職務等級制度の意味や職能資格制度との違いをわかりやすく解説
更新日: 2024.10.16
公開日: 2023.5.10
OHSUGI
職務等級制度は、従来の職能資格制度に代わる評価制度として、急速に普及しつつあります。職務等級制度とは、具体的にどのような評価制度を指すのでしょうか。職能資格制度との違いは何でしょうか。本記事では、職務等級制度のポイントや職能資格制度との違い、職務等級制度を導入するメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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1. 職務等級制度とは?職務の重要度や困難度に応じて等級を決める制度
職務等級制度とは、社員一人ひとりの職務(仕事の内容)に着目し、職務の重要度や困難度に応じて等級(グレード)を決める評価制度です。厚生労働省は、職務等級制度を以下のとおり定義しています。
職務等級制度とは、従業員一人ひとりが担当している職務(役割)の重要度や困難度、つまりその「職務の大きさ」を共通の物差しで測り「等級」という区分で表したもので、達成された成果に応じて公正な報酬を実現するための基礎となる制度です。
職務等級制度は、社員一人ひとりの仕事の重要性と、賃金などの待遇面が連動する点に特徴があります。とくにジョブ型雇用(職務内容に応じた雇用契約を結ぶシステム)を採用する企業や、人事評価制度の改革を目指す大手企業を中心として、職務等級制度の導入が進んでいます。
1-1. 職務等級制度に欠かせない職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)
職務等級制度では、社員の職務評価に当たって、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)と呼ばれる文書を基準にします。職務記述書とは、組織内で求められる職務ごとに、職務等級や主な職務内容、求められる知識、能力を整理したものです。
職務記述書を作成するときは、厚生労働省が職務別に作成した「職業能力評価基準(全56業種)」をベースとして、各企業の内情に合わせてカスタマイズします。
職務記述書の参考例を知りたい場合は、厚生労働省の「職業能力評価基準[活用事例集]」などを参照してください。
2. 職務等級制度と職能資格制度の違い
職務等級制度が普及する以前は、職能資格制度を採用する企業が一般的でした。職能資格制度とは、社員の職業遂行能力に着目して、役職とは別の資格を付与し、賃金テーブルを設定する評価制度です。厚生労働省は、職能資格制度を以下のように定義しています。
職能資格制度とは、従業員の能力の程度に応じて役職とは異なる“資格”を付与する制度です。これを導入している企業ではほとんどの場合、職能資格に基づいて給与が決定されます。年功序列およびローテーションを基礎とする日本型人事制度を根幹から支えてきたといっても過言ではない制度です。
職能資格制度では、勤続年数が長くなるほど職業遂行能力も上がることを前提にしています。そのため、職能資格制度は日本の年功序列制度や終身雇用制度を根幹から支えてきました。近年は、働き方改革にともなう同一労働同一賃金の義務化など、年齢や勤続年数ではなく、職務内容に基づく人事評価を求める動きが広がっていることから、職能資格制度を廃止する企業も増えています。
また、職務等級制度に似た言葉として役割等級制度も挙げられます。職務等級制度は職務の重要度や困難度に応じて等級を付けるのに対して、役割等級制度は役割に応じて等級を設けます。
3. 職務等級制度のメリット
職務等級制度には、以下のようなメリットがあります。
- 賃金テーブルの根拠が明確になる
- 人件費の急激な高騰を防止できる
- 職務に長けたスペシャリストの育成につながる
3-1. 賃金テーブルの根拠が明確になる
職務等級制度では、職務等級と賃金が対応しているため、賃金テーブルの根拠が明確です。賃金の金額が決められた理由がわかりやすいため、社員の不満が出づらく、公平性が高い評価制度だとされています。また、規定の職務内容を果たしているかどうかは、職務記述書をもとに判断されるため、客観性が高い評価制度でもあります。
3-2. 職務に長けたスペシャリストの育成につながる
職務等級制度では、職務記述書で定義した職務と賃金が対応するため、社員が自分の職務に専念することができます。そのため、職務に長けたスペシャリストの育成に適した評価制度です。また、社員が昇給を目指し、スキルアップに取り組む効果も期待できます。
4. 職務等級制度のデメリット
一方、職務等級制度にはデメリットもいくつかあります。メリットとデメリットを比較し、自社に合った評価制度かどうか検討することが大切です。
- 職務記述書の作成に手間がかかる
- 勤続年数のメリットが失われ、定着率が低下する恐れがある
- 評価対象外の職務に対する意欲が失われる
4-1. 職務記述書の作成に手間がかかる
職務等級制度では、厚生労働省の「職業能力評価基準」などを参考に、賃金テーブルの根拠となる職務記述書を作成する必要があります。自社の職務や職位ごとに職務記述書を作成する必要があるため、人事担当者の負担が増加するのがデメリットです。また、職務内容の変更があった場合は、職務記述書のメンテナンスをおこなう手間もかかります。
4-2. 勤続年数のメリットが失われ、定着率が低下する恐れがある
職務等級制度では、年齢や勤続年数にかかわらず、職務内容に応じて賃金が決まります。そのため、勤続年数のメリットが失われ、従来の年功序列制度に慣れたベテラン社員を中心として、人材の流出が加速する恐れがあります。優秀な人材を定着させるためには、事前に社員に対するアンケートをおこなったり、職務等級制度に関する社員説明会を実施したりして、社員の意見を取り入れながら制度設計に取り組むことが大切です。
4-3. 評価対象外の職務に対する意欲が失われる
職務等級制度では、職務記述書に記載された業務しか、賃金などの待遇面に影響しません。そのため、人事評価の対象外となる職務への意欲やモチベーションが失われるリスクがあります。職務等級制度はスペシャリストの育成には適していますが、ゼネラリストの育成にはあまり向いていません。例えば、部署横断でプロジェクトに取り組む場合に、任された業務しか取り組まない社員が増加し、組織の柔軟性が失われる可能性があります。
5. 職務等級制度のメリットやデメリットを知り、自社に合った評価制度を導入しよう
職務等級制度は、職務の重要度や困難度に応じ、人事評価の等級を決める評価制度です。社員が取り組む仕事の内容がダイレクトに賃金などの待遇に反映されることから、公平性が高い評価制度だとされています。
また、2021年4月1日に同一労働同一賃金の導入が義務化されるなど、年齢や勤続年数にとらわれず、労働内容に応じた賃金を支給する制度を求める動きが広がっています。そのため、日本企業で長年導入されてきた職能資格制度に代わって、職務等級制度を取り入れる企業が増えてきました。職務等級制度のメリットやデメリットを知り、自社に合った制度設計をおこなうことが大切です。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
当サイトではそのような企業のご担当者に向けて「人事評価の手引き」を無料配布しています。
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