特定商取引法の改正ポイントや対応方法をわかりやすく解説
更新日: 2022.12.13
公開日: 2022.9.9
MEGURO
2022年6月1日に、改正特定商取引法が施行されました。この改正には、クーリング・オフ通知の電子化や通信販売における規制強化など、実務に影響を与える変更を含んでいます。
この記事では、2022年に行われた特定商取引法の改正について解説します。改正内容や対応方法を押さえて、法令を遵守したバックオフィス業務の遂行を目指しましょう。
関連記事:電子契約に関する法律を徹底解説|電子契約導入を検討している方向け
電子契約はコスト削減や業務効率の改善だけがメリットではありません。法的効力を持っていて、安全性が高いことをご存知でしょうか。契約締結や送信の履歴・証拠を残すという点でも、実は書面契約より使い勝手よく運用可能です。
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1. 特定商取引法の改正ポイント
特定商取引法とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守るために制定された法律です。
今回施行された改正案は、消費者が安心して商品やサービスを購入できるよう、取引の公正化を図るために制定されました。改正案は2021年6月9日に成立し、一部は2021年7月6日に施行されています。
それでは、今回の法改正ではどのようなことが変更になったのでしょうか。ここからは、2022年より変更になったポイントについて紹介します。
1-1. クーリング・オフ通知の電子化
クーリング・オフとは、一度契約の申込みや締結をしたあとでも、一定の期間内であれば無条件で契約のを撤回・解除できる制度です。訪問販売や電話勧誘販売では8日間、連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引では20日間のクーリング・オフ期間が設けられています。[注1]
従来、契約者などはクーリング・オフの申し出を書面によって行わなければいけませんでした。しかし、今回の法改正で「書面または電磁的記録」により契約の撤回・解除を申し出ることができるようになりました。[注2](特商法 第9条1項)
つまり、わざわざ書面を作成せずとも、メールやチャットアプリなどでクーリング・オフできるようになったということです。ほかにもWebサイトのお問い合わせフォーム、データを記録したUSBメモリ、FAXなど電子的記録を用いた方法であれば、幅広くクーリング・オフの申し出ができるようになりました。
なおクーリング・オフの効力が発生するのは、書面および電磁的記録を発した時点(事業者に郵送した・データを送信した時点)です。
1-2. 通信販売における規制強化
通信販売における規制強化は、いわゆる定期購入型のサービスで消費者が不利益を被ることを防ぐために制定されました。通信販売に関する規定は、定期購入商法を規制するために今回新設されましたが、結果として健全な通信販売事業者にも影響を与える内容となっています。
近年、定期的に商品が届く定期購入型のサービスが広まってきました。しかし、定期購入型のサービスでありながら、そのことを明示せずに消費者に購入させ、高額な解約金を請求する詐欺的な定期購入契約が増えてきています。今回の法改正では、こういった消費者にとって不利益となる取引を防止するために規制強化を実施しているのです。
今後、通信販売事業者は消費者が誤認しないように、通信販売の申込書面やECサイトの注文確認画面で以下の6つの条項を明記しなければいけません。[注3]
1. 分量
2. 販売価格・対価
3. 支払時期および支払方法
4. 引渡時期・移転時期・提供時期
5. 申込みの期間がある場合、その旨・その内容
6. 申込みの撤回・解除に関する事項
上記の表示内容に違反があったり不実の告知が合った場合は、消費者に契約を取り消す権利が発生します。それだけではなく、罰則が科されたり行政処分の対象になったりするため注意が必要です。
1-3. 行政処分の強化
今回の法改正では、各改正内容に違反した場合の行政処分の強化についても定められました。これにより立入検査権限が拡充され、業務停止・禁止命令の対象になる役員等の範囲が拡大されました。(第66条、第8条の2)
実務に大きな影響を与えるわけではありませんが、特定商取引法の規制に適合しない取引の罰則が強化されていることは押さえておきましょう。
2. 近年施行(予定)の特定商取引法改正の内容
2022年に施行された改正案以外にも、近年施行された、または施行予定の特定商取引法改正案は存在しています。そこで、ここでは2022年の法改正とともに押さえておきたい改正案の内容を2つ紹介します。
2-1. 送りつけ商法対策
送りつけ商法対策についての規制は、2021年7月6日に施行されました。送りつけ商法(ネガティブ・オプション)とは、注文していない商品を勝手に送りつけ、消費者が断わらなかった場合、購入したものとみなして代金を請求する商法のことです。
従来、送りつけ商法で送られてきた商品は、受領してから14日間保管しなければいけませんでした。しかし法改正により、消費者は贈られてきた商品を直ちに処分する事が可能となっています。[注4](第59条)
2-2. (施行日未定)事業者が交付すべき書面の電子化
近年、テレワークの普及により、業務のデジタル化が推進されています。それにともない、2021年公布の改正特定商取引法には、事業者が交付すべき書面の電子化についても盛り込まれました。
従来の特定商取引法では、事業者が交付すべき書面は紙で作成・交付することが定められていました。しかし、今後は消費者の承諾があれば電子データでの交付が可能となります。
ただし、書面の電子化は実務に与える影響が非常に大きいため、実際に施行する時期や今後の対応方法については明確に決定されていません。現在は検討会が行われており、今後くわしい施行時期が公表される予定です。
3. 特定商取引法の改正による業務への影響と対応方法
2022年およびその前後で実施される特定商取引法の法改正は、事業者に実務に多くの影響を与えます。法改正に応じた業務運営ができなければ、罰則の対象となってしまうため注意が必要です。
それでは、事業者は法改正にどう対応していけばいいのでしょうか。最後に、改正特定商取引法が業務に与える影響と対応方法を紹介します。
3-1. 電子書面通知・交付への対応
2022年に施行されたクーリング・オフ通知の電子化、および今後実施予定の交付書面の電子化により、業務のデジタル化は避けられない事態となりました。
「クーリング・オフの通知が電子データで送られてきたのに対応できない」「電子データでの書面交付ができない」といったトラブルは、事業者の信頼にかかわる問題です。そのため、事業者は早急に業務のデジタル化に対応する必要があります。
まずは、クーリング・オフ通知の電子化に対応できるよう、顧客との連絡ツールとなるメールやチャットツール、SNSなどの運用方法を見直す必要があります。また、今後実施される書面の電子交付に対応できるよう、電子契約システムの導入を検討しておくといいでしょう。
3-2. ECサイトの調整
ECサイトを運営している企業は、通信販売における規制強化に対応するために、サイトの調整を行わなければいけません。
具体的には、注文確定前の最終確認画面に6つの必要項目が明記されるように調整する必要があります。先述したように、以下の6つの項目については必ず明記することが求められるため、現在表示していない内容があれば追加しておきましょう。
・分量
・販売価格・対価
・支払時期および支払方法
・引渡時期・移転時期・提供時期
・申込みの期間がある場合、その旨・その内容
・申込みの撤回・解除に関する事項
また、消費者を誤認させるおそれがある表示が禁止されていることについても注意が必要です。
誤認させるかどうかは、「表示事項が記載されている表示の位置、形式、大きさ及び色調等を総合的に考慮して判断する」とされています。たとえ明示されていても、「文字が小さくて注意しないと読めない」「色が薄くて読みにくい」という場合、自社にとって不利な判断をされる可能性があることを押さえておきましょう。
4. 特定商取引法改正の内容を押さえて適切な業務を
2022年6月1日より、改正特定商取引法が施行されました。変更点は複数ありますが、とくに「クーリング・オフ通知の電子化」「通信販売における規制強化」といった大きな2つの変更は事業者に多大な影響を与えています。
施行時期は未定ですが、事業者が公布すべき書面の電子化も今後進められていく予定です。法改正に対応するためにも、早いうちから業務のデジタル化や電子契約システムの導入を検討しておくことが大切です。
[注1]特定商取引法におけるクーリング・オフができる取引と期間|独立行政法人 国民生活センター
[注2]特定商取引法|e-Gov法令検索
[注3]令和3年特定商取引法・預託法等改正に係る令和4年6月1日施行に向けた事業者説明会|消費者庁取引対策課
電子契約はコスト削減や業務効率の改善だけがメリットではありません。法的効力を持っていて、安全性が高いことをご存知でしょうか。契約締結や送信の履歴・証拠を残すという点でも、実は書面契約より使い勝手よく運用可能です。
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