IT重説とは?メリット・デメリットやガイドラインに基づいた実施方法を解説
更新日: 2023.1.27
公開日: 2022.9.14
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IT重説とは、不動産の賃貸取引や売買取引における「重要事項説明」を非対面でおこなうことを指します。コロナの蔓延によりオンライン化が推進されるなか、本来対面での説明が原則とされている重要事項説明もオンラインでの対応が可能となりました。
しかしながら、IT重説について「どのように対応すればよいのかわからない」と不安を感じている担当者の方も多いでしょう。
本記事では、IT重説を実施する流れやメリット・デメリット、さらには注意点などを解説します。IT重説を導入して、不動産の契約業務をスムーズにおこなっていきましょう。
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電子帳簿保存法の改正や5月の宅建業法改正により、オンライン契約が推進されています。
従来、重要事項説明書は対面での実施が義務付けられていましたが、「IT重説」の運用により不動産業者と入居予定者が顔を合わせる必要がなくなりました。
IT重説の概要を正しく理解したい方や法改正で何が変わったのか把握したい方はぜひ資料をダウンロードしてご確認ください。
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・宅建業界の現状
・IT重説とは何か
・IT重説の実施フロー
・電子契約サービスについて
1. IT重説とは?
IT重説とは、重要事項説明(以下、重説)をパソコンやスマホなどのオンライン上でおこなうことです。適切な通信環境の下で重説がおこなわれていれば、対面ではなくても「重説をおこなった」として処理できることになっています。
IT重説が解禁された当初(2017年)は「賃貸取引」のみで認められていましたが、2021年3月30日からは「売買取引」でもIT重説が可能となりました。
この本格運用開始のタイミングで、国土交通省はIT重説のガイドラインに基づいた「ITを活用した重要事項説明実施マニュアル」を公開しています。
関連記事:重要事項説明書の電子化はいつから可能?|不動産取引における電子化の現状
関連記事:宅建業法の改正について2つのポイントで解説
1-1. IT重説の要件
実施マニュアルによると、IT重説が対面重説と同様とみなされる要件は以下の4つです。
・相手が説明内容を十分理解できる程度に映像を視認でき、双方向で音声・映像のやり取りができる環境であること
・宅地建物取引士によって記名押印された重説等の書類をあらかじめ送付しておくこと
・説明開始前に相手方ば重説等を確認できる状態にあるか、映像及び音声の状況は問題ないかを確認すること
・相手方が宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認すること
なお、国土交通省が公開している『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』では、要件を満たしておこなわれたIT重説について「宅建業法第35条の重要事項説明と同様に取り扱う」という見解がはっきりと示されています。
参考:ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル|国土交通省
参考:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方|国土交通省
2. IT重説のメリット
IT重説は「非対面」であるのが大きな特徴です。対面式の重説と比較して、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。まずはメリットを紹介します。
メリット①:会合の負担がない
元々「対面」が原則とされていた重説では、双方または片方が会合の場所まで足を運ばなければなりません。一般的には、不動産会社のオフィスや店舗でおこなわれることが多いでしょう。
また、その場所に移動するまでには大抵の場合、時間やコストが発生します。遠距離の場合は、移動と重説などのやり取りで1日費やしてしまうケースもあるでしょう。
一方で、IT重説であれば、宅地建物取引業者、取引当事者ともに移動する必要がありません。重説にかかる移動時間や交通費を削減することができます。
メリット②:日程調整しやすい
重説が対面に限定されると、関係者の都合を合わせるのが難しくなります。重説そのものの時間は短くても、現地までの移動時間を考えれば多くの時間を確保することが必要です。双方の都合が合わず、取引が停滞してしまうこともあるでしょう。
IT重説なら、重説の時間のみ確保できれば問題ありません。1時間程度であれば、多忙な方でもすき間時間を見つけて対応しやすいでしょう。
メリット③:録画で記録を残せる
IT重説はパソコンやスマホなどを使っておこなわれるため、録画や録音が可能です。「適切に重説をおこなった」という記録が残り、後で「言った・聞いていない」というトラブルが発生するリスクを抑えることができます。
また、取引当事者にとっても「後から説明を見返すことができる」というメリットもあります。IT重説を録画しておくことは、取引当事者・不動産関係者にとってメリットが大きいといえるでしょう。
ただし、IT重説の様子を録画する際は、必ず相手の同意が必要です。無断録画はトラブルの元となるため、許可を得たうえで録画ボタンを押してください。
3. IT重説のデメリット
続いて、IT重説のデメリットを紹介します。
デメリット①: 適切なIT環境の構築が必要
IT重説は、双方のIT環境によってクオリティが左右されます。IT環境の構築が不十分な場合、「通信が途切れる」「画面がフリーズする」等が発生し、スムーズに重説できないうえに、相手方も説明を理解することができなくなってしまいます。
IT重説の途中で通信が不安定になった際は、中断して環境回復に努めなければなりません。不安定のまま説明をおこなった場合、重説をおこなったとみなされなくなる可能性が高いです。
さまざまな対処をしても改善されない場合には、IT重説を後日にするか対面に切り替えるかのいずれかとなるでしょう。
デメリット②: 相手の反応が分かりづらい
対面でのやり取りであれば、相手の表情や声のトーンなどから、説明が伝わっているか否かを判断できます。適宜、相槌を打ったり、合いの手を入れたりしやすく、和やかなムードで重説を進めることが可能です。
一方、オンライン上でおこなわれるIT重説では、相手の声が聞きづらくなったり表情が読みにくくなったりする恐れがあります。今一つ相手の反応が掴みきれず、担当者は「きちんと伝わっているのだろうか」と不安を感じることがあるでしょう。
デメリット③: 重説を軽んじる傾向
「絶対に対面でおこなわなければならない」という厳しい決まりがある場合、取引当事者は「重説とは重要なものなのだ」と認識するでしょう。実際に対面で説明をおこなう際も、緊張感を持って耳を傾けようとするはずです。
IT重説の場合、自宅からでも説明を受けられてしまうため、人によっては「仕事をしながら」「スマホをいじりながら」話を聞くことがあるかもしれません。
相手がリラックスしすぎたまま重説が終わると、理解が足りなかったり聞き漏らしがあったりするリスクが高まります。後々、「知らない」「聞いていない」等のトラブルが発生しないように、キリが良いところで説明を理解できているかこまめに確認しておくと安心でしょう。
4. IT重説を実施する流れ
IT重説を適切に行うには、事前準備・事前確認が必要です。実際にどのような流れとなるのか、国土交通省の「ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」を参考に紹介します。
4-1. 双方が適切な通信環境を確保する
対面式と変わらない重説の質を保つため、IT重説では双方向でやり取りできる通信環境の確保が必要とされています。
宅地建物取引業者と取引当事者がお互いの姿・音声をはっきりと認識できるよう、快適な通信環境を確保しましょう。
4-2. 重要事項説明書等を事前送付する
IT重説を行う際は、相手に必要な資料が届いていることが大前提です。IT重説開催日の前に、重要事項説明書が相手の手元に届くようにしておきましょう。
注意したいのは、電子メールでの資料送付が認められていない点です。資料は重説を担当する取引士が記名押印したうえで、郵送する必要があります。
4-3. 相手方に送付した書類のチェック
IT重説の開始時間になったら、まずは相手に送付した書類に抜け漏れがないかを通してチェックしましょう。また同時に、双方の通信環境が適切かどうかも確認します。
お互いの端末でお互いの音声・画像が適切に聞こえたり見えたりしていると分かれば、IT重説を進めても問題ありません。
4-4. 取引当事者本人であるかどうか確認
そもそも重説は、取引当事者が不動産についての利害関係や取引条件を適切に理解するために行われるものです。IT重説を開始する前に「本人かどうか」の確認を行いましょう。
本人を確認する有効な手段としては、写真入りの証明書をブラウザ越しに提示してもらう方法があります。
4-5. 宅地建物取引士の取引士証を提示する
そのため、IT重説を開始する前に、説明をおこなう宅地建物取引士(以下、宅建士)は取引士証をカメラ越しの相手に向けて提示しましょう。取引士証の名前や登録番号を相手に読み上げてもらうことで、宅建士の本人確認が成立します。
4-6. IT重説の実施
双方の確認とそのほかの書類確認が完了したら、IT重説の要件に注意して重説を実施します。通信環境の乱れ等が頻発するようであれば、中断して後日改めて重説をおこなうことを検討しましょう。
5. IT重説の注意点
IT重説は宅地建物取引業者と取引当事者の双方にとってメリットが大きいですが、時にはトラブルの元となる可能性もあります。ここでは、IT重説をおこなううえでの注意点を紹介します。
5-1. 宅建士の資格が必要
IT重説をおこなえるのは、宅地建物取引士(以下、宅建士)のみと定められており、これは対面での重説でも同様です。また、担当者は自身が宅建士であることを相手に証明しなければなりません。
5-2. IT重説についての同意を得ておく
相手がIT重説を選択した場合は、書面等で「相手が希望した」という事実を確実に残しておきましょう。証拠を残していなかった場合、「IT重説を希望した覚えはない」など主張されトラブルに発展する可能性もあります。
また重説では、売主・買主の個人情報に触れざるを得ない部分が出てくるかもしれません。IT重説をおこなう前に、すべての取引関係者に対して、IT重説への同意を得ておくことも必要です。
5-3. カメラオフは不可
IT重説の要件では「双方向で音声や映像のやり取りができる状態であること」が定められており、説明を受ける側もカメラオンにしておく必要があります。
自宅でIT重説を受ける場合、相手方によってはすぐにカメラをオンにするのが難しいこともあるでしょう。時間を有効活用するためにも、不動産業者側はカメラオンが必須である旨を事前に伝えたうえで、IT重説を実施するようにしましょう。
5-4. 内覧の実施を勧める
契約を結ぶ前に、取引当事者に物件の内覧を勧めましょう。
IT重説が解禁された現在、取引物件に足を運ばないまま契約を進めていく人が散見されます。これでは重説で相手の理解を得たとしても、後々「思っていたのと違う」といわれるリスクは残ったままです。
内覧は法律上の義務ではありませんが、口頭の説明だけではわからない点が多々あります。一度は物件を訪れてもらった方が後々のトラブル防止につながります。
関連記事:不動産売買におけるIT重説のポイントをわかりやすく解説
6. IT重説はガイドラインに従って適切におこないましょう
不動産取引における重要事項説明をオンライン上でおこなえるようになったのが『IT重説』です。「遠距離でも重説に対応しやすい」「移動時間が不要になる」などのメリットがあり、不動産取引を非常に効率化することができます。
しかし、安易にIT重説をおこなってしまうと、契約を締結した後でトラブルに発展する可能性もあります。IT重説のガイドライン及びマニュアルに則り、対面以上に気を遣い、重要事項説明が相手に伝わりやすいように準備をしておきましょう。
電子帳簿保存法の改正や5月の宅建業法改正により、オンライン契約が推進されています。
従来、重要事項説明書は対面での実施が義務付けられていましたが、「IT重説」の運用により不動産業者と入居予定者が顔を合わせる必要がなくなりました。
IT重説の概要を正しく理解したい方や法改正で何が変わったのか把握したい方はぜひ資料をダウンロードしてご確認ください。
▼「【宅建業法の改正に伴う変化とは?IT重説の運用方法」資料でお悩み解決!
・宅建業界の現状
・IT重説とは何か
・IT重説の実施フロー
・電子契約サービスについて
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