計画年休とは?導入がおすすめな企業や活用例を解説
公開日: 2024.11.21 OHSUGI
「計画年休の必要性は?」
「有給休暇との違いがわからない」
上記の疑問をお持ちではないでしょうか。計画年休は企業が従業員の有給休暇取得日を決められる制度で、活用の仕方次第で労働環境の改善が可能です。
本記事では、計画年休と有給休暇の違いやメリット・デメリット、活用例などを解説します。計画年休を使って有給消化率を向上させたい場合や長期休暇を導入したい場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 計画年休とは
計画年休とは、有給休暇の取得日を企業が従業員に対してあらかじめ指定できる制度です。年次有給休暇の計画的付与制度ともいいます。
有給休暇のうち、5日間分を除いて企業が取得日を指定可能です。例えば、年次有給休暇が15日の場合、10日分は企業が計画年休として取得日を指定でき、残りの5日分は従業員が自由に取得日を決められます。
2. 計画年休と有給休暇の違い
計画年休と有給休暇の違いは、企業があらかじめ取得日を指定できるかどうかです。
計画年休は有給休暇を消費するため、本質的には計画年休と有給休暇に違いはありません。
しかし、単なる有給休暇は従業員が自主的に取得する一方、計画年休は企業が従業員に取得させるものです。労使協定を締結し、計画的に従業員の有給休暇取得日を指定します。
3. 計画年休の4つのメリット
計画年休のメリットは以下の4つです。
- 有給取得率の向上
- 有給取得義務の履行
- 労務管理の容易化
- 生産性の向上
3-1. 有給取得率の向上
計画年休を導入するメリットの一つは有給取得率を向上させられる点です。
有給取得率は社内外からの評価に関係します。従業員は有給休暇を取れることでワークライフバランスを実現できるため、企業へのエンゲージメントが向上するでしょう。
また、求職者にとっても有給取得率の高さは魅力的です。そのため、優秀な人材が集まりやすくなる効果もあります。
3-2. 有給取得義務の履行
計画年休を導入すれば、従業員に有給取得義務を履行させられるメリットもあります。
2019年4月に働き方改革により、年10日以上の有給休暇が付与されている従業員には年間5日以上の有給休暇を取得させなければいけなくなりました。計画年休を5日間設定すれば、全従業員が義務を達成しやすくなります。
3-3. 労務管理の容易化
計画年休は労務管理の容易化を進められるメリットもあります。計画年休では、あらかじめ一斉に従業員の有給休暇取得日の設定が可能です。
一人ひとりが希望に合わせて個別に有給休暇を申請し、さらに上長の承認を得てから取得する場合に比べ、取得状況の把握や処理が楽になります。人事担当者などの負担が減り、業務の効率化につながるでしょう。
3-4. 生産性の向上
計画年休は生産性の向上にも貢献可能です。計画年休を導入すれば、従業員に休暇を取ってゆっくりすることを促せます。
定期的に計画年休による休息をはさむことで、心身のリフレッシュができ、業務に対するモチベーションや作業の正確性の維持が可能です。
疲労によるミスや事故の予防にもなり、コンプライアンスの遵守にもつながります。
4. 計画年休の3つのデメリット
計画年休のデメリットは以下の3つです。
- 導入手続きの手間
- 従業員が不満を抱く可能性
- 会社都合による勝手な日程変更は不可
4-1. 導入手続きの手間
計画年休のデメリットとして、就業規則の改定や労使協定の締結など導入手続きの手間が発生します。
就業規則には計画年休に関する新たな項目が必要です。また、労使協定は労働組合などの合意を得たうえで書面で締結しなければいけません。
導入を決めてからすぐ開始できる制度ではないため、準備期間を考慮しておきましょう。
4-2. 従業員が不満を抱く可能性
計画年休は従業員が企業に不満を抱くきっかけになり得るデメリットがあります。
計画年休を一斉休業日とする場合、有給休暇対象外の従業員には給与が発生しません。給与が減ることに対する不満を防ぐため、例外的に有給を付与するなどの配慮が必要です。
また、もともと有給休暇を取りやすい環境にある場合、勝手に有給休暇の取得日を決められることに反発を覚える従業員もいるでしょう。
4-3. 会社都合による勝手な日程変更は不可
会社都合で勝手に日程変更ができない点も計画年休のデメリットです。
日程を変更しなければいけない場合、労使協定を結びなおさなければいけません。突発的な変更ができないため、計画年休の日程は慎重に決定する必要があります。
5. 計画年休の活用例
計画年休の活用例は以下のとおりです。
- 夏季休暇・年末年始休暇に付加して大型連休にする
- 飛石連休の平日を計画年休で埋める
- 誕生日や結婚記念日などに付与する
- 閑散期に一斉休業日を作る
計画年休は必ずしも全従業員の日程を合わせる必要はなく、交代制で取得させる方法もあります。社内の環境や従業員のニーズに合わせて活用しましょう。
6. 計画年休の導入をおすすめする企業
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計画年休の導入をおすすめする企業は次のとおりです。
- 有給消化率が低い企業
- 閑散期に合わせて休暇を取らせたい企業
- 夏季休暇や年末年始休暇がない企業
6-1. 有給消化率が低い企業
計画年休の導入をおすすめするのは、有給消化率が低い企業です。企業側から計画年休として取得日を指定することで、有給休暇の取得を促せます。
忙しい職場や管理職の場合、周りに気を遣ったりスケジュールの調整が難しかったりしてなかなか休めません。休みたくても自分からは休みを取りづらい現状を考慮して、計画年休を導入することがおすすめです。
最低年5日の取得が義務とされているので、5日を目安に計画年休を設定するとよいでしょう。
6-2. 閑散期に合わせて休暇を取らせたい企業
繁忙期の休暇を避け、閑散期に集中して休暇を取らせたい企業も計画年休の活用がおすすめです。
有給休暇を従業員から申請された場合、原則企業は拒否してはいけません。そのため、繁忙期に有給休暇を申請する従業員が多い場合、業務が滞るおそれがあります。
業務と従業員の休暇のバランスをコントロールするため、計画年休を活用しましょう。あらかじめ閑散期に集中して休みを設定しておくことで、繁忙期にまとまった休みを希望する従業員の人数を抑えられます。
6-3. 夏季休暇や年末年始休暇がない企業
夏季休暇や年末年始休暇がない企業は計画年休の設定がおすすめです。一般的な特別休暇を導入していない場合でも、計画年休を利用すれば連休を作れます。
計画年休なら年5日の有給取得義務も果たせるため、労働環境の改善が可能です。
7. 計画年休の導入をおすすめしない企業
下記に当てはまる企業の場合、計画年休の導入はおすすめしません。
- 有給取得率が高い企業
- 突発的なスケジュールの変更が多い企業
7-1. 有給取得率が高い企業
すでに有給取得率が高い企業では、計画年休の導入をおすすめしません。
自由に使うことができる有給休暇が減るため、従業員の反発を招くおそれがあります。強制的に休みを取らされることに反感を抱き、企業や業務に対するエンゲージメントが低下しかねません。
休みが取れない、取りづらいなどの悩みを持った従業員が少ない企業は、計画年休をわざわざ導入する必要はないでしょう。
7-2. 突発的なスケジュールの変更が多い企業
納期や工程の変更など、突発的なスケジュールの変更が多い企業も計画年休はおすすめしません。
計画年休はあらかじめ労使協定を結んだうえで設定する必要があります。簡単に日程の変更ができるものではないため、納期や行程に変更があった場合、計画年休がさらにスケジュールを乱すおそれがあります。
突発的なスケジュール変更の可能性がある場合は、計画年休を安易に導入しないほうがよいでしょう。
8. 計画年休の導入方法
計画年休の導入方法は下記のステップのとおりです。
- 付与方式を決定する
- 労使協定を締結する
- 就業規則を改定する
8-1. 付与方式を決定する
まずは計画年休の付与方式を決定しましょう。計画年休の付与方式には下記の表のとおり3種類あります。
付与方式 | 概要 |
一斉付与方式 | 全従業員が同一日を有給休暇にする |
交代制付与方式 | グループ別に日にちをずらして有給休暇にする |
個人別付与方式 | 誕生日や結婚記念日など個人のスケジュールに合わせて有給休暇にする |
労務管理がしやすいのは一斉付与方式ですが、業務の遂行やスケジュールへの影響を考えて適した付与方式を選びましょう。
8-2. 労使協定を締結する
計画年休の導入が決まったら労使協定を結びましょう。
労使協定は労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者と締結します。下記の項目を決定し合意を得てください。
- 計画年休の対象者
- 対象となる有給休暇の日数
- 計画年休の具体的な付与方法
- 有給休暇の付与日数が少ない従業員の扱い
- 計画年休日の変更手続き
8-3. 就業規則を改定する
計画年休の具体的な内容が決まったら、就業規則を改定しましょう。
計画年休を導入する旨を追記し、常時10人以上の労働者がいる企業の場合は労働基準監督署に提出してください。
9. 計画年休を活用して有給取得率を向上させよう
計画年休は企業が有給休暇の取得日を指定できる制度です。有給消化率が低い場合や休暇と業務のバランスをコントロールしたい場合は、導入を検討しましょう。
ただし、すでにしっかり有給休暇を消化できている場合は、従業員の反発を招く可能性があります。社内のニーズを把握し、従業員がきちんと休める環境を作りましょう。
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