従業員名簿とは?必須項目・書き方や保管期間・方法を解説
更新日: 2025.6.13 公開日: 2024.11.7 jinjer Blog 編集部

従業員名簿(労働者名簿)とは、従業員の個人情報を管理するための書類です。労働基準法により作成・保管が義務づけられています。企業の人事・労務を担当するなら理解が必須といえるでしょう。
本記事では、従業員名簿の必須項目や書き方を解説します。また、保管期間や保管方法、注意点もまとめました。最後まで読めば従業員名簿の理解を深められるため、ぜひ参考にしてください。
目次
その人事データ、ただ入力するだけで終わっていませんか?
勤怠、給与、評価…それぞれのシステムに散在する従業員データを一つに集約し、「戦略人事」に活用する企業が増えています。
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1. 従業員名簿(労働者名簿)とは?


従業員名簿とは、労働者名簿ともよばれ、労働基準法で作成が義務づけられている書類の一つです。ここでは、従業員名簿の定義や対象者について詳しく紹介します。
1-1. 従業員名簿とは従業員の情報管理のための書類
従業員名簿とは、企業が従業員の情報を管理できるよう作成する書類です。以下のような基本情報が一覧になっています。
- 従業員の氏名
- 生年月日
- 住所
- 雇用形態
- 職種
従業員名簿は、企業規模や形態に関係なく、従業員を1人でも雇用していれば作成義務が生じます。法人化していない個人事業主でも、従業員を雇用しているなら作成が必要です。
従業員の情報を従業員名簿で整理しておくことで、いつでも迅速に情報を収集できます。
1-2. 従業員名簿は「法定三帳簿」の一つ
従業員名簿は、労働基準法第107条により作成が義務づけられている「法定三帳簿」の一つです。法定三帳簿には、従業員名簿のほかに以下の2つがあります。
| 賃金台帳 | 企業が従業員に支払う賃金や勤務時間を記録する帳簿 |
| 出勤簿 | 従業員の労働時間や出退勤を記録する帳簿 |
法定三帳簿は、保存を怠ると法的な罰則が科される恐れもあります。適切に作成・保存するよう努め、労働基準法を遵守することが大切です。
関連記事:法定三帳簿とは何?記載事項や保存期間・作成しない場合の罰則を解説
1-3. 雇用しているすべての従業員が対象
従業員名簿は、基本的に雇用しているすべての従業員が対象です。以下の雇用形態を問わずすべての労働者が含まれます。
- 正社員
- 契約社員
- パートタイム
- アルバイト
ただし、役員や家族従業員は対象外です。また、労働基準法上の労働者に該当しない個人事業主・フリーランスなども、従業員名簿の対象者に含まれません。
派遣労働者は、派遣元企業が作成・管理をすることが原則です。派遣先企業には作成や管理義務はないため注意しましょう。
なお、在籍出向中の従業員は、出向元と出向先の両企業で労働者名簿を作成する義務があります。ただ、移籍出向中の従業員の場合、記載義務は出向先の企業のみになる点に気をつけてください。
従業員名簿の対象者は、労働契約の形態や雇用関係に応じて異なるため、適切に判断して作成しましょう。
(労働者名簿)
第百七条 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
② 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
2. 従業員名簿の書き方と必要項目


従業員名簿の必須項目は、以下の9つです(労働基準法第107条、労働基準法施行規則第53条)。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 履歴
- 従事する業務の種類
- 雇入れ年月日
- 退職年月日とその事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)
- 死亡年月日とその事由
また、必須ではないものの、企業の人事管理や労務管理を円滑に進めるために、以下の情報を加筆することも可能です。
- 連絡先(電話番号・メールアドレス)
- 所属部署・役職
- 緊急連絡先
- 社会保険の加入状況
- 資格・免許 など
企業の規模や業種に応じて、柔軟に設定しましょう。ここからは、従業員名簿の必須項目とその書き方について詳しく紹介します。
2-1. 氏名・生年月日・性別
企業に在籍する従業員の氏名・生年月日・性別を記入します。
氏名は、正式な漢字表記で記載しましょう。ふりがなを添えておくと、読みが難しい場合もすぐに判断できます。
在籍中に結婚や離婚などで氏名が変わった場合は、その都度従業員名簿の氏名も変更が必要です。結婚後に旧姓を使用している場合も、戸籍上の氏名を記入しましょう。
生年月日は、年・月・日の順に記入します。正確な年齢を把握するために必要なので、間違えて記入しないよう注意が必要です。
従業員名簿の氏名・生年月日・性別の項目は、個人の特定や労働条件の設定に利用するため、正確でかつ最新の状態で管理しましょう。
2-2. 住所
従業員が現在居住している住所を記入します。具体的には以下のとおりです。
- 郵便番号
- 都道府県
- 市区町村
- 番地
- 建物名
- 部屋番号
住所情報は、通勤手当の計算や緊急連絡時に使用されます。手当の支給額に影響するため、間違いがないように注意しましょう。
なお、従業員の居住地に変更があった場合は、従業員名簿も速やかに更新が必要です。
2-3. 履歴
履歴の項目に記載する内容は法的に明示されていません。基本的には、従業員の過去の職歴や学歴のほか、異動や昇進などの情報を記入します。
新たに異動や昇進が発生した際は、その都度更新しましょう。職務配置やキャリアプランの策定に重要な情報のため、更新を忘れないよう注意が必要です。
2-4. 従事する業務の種類
現在、従業員がどのような職務に従事しているかを記入します。「人事」「営業」「広報」など、企業内での役割や業務内容がわかるよう具体的な職務内容や役職、部署名などを記入しましょう。
業務内容の変更があった場合は、速やかに名簿を更新し、最新の情報を反映させることが重要です。あわせて「履歴」の項目も変更することを忘れないようにしましょう。
なお、労働基準法施行規則第53条に基づき、従業員数が常時30人未満の労働者を使用する事業については、「従事する業務の種類」の記入を省略できます。
第五十三条 法第百七条第一項の労働者名簿(様式第十九号)に記入しなければならない事項は、同条同項に規定するもののほか、次に掲げるものとする。
(省略)
三 従事する業務の種類
(省略)
② 常時三十人未満の労働者を使用する事業においては、前項第三号に掲げる事項を記入することを要しない。
2-5. 雇入れ年月日
従業員が会社に入社した年・月・日を記入します。労働条件や福利厚生の適用開始日を決定する際に使用されるため、間違いがないよう正確に記入しましょう。
なお、従業員の採用が確定した日ではなく、雇用関係が開始した日付を記入する点に注意が必要です。
2-6. 退職年月日とその事由
従業員の退職が解雇の場合は、従業員が会社を離れた年・月・日とその理由を明記します。退職に伴う手続きや退職金の計算、後任者の選定などを円滑に実施するために、正確に記入しましょう。
退職理由は、労働契約の解除に関する重要な情報です。後々になってトラブルに発展しないよう、正しく客観的に記入しましょう。
2-7. 死亡年月日とその事由
就業中に従業員が死亡した場合は、死亡した年・月・日とその理由を明確に記入します。労働契約の終了手続きや遺族への対応、保険金の支払い手続きなどに必要なため、間違いがないよう記入しましょう。
とくに死亡理由は、労働災害に該当するかどうかを決定する際に重要です。事実を確認し、具体的に記入してください。
2-8. 従業員名簿のひな形・テンプレート
引用:労働者名簿|厚生労働省
従業員名簿には、記載しなければならない必須項目が定められています。自社でゼロから作成しようとすると、時間や手間がかかるだけでなく、抜け・漏れが発生し、トラブルにつながる恐れもあります。
そのため、厚生労働省が提供する従業員名簿のひな形・テンプレートを活用するのがおすすめです。厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」から、上記以外の従業員名簿のフォーマットをダウンロードすることもできます。自社のニーズにあわせてテンプレートをカスタマイズし、スムーズに従業員名簿を作成しましょう。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省
3. 従業員名簿が求められる場面


従業員名簿が求められるのは、主に以下の2つの場面です。
- 企業の人事・労務管理
- 行政機関による調査
それぞれ、具体的に解説します。
3-1. 企業の人事・労務管理
従業員名簿は、企業の人事や労務管理にて、従業員の情報を管理する際に使用することが多いです。具体的な場面として以下が挙げられます。
- 従業員の個人情報の確認
- 労働保険や社会保険の手続き
- 従業員の部署異動や昇進
従業員の個人情報を確認するのは、通勤費の支給に際して通勤経路を確認するときや、緊急時の連絡先を把握するときなどです。
また、従業員名簿に記載されている従業員の情報は、労働保険や社会保険の手続きの際に申請内容の正当性を証明する資料として役立つでしょう。
従業員の部署異動や昇進などの際は、これまでの履歴を確認することで、本人の実績や要望を踏まえたより適切な人材配置が可能です。
3-2. 行政機関による調査
従業員名簿は、年金事務所や労働基準監督署などの行政機関による調査の際に提出が要求される書類の一つです。
例えば、労働基準監督署の臨検監督では、労働時間や賃金の適正性を確認するために使用されます。出勤簿や賃金台帳とともに提出が必要です。
さらに、年金事務所やハローワーク、労働基準監督署による調査の際も必須です。主に、社会保険料や労働保険料の納付状況を確認するために使用されます。
上記のような行政調査に備え、必要な情報は漏れなく記載しましょう。また、調査の際にすぐに提出できるよう、保管場所を明確に定め、管理ルールを整備するなどの工夫をして保管することが大切です。
関連記事:労働基準法第109条規定の労働者名簿の正しい取り扱い方や保存について
4. 従業員名簿の保存期間


従業員名簿には、記載事項だけでなく、保存期間についても決まりがあります。ここでは、従業員名簿の保存期間のルールについて詳しく紹介します。
4-1. 従業員名簿の保存期間は5年間(当分の間は3年間)
従業員名簿は、労働基準法第109条により、5年間の保存が義務づけられています。2020年までは3年間でしたが、法改正により現在は5年間に延長されました。
ただし、労働基準法第109条には経過措置が設けられており、当分の間は5年間でなく、3年間の保存でも問題ありません。しかし、経過措置はいつ終了するか未定なので、可能な限り5年間保存できるように整備しましょう。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
4-2. 保存期間の起算日は「退職日」
従業員名簿は5年間(当面の間は3年間)の保存が必要です。その起算日は、労働基準法施行規則第56条に定められており、労働者の退職や解雇、死亡の日です。入社日や名簿作成日から起算するわけではないので注意しましょう。
第五十六条 法第百九条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。
一 労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日
(省略)
5. 従業員名簿の保管方法


従業員名簿は正しい保管期間で適切に管理する必要があります。ここでは、従業員名簿の保管方法について詳しく紹介します。
5-1. 事業場ごとに保管する必要がある
従業員名簿は、事業場(事業所)ごとに保管しなければなりません。各事業所がそれぞれ従業員情報を管理することで、労働条件の適正な管理と労働者の保護を図るためです。
なお、事業場とは、支社や営業所、工場など、業務が実施される場所のことです。事業所が複数ある企業の場合、本社で一括して保管するのではなく、各事業所の責任者が名簿の管理を徹底しましょう。
5-2. 従業員名簿は電子化することも可能
従業員名簿の保管方法は、法律による明確な定めがありません。紙媒体と電子媒体のどちらでも保管ができます。
近年は、業務のペーパーレス化が普及していることもあり、電子データでの保管が主流です。保管場所を必要としないうえ、情報の検索や更新が簡単にできるため、効率的に管理できます。ただし、電子化して保管する場合は、下記の4要件を遵守することが重要です。
- 法令で定められた要件を具備し、かつそれを画面上に表示し印字することができること。
- 労働基準監督官の臨検時等、直ちに必要事項が明らかにされ、提出し得るシステムとなっていること。
- 誤って消去されないこと。
- 長期にわたって保存できること。
閲覧・提出が必要な場合に備えて、すぐに写しを提出できるように準備しておくことが大切です。
6. 従業員名簿を作成・管理する際の注意点やポイント


従業員名簿を正しく作成し、保存することは企業の義務です。ここでは、従業員名簿を作成・管理する際の注意点やポイントについて詳しく紹介します。
6-1. 日雇い労働者は従業員名簿の管理義務がない
日雇い労働者は、労働基準法第107条により従業員名簿の作成・管理義務が免除されています。
ただし、法定三帳簿の一つである賃金台帳の作成は、日雇い労働者についても義務づけられています。また、雇用期間が1ヵ月を超えるかどうかで、記載事項(賃金計算期間)の必要性も変わってくるので注意しましょう。
関連記事:賃金台帳はアルバイトでも必要なの?項目と書き方を解説
6-2. 個人情報保護法に従い適切に管理する
従業員名簿には、氏名や住所、連絡先などの個人情報が含まれるため、個人情報保護法に基づいた適切な管理が求められています。
従業員名簿を作成するために従業員の情報を収集する際は、従業員の同意を得ることはもちろん、利用目的を明確にしましょう。
また、名簿の保管場所やアクセス権限を厳格に管理し、情報漏洩を防止するためのセキュリティ対策を講じることが重要です。
個人情報の取り扱いに関する社内規定を整備したり、従業員に教育を実施したりと、情報管理の意識を高めるよう心がけましょう。
6-3. 内容に変更がある場合は速やかに更新する
労働基準法第107条により、従業員名簿の内容に変更が発生した場合、遅滞なく従業員名簿の更新をすることが義務づけられています。
更新が遅れると、緊急時の連絡や給与計算などに支障をきたす恐れがあるため注意が必要です。従業員の住所変更や部署異動、役職の変更などがあった場合は、早めに更新しましょう。
また、更新作業を漏れなく効率的におこなうために、事前に情報確認の仕組みを設け、担当者を決めておくことをおすすめします。
なお、従業員名簿を正しく作成・更新しなかったり、適切な期間保存していなかったりすると、労働基準法違反になり、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあるので気をつけて管理をおこないましょう。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 (省略)、又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者
(省略)
7. 従業員名簿を適切に管理して信頼性を高めよう


従業員名簿(労働者名簿)は、労働基準法により作成が義務づけられている重要な書類です。1人でも従業員を雇用しているなら作成する必要があるため、必須項目や書き方を見落としなく確認しましょう。
また、事業所ごとに作成が求められている点や、内容に変更があった場合は速やかに変更が必要な点にも注意が必要です。適切に管理して、法令遵守に努めましょう。



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