出産手当金の申請方法とは?支給額やもらうための条件についても解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.3.29
YOSHIDA
産前・産後休業中は会社から給料が支給されないため、生活費の保障として出産手当金を保険者に申請できます。
この記事では、出産手当金とは何か、支給条件や支給額の計算方法、会社が女性従業員に代わり申請する方法を解説します。
目次
1. 産休中の生活費を一部保障する出産手当金とは?
出産手当金とは、健康保険の被保険者である女性従業員が、出産のため会社を休んでいた期間に支払われる給付金のことです。
産前・産後休業中は賃金が支払われないため、その分の生活費や出産・育児にかかる費用を補う目的で制度が導入されました。
1-1. 出産手当金の基本の計算式
1日に受け取れる出産手当金の額は下記により計算できます。
支給開始日以前の12カ月間の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3
注意したいのは、支給額は額面や手取り金額ではなく、社会保険料の標準報酬月額がベースとなる点です。
1-2. 申請者は従業員本人か会社のどちらでも可能
手続きは申請する従業員本人か、会社側のどちらが行っても問題ありません。
ただし、賃金の支払期間や計算方法などを記載する「事業主証明」という申請書があるため、従業員が行ったとしても、会社側でも所定の手続きが必ず必要となります。
1-3. 出産育児一時金との違い
出産時に申請できる給付金に「出産育児一時金」がありますが、これは出産にかかる費用の軽減を目的として導入された制度です。
そのため、会社の健康保険に加入している女性はもちろん、国民健康保険に加入する女性や、配偶者の扶養に入っている女性も申請できます。
支給額は通常、一児につき42万円で、双子を出産した場合、84万円が支給されます。
ただし、妊娠4カ月以上の出産が条件となります。
2. 出産手当金をもらうための条件
女性従業員が出産手当金を受け取るためにはいくつかの条件があります。
会社側も事前に把握し、申請漏れのないようにしましょう。
2-1. 会社の健康保険に加入している女性が対象
出産手当金の支給対象者は、会社の健康保険(協会けんぽ、健康保険組合を問わない)に加入している女性従業員です。なお、正社員ではなく、パートやアルバイトの女性も対象になっています。
ただし、会社の保険ではなく、国民健康保険や、配偶者の扶養などに入っている女性従業員は対象とならないため注意しましょう。
2022年10月に実施される法改正にて、健康保険の適用範囲が拡大されるため、出産手当金の対象者も増加することが考えられます。
2-2. 妊娠4カ月以上経過した出産であること
対象の出産は、妊娠4カ月(85日)以上経過した後の出産に限ります。
出産とは、流産・死産・人工妊娠中絶を含みます。
なお、84日までの出産は支給対象とはなりません。
2-3. 産前産後休業を取得していること
産前・産後に取得できる休業期間は、出産する子の人数によっても異なるため、申請を受ける際は、予定日と合わせて確認しましょう。
産前休業:出産予定日前42日間。双子以上の出産の場合98日。従業員の希望により取得できる。
産後休業:出産予定日後56日間。産後6週間の取得は義務。それ以降は医師の許可があれば就労が可能。
2-4. 退職した場合の出産手当金の扱い
次の条件を満たす女性従業員は、退職後も出産手当金の申請が可能です。
- 退職日までに1年以上継続して被保険者だった(任意継続の被保険者期間は除く)
- 退職日に出産手当金を受けている、または、受ける条件を満たしている
なお、退職日に出勤した場合、出産手当金取得要件の「産前休業」に該当しない状態で退職することとなるため申請はできません。
3. 出産手当金の対象期間と支給額の計算方法
出産手当金の対象期間は、産前・産後休業期間のうち、従業員が申請している期間と、実際の出産日です。
ただし、出産予定日と実際の出産日は変動するケースが多いため、その際は実際の期間に応じ、支給額が変動します。
ここでは、具体例をもとに支給額の計算方法を確認します。
3-1. 出産が予定日より10日早まったケース
この場合の標準報酬月額の平均は280,000円です。
280,000÷30=9,330円(10円未満は四捨五入)
9330円×2/3=6,220円(1円未満は四捨五入)
(42日-10日)×6,220円(日額)=199,040円
上記が産前休業分の出産手当金となります。
3-2. 出産が予定日より5日遅かったケース
この場合の標準報酬月額の平均は280,000円です。
280,000÷30=9,330円(10円未満は四捨五入)
9330円×2/3=6,220円(1円未満は四捨五入)
(42日+10日)×6,220円(日額)=323,440円
なお、出産日当日は産前休業に含み計算します。
3-3. 産前休業を取らなかった場合の出産手当金の扱い
妊娠中の従業員が産前休業を取得せず、仕事を続けたときは、出産手当金は支給されません。
そのため、給与も通常どおり計算し、支払います。
4. 出産手当金の申請方法
出産手当金の申請方法は、産前・産後休業分に分けて申請する方法と、産後に休業分を一括して申請する方法があります。ここでは、一括して申請する方法を解説します。
4-1. 従業員から産前・産後休業の申請を受ける
従業員から妊娠の報告を受けたら、産前・産後休暇を取得するか確認しましょう。
取得する場合、出産予定日に応じて所定の日数を付与します。
なお、日数に誤りがないように「産休申請書」などを準備しておくとよいでしょう。
4-2. 出産手当金の申請書類を準備する
協会けんぽや各健康保険協会のホームページから、出産手当金の申請書類をダウンロードし、添付が必要な書類を確認します。
なお、申請書には以下の記入が必要です。
- 被保険者情報
- 振込み口座
- 申請内容
- 医師・助産師記入欄
医師や助産師に記入してもらう箇所もあるため、産休に入る前に従業員に申請書を渡し、産休明けに医師・助産師の意見書と一緒に持参してもらうとよいでしょう。
▼申請書類は下記からダウンロードできます。
健康保険出産手当金支給申請書 | 全国健康保険協会
4-3. 事業主証明書類を作成する
申請書の「事業主証明」では、従業員の賃金や、出勤状況を記載します。
【勤務状況】
申請期間を含む、賃金締め日の翌日から翌月末までの出勤状況を記載します。
出勤は〇、有給は△、公休は公、欠勤は/で記載します。
【支給した賃金の内訳】
出勤状況に応じ、実際に支払った賃金の額を記載します。
なお、欠勤控除を行っている場合は、計算方法も合わせて記載します。
【証明日・証明印】
締め日以降の証明日を記載します。
また、証明印は事業主印の押印が必要です。
4-4. 従業員から申請書や添付書類を受け取る
従業員の産休が終わった後は、申請書や添付書類を受け取り、「事業主証明」書類と合わせて所定の窓口(協会けんぽまたは、各健康保険組合)に送付します。
なお、出産手当の申請は産休を開始した翌日から2年以内となります。
給付金は直接従業員の口座に支払われる他、支払いまで1~2カ月ほど時間がかかります。
5. 出産手当金の申請方法を理解して女性従業員の働きやすい環境を整えよう
出産手当金は、産休中の女性の生活を支える保障制度です。
申請条件を満たせば、正社員だけでなくパートやアルバイト、契約社員であっても受給できます。
申請は本人だけでなく、会社から行うこともできるため、女性従業員の労働環境を整えるためにも、条件や手順を把握しておきましょう。
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