業務提携契約書に記載する項目は?作成時に押さえておきたい3つのポイントを解説!
更新日: 2023.1.11
公開日: 2022.9.16
MEGURO
業務提携契約書とは、複数の企業で共同事業を営むときに取り交わす契約書のことです。業務提携契約書では、それぞれの企業の責任範囲や役割分担、成果物の取り扱い、業務提携中の秘密保持義務などを取り決めます。
本記事では、業務提携契約書の定義や作成するときのポイント、業務提携契約書に盛り込むべき項目を解説します。
目次
契約には会社の規定や法に基づいておこなわれます。
専門的な知識が求められるため、不明点があればすぐに法務担当者に連絡する人も多いでしょう。
そのため、法務担当者の中には、従業員からの質問が多く、負担に感じている方もいます。
そこで今回、ビジネスの場面で使用される契約書の種類や基本項目、契約締結の流れについて解説した資料を用意しました。
従業員の勉強用資料として社内展開すれば、契約に関する基本的な質問を受けることが少なくなるでしょう。
「同じことを何度も説明するのは億劫だ」
「従業員からの質問に時間をとられて業務が進まない」
という方はぜひご活用ください。
1. 業務提携契約書とは?
業務提携契約書とは、複数の企業で共同事業を営むときに取り交わす契約書です。スムーズに業務提携をおこなうには、それぞれの企業の役割分担や収益の分配方法を事前に取り決めておく必要があります。
販売提携や生産提携、技術提携などを検討している場合は業務提携契約書を作成しましょう。ここでは、業務提携契約書の定義や業務委託契約書との違いを解説します。
関連記事:契約類型とは?典型契約と非典型契約をわかりやすく紹介 | jinjerBlog
1-1. そもそも業務提携とは?
業務提携(Business partnership)とは、「アライアンス」とも呼ばれ、複数の企業で協力体制を構築し、共同で事業を営むことを意味します。業務提携では、お互いの資金や人材、設備、技術、ノウハウなど、さまざまな資源の共有がおこなわれるのが特徴です。
また、業務提携は「販売提携」「生産提携」「技術提携」の3つに大きく分類されます。とくに販売提携では、フランチャイズ契約や代理店契約などが多くおこなわれています。業務提携を結ぶ場合は、パートナー企業と安定した関係を築くために、あらかじめ「業務提携契約書」を締結するのが一般的です。
1-2. 業務提携契約書を作成する目的
業務提携では、複数の企業がアライアンスを組み、販売網や生産ライン、技術やノウハウなどの資源を共有します。
この資源の共有をスムーズに進めるには、お互いの役割や責任範囲をきちんと明文化しておく必要があります。また、業務提携の過程で企業秘密を取り扱うことも多く、秘密保持義務について取り決めておくことも大切です。
アライアンスを組む企業と業務提携契約を締結し、契約期間や更新期限、収益の分配や成果物の取り扱いなどについて取り決めておくことで、取引先とのトラブルや自社が不利益を被るリスクを防ぐことができます。
1-3. 業務委託契約書との違い
業務「提携」契約書と間違われやすいのが、業務「委託」契約書です。業務提携契約書が業務提携の際に取り交わす契約書であるに対し、業務委託契約書は文字通り業務委託をおこなう際に取り交わす契約書のことです。
業務提携と業務委託の意味は、それぞれ下記の通りです。
両者に関して法律で定義されているわけではありませんが、ビジネスシーンでは、協力企業の関係がよりフラットで、共同で事業を営む場合に業務提携とみなされることが多いです。一方、親事業者と下請事業者など、委託側と受託型の役割が明確な場合は業務委託とみなされるのが一般的です。
2. 業務提携契約書の作成で押さえておきたい3つのポイント
業務提携契約書を作成するうえで、押さえておきたいポイントは大きく3つあります。
ここからは、その3点について解説していきます。
2-1. 収入印紙の金額は契約内容に応じて決まる
まず、紙の契約書で業務提携契約を締結する場合には、収入印紙の貼付が必要となります。
業務提携契約書には複数の契約が盛り込まれることも多いため、そのほかの契約書と比べて内容が複雑な場合もあります。国税庁のホームページで印紙税額一覧も公開されていますが、自社で判断が難しい場合には、弁護士などの専門家に相談するなどして、収入印紙の金額を判断してもらうと安心でしょう。
参考:印紙税額一覧表|国税庁
2-2. 業務提携の検討段階で秘密保持契約書(NDA)を締結する
業務提携をおこなう場合、自社の機密情報をパートナー企業に共有せざるを得ない状況があります。
このような場合に、情報漏洩やデータの不正利用を避けるため、業務提携を打診する段階で、秘密保持契約書を締結しておくことが大切です。とくに業務提携において、お互いの技術やノウハウを共有する場合、必ず秘密保持契約書を作成するようにしましょう。
2-3. 雛形を使用する際もリーガルチェックをおこなう
インターネット上では業務提携契約書の雛形が公開されており、自社で一から作成するよりも効率的に契約業務を進めることができます。
しかし、業務提携契約は複雑なので、案件に応じて決めておくべき内容は異なります。そのため、雛形を使用する場合でも、自社でおこなう取引の内容にあった契約書を作成するために、必ずリーガルチェックをおこなって内容を調整するようにしましょう。
委託内容や情報の取り扱いなどは取引ごとに異なります。そのため、雛形を使用する場合も取引内容と契約書の内容に相違がないかを丁寧に確認しなければなりません。
ですが、従業員の中には「雛形を使用しているから、最低限の共有で問題ないだろう」と考えて共有される情報が不足している場合もあります。その結果、確認により時間がかかってしまい、担当者からも良い顔をされないこともあるでしょう。
お互いに気持ちよく業務をおこなうためにも、連携内容をルール化しておくことが大切です。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の基本知識から契約書の役割、契約に関するよくある質問についてまとめています。
またリーガルチェックの連携項目チェックシートも用意しているので、従業員にチェックシートを共有することで、ミスが減り、リーガルチェックの効率化にもつながります。興味のある方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
3. 業務提携契約書に記載すべき内容
業務提携契約書に記載すべき内容は大まかには9つあります。パートナー企業とのトラブル防止のため、業務提携の目的や契約期間などの基本的な事柄だけでなく、成果物の取り扱いや秘密保持義務、収益分配や損害賠償など、なるべく細かくルールを取り決めることが大切です。
はじめて業務提携契約書を作成する場合は、国が公開している作成例を参考にしたり、専門家に相談したりするのがおすすめです。
3-1. 業務提携の目的
そもそもなぜ業務提携を結ぶのか、業務提携契約を締結する目的を記載します。
目的を明示しておくことで、次に紹介する役割分担をはっきりさせることができます。
3-2. 責任範囲と役割分担
業務提携を結ぶパートナー企業の責任範囲や役割分担を定めます。
どの業務に対してどちらが責任を持つのか、役割を持っているのかを文面で定めておくことで、認識の齟齬が発生するのを防ぐことができます。
3-3. 成果物や権利の取扱い
業務提携によって得られた特許や知的財産権、発明品などの成果物に対し、どの企業がどの程度の権益を持つかを明確にします。
明確にしていなかった場合、自社で作り上げた成果物を自由に利用できないなどの事象が発生する可能性があります。パートナー企業とのトラブルを防ぐためにも、この事項はしっかりと議論して決めておきましょう。
3-4. 秘密保持義務
秘密保持義務は、業務提携契約書のなかでも重要な項目の一つです。業務提携のプロセスで、自社の営業秘密が他の企業に知られる可能性があります。営業秘密の流出や不正利用を防ぐため、業務提携を通じて得られた情報の取り扱いや、機密情報の範囲などを取り決めます。
第●条(秘密情報)
本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。
引用:各種契約書等の参考例|経済産業省
3-5. 収益分配と費用負担
業務提携によって生み出された収益の分配について定めます。収益に関しては、事業にどのくらい寄与したかに応じて決められることが一般的です。
続いて費用負担について定めます。片方が金額を建て替える場合などに備えて、具体的な支払い方法や支払い期日を決めておくようにしましょう。
3-6. 支配権の変更
パートナー企業が他社に買収される、つまり、支配権が変更された場合に、契約を解除できる権利について記載します。
頻繁に発生する事象ではありませんが、万が一競合企業などの買収された場合に成果物や権利が流出してしまうと、自社にとって大きな不利益につながる恐れがあります。
このように、契約書では通常ほとんど発生しない事象に関する内容も定めておくと、大きなトラブルにつながりにくくなります。
3-7. 協議事項
契約書に記載していない事項について、論点が発生した場合の対応を定めます。
第●条(協議事項)
本契約に定めのない事項について又は本契約に疑義が生じた場合は、協議の上解決する。
3-8. 有効期限(契約期間)
業務提携をおこなう期間を定めます。将来的に業務提携を延長する可能性がある場合は、契約の更新期限や自動更新の有無なども決める必要があります。
第●条(有効期限)
本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満○年間とする。期間満了後の○ヵ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに○年間継続するものとし、以後も同様とする。
3-9. 損害賠償
業務提携契約が適切に履行されず、互いに損害が発生した場合の対応を定めます。
4. 業務提携契約書の作成方法を押さえて、パートナー企業と適切な契約を結びましょう
業務提携契約書とは、2社以上でアライアンスを組み、共同で事業を営むときに締結する契約書です。たとえば、フランチャイズ契約や代理店契約などの販売提携、OEMやODMなどの生産提携も業務提携に含まれます。
業務提携契約はあらゆる契約が絡み合ったものなので、そのほかの契約書と比べて内容が複雑な場合が多いです。
契約書の内容以外にも、事前に秘密保持契約を締結するなど押さえておくべきポイントが多いので、業務提携を結ぶ前に専門家に相談しておくとよいでしょう。
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