360度評価を成功させるには?失敗の原因や成功させるコツを解説
更新日: 2024.5.29
公開日: 2023.3.2
OHSUGI
人事評価制度は、生産性や従業員のモチベーションの向上に繋がる重要な要素のひとつです。立場を問わずさまざまな視点から評価をおこなう360度評価は、従来の人事評価とは異なったメリットがあり、昨今注目を集めています。
しかし、失敗のリスクもあるため、十分に熟知していなければいけません。本記事では、360度評価で失敗する原因についてや、成功させるポイントを徹底解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 360度評価で失敗する原因
360度評価は、立場を問わずさまざまな人物から特定の従業員に対して評価をおこなう制度です。一部の人事評価担当者が評価をする従来の制度とは異なる手法であり、それゆえに失敗する原因もいくつか想定されます。1つずつ詳しく見ていきましょう。
1-1. 実施の目的が理解されていない
360度評価では、評価を立場の人が非常に多くなるのが特徴です。そのため、それぞれが実施する目的を正しく理解していないと失敗してしまいます。これは、目的に基づいた評価、およびフィードバックが360度評価をするうえで非常に重要でだからです。
たとえば、従業員のスキルアップを目的としたケースを想定してみましょう。この場合、理想的なフィードバックとしては、業務を行ううえで見えてきた現状の能力に対する弱点の克服案を見つけることが重要です。「早退が多い」「メールのレスポンスが遅い」など、このような指摘はまったく的を射ておらず、評価する意味をなさなくなってしまいます。
1-2. 業績評価や人事考課にまで取り入れてしまう
360度評価によってさまざまな視点から評価やデータが得られるからといって、それらを業績評価や人事考課にまで取り入れてしまうのは望ましくありません。
これらに360度評価を取り入れると、他人に対して良い評価をすることで、「自分の評価も上がるだろう」「あいつは嫌いなやつだから評価を下げてやろう」などといった実態に則さないフィードバックが起こる可能性があります。
1-3. 内容が複雑で業務負担が増えてしまう
360度評価は、従来の人事評価とは異なり、上司や同僚、部下など、ほとんどの従業員が評価制度の担当者になります。通常の業務をこなしながら評価もしないといけません。評価をするにあたって設問を多く設けすぎると、作業そのものが負担に感じられてしまい、流れ作業的に取り組む従業員が出てきてしまう可能性があります。
そうなれば当然、目的に基づいた理想的な結果は得られないでしょう。かといって設問が少なすぎてもいけません。煩わしくない程度で、真剣に取り組めて、それなりに結果も得られるような設問をつくることが大切です。
1-4. フィードバックやフォローが足りていない
評価制度は、ただ評価を下してフィードバックをするだけで終わりではありません。その内容を踏まえて、次にどういったアクションを取るのかが極めて重要です。
360度評価でフィードバックの後には、振り返り面談を必ずするようにしましょう。また、受けた評価をPCDAサイクルで管理することも大切です。
2. 360度評価で失敗するとどうなる?
360度評価の失敗は、ただ「実施した制度が失敗しただけ」では済まない事態に発展する恐れがあります。どういった結果が想定できるのか、2つのパターンを見ていきましょう。
2-1. 従業員のモチベーションが低下する
実施にあたって十分な説明がされていなかったために、目的に基づかない的外れな評価がされてしまうケースがあります。ほかにも、自分本意で主観的な判断のみで評価されてしまうケースもあるでしょう。
こういった事情のもとで下された評価は、適切なものとは言いにくいです。しかし、評価をされる側はその評価が適性ではないことを知らないまま、結果を受け取ってしまうことになります。「低い評価を得た」という事実だけが突き付けられ、人によっては深刻なモチベーション低下を引き起こす恐れがあります。
あまりにも酷ければ、単にモチベーションが低下するだけでなく、休職や退職に至る可能性も出てくるでしょう。
2-2. コミュニケーション不全に陥る
360度評価は、立場を問わずさまざまな人物からフィードバックを受けつつ、自らも評価をするのがポイントです。成功させるための鍵として、従業員たちが自分の立場を置いて客観的な評価を下せることが必要となります。
しかし、なかには高い評価を得たいがために、余計なことはしないようにしようという思考に陥りやすくなる罠があります。「人に悪い評価をしたために自分も同様に評価を下げられるのではないか」「部下に嫌われたくないから悪い評価はつけないようにしよう」といった思惑が働いてしまうと、その評価制度は適切なものとは言えなくなるでしょう。
それが原因で忖度が当たり前になり、そのためにコミュニケーションが減ってフィードバックが得られなくなってしまうこともあるでしょう。
3. 360度評価の失敗事例
360度評価を成功させるために、どのような失敗があるのか一例を知っておきましょう。よくある失敗例を3つ紹介します。
3-1. 人間関係が悪化してしまった
360度評価では従業員同士が互いに評価をし合うことになるため、評価内容を意識しすぎてしまうケースがあります。本音を言い合えず、人間関係が希薄になるかもしれません。
また、悪い評価を受けた際にフィードバックが足りないと、評価された側は疑問や不満のみを抱えることになります。自分が改善すべき点を見つけられないままだと、「悪い評価をされた」という印象だけが残るため、人間関係の悪化を招くでしょう。
こうした人間関係の悪化は長期化するほど根が深くなり、改善が難しくなります。
3-2. 個人や部署内のモチベーションが低下した
前述したような人間関係の悪化は、個人や部署内のモチベーション低下につながります。
また、納得のいかない評価が続くと360度評価そのものの意義や透明性に疑問を持つ人も現れ、評価制度そのものに対するモチベーションも下がります。「不要なもの」と思われてしまうと、評価する側になった際も適正な内容にならず、それに不満を持つ人が現れ、モチベーションが低下し…とマイナスの連鎖が生まれてしまうでしょう。
3-3. 費用や業務負担の割に効果が薄い
360度評価は多角的に個人を評価できるメリットがありますが、業務負担は少なくありません。
特に設問数が多かったり、評価システムが使いにくかったりする場合は、評価に多くの時間を費やすことになり、コア業務を圧迫することになります。
加えて評価結果の分析やフィードバックなど、評価そのもの以外の業務もあるため、担当者の業務負担が大きくなります。
しかし、設問が適正でなかったり、評価者の理解が十分でなかったりした場合は、こうした業務負担の割に効果があまりでないという結果を招きます。
4. 360度評価を成功させるポイント
360度評価が失敗する原因やそれによって起こりうる事態は、防ぐことが可能です。360度評価を成功させるポイントを4つみていきましょう。
4-1. 目的とガイドラインを明確にする
ほとんどの従業員が評価を下す当事者として関わる評価制度だからこそ、フィードバックを有意義なものとするために目的やガイドラインを取り決めておきましょう。また、その周知も重要です。
目的としては、業務に対して取り組む際の姿勢改善であったり、シンプルに従業員のスキル向上であったりするでしょう。また、実施するうえで、評価方法や期間、注意点といったガイドラインを定めることも大切です。
目的やガイドラインが固まったら、携わる全員がしっかりと理解してくれるように説明の場を設けましょう。
4-2. スケジュールを細かく決めておく
360度評価は少数で実施するものではなく、それぞれでフィードバックをおこない、その後の振り返り面談までします。携わる人が多いほど、一連の流れがスムーズに進むようにスケジュールを細かく決めておくことが大切です。
実際に行う際の工程のモデルとして、以下を参考にしてください。
- 制度について詳しく説明する場を設ける
- 評価を集計する
- 個人でフィードバックをする
- 振り返り面談をおこなう(さらに個々人の改善点のためにPCDAサイクルを考える)
4-3. 十分な結果が得られる設問作りを考える
360度評価を導入すると、ほとんどの従業員は通常の業務に加えて人事評価の作業もする必要が出てきます。作業量が多くなるとその分負担に感じられてしまうかもしれません。かといって業務負担を考えて設問数を減らしすぎると、そもそも評価をする意味がなくなってしまうでしょう。十分な結果が得られる設問作りが重要です。
最適な量の目安としては、1人あたり15分程度で書き終わる程度で作るようにしましょう。また、選択形式の設問については30問ほどが最適です。フリーコメントは時間がかかるため、あっても1〜2問程度がおすすめです。
4-4. 十分なアフターフォローをおこなう
360度評価を実施する際は、実施後の面談やフィードバックなどのアフターフォローまでを入れて計画を練りましょう。
評価をするだけで終わってしまうと、評価された側が抱えた不満や疑問がそのまま放置されてしまいます。それでは評価する意味がなく、評価された人にとってマイナスにしかなりません。
そうした事態を引き起こさないためには、十分なアフターフォローが大切です。
5. 失敗ばかりを考えずに360度評価を効果的に取り入れよう
360度評価の実施によって、これまでの評価制度では得られなかった効果が期待できる一方で、失敗によるリスクはどうしても生じてしまいます。失敗すると、社内のコミュニケーション不全やモチベーションの低下といった、取り返しのつかない事態に至ってしまうかもしれません。
失敗の原因をあらかじめ押さえておき、成功に導けるようにしましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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