重要事項説明書の電子化はいつから可能?|不動産取引における電子化の現状
宅地建物取引業法(宅建業法)では、購入者等の利益を保護するために、契約締結前に取引相手への重要事項の説明および、書面(紙)での重要事項説明書の交付が義務づけられていました。[注1]
ところが、2021年9月に施行されたデジタル改革関連法により、重要事項説明書の電子化が本格的に開始することが決まりました。
複数枚にわたる重要事項説明書を電子化できるのは不動産取引業を営む人にとって朗報ですが、実際にいつから電子化がスタートするのでしょうか。
今回は、不動産取引における電子化の現状と、重要事項説明書の電子化が始まる時期について解説します。
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【弁護士監修】不動産業界における電子契約の法改正を徹底解説!
2022年5月施行のデジタル改革関連法の改正により、不動産業界での電子契約が解禁されました。
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目次
1. 不動産取引に関する書類の電子化の現状
書類の電子化はさまざまな業界で広まっていますが、不動産取引における書類の電子化はどこまで進んでいるのでしょうか。
ここでは、不動産取引に関する書類の電子化の現状を2つのポイントにわけて解説します。
1-1. 不動産取引に関連する法令
不動産取引に関連する法令には、宅地建物取引業法(宅建業法)と借地借家法があります。
以下では、それぞれの法律における書面の電子化に関わる条項を抜粋して紹介します。
● 宅地建物取引業法
宅建業法第34条の2では、宅地建物取引業者(不動産業者)は、不動産取引の媒介契約を締結した際、必要事項を記載した書面を作成し、記名押印し、依頼者に交付することを義務づけていました。[注1]
また、同法第35条では、宅地建物取引業者は、不動産取引をおこなうにあたり、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士によって重要事項を記載した書面(重要事項説明書)を交付し、これについて説明することと定めています。
さらに同法第37条では、宅地建物取引業者は、不動産取引契約を締結した際、相手方に必要事項を記載した契約書を書面で交付することとしています。
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● 借地借家法
借地借家法第22条では、存続期間を50年以上として借地権を設定する場合、契約の更新・延長がなく、買い取りの請求をしない旨を定めることを認めていますが、その際、特約として書面にすることを義務づけています。なお、この特約は公正証書などの方法により、書面化しなければなりません。[注2]
また、同法第38条では、期間の定めがある建物の賃貸借をする場合において、契約の更新がないこととする旨を定めるときは、公正証書などの書面による契約に限られることとしています。
1-2. 不動産賃貸借契約と不動産売買契約における書面の電子化の現状
前節で紹介した2つの法令を踏まえ、不動産賃貸借契約と不動産売買契約における書面の電子化の現状をまとめました。
● 不動産賃貸借契約の電子化の現状
不動産賃貸借契約を締結する場合、不動産賃貸借契約書と重要事項説明書を書面(紙)で作成し、賃借人に交付および説明する必要がありました。
上記2つの書類は、当時は電子化が認められていませんが、2019年10月から2022年実施された「賃貸取引における重要事項説明書等の書面の電子化に係る社会実験」に参加することで、一定条件のもと、賃貸取引における重要事項説明書等を電子化し、交付することが認められていました。[注3]
なお、重要事項に関する説明については、2017年10月から本格運用されており、テレビ電話などを活用して重要事項の説明が可能となっています。
一方、契約の更新や駐車場などの賃貸借契約については法律による規制がないため、現時点でも電子書面での交付が可能です。
● 不動産売買契約の電子化の現状
不動産売買契約を締結する場合、不動産売買契約書と重要事項説明書を書面(紙)で作成し、取引相手に交付および説明する必要がありました。
不動産売買契約における重要事項説明書の電子書面交付については、2021年3月から2022年5月17日まで行われた社会実験において、事業登録をおこなっている業者は一定条件のもと、重要事項説明書の電子書面交付が認められていました。[注3]
なお、重要事項に関する説明については、2021年3月より本格運用がおこなわれています。
不動産賃貸借契約および不動産売買契約の書面電子化に関する社会実験について、詳しくは後述します。
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2. 不動産取引の重要事項説明書の電子化へ向けた社会実験
国土交通省では、不動産取引の重要事項説明書の電子化に向けて、以前から社会実験をおこなっています。
社会実験の時期は不動産賃貸取引と不動産売買取引でそれぞれ異なっており、前者は2019年10月から、後者は2021年3月からそれぞれ実験を開始しています。[注3]
不動産賃貸取引における社会実験は当初3ヶ月間の予定でしたが、2020年に改定ガイドラインを策定し、同年9月には社会実験を継続しました。
7ヶ月間にわたって実験が実施され、検証検討会を経て、2021年3月からは「当面の間」続けることが決定されました。
同時に、不動産売買取引における重要事項説明書の電子書面交付に向けた社会実験がスタートし、社会実験参加事業者として登録をおこなった事業者のみ、重要事項説明書の電子書面交付が認められています。
ただし、実施方法はテレビ会議などを活用して相手方に重要事項を説明する「IT重説」をおこなうことが条件となっています。
重要事項の説明を実施している間は、以下4つの要件を満たすことが必須条件となっています。[注4]
宅地建物取引士証の提示
説明の相手方の本人確認
電子書面交付されたファイル(重要事項説明書等)の確認
電子書面交付による説明
なお、3つめのファイルについては説明の実施日までに、あらかじめ相手方に送付しておく必要があります。
さらに、重要事項説明書等の電子交付とIT重説について了承を得るために、同意書を作成し、これを取得しておくことも義務づけられています。なお同意書は電子化が可能です。
不動産取引(賃貸・売買)における「重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験」は、2021年3月から2022年5月17日まで実施されました。
同実験は、重要事項説明書等の電子交付導入の、事前準備として機能しました。
関連記事:IT重説とは?メリット・デメリットや実施方法を徹底解説
関連記事:不動産売買におけるIT重説のポイントをわかりやすく解説
3. 不動産取引の重要事項説明書が電子化するのはいつ?
宅建業法の改正を含むデジタル改革関連法は、2021年5月12日に成立し、同月19日に公布されました。
同法は2021年9月1日より施行されていますが、宅建業法改正を含む一部については2022年5月18日より施行されています。
そのため、2022年6月時点で不動産取引に必要な重要事項説明書や契約書を電子化し、交付することが可能となります。
書面の電子化および交付は、対面でもオンラインでも可能です。なお、オンラインで交付するにあたっては電子契約サービスやIT重説のためのテレビ会議システムなどの導入が必要です。
施行と同時に重要事項説明書等の電子交付を開始したい場合は、今のうちから電子契約サービスやテレビ会議システムなどの選定に取りかかることをおすすめします。
4. 重要事項説明書の電子交付は2022年の5月から
不動産取引に必要な重要事項説明書や契約書は電子化することが可能で、重要事項説明書の電子交付は、2022年5月に施行された宅建業法改正によって可能になりました。
不動産の賃貸取引や売買取引をおこなうにあたり、重要事項説明書や契約書の電子化を検討している方は、施行に向けて電子契約サービスやテレビ会議システムの導入など、必要な準備をおこなっておくことをおすすめします。
また、宅建業法の改正により、以下の書類も電子交付が可能になっております。
・ 媒介契約書(賃貸契約においては交わさない場合もあります)
・ 賃貸借契約書
・ 定期借地権設定契約書
・ 定期建物賃貸借契約書
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[注1]宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)|e-Gov法令検索
[注2]借地借家法(平成三年法律第九十号)|e-Gov法令検索
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