帰責性とは?意味や民法改正のポイントをわかりやすく紹介
公開日: 2023.4.14 jinjer Blog 編集部
損害賠償に関する業務を行う法務担当者なら、「帰責性」や「帰責事由」という言葉を知っているかもしれません。しかし、2020年の民法改正において、帰責性の概念は修正されました。
民法改正によって何がどのように変わったのか、会社の法務担当者であれば理解しておきたいところです。
本記事では、帰責性の概念や根拠となる法律について解説するとともに、民法改正による変更点を紹介します。
1. 帰責性とは
帰責性とは、責めに帰すべき事由があることです。責められるべき理由や落ち度などのことを帰責事由と呼び、帰責事由のある人には帰責性があるといいます。
例えば、他人から物を預かっていた人が返還できなくなり、法的な責任を負うことになったとしましょう。この場合、物を預かった人には帰責性があり、責任を負う事由を帰責事由と呼びます。
物を預かった人に帰責事由があり、帰責性が認定されれば、預かった人は物の持ち主に損害賠償責任などを負います。責めに帰すべき事由は、主に民法で出てくる言葉です。
2. 民法改正による帰責性に関する変更点
帰責性の根拠となる法律に民法があります。帰責性の概念は、2020年の民法改正によって修正されました。それにより、損害賠償請求や契約解除の解釈に変更点が生じたため、会社の法務担当者は改正後の内容をチェックしておく必要があります。
民法改正前後のそれぞれの詳細を確認しましょう。
2-1. 損害賠償請求の変更点
債権者が債務者に損害賠償請求をするためには、債務者に帰責事由が必要です。つまり、物を貸すなどした債権者は、物を借りるなどした債務者に責められるべき理由や落ち度がなければ、損害賠償請求ができません。
しかし、帰責事由の定義は厳格です。よほどのことがない限り帰責事由として認められないので、債務者に契約を実行できない相当の理由が必要となります。
例えば、多大な影響を及ぼす災害や戦争などが起こり、借りた物が壊れてしまったなどの場合は、債務者が返す契約を遂行できず債務不履行になっても債権者は責任を追及できません。債務者に帰責性がないと判断されるのは、このケースのようにとても限定的です。
しかし、民法改正によって、債務不履行に基づく損害賠償請求に関する文言が追加されました。
債務不履行に基づく損害賠償請求の文言追加
改正前の民法第415条では、債務不履行時の損害賠償について以下のように規定していました。
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
この第415条の前段(第1文)は、履行遅滞や不完全履行の場合を規定しています。前段では、後段(第2文)と異なり帰責性は問われていません。ただし、415条前段も後段と同じく債務者に帰責事由がない場合には、債務者は免責されると解釈されていました。
つまり、改正前の民法では、履行遅滞や不完全履行が起きた際に帰責事由が認められない場合、債務者が法的責任を負わないということが条文のうえでは明確になっていなかったといえます。
さらに、責めに帰すべき事由は契約や社会通念に照らして判断されるものだと考えられていたものの、こちらも条文に明記はされていませんでした。
そこで、改正後の民法第415条は以下のように内容が修正されました。
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
これによって、民法第415条では第1文において、履行遅滞や不完全履行、および履行不能の場合は原則として法的責任を負い、第2文のただし書きに帰責事由のない場合は免責されることを明文化しました。履行遅滞や不完全履行についても、帰責事由がなければ免責されると記載されるようになりました。
そして、ただし書きにおいて、帰責事由とはどのようなものかを明確に記載しました。これで、改正前民法で不足していた部分が明確になったといえます。帰責事由は個別具体的かつ社会通念も考慮したうえで判断されることになったので、民法改正前よりも柔軟に解釈されることが今後増える可能性もあるでしょう。
2-2. 契約解除の変更点
改正前の民法では、債務不履行による契約解除のためには、債務者の帰責事由が必要でした。改正前の民法は、契約の解除は債務不履行した債務者に対して責任を追及する手段だとしていたためです。
しかし、契約の解除は本来、給付を受けられなかった契約に拘束されている状態から債権者を解放するためのものです。そこで債務者の帰責性を追及してしまうと、解除の目的が達成されないという批判がありました。
そのため、民法改正時に契約解除に関する記載が変更されることになりました。
債務者に帰責事由がなくても契約解除が可能
改正前の民法第543条は、契約解除について以下のとおり規定していました。
第五百四十三条 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
履行遅滞でも履行不能でも、債務不履行による解除をするためには、債務者の帰責事由が必要とされていました。しかし、民法改正で以下のように記載が変更されました。
第五百四十三条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
解除が債権者を契約の拘束力から解放するために存在する制度であることを踏まえ、改正後の民法では債務者に帰責事由がなくても債権者が契約の解除をできると認めました。これにより、債権者を契約の拘束から解放することが以前よりも容易になったといえるでしょう。
ただし、債務の不履行について債権者に帰責事由があるときは、契約解除できないことが追記されたため覚えておく必要があります。
3. 民法改正後に実務上留意すべきこと
民法改正によって、会社の法務担当者の実務にも影響が出るケースがあります。
どのような点に注意する必要があるか、改めて確認しておきましょう。
3-1. 損害賠償の手段等を制限していないか
債務不履行による損害賠償請求の文言が追加されたことについては、取引基本契約書の内容を改めて確認しなければなりません。会社間で取引をする場合、一般的には取引基本契約書が締結されます。
取引基本契約書に定められている事項については、取引基本契約書に従って処理されるのが原則です。
ただし、取引基本契約書に定めがない事項や各条項の解釈には改正後の民法が適用されます。売買契約を締結する場合、購入者となる会社は改正後の民法を適用したほうが以前より損害賠償請求を有利に進められるケースが多いです。
そのため、取引基本契約書が損害賠償の手段などを制限していないかは、作成前に確認する必要があるでしょう。
3-2. 契約の解除が可能か
契約解除の変更点については、従来の取引本契約書のとおりに契約解除が可能かどうかを確認する必要があります。取引基本契約書では、契約違反があった場合に通知催告をしたうえで一定期間経過後に契約を解除できるという条項が盛り込まれていることが多いです。
ただし、改正された民法においてはこのような条項があったとしても、不履行の程度が軽微の場合は解除権の行使が制限されることもあるため注意しなければなりません。
また、民法が改正されたことで、売主に帰責事由がなくても買主が契約解除をできるようになりました。そのため、取引基本契約書に「正当な理由なく納期までに商品を納めないとき」に契約を解除できるという記載がある場合、「正当な理由なく」という要件を載せることで改正民法の内容よりも解除できる条件が厳しくなり、買主が不利になってしまいます。
取引基本契約書の内容を全体的に確認し、改正民法よりも契約解除に不利な条件を設定していないか確認しましょう。
4. 帰責性は民法に登場する重要な概念
帰責性や帰責事由については、法務担当者であれば知っておいて損はないでしょう。
帰責性の概念については、2020年の民法改正で修正されているため、法務担当者の実務にどのような影響があるか改めて確認する必要があります。民法で定められている内容よりも不利になっていないか、取引基本契約書の記載事項を見直してみましょう。
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