計画年休時に有給休暇がない人の対処法は?間違った対処や注意点も解説
更新日: 2024.11.22
公開日: 2024.11.22
OHSUGI
「計画年休時に有給休暇がない人はどのように対処するべき?」
「計画年休時に有給休暇がない人への間違った対処方法は?」
計画年休の導入は、企業にとって従業員の労働環境を整える重要な施策です。しかし、有給休暇が不足している従業員に対してはどのように対応すべきか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
本記事では、特別有給休暇の付与や前倒しでの有給付与、休業や休日としての取り扱いなど、具体的な対処方法を詳しく解説します。間違った対処法や注意点も解説しているので、公平性を維持して従業員の不満を軽減したい人はぜひ参考にしてみてください。
1. 計画年休付与時に有給休暇がない人への適切な対処方法
計画年休付与時に有給休暇がない人への適切な対処方法は以下のとおりです。
- 特別有給休暇を付与する
- 有給を前倒しで付与する
- 休業として取り扱う
- 休日として取り扱う
ここからは、それぞれ具体的に解説します。
1-1. 特別有給休暇を付与する
計画年休の対象日に有給休暇の残日数がない場合、特別有給休暇を付与する方法があります。
特別有給休暇とは、福利厚生の一種として企業側の裁量で付与される休日のことです。通常の年次有給休暇とは異なり法律上の義務はなく、労使協定や就業規則に基づいて実施する特徴があります。
特別有給休暇を導入する際は、ほかの従業員との不平等性を避けるための配慮を怠らないよう心がけましょう。有給休暇が残っている従業員と比べて特別待遇とならないよう、公平性を保つための基準を設けることが大切です。
1-2. 有給を前倒しで付与する
計画年休制度を導入する際に有給休暇がない場合の対処法として、有給を前倒しで付与する方法も挙げられます。有給休暇の前倒しとは、法定の基準日よりも早く有給休暇を付与する施策です。
ただ、前倒しで有給を付与した場合、その後の基準日も前倒しが必要になります。結果、有給管理が複雑になる可能性がある点には注意が必要です。
また、従業員が本来の基準日までに退職した場合でも、前倒しで付与した有給は後から欠勤扱いにはできません。従業員の退職リスクも考慮して慎重に検討しましょう。
1-3. 休業として取り扱う
計画年休が付与される際に有給休暇が残っていない従業員には、休業手当を支払って休業扱いにする方法もあります。
ただ、労働基準法第26条に基づき平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務がある点に注意が必要です。
平均賃金は、直前3ヵ月間の賃金総額を暦日数で割って算出します。基本給だけでなく残業手当や各種手当も含まれますが、賞与や臨時に支払われた賃金は除外しましょう。
上記の計算によって得られた平均賃金に60%を乗じて得た数字が、休業手当として支払われるべき最低額です。
平均賃金額 =直前3か月間の賃金の総額(総支給額)/直前3か月間の総日数(総日数)×0.6
1-4. 休日として取り扱う
計画年休制度を導入する際に有給休暇がない従業員には、計画年休日を「休日」として扱う方法もおすすめです。
計画年休の日を「休日」として扱うことで、会社が休業手当を支払う義務を回避できます。ほかの従業員と同じように休暇が取れるため、不公平感も軽減可能です。
また、休日として扱うことで、有給管理や休業手当の計算など複雑な手続きを簡略化できます。人事部門の負担も軽減できるでしょう。
ただ、計画年休日を「休日」として扱う場合は、就業規則や労働協約にその旨を明記する必要がある点に注意が必要です。従業員に周知をし、事前に十分な説明と理解を得ることを忘れないようにしましょう。
2. 計画付与時に有給休暇がない人への間違った対処方法
計画付与時に有給休暇がない人には、以下の対処法は危険です。避けるようにしましょう。
- 有給休暇がない人だけ出勤させる
- 欠勤扱いにする
それぞれ、詳細に解説します。
2-1. 有給休暇がない人だけ出勤させる
労使協定に定めることで、有給休暇がない人だけ出勤扱いにすることは可能ですが、公平性を保つためにできるだけ避けましょう。
有給休暇がない従業員だけを出勤させると不満を招く可能性が高く、職場の士気にも影響を及ぼすおそれがあります。結果的に、離職する従業員が現れる可能性も高くなるでしょう。
特別休暇を付与したり、有給休暇を前倒しで付与したりと、前述した方法を検討することをおすすめします。
2-2. 欠勤扱いにする
計画年休の際に有給休暇がない従業員を賃金の支払い義務がない「欠勤扱い」にすることも避けましょう。
ほかの従業員が計画年休を享受しているなかで自分だけが欠勤扱いされると、不平等感が生まれ不満を抱く可能性が高いためです。
従業員のモチベーションが下がって職場の士気が低下し、結果的に生産性にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
3. 計画付与時に有給休暇がない人によくある原因
計画付与時に有給休暇がない人によくある原因は、主に以下の3つです。
- 計画的付与日の前に有給を使い切っている
- 入社して6ヵ月を経過していない
- 出勤日数が少ない
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 計画的付与日の前に有給を使い切っている
計画年休時に有給休暇がない人によくある理由として、計画的付与日が来る前に有給休暇を使い切っていることが挙げられます。
とくに、急な病気や家族の看病などの事情で休まざるを得なくなった従業員に多く見られる現象です。
企業と従業員の間で十分なコミュニケーションを図り、計画的付与日までにどれだけの有給が残っているかを明確化しましょう。その後、前倒しで有給を付与したり、休日として扱うなど、労使協定に従いどのような対処をするか決めてください。
3-2. 入社して6ヵ月を経過していない
計画年休の実施時に有給休暇がない原因の一つに、入社から6ヵ月が経過していないことも挙げられます。
労働基準法では、有給休暇は入社から6ヵ月経過し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合に初めて付与されるためです。入社直後の社員は有給休暇がまだ付与されておらず、基本的には計画年休の対象になりません。
3-3. 出勤日数が少ない
計画年休時に有給休暇がない理由として、出勤日数が足りていないことも考えられます。
先述したように、労働基準法では年次有給休暇を付与する条件として「全労働日の8割以上の出勤日数」が求められているためです。上記の条件を満たさない場合、企業はその年に有給休暇を付与する義務がありません。
ただ、法律は最低基準のため、独自の規定で出勤率8割未満でも有給休暇を付与することは可能です。ほかの従業員との公平性を考慮し、不公平感やトラブルを防ぐよう努めましょう。
4. 計画付与を導入する際の注意点
計画付与を導入する際は、以下の2点に注意しましょう。
- 労使協定を締結しなければ違法になる
- 従業員の意志を尊重する
それぞれ、詳細に解説します。
4-1. 労使協定を締結しなければ違法になる
計画年休制度を導入する際には、労使協定の締結が欠かせません。計画年休は従業員が自由に取得日を決められず、企業側に委ねられるためです。
労使協定が締結されていない場合、企業は従業員に対して計画年休の取得を強制できません。計画年休制度自体が無効となり、従業員は通常の有給休暇の取得方法に戻ることになります。
また、労働基準法第39条第7項に違反することになり、30万円以下の罰金が科される可能性がある点も注意が必要です。
従業員との合意形成をしっかりとおこない、適切な手続きを踏みましょう。
参考: 労働基準法|e-Gov法令検索
4-2. 従業員の意志を尊重する
計画的付与制度を導入する際は、従業員の意志を尊重するようにしましょう。
有給休暇は本来、従業員が自身の判断で取得する権利であり、その取得時期も個々の事情に応じて選択するものであるためです。
無理に制度を押し付けることなく、従業員の意向やニーズを十分に考慮して導入しましょう。
また、従業員のライフスタイルや個別の事情にも配慮し、柔軟な対応が可能な制度設計を実施することも大切です。一斉休業日が難しい従業員には替日を設定するなど、安心して有給休暇を取得できる環境を整えましょう。
5. 計画年休付与時に有給休暇がない人の対処法を理解して法令遵守に努めよう
計画年休制度を導入する際に有給休暇がない従業員には、公平性を維持しつつ労働環境を整える柔軟な対応が求められます。
特別有給休暇の付与や有給の前倒し付与、休業・休日としての取り扱いなどで対応しましょう。
また、制度導入時には、労使協定の締結や就業規則への明記を忘れず、従業員との合意形成をおこなうことが大切です。従業員の不満を経験し、法令遵守に努めましょう。
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