電子契約はなぜ印紙税が不要?法的根拠とコスト削減例をご紹介!
更新日: 2022.12.7
公開日: 2021.8.5
HORIUCHI
書面で契約書を締結する際は「印紙税」がかかります。
しかし、電子契約を交わす際は印紙税が不要です。
規模が大きい企業や取引が多い企業は印紙税が高額になりやすいため、電子契約を導入することで大幅にコストを削減できます。
それでは、どうして電子契約の際は印紙税が不要になるのでしょうか。
本記事では、電子契約で印紙税が不要になる理由と、削減できるコストの金額の目安などについて紹介します。
関連記事:電子契約とは?|メリットとデメリット、おすすめサービスを解説 | jinjerBlog
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・電子契約で印紙税を削減できる法的根拠
・印紙税の課税対象となる書類と税額
・削減額シミュレーションの計算式 など
1.電子契約では印紙税が不要
電子データで契約を取り交わす電子契約では、印紙税の納付が不要といわれています。
その理由としてはさまざまな根拠が挙げられますが、それを理解するためには、はじめに印紙税や収入印紙について理解する必要があります。
まずは、印紙税の概要についてみていきましょう。
1-1.印紙税とは
印紙税とは、経済的取引に関連する「課税文書」に対してかかる税金のことです。
契約書はもちろん、預貯金証書や為替手形、株券や有価証券なども課税文書に含まれます。
印紙税の金額は文書の種類や記載金額によって変わってくるため、詳しい金額は後述の表を参考にしてください。
なお、国税庁が定める印紙税の納付方法は以下の4種類です。[注1]
①収入印紙の貼り付けによる方法:
税額分の収入印紙を購入し、文書に貼りつける
②税印を押す方法:
金銭で印紙税額を支払い、税務署で文書に税印を押す
③印紙税納付計器により納付印を押す方法:
税務署の承認を受けて設置した印紙税納付計器を使って、自ら納付印を押す
④書式表示による方法:
税務署の承認を受けて文章に定められた表示をして、後日1か月間の印紙税額をまとめて納付する
印紙税の納付方法はどれを選んでも問題ありませんが、印紙税の納税漏れが発覚した場合、本来の印紙税額とその2倍(すなわち3倍)に相当する過怠税を負担する必要があります。
自主的に申し出た場合は1.1倍になりますが、どちらにせよ税額が高くなる点に注意が必要です。[注2]
1-2.収入印紙とは
印紙税の最も一般的な納付方法が、収入印紙を用いた方法です。
収入印紙とは、印紙税だけではなく、租税や手数料などの収納金を徴収するために国が発行する証票のことです。
収入印紙は身近なところでも手に入れることができ、たとえば、以下のような場所で収入印紙を購入することが可能です。
郵便局・コンビニエンスストア・法務局・役所・金券ショップ
契約書を作成する際はこの収入印紙を貼付して、割り印(消印)を押すことが一般的とされています。
1-3.印紙税がかかる文書と税額
印紙税がかかる課税文書にはさまざまな種類があります。
ここでは、課税文書の種類とおおよその税額についてご紹介します。
・不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
・地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
・消費貸借に関する契約書・運送に関する契約書
1万円未満:非課税
10万円以下:200円
10万円を超え50万円以下:400円
50万円を超え100万円以下:1千円
100万円を超え500万円以下:2千円
500万円を超え1千万円以下:1万円
1千万円を超え5千万円以下:2万円
5千万円を超え1億円以下:6万円
1億円を超え5億円以下:10万円
5億円を超え10億円以下:20万円
10億円を超え50億円以下:40万円
50億円を超えるもの:60万円
契約金額の記載のないもの:200円
請負に関する契約書
1万円未満:非課税
100万円以下:200円
100万円を超え200万円以下:400円
200万円を超え300万円以下:1千円
300万円を超え500万円以下:2千円
500万円を超え1千万円以下:1万円
1千万円を超え5千万円以下:2万円
5千万円を超え1億円以下:6万円
1億円を超え5億円以下:10万円
5億円を超え10億円以下:20万円
10億円を超え50億円以下:40万円
50億円を超えるもの:60万円
契約金額の記載のないもの:200円
約束手形又は為替
手形10万円未満:非課税
10万円以上100万円以下:200円
100万円を超え200万円以下:400円
200万円を超え300万円以下:600円
300万円を超え500万円以下:1千円
500万円を超え1千万円以下:2千円
1千万円を超え2千万円以下:4千円
2千万円を超え3千万円以下:6千円
3千万円を超え5千万円以下:1万円
5千万円を超え1億円以下:2万円
1億円を超え2億円以下:4万円
2億円を超え3億円以下:6万円
3億円を超え5億円以下:10万円
5億円を超え10億円以下:15万円
10億円を超えるもの:20万円
上記のうち、
(1)一覧払のもの(2)金融機関相互間のもの(3)外国通貨で金額を表示したもの
(4)非居住者円表示のもの(5)円建銀行引受手形表示のもの
10万円未満:非課税
10万円以上:200円
株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券
500万円以下:200円
500万円を超え1千万円以下:1千円
1千万円を超え5千万円以下:2千円
5千万円を超え1億円以下:1万円
1億円を超えるもの:2万円
※国税庁より一部引用[注3]
契約を締結することでかかる印紙税は契約形態や記載金額によって異なります。
しかし、電子契約を導入すればこれらのコストを削減することが可能です。
場合によっては数百万円単位の費用を節約することもできます。
[注3]No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
2.電子契約で印紙税が不要な根拠
電子契約では印紙税が不要と説明してきましたが、そもそもなぜ電子契約の場合は印紙税を納付しなくてもよいのでしょうか。
実は、電子契約で印紙税が不要となることについて明記した法律は存在していません。
これは、電子契約がまだまだ新しい契約形態であるため、法整備が追いついていないことが影響していると考えられます。
しかし、印紙税がいらない理由としては、確固たる3つの根拠が存在しています。
この章では、それぞれの根拠について具体的に紹介します。
2-1.印紙税法の解釈と契約書を印刷した場合の考え方
印紙税法第44条には、以下のような記載があります。
”法に規定する課税文書の『作成』とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。”
第7節 作成者等|国税庁
また、相手方に交付する目的で作成される課税文書の「作成時」とは、「当該交付のとき」のことを指します。
いい換えると、課税文書は用紙に金額などを記入したものであり、相手に交付することが「作成時」に該当するというわけです。
電子契約の場合、文書が作成されるのは紙でなくデータです。
また、データを送信することはあれども、交付することはありません。
そのため、印紙税が必要となる課税文書には該当しないと判断されるのです。
電子領収書などといったほかの書類も、同様の扱いとなります。
契約書を印刷した場合、プリントアウトしたものは契約書の複製物にすぎないため、押印しない限りは課税文書に該当することはありません。
2-2.国税庁による見解
国税庁当局の文書回答事例では、印紙税について以下のような見解が述べられています。[注4]
“【請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について】
・印紙税法上の契約書とは、「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」を指す
・課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時である
・現物の交付がなされない以上、電子メールで送信したとしても、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しない”
[注4]文書回答事例(別紙)|国税庁
このケースでは注文請書についての記載ですが、注文請書も契約書と同様に課税文書であるため、同じ見解が適用されると考えられます。
ただし、電子メールで送付したあとに現物を別途交付する場合、課税文書の作成に該当します。このときは印紙税が必要となるため、注意しましょう。
2-3.国会答弁から
平成17年3月15日におこなわれた第162回の国会答弁でも、電子契約には印紙税がかからないことについて言及されていました。
小泉元首相は国会の答弁において、以下のような発言をしています。
”事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。”
[引用元]第162回国会(常会)答弁書|衆議院
ただし、ペーパーレス化の普及状況に応じて、課税の適正化や公正化を図るために対策を検討する可能性があることについても言及されています。
現時点では電子契約は非課税です。
しかし、今後課税されるようになる可能性もあるため、しっかりと情報収集することが大切です。
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3.電子契約を導入して印紙代を削減した企業事例3選
先述したように、電子契約に印紙税がいらない理由には多くの根拠があります。
この電子契約の特性を利用している企業は多く存在しており、大幅にコストを削減できた事例もたくさん報告されています。
それでは、電子契約を導入すると実際にどれくらいの印紙代が削減できるのでしょうか。
ここからは、実際の事例を3件見ていきましょう。
3-1.バイドゥ株式会社
バイドゥ株式会社は、中国に本社を置くネットサービス企業です。
中国ではサーチエンジンを提供する企業として知られています。
キーボードアプリの「Simeji」を提供するなど、日本との関連性も深い会社です。
同企業では個人のクリエイターと業務委託契約を結ぶことが多いため、個別の業務委託契約書にかかる印紙代が課題となっていました。
クリエイターに印紙代を負担してもらうことに抵抗を抱き、電子契約の導入を決意しました。
以前は1ヵ月に10枚ほど印紙を使っていた担当者によれば、電子契約導入後1か月で1~2枚使うかどうかになるまで印紙の使用量を削減できたようです。
インタビューでは、おおよそ80%のコストを削減することができたと回答しています。
(クラウドサイン公式サイト:「電子契約移行に1週間で成功 印紙代も80%カット」記事より)
3-2.株式会社髙島屋
株式会社髙島屋は、大阪に本社がある老舗百貨店です。
毎年2,000件の高島屋店舗の階層・設備営繕工事における発注業務があり、印紙代のみならず、膨大な作業工数が課題となっていました。
そこで取引先との契約を電子化することで、印紙税の削減や作業・管理コストの削減に成功しました。
具体的には、注文書・注文請書・完了書兼精算確認書などさまざまな契約関連書類を電子署名・タイムスタンプを付与したPDFファイルに置き換え、取引先と電子契約サービスを介してやり取りすることで、印紙税に関しては生産確認書の印紙税が0円になり、取引先も注文請書に貼る印紙代が0円になるメリットが生まれました。
(日鉄ソリューションズ(CONTRACTHUB)公式サイト:「店舗改装工事の請負発注に電子契約を導入し、契約の進捗管理と印紙削減を実現」記事より)
3-3.株式会社ニッセン
株式会社ニッセンは、カタログ通販やインターネット通販事業を展開する企業ですが、企業向けに通販事業のノウハウを活かしたビジネスサポートもおこなっています。
民法の改正により、契約書の巻き直しが約600社で必要となり、効率的な再締結に向け、電子契約を導入されました。
書面の契約業務に工数がかかっていた点もありますが、契約書の1件当たりの印紙代が約4,000円、契約書まき直しで600社と再締結すると200万円以上の印紙代が発生してしまうこともあり、電子契約導入に踏み切ったようです。
導入後4か月ほどで電子化率は54%近く、売買契約に関しては90%程度電子契約で再締結でき、印紙代を70万円以上削減されました。
それだけでなく、スキャンや紙の保存が不要になり業務効率がアップし、1週間以上かかっていた契約書の返送確認が最短10分になるなどの業務効率化を実現しており、今後さらにデジタル化を推進されていきたいとのことです。
(インフォマート(BtoBプラットフォーム)公式サイト:「民法改正に伴う再締結時の印紙税を、電子契約で大幅削減。契約はスピーディーになり、スキャナ保存からも解放されました。」記事より)
4.印紙税のコスト削減なら電子契約の導入がおすすめ!
印紙税とは、契約書を含む課税文書の作成時にかかる税金のことです。
印紙税の金額は取引内容や契約金額によって異なるものの、1件あたり数千~数万円になることもあります。
企業にとっては、大きな負担となることもあるでしょう。
電子契約の場合、作成された契約書は課税文書に該当しないと解釈されています。
したがって、電子契約では毎月数百万円単位の印紙税を削減することも可能となるのです。
印紙税のコストを削減したい企業は、電子契約の導入をおすすめします。
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