人材育成方針とは?策定の必要性や流れなどを解説
更新日: 2025.11.21 公開日: 2025.4.14 jinjer Blog 編集部

人材育成方針は、企業が持続的に成長していくうえで欠かせない重要な指針であり、従業員に望む理想の人物像を定義し、従業員が理想像に近づく・達するまでの取り組みを定めたものです。
しかし、重要だとわかっていても、管理者にも従業員にも日々の業務があるため、「人材育成」という取り組みを新たに導入することにためらう企業は少なくないようです。確かに、新たな取り組みをするとなると、業務に支障が生じるかもしれません。ですが、従業員の成長は企業の成長に直接関係することなので、長期的な視点でみればすぐにでも取り掛かるべき施策です。
本記事では、人材育成方針とは何か、また策定する目的や必要性、実際の策定手順や運用のポイントについてわかりやすく解説します。
目次
人的資本の情報開示が義務化されたことで人的資本経営への注目が高まっており、今後はより一層、人的資本への投資が必要になるでしょう。
こういった背景の一方で、「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も、多くいらっしゃるのが事実です。
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1. 企業における人材育成方針とは

企業における人材育成方針とは、自社の従業員に望む理想の人物像を定義し、従業員が理想像に至るまでの取り組みについて定めたものです。
方針が固まると従業員が共通認識のもと検討するため、人材育成の具体的な施策の検討・立案が容易になります。評価や配置などの関連業務との連携を検討する際にも、スムーズな決定を望めるでしょう。
方針の策定後も定期的に効果を検証し、環境や状況の変化に応じて内容を見直す企業が多く見受けられます。
ただし、有価証券報告書を提出する上場企業を除き、法律によって義務化されていないため、策定するかどうかは各企業の自由です。
1-1. 人材育成・確保に関する国の基本方針指針
国の人材育成・確保に関する基本方針指針とは、地方公共団体の人材育成の基本方針策定において留意・検討すべき点を総務省がまとめたものです。
もともとは地方分権が推進されるなか1997年に策定されましたが、2023年12月に名称を変更した新たな指針が策定されました。新指針への改正理由は以下のとおりです。
- 価値観の多様化やデジタル化社会の推進など、地方公共団体を取り巻く状況が急激に変化したため
- 複雑で多様化する問題に対応するなかで、人材育成の重要性が高まったため
- 調査により、都道府県と市町村が連携して専門人材の育成に取り組む重要性を指摘されたため
新指針では、人材育成だけでなく次の事柄の留意点・検討すべき点も提示しています。
- 人材確保
- 職場環境
- デジタル人材の育成・確保
求める職員像や各職務分野で必要なスキルの明確化など、新指針の内容は一般企業の人材育成方針を検討する際にも役立つでしょう。
1-2. 人材育成方針の導入状況
厚生労働省が公表している「令和6年度(令和5年度実績) 能力開発基本調査」によると、労働者の主体的なキャリア形成に向けた取り組みのうち、人材育成に関する基本的方針の策定をおこなっていると回答した企業は35.2%でした。
実際に導入している企業は3割程度に留まっているものの、今後取り組みたいと回答している企業が33.2%であることから、これと合わせると半数以上の企業が人材育成方針の導入に関心を寄せていることが分かります。
一方で、必要性を認識しながらも具体的な方針策定に至っていない企業も多く、リソース不足やノウハウの欠如などが導入の壁となっている可能性があります。こうした状況は、人材育成の重要性が高まるなかで、多くの企業にとって無視できない課題だと言えるでしょう。
2. 人材育成方針の策定の重要性

人材育成方針の策定の目的は、企業の存続や発展、経営戦略の達成に向けて、効率的に企業が理想とする従業員像へ従業員を導き育成することです。方針で定めた施策の実施により各従業員のスキルアップを促進し、各従業員の生産性を向上させて組織力の強化を図る目的もあります。
このような目的を達成するためには、方針策定の重要度は非常に高いといえます。
方針を策定すれば組織が求める人物像や組織の育成方針を従業員に周知できるため、従業員の労働・成長意欲の向上が期待できます。また、学習機会や評価の透明性が増すことにより、従業員満足度や定着率の上昇も見込まれるでしょう。
ここでは、方針策定の重要性について詳しく解説していきます。
2-1. 人材育成を効率化できる
人材育成方針を策定すると、育成施策の方向性が明確になるので、育成における教育の重複や無駄を減らすことができます。
方針がないと、各部署や担当者が独自の判断で育成をおこなってしまう可能性があり、教育の質や内容にバラつきが生じるかもしれません。これにより、従業員に必要なスキルが身についていない、または同じ内容の研修を何度もおこなうなど非効率な状況が生まれてしまいます。
一方で、明確な育成方針があれば、「どの職種に」「どの時期に」「どのようなスキルを」育成すべきかが社内で共有され、体系的かつ戦略的な育成が可能になります。必要なタイミングで必要な研修を提供できるようにもなるため、従業員の成長速度も高まりやすくなります。
また、限られた人事や教育予算を最も効果的に活用することはもちろん、全社で共通の方針を持つということは、費用対効果を高める人材育成も可能にします。
2-2. 従業員の評価基準を明確にできる
人材育成方針を明確にすることは、評価制度の整備にも直結します。
評価の基準が曖昧な場合、上司によって評価に差が出る、育成と評価の方向性がずれるといった課題が起こりやすくなります。しかし、方針があることで、企業が「どのような人材を育て、どう評価するか」の基準が明文化されるので、従業員にとっても納得感のある評価につながります。
明確な育成方針を基にした評価制度では、成果だけでなくプロセスやスキルの習得状況など、成長の過程も評価対象に含めることができます。これにより、従業員は評価のポイントを理解しやすくなり、自分自身でもどのように成長すればよいのかを具体的にイメージできるようになります。
また、管理職側も評価や育成の判断がしやすくなり、フィードバックや育成支援の質が高まります。人材育成と人事評価の一貫性を保つことで、従業員のモチベーション向上や組織全体の生産性アップも期待できます。
2-3. 求める人材を効率よく採用できる
人材育成方針を定めることで、採用活動にも大きなメリットが生まれます。
企業が育成したい人材像が明確になれば、その人物像に合った人材を見極めやすくなり、採用のミスマッチを防ぐことができます。例えば、「将来的にリーダーとして活躍できる人材を育てたい」という方針があれば、その素質を持つ応募者を早期に見抜くための面接試験や適性検査の設計も可能になります。
また、求職者側にとっても、企業がどのような人材を求め、どう育てていくかが明確に示されていれば、入社後のギャップが少なくなるので定着率の向上にもつながります。育成方針を採用ページや説明会で積極的に発信することで、企業の魅力としてアピールでき、志望度の高い応募者を集める効果も期待できます。
人材不足は現代の深刻な問題なので、応募者が集まる施策を打つことはとても重要です。
2-4. 有価証券報告書における開示義務
近年、人的資本経営への関心が高まる中、上場企業においては有価証券報告書での人的資本情報の開示が義務化されています。その中でも、「人材育成方針とその内容」は重要な開示項目の一つとなっています。これは、投資家やステークホルダーに対して、企業がどのような人材育成戦略を持ち、持続的な成長にどうつなげようとしているかを示すものです。
明確な育成方針がない場合、開示内容が抽象的になってしまい、企業としての信頼性や透明性が損なわれる可能性があります。一方で、具体的な方針と実施状況を示すことで、経営の健全性や将来性をアピールでき、企業価値の向上にもつながります。
また、非上場企業であっても、取引先や求職者、社員に対する説明責任を果たす観点から、育成方針を公開・共有しておくことは大きな意義があります。人材育成方針の策定というのは、法令対応だけでなく、組織全体の信頼を高める手段としても重要です。
3. 人材育成方針を決めるメリット

人材育成方針を策定すると、企業の人材戦略に多くのプラス効果がもたらされるというメリットがあります。
まず第一に、育成施策に一貫性を持たせることができ、全社的に統一された育成の方向性を打ち出せます。これにより、部署ごとのバラつきを防ぎ、教育の重複や抜け漏れを防止することが可能です。また、社員一人ひとりが自分に求められている成長の方向性を明確に理解できるため、自主的なスキルアップやキャリア形成を促すことができます。成長のビジョンが見えることで、働くモチベーションも高まりやすくなります。
さらに、評価制度や昇進制度との連携がしやすくなる点も大きなメリットです。育成と評価の基準がリンクしていれば、成長の過程や努力も適切に評価され、従業員の納得感やエンゲージメントが向上します。
採用活動においても、求める人材像が明確になればミスマッチを減らせるため、採用の効率化や定着率の向上が期待できます。近年では、人的資本開示の観点からも、育成方針を社外に示すことで企業の信頼性やブランド力の向上にもつながるでしょう。
4. 人材育成方針の策定手順

人材育成方針の策定手順は、以下のとおりです。
- 自社の現状把握
- 求める人材像の明確化
- 施策の検討・策定
- 人材育成方針の策定
ここでは、各手順について解説していきます。
4-1. 自社の現状把握
育成方針を策定する第一歩は、自社の現状を正しく把握することです。
現在の社員がどのようなスキルや経験を持っているのか、どの部門に人材不足やスキルギャップがあるのかを洗い出すことが重要です。さらに、既存の育成制度や研修体制がどの程度機能しているかも確認しましょう。
「若手社員が定着しない」「管理職のスキルが不足している」「OJTが属人化している」など、企業によって課題はさまざまですが、定量的な人事データ(年齢構成、離職率、スキルマップなど)や社員アンケート・ヒアリングなどを活用することで、育成上の課題や改善点が見えてきます。
現状を正しく理解せずに育成方針を策定しても、現場の実情と乖離してしまい、実行力のある施策にはなりません。まずは現状の課題を可視化し、それに基づいた育成戦略を立てることが重要です。
4-2. 求める人材像の明確化
次に重要なのが、企業としてどのような人材を育てたいのか、理想とする人材像を明確にすることです。この際、「すぐに現場で戦力となる人材」だけでなく、「中長期的に企業の価値向上に貢献できる人材」を理想に加えることがポイントです。
求める人材像は、企業の経営戦略やビジョンと整合性が取れている必要があります。例えば、グローバル展開を見据える企業であれば、語学力や異文化対応力がある人材、イノベーションを重視する企業であれば挑戦心や創造性のある人材が求められるでしょう。
また、階層ごとに求めるスキルやマインドを整理するのも有効です。新入社員、若手、ミドル、管理職といった各段階で育成すべきポイントを分けて考えることで、より実効性のある育成方針に仕上がります。
このように明確になった人材像を共有することで、採用・育成・評価が一貫したものとなりマネジメント全体の質が高まります。
4-3. 施策の検討・策定
人材育成方針を策定する上では、具体的な施策をどのように設計するかが非常に重要です。
施策の内容は、自社のリソースや業界特性、社員のニーズに応じて最適化する必要があります。例えば、OJT(職場内訓練)を中心とするのか、階層別研修やeラーニング、外部研修を組み合わせるのかといった選択が求められます。
また、育成を「一方的な教育」にしないことも大切です。上司や先輩がフィードバックをおこなったり、自己学習や挑戦する機会を提供したりして、成長を促す仕組みを作っていきましょう。その際は、個人のキャリアパスと連動させた施策設計をおこなうと、従業員の自律的な成長意欲も引き出しやすくなります。
配置転換と連携させた施策や目標達成度にもとづく評価制度の構築などもこの段階で検討しておきましょう。
4-4. 人材育成方針の策定
現状分析や人材像、施策の検討が完了したら、いよいよ育成方針を文書化・策定します。
ここで重要なのは、理念的な内容だけでなく、実務で活用できる具体性を持たせることです。「どのような人材を目指し、どの手段で、どの期間で育てるのか」を育成に関わる全員が理解できるよう明記しましょう。
文書の形式は企業によってさまざまですが、育成の目的、対象者、期間、手法、評価方法などを体系的に整理するのが一般的です。また、経営戦略とリンクさせて記載することで、企業全体の方向性と整合した育成方針となります。
策定した方針は、人事部門だけでなく現場のマネージャーや役員とも共有し、全社的な合意形成を図ることが不可欠です。そのうえで、育成方針を社内にしっかりと浸透させ、実行・改善を繰り返していく体制を整えていきましょう。
5. 人材育成方針の策定の注意点

人材育成方針の策定の注意点は、以下の5つです。
- 経営戦略を考慮して検討する
- 達成できる目標設定をする
- 策定後の周知方法を決めておく
- 時代や社会情勢に合う内容にする
- 定期的に進捗管理をする
それでは、各注意点を詳しく見ていきましょう。
5-1. 経営戦略を考慮して検討する
人材育成方針策定の注意点の一つは、経営戦略を考慮に入れて検討することです。企業成長や経営戦略達成のために人材育成を実施するため、経営戦略と矛盾が生じない方針内容にしなければなりません。
企業の目指すビジョンや事業計画に沿った育成方針でなければ、経営との一体感がなく、実行性に欠けてしまいます。例えば、今後グローバル展開を強化する企業であれば、語学力や異文化対応力を高める研修を取り入れる方針にする必要があります。
また、経営戦略と整合性を持たせることで、経営陣の理解と協力も得やすくなり、育成施策への投資判断や現場への浸透もスムーズに進みます。加えて、経営層が人材育成にコミットする姿勢を見せることで、従業員の学ぶ意欲にも良い影響を与えます。
育成方針を単なる人事施策にとどめず、経営課題の解決手段としてとらえ戦略レベルで設計することが、持続可能な人材育成を実現する鍵となります。
5-2. 達成できる目標設定をする
人材育成方針には、達成可能で現実的な目標を盛り込むことが重要です。理想だけを追い求めた高すぎる目標では、現場がついてこれず、形骸化してしまう恐れがあります。例えば、「3年以内に管理職候補者のうち70%がリーダーシップ研修を修了する」「新入社員の3年後定着率を80%以上に引き上げる」といった、具体的かつ達成可能な数値目標を立てるのがベストです。達成できる目標を設定すると、施策の効果を可視化できるので、必要に応じた改善もおこないやすくなります。
また、社員自身が目標を理解・納得していることも重要です。目標は上層部だけで決めるのではなく、現場の声も取り入れながら決定することで、実現性と共感性の高い育成方針になります。
5-3. 策定後の周知方法を決めておく
策定後の周知方法を検討することも、人材育成方針の策定の注意点です。
人材育成方針を策定した後は、その内容をどのように社内に周知するかが非常に重要です。方針が周知されていなければ、人材育成に対する従業員の理解や協力を獲得できません。たとえ、どんなに優れた内容であっても、現場で実行されず、結果として効果が出にくくなってしまうでしょう。
社内への周知方法としては、社内ポータルサイトへの掲載や部門長向けの説明会、研修などが挙げられます。特に管理職には育成方針の内容をしっかりと理解してもらい、部下へのフィードバックやOJTの指導に活かせるようにすることが大切です。
また、定期的な社内報や朝礼などで繰り返しメッセージを発信し、育成方針の存在を意識づけるという方法もおすすめです。従業員が「自分ごと」としてとらえるためには、わかりやすい言葉で、継続的に伝えることが欠かせません。
5-4. 時代や社会情勢に合う内容にする
時代や社会情勢に合う内容にすることも、人材育成方針策定の注意点です。かけ離れた内容を採用した場合、従業員から理解を得ることが難しいため浸透しないでしょう。
育成方針は一度策定すれば終わりではなく、時代や社会情勢の変化に応じて見直していく必要があります。たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展やリモートワークの普及、人的資本経営の注目など、企業を取り巻く環境は常に変化しています。こうした変化に柔軟に対応するためには、育成方針の内容も固定化せず、必要に応じてアップデートできる体制を整えておくことが大切です。
また、ジェンダー平等やダイバーシティ推進といった社会的テーマにも配慮した内容にすることで、企業の信頼性や従業員からの支持を得やすくなります。さらに、企業を取り巻く環境や市場の変化に応じて、企業戦略が変更されるケースもあります。企業戦略を変更する場合は、同時に人材育成方針も見直しましょう。
5-5. 定期的に進捗管理をする
人材育成方針を実行する上で、定期的な進捗管理は欠かせません。計画した育成施策がきちんと実施されているか、効果が出ているかを定期的に確認し、必要に応じて改善を図ることが人材育成成功のポイントです。
進捗管理は、例えば育成施策ごとの実施状況を管理表にまとめたり、定量指標(研修受講率やスキル評価、離職率など)を設定して数値を確認したりする方法があります。また、受講者や現場のマネージャーからフィードバックを集めることも、進捗や課題の把握につながります。
人材育成は、人事部門だけに任せるのではなく、現場や経営層とも連携しながらPDCAサイクルを回すことで、継続性のあるものになります。育成施策を「やりっぱなし」にせず、定期的なチェックと改善を組み込むことで、結果的に組織全体の人材力向上にもつながっていきます。
6. 人材育成の方針例

実際に企業で活用されている人材育成方針の例を参考にすると、自社の方針イメージがつかみやすくなります。以下は、よく見られる代表的な方針例です。
| 理想の従業員像 | ・専門的な知識・スキルを追求する人物に育てる
・社会や市場の変化に柔軟に対応できる人材に育てる ・主体的に考えて前向きに行動できる人物に育てる ・コミュニケーション能力が高く、相互協力ができる人材に育てる |
| 具体的な施策 | ・研修や教育により、職層や分野別に求める能力や知識を習得させる
・外部講師による研修の実施により、育成担当者の能力や知識を向上させる ・自己啓発のサポート制度により、従業員の自主性や自発性を育てる ・ジョブローテーション制度により、従業員の成長を促す |
ジョブローテーション制度では、従業員のスキルアップや事業への理解度を深めるために、配置転換により従業員の部署や職務を意図的に変更します。
上記の方針例はあくまでも参考です。自社の経営戦略に即した方針を目指して策定しましょう。
7. 人材育成方針に関するの具体的な取り組み事例

人材育成の方針策定を検討するにあたっては、他企業の事例が参考になります。ここでは、一般企業と自治体の中から具体的な取り組み事例をピックアップして解説します。
7-1. 一般企業の導入事例
一般企業の導入事例として、日本を代表する自動車メーカー「トヨタ」の事例をご紹介します。
「モノは人づくり」という理念を掲げるトヨタでは、「知恵と改善」と「人間性尊重」を人材育成の2つの柱とし、社員が主体的に成長できる環境を整備しています。たとえば、自己申告制度を踏まえたジョブローテーションや自立選択型の研修、チャレンジキャリア支援などが挙げられます。
トヨタ独自の技術やノウハウを習得するには時間を要することから、社員個々人の能力に焦点をあて、中長期的な視点から人材育成を実践しているのが特徴です。
参考:トヨタ自動車75年史・詳細解説(トヨタの人材育成)|トヨタ自動車株式会社
参考:人材育成の理念、基本的な考え方|トヨタ自動車
7-2. 自治体の導入事例
東京都では「都政を支える気概とプロフェッショナリティ(玄人としての卓越性)を備えたプロ職員」を目指すべき職員像に掲げ、都政全般を視野に入れた課題の発見・解決に取り組める人材の育成に力を入れています。
新任職員から管理職までを3段階に分け、各段階でも目指すべき人物像や身につけるべき能力を明確にし、人材育成を長期的な視野で捉えているのも特徴です。
また、OJTや職場外研修、自己啓発制度など、職員の主体性を尊重し、能力向上の意欲に対応できる各種制度も整備されています。
参考:人材育成|東京都
8. 自社に適した人材育成方針を策定しよう

企業の人材育成方針とは、理想の従業員像を明確化して、従業員が理想像に至るまでの具体的な施策を定めたものです。初めて方針を策定する場合は、他社の事例を参考にすることは有効ですが、最終的には自社の課題や特性、ビジョンに基づいた方針を作成することが成功のカギです。
そのため、策定をする際には、経営層の意向と現場の実情の両方を取り入れ、納得感のある方針に仕上げましょう。また、策定して終わりにせず、育成施策と紐づけて具体的なアクションを展開し、定期的に振り返ることが重要です。しかし、状況や時代の変化に応じて都度見直すという柔軟性も持っておかなければなりません。
今後は、人的資本経営の観点からも、企業が「どのような育成方針を持っているか」が社外からも問われる時代になっていくと考えられます。自社に適した育成方針をしっかりと策定して、持続可能な成長と従業員のキャリア支援の両立を図っていきましょう。
企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。
資料では、欧州欧米の動向や企業価値を高める観点から、人的資本経営が注目される理由を簡単に解説しています。「人的資本経営への理解を深めたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
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