契約解除は一方的にできる?損害賠償請求の可否についても解説 - ジンジャー(jinjer)| クラウド型人事労務システム

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契約解除は一方的にできる?損害賠償請求の可否についても解説

電子契約書

資金繰りの悪化などを理由に、契約を一方的に解除することはできるのでしょうか。原則として、契約には法的な拘束力があるため、相手の同意なしに契約を破棄することはできません。
しかし、民法では例外的な状況に限り、契約を一方的に破棄することが認められています。この記事では、一方的に契約を解除できるケースや、正当な理由なしに契約を解除されたときの損害賠償請求の可否について解説します。

1. 契約解除は一方的にできる?

契約を破棄する

民法では契約自由の原則が定められており、契約は当事者の自由意思に基づいて結ぶことができます。しかし、契約の自由が認められているからといって、当事者のどちらかが契約を一方的に破棄できるわけではありません。契約を締結すると、権利だけでなく義務も発生するからです。[注1]

契約自由の原則では、「その契約をするかどうかなどの選択は本人に委ねられている。契約に関する選択の自由がある中で、締結するという選択をした以上は、自分の選択した契約を守る義務がある」と考えます。
引用:契約をやめる― 無効、取消し、解除|国民生活センター

契約を一方的に解消できるのは、あくまでも例外的なケースに限られます。ここでは、契約の拘束力や契約を一方的にやめるための方法を解説します。

[注1]契約をやめる― 無効、取消し、解除|国民生活センター

1-1. 契約には「拘束力」が存在する

そもそも、なぜ契約を一方的に破棄してはいけないのでしょうか。契約は、成立した時点で「拘束力」が発生します。そのため、契約内容に違反したり、相手の合意なしに契約を破棄したりすることはできません。このことを「契約の拘束力」といいます。[注2]

一度契約が成立すると、合意した内容をお互いに守る義務が発生します。契約した内容と違うことをしたり、一方的な都合で契約を解消することはできません。これらを認めてしまうと、皆が安心して契約を結ぶことができなくなるからです。これを「契約の拘束力」といいます。
もし相手が契約どおりのことをしない場合、相手に契約した内容を実現するよう求めることができます。
引用:18歳を迎える君へ~契約について学ぼう~|法務省

[注2]18歳を迎える君へ~契約について学ぼう~|法務省

1-2. 契約をやめるための3つの方法

どうしても契約を取りやめたい場合は、原則として契約の相手方と合意し、双方の意思により契約を解消する必要があります。この手続きを「合意解約」といいます。
しかし、民法では例外的な状況に限り、契約を一方的に取りやめる「契約解除」という制度が認められています。契約をやめるための方法は、「無効」「取消し」「解除」の3つです。

原則 例外
無効 初めから効力が生じない。誰からでも主張できる 主張できる者
取消し 最初に遡って効力が失われる 将来に向かってのみ効力を失う場合あり
解除

それぞれの考え方やポイントを簡単にみていきます。

① 契約の無効

契約の無効とは、「成立した契約に契約としての効果がないこと」を示し、成立した契約を取りやめる手続きを指します。[注1]
そもそも契約の内容に効力がなく、契約を無効とみなせる原因(無効原因)がある場合、契約を後からやめることが可能です。例えば、民法3条の2では「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」としています。[注3]
意思能力のない人と契約を締結した場合、契約書などの書類が揃っていても後から契約を解除することができます。

[注1]契約をやめる― 無効、取消し、解除|国民生活センター

[注3]無効・取消し・解除|国民生活センター

② 契約の取消し

契約の取消しとは、「いったん成立し、効果が生じた契約などを遡って消滅させる」手続きを指します。[注1]
契約の取消しが可能なのは、契約内容に法的な瑕疵(かし)があるケースに限られます。例えば、当事者の錯誤による契約(改正民法第95条や、詐欺・強迫などによる契約が該当します。初めから契約が成立していない「無効」と違い、契約の取消しを行わない場合は、契約が有効なものとして存続しつづけます。

[注3]無効・取消し・解除|国民生活センター

③ 契約の解除

契約の解除は、契約の明確な取消事由がないにもかかわらず、当事者の一方が契約の解除権を行使する手続きを指します。契約の解除について定めているのが民法540条です。[注1]

契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
引用:契約をやめる― 無効、取消し、解除|国民生活センター

よくある契約の解除が、当事者が契約を解除するための特約が存在するケースです。代表的な例として、売買契約や賃貸借契約における「手付」が挙げられます。例えば、不動産の売買などでは、手付金を放棄することで契約を解除できる場合があります(手付解除)。また、特定商取引法や割賦販売法などで定められたクーリングオフ制度も、契約の解除の一例です。

[注1]契約をやめる― 無効、取消し、解除|国民生活センター

2. 一方的な契約解除が認められるケース

貯金箱がひっくり返る

一方的な契約解除が認められるケースとして、具体的にどのようなものが挙げられるでしょうか。改正前の民法では、相手の同意のない契約解除が認められるケースは大きく分けて3つありました。[注1]

  • 債務不履行による解除
  • 売買契約の瑕疵担保責任による解除
  • 請負契約の担保責任による解除

改正民法では、瑕疵担保責任の規定などが削除され、債務不履行による解除に一本化されています。一方的な契約解除が認められるケースを詳しくみていきます。

[注1]契約をやめる― 無効、取消し、解除|国民生活センター

2-1. 契約の相手に債務不履行があったケース(法定解除)

契約の相手が事前に取り決めた約束を守らず、債務不履行が認められた場合、契約を一方的に解除することができます。債務不履行とは、主に以下の3つを指します。

履行遅滞 契約で取り決めた期日を過ぎても債務が履行されない場合
履行不能 債務を履行できない状況に陥った場合
不完全履行 債務の一部を履行したものの、完全ではない場合

また、改正民法542条の条件を満たす場合は、契約の相手に催告することなく契約を解除することができます。この手続きを「無催告解除」といいます。

  1. 債務の全部の履行が不能であるとき。
  2. 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  3. 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
  4. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
  5. 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

2-2. クーリングオフ制度が適用されるケース(特別法による解除)

民法で定められた契約解除の他にも、特別法で定められた契約解除の手続きもあります。代表的なものが、特定商取引法や割賦販売法におけるクーリングオフ制度です。ただし、法人同士の取引にはクーリングオフ制度が適用されないため、後から契約を解除することはできません。

3. 一方的な契約解除に対する損害賠償請求は可能?

法律

一方的に契約を解除された場合、相手に損害賠償請求を行うことは可能でしょうか。すでに成立した契約を取消したり、解除したりする場合、契約の効力は遡って消滅します。
しかし、契約の効力が消滅しても、契約内容に違反した相手に損害賠償請求を行う権利(損害賠償請求権)は消滅しません。契約の相手に正当な契約解除事由がなく、債務不履行とみなすことができる場合は、損害賠償請求権が発生します。

損害賠償請求の一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 内容証明郵便などの手段により、契約の相手に損害賠償を直接請求する
  2. 損害賠償請求に応じない場合は、民事調停での解決を図る
  3. 民事調停でも合意に至らない場合は、相手に訴訟を提起する

身勝手な理由により契約を破棄されたり、契約の期限が過ぎても代金が支払われなかったりした場合は、損害賠償請求も視野に入れて対応を検討しましょう。

4. 一方的に契約解除できるケースや、損害賠償請求の可否を確認しよう

弁護士へ相談する男性

契約を取りやめたい場合は、相手との合意に基づいて契約を破棄する「合意解約」が一般的です。
しかし、民法上は特定の場合に限り、契約の「無効」「取消し」「解除」の3つが認められています。一方的に契約を解除できるケースとして、相手企業に債務不履行があった場合や、クーリングオフ制度が適用される場合などが挙げられます。逆に正当な理由なく契約を破棄された場合は、相手に損害賠償請求を行うことが可能です。
一方的に契約解除できるケースとできないケースを確認しておきましょう。

jinjer Blog 編集部

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