創立費は経費として認められる?計上するときのポイントを紹介
更新日: 2024.1.16
公開日: 2023.2.27
jinjer Blog 編集部
会社設立にかかった費用は創立費として経費に計上できます。しかし、開業費との違いを正しく理解しなければスムーズな仕訳は難しいかもしれません。
本記事では創立費の基本に加え、償却による節税対策の方法についても紹介します。創立費を正しく知ることで効率的な経費計上が可能になり、節税にもつながります。会社設立の際に欠かせない内容になっているので、ぜひご一読ください。
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1. 創立費とは?
創立費とは一体どのようなものなのでしょうか。
1-1. 創立費と開業費の違い
創立費は会社設立にかかる費用を意味します。同じような意味の勘定科目に「開業費」があり、どちらも会社の立ち上げにかかる費用という点で共通しています。
しかし、この2つの言葉には明確な違いがあり、両者を分けるポイントは「時期」です。創立費は、設立準備開始から会社設立までにかかる費用を意味します。一方の開業費は、会社設立から事業開始までにかかる費用のことです。
1-2. 創立費を経費計上することで節税できる
会社設立にはさまざまな費用がかかります。たとえば株式会社を設立する際、法律で定款の作成、公証人からの認証、設立登記の申請などの手続きを行うように定められています。これらの手続きには法定費用がかかり、事業主が負担しなくてはなりません。
しかし、これらの費用は創立費として経費計上が可能です。つまり、事業に必要な費用は経費として売り上げから差し引くことができるため、会社に課される税金が少なくなります。会社設立にはまとまった額の費用がかかりますが、税金の負担を減らせるのは事業主にとって喜ばしいことです。
会社を設立する場合は創立費を経費計上し、節税対策を行いましょう。
2. 創立費に含まれる費用
会計基準や税法において、創立費に明確な基準が設けられているわけではありません。しかし、創立費に仕分けられる費用は一般的に決まっています。以下に創立費の一例を紹介するので参考にしてください。
項目 | 概要・費用など |
定款・諸規則の作成費用 | ● 会社の定款や就業規則などの作成にかかる費用 |
定款認証費用 | ● 株式会社の設立では、設立時の定款に公証人の認証が必要 ● 定款認証にかかる公証人の手数料(5万円程度)や収入印紙代(4万円程度)も創立費に含まれる |
登録免許税 | ● 会社設立時には、法務局での設立登記が必須 ● 申請時に必要な登録免許税(資本金の額に応じた金額)は創立費に含まれる |
司法書士・行政書士などへの報酬 | ● 定款作成や設立登記を専門家に依頼した場合に支払った報酬も創立費に含まれる |
その他 | ● 発起人への報酬 ● 証券会社の取引手数料 ● 金融機関の取引手数料など |
また、会社設立のために借りた会議室費用や交通費、飲食費なども創立費に含めて構いません。ただし、費用がかかったことを証明できる領収書を必ず保存しておきましょう。
一方、以下のようなものは創立費ではなく開業費として扱います。事前に確認し、正しく経費計上しましょう。
- 会社のホームページ作成や看板設置、会社パンフレットの作成など、会社の宣伝にかかる費用
- 事務所の敷金・礼金
- 事務所のデスクなど事務用消耗品代
- エアコン、加湿器などの備品代
- 営業開始前の研修費用
- 顧客づくりに必要な接待交際費
- 印鑑や名刺などの作成費用
- 市場調査の費用
- その他、開業に必要な支出
開業費とは、会社設立後の開業準備期間において特別に支出した費用を意味します。そのため、事務所の敷金・礼金は開業費として扱われますが、毎月支払う家賃は開業費に含まれません。
また、当然のことですが、水道光熱費や従業員への給料も開業費には該当しません。なお、10万円以上する備品やコピー機などは固定資産として扱います。
3. 創立費を経費計上するときのポイント
創立費を経費計上する際のポイントを紹介します。節税対策に関する内容なので、しっかりと理解しておきましょう。
3-1. 創立費は繰延資産(くりのべしさん)として扱われる
創立費は原則として「繰延資産」として扱われます。繰延資産とは、本来なら費用として計上される性質をもつものであっても、支出の効果が1年以上継続するため資産として計上するものです。
創立費を繰延資産として計上すれば、数年かけて経費を計上することができます。資産として計上したものを費用化することを「償却」と呼びます。創立費を償却する方法は2つあります。
1つは会計ルールに基づき、5年以内に償却する方法です。この場合は定額法が用いられ、毎期同額を償却することになります。もう1つは税務ルールに基づく任意償却です。この場合、償却額の決定権は納税者にあります。つまり、償却額は自由に設定できるので、年度によって償却額が変動したり、償却しない年度があったりしても構いません。
3-2. 節税対策に有効な創立費の経費計上方法とは
創立費を繰延資産としではなく、経費として初年度にすべて計上すると、初年度に極端な赤字を叩き出すことになってしまいます。しかし、繰延資産として計上する場合、利益が多く出た年度に経費計上することで、スタートアップ時期の節税が可能となります。
3-3. 創立費の仕訳例
ここでは創立費を繰延資産として計上する方法を紹介します。なお、比較しやすいように開業費の仕訳例も紹介するので参考にしてください。
① 創立費の事例
【事例】資本金500万円の支払い | |
借方 | 貸方 |
預金500万円 | 資本金500万円 |
【事例】行政書士に定款作成費用報酬の10万円を支払った | |
借方 | 貸方 |
創立費10万円 | 現金10万円 |
【事例】登記費用の5万円を支払った | |
借方 | 貸方 |
創立費5万円 | 現金5万円 |
② 開業費の事例
【事例】開業準備のための市場調査に20万円を支払った | |
借方 | 貸方 |
開業費20万円 | 現金20万円 |
【事例】会社のホームページ制作を外注し30万円を支払った | |
借方 | 貸方 |
開業費30万円 | 現金20万円 |
③ 決算時における繰延資産の償却事例
【事例】決算処理として、創立費5万円と開業費5万円償却する | |
借方 | 貸方 |
創立費償却5万円 | 創立費5万円 |
開業費償却5万円 | 開業費5万円 |
償却処理は赤字の年度には行いません。利益が上がったタイミングで償却処理を行うことで節税対策につながります。なお、未償却残高は翌期以降に繰り延べることが可能です。
4. 創立費について正しく理解して、時期を見極めよう
創立費は設立準備開始から会社設立までにかかる費用のことです。一方、開業費は会社設立から事業開始までにかかる費用のことで、両者は会社設立のプロセスにおける「時期」によって分けることができます。
創立費の具体例としては定款・諸規則の作成費用、定款認証費用、登録免許税などが挙げられます。これらの費用は繰延資産として扱われるため、「償却」という方法により数年間かけて経費として計上することが可能です。この方法で創立費を経費計上することで税金面で恩恵を受けることができます。
会社設立を検討している方や準備を始めている方は、創立費について正しく理解しておくことが大切です。また、繰延資産として償却する最適なタイミングを見極め、節税効果を最大限に高められるように対応しましょう。
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