見つかったときに、当事者や代理人が訂正できるようになります。言い換えると、「誤りがあったときのために前もって訂正印を押しておく」ということです。
捨印があるときは、以下のように処理します。
1. 契約書の枚数・部数分、すべて同じ箇所に捨印を押しておく
2. 訂正箇所に二重線、もしくは「V」を記入する
3. 誤った記載の上に訂正内容や加えたい文字を記載する
4. 捨印の近くに「10行目 3字抹消、2字加入」などと記載する
捨印を用いた方法の場合、相手方による訂正が可能となります。手間が減るぶん、改ざんのリスクがあることは押さえておきましょう。
2-3. 変更契約書を締結する方法
契約内容の大幅な変更があるときや訂正箇所があまりにも多いときは、変更契約書を取り交わして訂正することが一般的です。「念書」や「覚書」ともいいます。
変更契約書を作成するときは、以下の内容を記載しましょう。
・該当する契約書がどれなのか
・訂正前後の内容
・効力が発生する年月日
作成した変更契約書は、当事者全員が署名捺印したのち、もとの契約書と一緒に全員が保管します。
3. 契約書を訂正する際の注意点
契約書を訂正するときには、トラブルを防ぐための注意点があります。内容の改ざん防止措置や使用する印鑑に関しては、とくに気をつけなければいけません。最後に、押さえておきたい注意点をみてみましょう
3-1. 捨印の場合はコピーを取っておく
捨印を使用するときは、改ざんや一方的な変更が行われるリスクがあります。たとえば、「金額を無断で書き換えられた」「適用期間を勝手に変えられた」といったトラブルは、決して珍しいことではありません。
こういった悪意のある訂正を防ぐためにも、捨印を押した契約書のコピーをとっておくことが大切です。事前に相手へ渡す前の書面を保管しておくことで、無断で内容を変えられた際に指摘できます。
さらに、捨印には「印影を悪用される」というリスクもあります。そのため、信頼できる相手との取引以外に用いることは避けておいたほうが安心でしょう。
3-2. 全員分の訂正印・捨印が必要
契約書を訂正する際は、全員の訂正印や捨印が必要となります。これも、契約内容の一方的な変更を防ぐためのルールです。
訂正した側のみが訂正印を押せばいいと勘違いされることもありますが、これでは勝手に訂正したわけではないことを証明できません。全員で合意していることを示すためにも、必ず当事者全員分の印鑑を押しましょう。
3-3. 契約書に押印した印鑑を使用する
訂正に用いる印鑑は、契約書に捺印したときと同じものと使用しましょう。関係のない印鑑を押してしまうと、訴訟に発展したときなどに効力が認められなくなるおそれがあります。
また、どこでも手に入れられるネーム印は、改ざん性が高いため使用を避けるべきです。たとえ相手側から許可があったとしても、実印や社印などを使用することが一般的です。
3-4. 収入印紙が必要になるケースがある
収入印紙とは、国が定めた課税文書を作成するときに必要となる「印紙税」を納付するときに受け取れる、切手のような紙です。契約書をはじめ、領収書や証書などを作成するときは、記載されている金額に応じた収入印紙が必要です。
収入印紙は契約書の作成時に貼付することが一般的ですが、契約金額に関する変更があるときは、収入印紙の金額が変更になることがあります。誤った収入印紙を貼付した場合、金額が多ければ税務署で還付を受けることができ、金額が少なければ追加で印紙税を納付する必要があります。
なお、印紙税の還付を受けるときは、剥がしたり切り取ったりせずにそのままの状態で所轄税務署に提出しなければいけません。手続きの期限は、文書を作成した日から5年以内となっています。[注1]
このように、契約書の訂正には注意しなければならないことが多く、また変更内容によっては取引先とのトラブルを招くことになりかねません。そのため、契約締結時に細かく確認して契約を進めることが重要です。また、法務部門以外の従業員自身も、事前に契約書に目を通すようにすることで、自身の意図している内容と相違ないことを確認できます。
とはいえ、普段から契約書になれていない人であれば、内容をすぐに理解することは難しいでしょう。各契約書の目的や基本的な項目を理解していなければ、目を通しても判断できない場合もあります。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の定義や契約が有効または無効になる条件、契約書に記載される主な項目について解説しています。
「上がってくる契約書のミスをなくしたい」「従業員にも一度契約書を確認してほしい」と思っている方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
4. 契約書の訂正は「非改ざん性」が重要
どれほど気をつけて契約書を作成しても、人間が作業している以上、間違いを訂正しなければいけないシーンは出てきます。訂正すること自体は問題ありませんが、適切に処理しないと、トラブルの原因になったり効力が発生しなかったりするため注意が必要です。
契約書を訂正するときは、一方的な変更や改ざんでないことを証明する必要があります。トラブルを防ぎたいのであれば、改ざんを防げる電子契約書の導入がおすすめです。
電子契約であれば訂正時に必要な郵送の手間も省け、業務を効率化できます。業務フローに課題を感じている企業、テレワークを導入している企業は、ぜひ検討してみてください。
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
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