介護休業の取得条件とは?介護休業給付金の条件も解説
更新日: 2025.9.29 公開日: 2024.12.29 jinjer Blog 編集部

「介護休業を取得するにはどのような条件が必要なの?」
「介護休業を申し出ても、対象外になるケースがあるのか知りたい」
こうした疑問をお持ちではないでしょうか。
介護休業は、家族を介護する必要がある従業員を支援するための制度です。ただし、すべての従業員が対象となるわけではなく、場合によっては対象外となるケースもあります。
この記事では、介護休業の概要や関連する用語、手続き方法について詳しく解説します。介護休業の制度を理解を深め、従業員への説明や手続きを正しくおこなう上でお役立てください。
育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
◆この資料でわかること
- 育児・介護休業法の基本と最新の法改正について
- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
- 法律で義務付けられた従業員への個別周知・意向確認の進め方
- 子の看護休暇や時短勤務など、各種両立支援制度の概要
2025年10月施行の改正内容も詳しく解説しています。「このケース、どう対応すれば?」といった実務のお悩みをお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 介護休業の対象や取得条件


介護休業は育児・介護休業法に定められた、要介護状態にある家族を介護するための休業制度です。介護と仕事の両立を支援し、介護による離職を防止することを目的としています。
介護休業の理解に欠かせない5つの項目を網羅的に解説します。
- 対象となる従業員
- 対象家族と範囲
- 対象外となる家族
- 取得条件と取得日数・回数
- 介護休業と介護休暇の違い
これらを1つずつ確認し、介護休業の全体像をおさえましょう。
1-1.対象となる従業員
介護休業の対象となるのは、要介護状態にある対象家族を介護する方です。日雇いの方は除かれますが、正社員や契約社員、アルバイトなど雇用形態は関係ありません。
ただし、以下の従業員は介護休業の対象外になります。
- 取得予定日から93日を経過する日から6ヵ月までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかな従業員
- 労使協定で除外された下記の従業員
- 入社して1年未満
- 申出から93日以内に雇用期間が終了
- 週の所定労働日数が2日以下
1-2.対象家族と範囲
介護休業の対象家族の範囲は次のとおりです。これらの家族が要介護状態にあれば、同居していなくても対象となります。
- 配偶者(事実婚含む)
- 両親
- 子ども(養子含む)
- 配偶者の両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
1-3.対象外となる家族
1-2章に記載した以外の家族は、同居していても介護休業の対象となりません。また、対象家族は、要介護状態にあることが条件です。
要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態と定義されています。
1-4.取得条件と取得日数・回数
介護休業の取得期間は、対象家族1人につき通算で93日までです。連続取得のほか、最大で3回まで分割して取得できます。
分割して取得する場合、例えば40日、23日、30日など従業員の介護ニーズに合わせて柔軟に取得ができます。また、対象家族が複数いる場合には、それぞれの対象家族ごとに93日の介護休業の取得が可能です。
取得日数は、原則として労働者が介護休業を開始する日から終了する日までの暦日で数えます。そのため、土曜日や日曜日、祝日など会社が休みの日も日数に含まれます。
1-5. 介護休業と介護休暇の違い
介護休業と介護休暇は、どちらも要介護状態の対象家族を介護する従業員が取得できる制度ですが、利用目的や取得方法に違いがあります。違いを表にまとめました。
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
| 目的 | 長期的な介護への対応 | 短期的な介護や突発的な事象への対応 |
| 取得期間 | 対象家族1人に対して通算93日まで
(最大3回まで分割取得も可能) |
対象家族1人につき年5日
(2人以上の場合は年10日) |
| 取得単位 | 原則として日単位 | 時間単位での取得も可能 |
| 申請期限 | 原則として2週間前まで | 当日の申請も可能 |
| 介護休業給付金 | 対象 | 対象外 |
介護休業は、長期的な介護に対応するための制度です。介護に従事するほか、仕事と介護を両立するための準備のためにも利用でき、計画的に長期間の休暇を取得する際に適しています。
一方、介護休暇は短期的な介護や突発的な対応を想定した休暇制度です。該当する対象家族1人につき年5日(2人以上の場合は年10日)取得でき、介護休業よりも柔軟に利用できます。それぞれの違いを理解し、従業員が適切に制度を活用できるようサポートしましょう。
2.介護休業にまつわる用語説明


介護休業を取得できる条件を十分に理解するには、介護に関係する用語の理解が欠かせません。ここでは重要な用語の意味をご紹介します。
2-1.要介護状態とは
介護休業における要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態と定義されています。
介護保険法でも要介護状態という言葉がありますが、介護休業の要介護状態とは必ずしも一致しない点に注意しましょう。介護保険法では要介護状態に該当しても、介護休業では該当しない場合があります。
なお、介護保険では障害の状態に応じて要介護が5段階に分かれていますが、介護休業では段階の区分はありません。
2-2.要支援とは
要支援は介護保険法における用語です。介護保険法第7条第2項では「要支援状態」について以下のように定義づけています。
第7条
2 この法律において「要支援状態」とは、身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、支援の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分のいずれかに該当するものをいう。
一言でいうと、要介護状態ほど障害の程度は重くないものの、ほかの方の助けが必要な状態を指します。介護休業に直接関係する用語ではありませんが、要介護状態と似ている用語のため混乱しないようにしてください。
2-3.常時介護を必要とする状態とは
常時介護を必要とする状態とは、以下のいずれかに該当する場合とされています。
- 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること
- 下記の表の項目のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること
No. 項目 状態 1 状態 2 状態 3 1 座位保持(10分間一人で座っていることができる) 自分で可 支えてもらえればできる できない 2 歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる) つかまらないでできる 何かにつかまればできる できない 3 移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作) 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 4 水分・食事摂取 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 5 排泄 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 6 衣類の着脱 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 7 意思の伝達 できる ときどきできない できない 8 外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある ない ときどきある ほとんど毎日ある 9 物を壊したり衣類を破くことがある ない ときどきある ほとんど毎日ある 10 周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れなど日常生活に支障を来すほどの認知・行動上の課題がある ない ときどきある ほとんど毎日ある 11 医薬品又は医療機器の使用・管理 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 12 日常の意思決定 できる 本人に関する重要な意思決定はできない ほとんどできない 引用:常時介護を必要とする状態に関する判断基準(令和7年4月1日適用)|厚生労働省
ただし、常時介護を必要とする状態の判断にあたってはこの基準にとらわれすぎず、従業員の事情に合わせて柔軟に運用することが望ましいとされています。
3. 介護休業の手続き方法


介護休業の申請と手続きの流れを3ステップで解説します。
- 従業員から申出を受ける
- 取得日数や諸条件を確認して書面で通知する
- 休業中の連絡先を確認しておく
3-1. 従業員から申出を受ける
介護休業の手続きは、従業員から介護休業を取得したい旨の申出を受けることから始まります。申出は書面が原則となり、申出の方法はあらかじめ就業規則に定めておきましょう。
介護休業申出書には、次の項目を記載します。
- 申出の年月日
- 従業員の氏名
- 対象家族の氏名および従業員との続柄
- 対象家族が要介護状態にあること
- 休業開始予定日および終了予定日
- 対象家族についてのこれまでの介護休業日数
また、要介護状態の確認のために、医師の診断書などの最低限の証明書類を従業員から提出してもらうことも可能です。ただし、証明書の提出を取得の条件にはできません。
3-2. 取得日数や諸条件を確認して書面で通知する
従業員から申出書を受けとったら、以下の点に問題がないか確認しましょう。
- 取得要件を満たしているか
従業員本人の要件のほか、介護の対象となる家族が対象範囲に含まれているか、要介護状態にあるかを確認します。必要であれば証明書の提出を求めることも可能です。 - 取得日数は適切か
過去に同じ家族に対して介護休業を取得している場合、通算した日数や取得回数が上限を超えていないかがポイントです。
- 申出期限を過ぎていないか
原則は2週間前までに申し出る必要があります。ただし従業員からの申し出が遅れた場合、企業は従業員の休業開始予定日以後、申出日の翌日から2週間経過日までの間で、休業開始日を指定できます。
申し出に問題がなければ、あるいは従業員との調整がつけば、介護休業取扱通知書などの書面を従業員へ交付します。交付書面には以下の内容を記載してください。
必ず通知する事項
- 介護休業申出を受けた旨
- 介護休業開始予定日および終了予定日
- 申出を拒む場合は、その旨と理由
取り扱いを明示するよう努めるべき事項
- 休業中の待遇
- 休業後の賃金、配置その他の労働条件
3-3. 休業中の連絡先や休業期間変更の手続きを確認しておく
介護休業中は社会保険料の徴収方法や配布物の送付など、従業員とやり取りが必要な場面が多々あります。従業員が介護休業に入る前に、休業中の連絡先を確認しておきましょう。直属の上司など、企業側の対応者も決めておくとスムーズです。
また、不幸にも対象家族が亡くなられてしまったり、ご家庭の事情が代わったりするなど、介護休業の期間が変更になる場合も考えられます。従業員からの介護休業期間の繰り下げ変更は、事由を問わず1回まで可能です。
変更する場合の手続きはあらかじめ確認し、従業員と共有しましょう。
4. 介護休業給付金とは


介護休業期間中は無給や減給としている企業がほとんどのため、経済的な負担が大きくなります。その補填として、雇用保険から介護休業給付金が支給される場合があります。概要を確認しておきましょう。
4-1. 対象者
介護休業給付の対象となる従業員は、以下の4点を満たす方です。
- 雇用保険の被保険者である
- 介護休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数(※)が11日以上ある月が通算して12ヵ月以上ある
- 期間雇用者の場合、介護休業開始予定日から93日から6ヵ月までの間に労働契約が満了することが明らかでない
- 期間の初日と末日を明らかにして、事業主に介護休業の申出をおこない、休業している
※賃金支払基礎日数:賃金の支払対象となる日。有給の日も含みます。
介護休業や対象家族の定義は育児・介護休業法における定義と同じです。
4-2. 支給条件
介護休業給付は、介護休を始めた日から1ヵ月ごとに区切った各期間(支給単位期間といいます)を対象に支給されます。
介護休業給付が支給されるのは、支給単位期間のうち、以下の3点を満たしている場合です。
- 初日から末日まで継続して雇用保険の被保険者である
- 就業していると認められる日数が10日以下である
- 支給された賃金額が、休業開始時の賃金月額の80%未満である
4-3. 受給手続きの方法
介護休業給付の受給手続きは、原則として介護休業が終了してから、事業主経由でおこないます。介護休業の終了後、以下の書類を事業所を管轄するハローワークへ届け出ましょう。
介護休業給付金支給申請書には、従業員のマイナンバーの記載も必要です。管理システムなどで保管していない場合は、添付書類と合わせてマイナンバーの提出も従業員に依頼してください。
- 届出書類
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(介護)
- 介護休業給付金支給申請書
- 添付書類
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 介護休業申出書
- 介護対象家族の氏名・性別・生年月日および被保険者との続柄などがわかる書類の写し(住民記載事項証明書など)
4-4. 支給金額
介護休業給付の支給金額は以下のとおりです。
| 支給単位期間が1ヵ月の場合 | 最後の支給単位期間の場合 |
| 休業開始時賃金日額(※)✕30日✕67% | 休業開始時賃金日額(※)✕支給日数✕67% |
※休業開始時賃金日額:原則として、介護休業開始前6ヵ月間の総支給額(賞与は除く)を180で除した額。
例えば介護休業に入る前の6ヵ月間の賃金が毎月30万円だった場合、1支給単位期間の支給額は、以下のとおりとなります。
休業開始時賃金日額:30万 ✕ 6ヵ月 ÷ 180 = 1万円
支給額:1万円 ✕ 30日 ✕ 67% = 201,000
なお、介護休業給付は非課税のため、計算した額から税金は控除されません。
4-5. 介護休業中に従業員が働いた場合の給与
休業中に従業員が働いて給与が支給される場合、介護休業給付が減額されたり、支給されなかったりする可能性があります。
支給単位期間に働いた日数が11日以上になると、その支給単位期間には支給されません。
また、10日以下の場合でも、賃金の額に応じて以下のとおり給付金が減額されます。
| 休業開始時賃金日額に対する支払われた賃金額の割合 | 13%以下 | 13%超〜80%以下 | 80%以上 |
| 支給される額 | 休業開始時賃金日額 ✕ 支給日数 ✕ 67% | 休業開始時賃金日額 ✕ 支給日数 ✕ 80% – 賃金額 | 支給なし |
給与が支給されると介護休業給付が減額される場合があることを従業員が把握していないと、トラブルの原因となる可能性もあります。人事担当者は、対象となる従業員に給付金が減額になる可能性を事前に伝えておきましょう。
5. 【2025年施行】育児・介護休業法の法改正


2025年(令和7年)4月1日から、育児・介護休業法が改正され、段階的に施行されています。介護に関する改正は以下のとおりです。
- 常時介護を必要とする状態に関する判断基準の改正
- 介護離職防止のための雇用環境整備
- 介護離職防止のための個別の周知・意向確認
- 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
- 介護のためのテレワーク導入(努力義務)
改正内容を一つひとつ確認しましょう。
5-1. 常時介護を必要とする状態に関する判断基準の改正
介護休業は家族が要介護状態にある場合、対象家族の年齢に関係なく取得できます。しかし、従来の要介護状態における「常時介護を必要とする状態」を判断する基準では、子どもが対象である場合の解釈が難しいという問題点がありました。
この問題点を解消するために、表のとおり基準が見直されています。
| 改正箇所 | 改正前 | 改正後 |
| 説明文 | 介護休業は、(中略)常時介護を必要とする状態にあるものを介護するための休業で(以下略) | 介護休業は、(中略)常時介護を必要とする状態にあるもの(障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない。)を介護するための休業で(以下略) |
| 項目8 | 外出すると戻れない | 外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある |
| 項目10 | 周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある | 周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れなど日常生活に支障を来すほどの認知・行動上の課題がある |
| 項目11 | 薬の服薬 | 医薬品または医療機器の使用・管理 |
| 注1 | (なし) | 「対象家族」とは、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母をいうものであり、同居の有無は問わない。 |
| 注3 | 各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。 | 各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者、障害児・者の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。 |
| 注6 | (なし) | 「危険回避ができない」とは、発達障害等を含む精神障害、知的障害などにより危険の認識に欠けることがある障害児・者が、自発的に危険を回避することができず、見守り等を要する状態をいう。 |
| 注8 | (なし) | 「認知・行動上の課題」とは、例えば、急な予定の変更や環境の変化が極端に苦手な障害児・者が、周囲のサポートがなければ日常生活に支障を来す状況(混乱・パニック等や激しいこだわりを持つ場合等)をいう。 |
| 注10 | 慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、指示や支援を必要とすることをいう。 | 慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、支援等を必要とすることをいう。 |
5-2. 介護離職防止のための雇用環境整備
介護休業や介護両立支援制度などの申請を円滑におこなえるように、企業は以下のいずれかの措置を講じなければならないと規定されました。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
これら4つのうち複数の措置を講じることが望ましいとされており、企業側にも介護と仕事の両立をしやすい環境整備が求められています。
5-3. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認
企業が積極的に介護休業などの情報を提供し、従業員の意思を確認することで介護休業制度を利用しやすくなることを目的として、従業員から介護の必要が発生した旨の申し出を受けた場合、企業には個別の周知と意向確認が義務付けられました。
介護休業に関連する制度や給付金の周知をするとともに、介護休業や介護両立支援制度などを利用する意思の確認を個別におこなう必要があります。
また、家族の介護が必要になる前の段階でも、介護休業などの制度に関する情報の提供が義務とされました。
5-4. 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
介護休業に加えて、介護休暇では、労使協定により除外できる従業員の範囲が以下のとおり見直されました。
| 改正前 | 改正後 | |
| 除外規定1 | 週の所定労働日数が2日以下 | 週の所定労働日数が2日以下 |
| 除外規定2 | 継続雇用期間が6ヵ月未満 | (撤廃) |
このため、入社直後の従業員から申出があった場合も、介護休暇の取得を認める必要があります。なお、介護休業を取得できる労働者の要件に変更はありません。
5-5. 介護のためのテレワーク導入(努力義務)
介護を必要とする家族がいる従業員で、介護休業を取得していない方がテレワークを選択できるように、企業は何かしらの措置を講じることが努力義務となりました。
通勤時間の削減や遠方の家族の家からでも業務に従事できることを想定した規定ですが、具体的な内容や頻度の基準は設けられていません。
ただし、男性だけが利用できる制度とするなど、趣旨に反する内容は認められていないため注意しましょう。
6. 介護休業を取得するうえでの注意点


介護休業を取得するときに、事前に知っておきたい注意点を4つ紹介します。
- 介護休業とほかの給付との併用はできない
- 介護休業を理由に不利益な扱いはできない
- 介護休業給付金の受給タイミングに注意する
- 社会保険料や住民税の取り扱いを確認する
6-1. 介護休業とほかの給付との併用はできない
介護休業給付は、ほかの給付制度と併用ができないため、受け取る予定のある従業員には注意を促す必要があります。
例えば、育児休業を取得した場合は育児休業給付が受け取れますが、育児休業と介護休業を同時に取得することは認められていません。そのため、育児休業を取得した場合は介護休業が終了し、介護休業給付の支給はされなくなります。
育児休業中に介護が必要となった場合でも、両方の給付金が受け取れるわけではないため注意しましょう。
6-2. 介護休業を理由に不利益な扱いはできない
介護休業の取得を理由とした、従業員に対する不利益な扱いは法律で禁止されています。
例えば、介護休業の申請・取得を理由とした降格や減給、退職の強要などは育児・介護休業法に反する行為です。介護休業は従業員の権利として認められているため、従業員が安心して休業できる職場環境を提供するよう努める必要があります。
育児・介護休業法は近年改正が続いており、今後もますます介護休業を取りやすい環境づくりが必要になると見込まれます。従業員が働きやすい環境を整えるためのチャンスと捉え、介護休業に対して柔軟な対応をしていきましょう。
6-3. 介護休業給付金の受給タイミングに注意する
介護休業給付金は介護休業中に受け取れず、実際には休業が終了した後に申請する制度なので注意が必要です。これは従業員も勘違いしているケースが多く、介護休業中の収入源として考えている場合があります。
介護休業中は給付金を受け取れないため、休業期間中は給与と給付金以外の手段で金銭面を補填する必要があることを事前に伝えておきましょう。
なお、介護休業給付金の申請期間は介護休業終了日から2ヵ月後の月末までです。
6-4.社会保険料や住民税の取扱いを確認する
介護休業中は、社会保険料の免除制度がありません。休業中に賃金が支払われない場合でも、従業員は健康保険料や厚生年金保険料を納める必要があります。
無給であっても社会保険料は発生し続けるため、従業員にとっては経済的な負担が伴います。住民税も免除されず、前年の収入に基づき計算されるため、休業期間中も支払いが必要です。
なお、雇用保険料は毎月の賃金額に応じて負担する仕組みとなっているため、賃金が発生しない場合は支払い義務が生じません。
産前産後休業中や育児休業中は社会保険料が免除されるため、社会保険料の取り扱いは人事担当者でも勘違いしやすいポイントです。
従業員から介護休業の申し出があった場合は、社会保険料や住民税の支払いが発生することを伝え、徴収方法をどうするか相談しておきましょう。
7. 介護休業の条件を正しく把握しよう


本記事では、介護休業の取得条件や対象者の範囲、申請手続きの流れを解説しました。
介護休業は仕事と介護の両立のための重要な制度ですが、適用されないケースや休業中の社会保険料負担、給付金の受給タイミングなど、注意点も多くあります。
介護休業が取得できる条件を正しく理解し、適切に利用することで、従業員の離職防止につながります。必要なポイントを押さえ、従業員からの介護休業の申し出にスムーズに対応できるようにしましょう。



育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
◆この資料でわかること
- 育児・介護休業法の基本と最新の法改正について
- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
- 法律で義務付けられた従業員への個別周知・意向確認の進め方
- 子の看護休暇や時短勤務など、各種両立支援制度の概要
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