育児休業給付金とは?支給条件や計算方法を詳しく解説
更新日: 2023.2.17
公開日: 2022.9.12
目黒颯己
育児休業中に支払われる給付金のことを「育児休業給付金」とよびます。育児休業を取得している従業員であれば、誰でも給付金が支払われるのでしょうか。
本記事では、育児休業給付金の支給条件や計算方法について詳しく解説しています。従業員が給付を受けるために企業がおこなう手続きもあるため、用意すべき書類や手続き方法なども把握しておきましょう。
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1. 育児休業給付金とは?
育児休業給付金とは、育児休業を取得している従業員が受けられる給付金のことで、「育休手当」とよばれることもあります。
原則子どもが1歳の誕生日を迎える前日までが給付対象期間ですが、やむを得ない事情がある場合は最大子どもが2歳になるまで受け取ることができます。
企業は、従業員から育児休業を申請された場合、休業を与える必要がありますが、企業は育児休業中の給与支払い義務がありません。
企業からの給与の支払いは任意ですが、国が育児休業給付金を支給し、安心して育児ができるよう支援しています。
育児休業給付金は非課税なので、給付金に対する所得税や住民税の支払いはありません。また、育児休業中は社会保険料が免除されるなど、経済的な支援が充実しています。
条件を満たしている従業員であれば、夫婦どちらも申請可能です。
2. 育児休業給付金の支給条件
育児休業給付金は、子どもを養育する従業員であれば誰でも受けられるものではありません。支給条件がいくつかありますので、確認しておきましょう。
2-1. 雇用保険に加入していること
育児休業給付金をもらうためには、雇用保険の加入が必須です。さらに、被保険者期間が12ヵ月以上あることが条件となっています。
ここで扱う1ヵ月とは、賃金の支払い日が11日以上ある月のことです。起算日は、産前休業開始日としており、その日前2年間の中で数える必要があります。
以前は起算日が育児休業開始日でしたが、2021年9月より産前休業開始日に変更されたため、これまでギリギリ対象にならなかった入社1年程度の人も、支給対象となる可能性が出てきました。
なお、入社1年未満であっても、前職で雇用保険に加入していれば、通算できる場合があります。ただしその場合、前職を辞めてから1年以内に転職していることと、その間に失業保険を受給せず、かつ受給資格の決定もされていないことが条件です。
有期雇用労働者の場合は、子どもが1歳6ヵ月になるまでの間に雇用契約が続いていることも条件に加わります。
パートタイムも雇用保険に加入していて条件を満たしていれば、受給可能です。賃金支払い日が11日以上の月が12ヵ月ない場合でも、賃金支払いの基礎となった時間が80時間以上あれば、その月は1ヵ月として算定します。
例えば、ある1ヵ月の出勤日が10日しかなかったとしても、1日8時間勤務していれば、80時間以上になるため、被保険者期間の1ヵ月としてカウント可能です。
2-2. 支給額が休業前の賃金の80%未満であること
育児休業給付金は、休業に入る前の賃金から計算されます。通常は休業に入った最初の6ヵ月は休業前賃金の67%、6ヵ月以降は50%が支払われるため、80%を超えることはありません。
しかし、企業によっては休業中でも賃金の支払いがある場合や、休業中に働いたことで給与が支給されるケースがあります。
休業前賃金の80%を超えてしまうと、育児休業給付金の減額もしくは支給停止になるため、注意が必要です。
2-3. 育児休業中の就業日数は月10日以内であること
育児休業中であっても就業は可能ですが、10日以内であることが条件となります。10日を超える場合は、就業時間が80時間以下でなければなりません。
もし、ある月で10日を超えて就業したとしても、翌月に条件を満たしていれば、支給は再開されます。
基本的に育児休業中の就業は想定されていませんが、労使間の話し合いで合意があれば、一時的な就労は可能です。ただし、定期的に就労させた場合、育児休業とみなされない可能性がありますので、注意してください。
2-4. 産後パパ育休を取得した場合
2022年10月から、新たに「産後パパ育休」が設けられました。産後パパ育休も通常の育児休業と同様に、一定の要件を満たせば、出生時育児休業給付金を受給することができます。
給付金を受けられる条件は以下の通りです。
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業している時間数が80時間以上の)完全月が12ヵ月以上あること。
- 休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)※1以下であること。
※1 28日間の休業を取得した場合の日数・時間です。28日間より短い場合は、その日数に比例して短くなります。
産後パパ育休を取得した場合でも、育児休業給付金を受け取ることができるため、企業は適切に手続きをおこないましょう。
3. 給付を受けるために企業がおこなう手続き
従業員が育児休業給付金を受けるためには、企業が手続きをおこなわなければなりません。
育児休業中は基本的に賃金の支払いがないため、従業員が給付金をスムーズに受け取るためにも、手続き内容はしっかり理解しておく必要があるでしょう。
3-1. 必要書類を用意してハローワークへ提出する
以下は、育児休業給付金の申請で必要な書類です。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 育児休業給付金支給申請書
上記3点は、企業側で用意しなければならないものです。受給資格確認票には従業員に署名してもらう欄もあるので、漏れなく記載しましょう。
また、この他にも賃金台帳や出勤簿など、支払い状況が確認できる書類も添付します。育児をしていることの証明となる、母子手帳のコピーも必要です。
なお、前職での雇用保険の被保険者期間を通算する場合は、離職票の原本も添付しなければなりませんので、従業員に提出してもらうようにしましょう。
これらすべての書類がそろったら、企業の担当者は管轄のハローワークへ提出します。
3-2. 支給決定通知書を従業員に渡す
ハローワークで育児休業給付金の受給資格があることが認められると、企業宛に育児休業給付支給決定通知書が届きます。
事業所保管用と従業員保管用がありますので、従業員の分は自宅に郵送するのが一般的です。通知書には給付額が記載されており、支給決定日から約1週間程度で本人の口座に振り込まれます。
4. 育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金の1ヵ月あたりの支給額は、以下の計算式で算出可能です。
休業開始時賃金日額とは、「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」に記載されている、産休前6ヵ月の賃金を180日で割った金額です。支給日数は原則30日とされています。
仮に、休業開始時賃金日額が8,000円だった場合、「8,000円×30日×67%=16万800円」という計算になるでしょう。
6ヵ月後の計算は、「8,000円×30日×50%=12万円」となります。
なお、支給額の上限は毎年8月1日に改定されており、2022年8月1日以降は支給率67%の場合で30万5,319円、支給率50%の場合で22万7,850円です。
参考:高年齢雇用継続給付・介護休業給付・育児休業給付の受給者のみなさまへ|厚生労働省
休業中に就業すると、支払われる賃金額によって減額されるケースとされないケース、もしくは支給が停止される場合があります。(※以下は支給率67%を想定して計算)
先ほどの例で考えてみると、通常賃金の80%は19万2,000円です。そのため、休業中の就業で支払われた賃金が通常賃金の13%以下(3万円程)であれば80%を超えないため、全額支給されます。
もし、賃金として10万円支払われた場合は、80%未満ですが13%を超えているため、差額の9万2,000円が支給されます。
賃金が19万2,000円以上の場合は、80%を超えてしまいますので、支給停止となるでしょう。
5. 育児休業給付金の条件や計算方法を理解して適切に運用しよう
育児休業給付金は、条件を満たした従業員であれば支給を受けられる制度です。特に重要なのが雇用保険の加入期間なので、支給条件に達しているかどうかを確かめる必要があります。
給付額は、育休開始から6ヵ月を境として変わるため、従業員から質問があった際などは、正しく答えられるようにしておきましょう。
手続きの多くは企業側が行うので、担当者は育児休業給付金の申請方法や流れを把握しておくことが大切です。申請が遅くなると給付の時期にも影響が及ぶため、企業は速やかに対応することが求められるでしょう。
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