職務評価とは?具体的な評価手法や評価項目を詳しく解説
更新日: 2024.5.22
公開日: 2023.5.25
OHSUGI
職務評価は、同一労働同一賃金の実現に役立つ人事評価方法とされている評価制度です。職務評価では、従業員の職務が会社にとってどの程度重要か、専門性は必要かなど人材そのものではなく「職務の大きさ」により評価します。つまり、パートだから職務が小さい、管理職だから職務が大きいという尺度ではないので、多様な働き方の実現と雇用形態による格差の是正に役立つといえます。
本記事では、職務評価とはどのような制度なのか、評価手法や評価項目なども詳しく解説していきます。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 職務評価とは?
職務評価とは、職務の大きさを比較し評価する方法です。具体的には、会社にとっての重要性で業務内容を分類したり、構成要素別にレベルを設定・分類して、職務の客観的な価値や報酬が適切かどうかを定めます。
職務評価の手法にはいくつかの種類がありますが、基本となるのは「要素比較法」です。要素比較法では、以下の構成要素をもとに評価をおこないます。
- 評価項目
- ウェイト
- スケール
これらの構成要素は、他の評価手法でも必要になるので内容をしっかりと把握しておきましょう。
1-1. 評価項目
職務の構成要素を評価項目といい、企業にとっての必要性や、職務をおこなう上で社員に求められる要素を表したものです。職務評価は仕事の大きさで評価を決めるため、単に業務内容で評価するのではなく、「専門性」や「経営への影響度」などさまざまな項目を細かく設定しておく必要があります。
評価項目ごとに、ウエイトやスケールの点数から評価結果となる「ポイント」を算出するので、業務や職種に合わせて設定しましょう。
*評価項目の詳細は「4. 職務評価の評価項目」で詳しく解説します。
1-2. ウェイト
ウエイトというのは、会社における評価項目の重要度です。たとえば、同じ「専門性」でも、法律事務所かサービス業かなど、業種により重要度はまったく異なるのが「ウエイト」の特徴です。
ウェイトが大きい構成要素は企業にとっても重要ということになるので、特に重要な項目では数値を大きく設定するのが一般的です。
1-3. スケール
スケールというのは、構成要素を評価するときのレベルや尺度を表わす数値です。例えば、5段階や10段階などに評価を分け、該当する程度が大きいほど高い点数をつけます。ただし、振り幅を大きくしてしまうと、評価が真ん中に集中しやすくなってしまい適切な数値が出せないことがあります。
このような評価を回避するために、4段階評価など中心がないスケールを設ける会社も増えています。ただし、あまりスケールを狭めてしまうと、職務の大きさの差別化がしづらいため注意しましょう。
職務評価では、これらの評価項目における点数が決まり、全ての点数を合計したものが職務の大きさということになります。
2. 職務評価の導入目的
職務評価は、多様な働き方の実現に向け、厚生労働省が導入を支持している方法です。とくに、職務評価は人材そのものではなく、職務を大きさや価値により評価するため、同一労働同一賃金の実現に役立つと考えられています。
改正されたパートタイム・有期雇用労働法では、同一企業内における正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けることを禁止しています。[注1]
また、事業主は従業員から待遇差の説明を求められた場合、説明に応じる義務を負います。
職務評価は責任や重要度など、職務そのものの大きさを比較するため、正社員と非正規雇用労働者に不合理な格差を設けていないか確認するうえで役立ちます。確認の結果格差があれば是正し、働き方の多様化を進めることが目的です。
[注1]「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要1 (短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)|厚生労働省
3. 職務評価の評価手法
職務評価は4つの方法が代表的です。
簡単に導入できるものもあれば、職務の詳細な分類が必要なものもあり、それぞれメリット・デメリットがあります。導入を検討する際はよく確認し検討しましょう。
3-1. 序列法(単純比較法)
序列法、または単純比較法では「営業職」「事務職」など、職務を1対1で単純に比較し、企業が重視する順に評価し序列を決めています。職務を要素に分解するなど、細かな作業が不要なため、簡単に導入できるのがメリットです。
しかし簡単な反面、職務の違いの細かな把握はできないため、説明を求められたときも従業員を納得させることは難しいというのがデメリットといえるでしょう。また、下位に序列された職務の社員からは反発が上がる恐れもあります。
3-2. 分類法
社内で基準となる職務を選び、分析をおこなった上で「職務レベル」をA・B・Cなどの段階を分けて設定します。次に、「人事」や「法務」など、職務単位でレベルを確認し、それぞれ分類していきます。
たとえば、Aランクは人事、Bランクは法務などとなります。分類法では同じランクの職務を設定してもよいため、社員から不満が出にくい点がメリットです。
しかし、ランクを付けるにあたり基準を設ける必要があり、さらに、やり方によっては同じランクに職務が集中する可能性があるのがデメリットです。
3-3. 要素比較法
要素比較法では、職務を構成要素に分解し、さらに要素別にレベル(A・B・C)も設定する方法です。構成要素では職務にどのような条件が求められるかにより設定します。
例えば、構成要素が経営への影響・専門性とする場合、営業職はA・B、経理職はB・Aなどとします。比較した結果、会社にとって重要度(ウェイト)の高い要素で高レベルの結果が多い(例:専門性A)ほど、職務が大きいと判断します。
上記の場合、経理職のほうが営業職よりも大きな職務となります。要素比較法ではより詳細な比較が可能であり、客観性も確保しやすくなるのがメリットです。
しかし、評価にウェイトを使うため複雑になりやすいというデメリットがあります。
3-4. 要素別点数法
要素別点数法では、要素比較法と同様に職務を構成要素に分解しレベルを設定し比較します。要素比較法と異なる点は各要素をA・B・Cと評価するのではなく、5点・3点・1点のように点数で評価する点です。
また、職務の大きさはウェイトではなく、合計点により比較します。
例えば、営業職の構成要素が5点・1点・3点の合計9点、人事職の構成要素が3点・3点・3点の合計9点の場合、どちらも同じ大きさの職務と判断します。なお実際の計算では評価項目ごとに「ウェイト」と「スケール」を掛けて点数を算出します。詳細は次章で解説します。
この手法は各要素を数値化するため、客観性や公平性を確保しやすいのがメリットです。しかし、職務一つひとつを分析する必要があるため、導入には手間もコストもかかることがデメリットです。
4. 職務評価の評価項目
職務評価で点数法や要素比較法などを採用する場合には、基準となる評価項目を決めなければなりません。項目に関しては、業務内容や責任の重要度、スキルの高さなど、会社の方針や職種でどういった要件が必要なのかによって設定していくのが一般的です。
職務評価の評価項目に決まりはなく、自社で自由に設定しても問題ありません。しかし、たたき台がないと難しいという場合は、厚生労働省の提示する以下の7つの項目を活用するとよいでしょう。[注2]
[注2]多様な働き方の実現応援サイト 職務分類・職務評価|厚生労働省
項目 | 内容 |
人材代替性 | 新規採用や社内の配置転換により、代わりの人材を探せるか否かで評価します。簡単に探せる場合職務の大きさは小さく、難航する場合は大きいと評価します。 |
革新性 | 新しいアイデアが必要な職務かどうかにより判断します。現在の方法をそのまま用いられる職務は小さく、これまでとは異なる手法が求められる職務は大きいと評価します。 |
専門性 | 該当する職務に高い専門性が必要か否か、また、その職務の分野も専門性が必要か評価します。たとえば、税務や法務のような職務であれば、職務だけでなく分野の専門性も必要なため、職務は大きいと評価されます。 |
裁量性 | 社員の決定がどの程度責任をともなうかで評価します。決定が社内全体に影響を及ぼす場合大きい職務となり、そもそも決定権のない職務であれば低いと判断します。 |
対人関係の複雑さ | 対人関係の複雑さは部門内と部門外に分けて評価します。どちらの場合も、交渉や折衝・調整作業が多ければ大きいと判断し、調整作業がほとんどなければ小さいと判断します。 |
問題解決の困難度 | マニュアルなど、既存の方法を使って問題を解決できる場合は小さいと判断します。一方、既存の方法が存在せず、最初から新しい解決方法が必要な場合、職務は大きくなります。 |
経営への影響度 | 経営への影響度の大小により評価します。なお、それぞれの職務が経営にどの程度影響するかは業種・業界によっても異なります。そのため、他の評価項目と比べ、会社により違いの現れやすい項目です。 |
5. 職務評価と職務等級制度の違い
職務評価と似たような言葉で、「職務等級制度」というものがあります。職務評価も職務等級制度も、従業員の働きを評価して適切な報酬を付与する制度ですが、評価や報酬決定までのプロセスが異なります。
職務評価は、職務の大きさに基づいて評価をおこない、その結果によって昇進や昇給などの報酬を付与します。一方、職務等級制度は、職務を定義する「職務記述書」に基づいて等級を決定します。
つまり、職務評価は評価によって報酬を決定しますが、職務等級制度は等級によって報酬が決定するというのが一番の違いになります。職務評価においても「昇進」という報酬はありますが、原則として昇進するのは評価結果が出た後です。職務等級制度では、職務の大きさに応じて等級を決定するため、社内の序列化を構築できるというのが職務評価との違いといえるでしょう。
「従業員を適切に評価する」という目的は同じであっても、このような違いがあるので、職務評価を実施する会社もあれば、職務評価と職務等級制度の両方を導入している会社があるのです。
6. 職務評価は多様な働き方の実現に役立つ
職務評価とは、会社にとっての重要度など職務の大きさにより、人材を評価する方法です。職務評価の活用により、賃金を雇用形態や勤務年数などではなく、実際の職務の内容により評価できるため、同一労働同一賃金の実現にも役立ちます。
ただし、職務評価の導入方法によっては確認事項が多くなり手間もかかります。そのため、導入や運用にあたり担当者の業務負担が増えてしまう可能性もあるので、担当者従業員のサポートも必要です。厚生労働省では、職務評価に関する参考資料を多数用意しているので、多用な働き方の実現のためにも活用するとよいでしょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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