長時間労働の問題点は?原因と改善策を解説
更新日: 2025.7.15 公開日: 2024.12.12 jinjer Blog 編集部

長時間労働は、日本の労働環境において深刻な問題となっています。過労死やメンタルヘルス悪化のリスクが増加する中で、企業はその影響を真剣に考える必要があるでしょう。
本記事では、長時間労働の問題点や原因を探り、解決するための具体的な改善策を紹介します。最後まで読むことで労働環境を見直し、より健康的で効率的な働き方を実現しましょう。
目次
その人事データ、ただ入力するだけで終わっていませんか?
勤怠、給与、評価…それぞれのシステムに散在する従業員データを一つに集約し、「戦略人事」に活用する企業が増えています。
「これからの人事は、経営戦略と人材マネジメントを連携させることが重要だ」「従業員の力を100%以上引き出すには、データを活用した適切な人員配置や育成が必要だ」そう言われても、具体的に何から始めれば良いか分からない担当者様は多いでしょう。
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◆この資料でわかること
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1. 長時間労働の問題点


長時間労働の問題点として考えられるのは、主に以下の5つです。
- 労働基準法に違反すると指導や罰則を受ける可能性がある
- 従業員の集中力が減少する
- 従業員が離職しやすくなる
- メンタルの不調に陥りやすくなる
- 従業員が過労死する可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
1-1. 労働基準法に違反すると指導や罰則を受ける可能性がある
長時間労働が常態化している企業は、労働基準監督署からの指導や罰則を受ける可能性があります。
従業員の健康と安全を守るために定められているのが労働基準法です。違法な長時間労働をしている企業に対する監視は年々強化されています。
実際、労働基準監督署は多くの企業を調査しているのが現状です。違法な時間外労働が確認されると、企業に対して「是正勧告書」や「指導票」などが交付されるでしょう。
通知を受けた企業は、指定された期日までに改善し、是正報告する義務があります。
1-2. 従業員の集中力が減少する
長時間労働の問題として、従業員の集中力が減少することが挙げられるでしょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の『平成29年度年次経済財政報告』では、労働時間が短い国ほど生産性が高いデータが示されています。長時間働くことが必ずしも高い成果につながるわけではありません。
むしろ、長時間労働が続くと疲労が蓄積して従業員の集中力が低下するため、生産性の減少につながります。
1-3. 従業員が離職しやすくなる
長時間労働が常態化している企業では、従業員が労働環境に不満を抱き、離職する可能性があるでしょう。
長時間労働の是正に取り組んでいる企業は、従業員の転職や離職が少ない傾向があります。適切な労働環境が従業員の定着に寄与しているといえるでしょう。
一方で、離職者が多い企業では新たな人材の採用が必要となり、そのたびに採用コストが増加します。新たに採用された従業員の育成コストも発生するため、企業にとっては大きな負担です。
1-4. メンタルの不調に陥りやすくなる
長時間労働が続くと、従業員の心身に大きな負担がかかり、故やけが、過敏性大腸炎、腰痛、さらには月経障害などの身体的不調を引き起こす可能性があります。メンタルの不調が深刻化すると自殺につながりかねません。
「令和6年版過労死等防止対策白書」によると、令和5年度中に自殺してしまった人の原因・動機のなかでも、勤務問題とされているのは2,875件にも上っています。
1-5. 従業員が過労死する可能性がある
長時間労働により、従業員が過労死する可能性があるでしょう。厚生労働省の発表によれば、令和5年度における過労死等に関する労災補償の請求件数は4,598件でした。
企業が従業員の健康状態に気づいた時点では、すでに深刻な状況に陥っている場合が多く、迅速な対応が難しいのが現実です。過労死が発生すると、企業は労働環境を適切に管理できないと評価され、社会的信用を失う可能性があります。
参考:令和5年度「過労死等の労災補償状況」を公表します|厚生労働省
1-5-1. 過労死基準とは
過労死基準、いわゆる過労死ラインとは、長時間労働により脳や心臓の疾患を発症するリスクが高まる水準のことを指します。具体的には次のようなケースが目安です。
- 1ヵ月あたりの時間外労働が100時間を超える場合
- 2〜6ヵ月月間の平均時間外労働が80時間を超える場合
これらの条件に該当するケースでは、労災認定が検討される基準となり得るため、企業側は社員の健康管理や適切な労働時間の管理を徹底する必要があります。
1-6. 企業のイメージ低下
長時間労働が常態化していると、企業のイメージを低下させかねません。SNSが一般的になった現代では、実際に働いている従業員や元従業員からの情報拡散によって、労働環境に関するネガティブな情報が瞬時に広がってしまいます。求職者からすると、働きやすい企業かどうかは就職、転職の重要な判断基準となるため、イメージの低下は大きなマイナスとなります。
さらに、取引先企業からの信頼低下による売り上げの減少というリスクもはらんでいます。
2. 長時間労働の目安


長時間労働であるかどうかの目安のひとつとして、36協定が挙げられます。法律において何時間が長時間労働にあたるのかは明示されていません。
1日8時間、1週間に40時間が労働基準法で定められた基本の労働時間の上限です。しかし、労使で36協定を結べば、1ヵ月に45時間、1年に360時間の残業が認められます。長時間労働にあたるかどうかは、36協定の範囲内であるかどうかを目安としましょう。
3. 長時間労働の現状


日本は、世界的に見ても長時間労働が深刻な問題です。「令和4年版 過労死等防止対策白書」によると、週に49時間以上働く日本人労働者の割合は15.1%に達しています。その内訳は男性が21.7%、女性が6.9%です。
この数字は、アメリカやドイツ、イギリス、フランスなどの先進国の中でも特に高く、韓国に次ぎます。特に、日本の男性労働者の約5人に1人が過度な労働に従事している状況です。
4. 長時間労働の原因


長時間労働の原因は、主に以下の3つです。
- 人手不足で非効率的な働き方が広がっている
- 管理職のマネジメント能力が不足している
- 長時間労働が評価される環境
- 不要な会議や打ち合わせが多い
- 繁忙期と閑散期の差が大きい
それぞれ詳しくみていきましょう。
4-1. 人手不足で非効率的な働き方が広がっている
近年、日本の社会においては、人手不足で非効率的な働き方が広がっています。残業が当たり前の文化が根強く残っており、IT業界や建設業界で顕著であり、深刻な人手不足が課題です。
人材の不足は、既存の従業員に業務が集中する原因となり、長時間労働が常態化しやすくなります。
このような状況では、根本的な解決が難しいのが現実ですが、個々の労働者が長時間働くことを減らす意識を持つことは重要です。例えば、業務の効率化を図ることで、無駄な時間を省き、労働時間を短縮できます。
4-2. 管理職のマネジメント能力が不足している
管理職のマネジメント能力が不足しているのも長時間労働の原因です。多くの企業において、部下の長時間労働を無視する管理職が少なくありません。このような姿勢が続くと、改善策を講じることは難しく、長時間労働がますます広がります。
管理職のマネジメント能力が欠如していることが、この問題の根底にあるのです。この状況を打破するためには、まず管理職と部下のコミュニケーションを強化しましょう。部下の働き方を理解し、必要なサポートをすることが求められます。
4-3. 長時間労働が評価される環境
企業によっては長時間労働が評価される環境にあります。そのため、従業員は評価のために長時間労働に励んでしまいます。
また、このような環境では自分の業務が完了していても、周りの同僚がまだ働いていると、帰りにくい雰囲気が生まれてしまうでしょう。この状況は特に若手社員に顕著で、実際に仕事が終わったにもかかわらず、周囲に合わせて残業を続けるケースが少なくありません。
結果として、長時間労働が助長されることになります。このような文化を改善するためには、上司が積極的に帰宅する姿勢を示すことが重要です。業務を終えた部下には、率先して帰宅を促すことで、残業を強いる風潮を変えられるでしょう。
4-4. 不要な会議や打ち合わせが多い
不要な会議や打ち合わせが頻繁に実施されると、本来業務に充てるべき時間が減ってしまい、結果として長時間労働につながる可能性があります。例えば、会議の目的や議題が明確になっていなかったり、参加者が多すぎたりすると、会議に多くの時間が割かれてしまい、本当に重要な業務に集中できなくなります。
また、チャットやメールで共有できるにも関わらず、会議や打ち合わせを実施していると、業務に充てる時間が減ってしまうでしょう。
4-5. 繁忙期と閑散期の差が大きい
繁忙期と閑散期の差が大きい業界や企業では、業務量が急激に変動するため、繁忙期に業務が一気に集中する状況が発生します。繁忙期には大量の仕事を短期間で処理しなければならず、結果として残業や休日出勤が増え、従業員に過度な負担がかかってしまうでしょう。
5. 長時間労働を是正する国の取り組み


長時間労働の問題は企業だけでなく、社会全体の問題でもあります。そのため、国は次のような取り組みを実施しています。
- 時間外労働の上限規制の強化
- 長時間労働削減推進本部の設置
5-1. 時間外労働の上限規制の強化
2019年4月に施行された改正労働基準法によって、時間外労働の上限規制が強化されました。従来も上限は設けられていたものの、超えた場合には大臣告示のみに留まっていました。しかし、法改正によって上限規制に罰則は設けられています。
上限規制は次のように企業規模、業種によって順次スタートしました。
- 大企業:2019年4月~
- 中小企業:2020年4月~
- 建設業、運送業など一部の業種・職種:2024年4月~
5-2. 長時間労働削減推進本部の設置
厚生労働省は2014年に長時間労働削減推進本部を設置し、長時間労働の削減を進めています。具体的には、働き方について相談できる「労働条件相談ほっとライン」の充実や従業員へ違法に長時間労働を強いている企業への指導、企業名の公表制度の厳格化などに努めています。
6. 長時間労働を改善するための対策


長時間労働を改善するための対策は、下記の4つです。
- リモートワークやフレックスタイム制度を導入する
- 出勤・退勤管理ツールを導入する
- 有給休暇取得を推進する
- 管理者のマネジメント力を高める
それぞれ詳しく解説します。
6-1. リモートワークやフレックスタイム制度を導入する
リモートワークの導入により、従業員は自宅やカフェなど、自分が快適と感じる場所で仕事を進められるでしょう。タスクを終えた後はスムーズに仕事を終えられるため、長時間労働を抑制する効果があります。
さらに、フレックスタイム制度の導入も長時間労働の解消に良いでしょう。上司の指示に従うのではなく、従業員自身が勤務時間を選択できることが特徴です。コアタイムを設定することで、労働時間の自由度が高まり、出勤時間を調整できます。
6-2. 出勤・退勤管理ツールを導入する
長時間労働の改善には、出勤・退勤管理ツールの導入が効果的です。ツールを活用すると、上司の裁量に頼らず、全社員が自らの勤務状況を把握できます。
勤怠管理ツールを選ぶ際には、ユーザーが簡単に操作できるシステムであることが重要です。操作が難しいと、利用者はシステムに時間を費やすことになり、結果的に効率が低下します。
さらに、既存のシステムとの連携が可能な勤怠管理ツールを選ぶことも大切なポイントです。
6-3. 有給休暇取得を推進する
従業員の長時間労働を是正するためには、有給休暇を計画的に取得する仕組みを導入・推進しましょう。有給休暇によって従業員が十分な休息を得られ、心身のリフレッシュが図れます。結果として労働意欲が向上し、長時間労働の解消や生産性向上に寄与します。
6-4. 産業医を選ぶ
従業員の健康を守るために、産業医や衛生管理者の選任は有効な対策です。産業医は、医学的な視点から職場環境の改善を助言し、従業員が健康で快適に働ける環境を実現するよう指導します。一方、衛生管理者は労働環境の点検を行い、労働災害防止に努める役割を担います。常時50人以上の従業員を雇用している事業所では、これらの専門家の選任が法律により義務付けられています。
また、従業員数が50人未満の場合でも、地域の産業保健センターが提供する産業保健サービスを活用することで、必要な対策を講じることが可能です。
6-5. 管理者のマネジメント力を高める
従業員の長時間労働は管理者のマネジメント力が原因の可能性もあります。管理者と言っても、マネジメント力は人によってバラバラです。
そのため、マネジメント力を高める研修や意識改革に努めましょう。研修によって管理者が適切な業務配分とコミュニケーションを行えれば、部下の作業負荷が均等化されるでしょう。
7. 長時間労働の問題を解消しよう


長時間労働は、個人の健康や企業の生産性に深刻な影響を与える重大な問題です。原因としては、人手不足やマネジメント不足、職場の雰囲気などさまざまな要因が挙げられます。
しかし、テレワークの導入や勤怠管理ツールの活用などの対策を講じることで、状況を改善できるでしょう。企業は、労働環境を見直し、従業員の健康を守ることが求められています。より良い働き方を実現するために、持続可能な労働環境を築いていきましょう。



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