年金払い退職給付とは?仕組みや種類・計算方法をわかりやすく解説
更新日: 2024.12.30
公開日: 2024.12.30
OHSUGI
「年金払い退職給付とは?」
「公務員向けの制度?」
「仕組みはどうなっている?」
上記のような疑問をお持ちではありませんか。
年金払い退職給付は、公務員の退職後の生活支援を目的とした積立方式の年金制度で、民間企業でいう企業年金にあたるものです。
本記事では、この制度の仕組みや種類、受け取り方についてわかりやすく解説します。計算方法とシミュレーションも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 年金払い退職給付とは?
年金払い退職給付は、平成27年10月に創設された公務員向けの上乗せ年金制度です。国民年金や厚生年金に追加して支給され、退職後に一定期間または生涯にわたり年金形式で受け取れます。
民間企業の企業年金に相当する制度です。公務員が退職後に安定した生活を送れるようサポートする役割を持ちます。
以前、公務員には共済年金の職域加算とよばれる上乗せ制度がありましたが、民間企業との公平を図るため廃止されました。年金払い退職給付は、これに代わる制度となっています。
2. 年金払い退職給付と退職金や厚生年金との違い
以下では、年金払い退職給付と退職金や厚生年金との違いを解説します。
- 年金払い退職給付と退職金の違い
- 年金払い退職給付と厚生年金の違い
2-1. 年金払い退職給付と退職金の違い
年金払い退職給付は、退職後に一定期間または生涯にわたって年金形式で受け取るものです。一方、退職金は退職時に一度きり一括で支給されるお金となっています。
年金払い退職給付は毎月の生活を支える意味合いが強いです。退職金はこれまでの労いとしてまとめて支給される点が異なります。なお、これらは別の制度のため、どちらも併せて受け取り可能です。
2-2. 年金払い退職給付と厚生年金の違い
厚生年金は、会社員や公務員が加入を義務付けられている公的な年金で、毎月の給料から天引きされます。一方、年金払い退職給付は、公的年金に加えて生活を支えるための上乗せ年金です。
ちなみに、厚生年金は賦課方式を採用しており、現在働く人たちの保険料で今の年金受給者の支払いをまかなう仕組みです。
一方、年金払い退職給付は積立方式で、自分が将来受け取るためのお金を積み立てる形となっています。
3. 年金払い退職給付の仕組み
年金払い退職給付の仕組みについて以下の流れで解説します。
- 年金払い退職給付の受給金額の決まり方
- 年金払い退職給付の受給要件
3-1. 年金払い退職給付の受給金額の決まり方
年金払い退職給付の受給金額の決まり方は以下のとおりです。
- 月の給料またはボーナスに、付与率とよばれる割合を掛けて付与額を算出
- 付与額のうち半分は使用者負担、残りは労働者が負担し積み立て
- 利息がついた場合は加える
- これを毎月、退職まで繰り返す
付与率は毎年6〜7月頃届く、退職年金分掛金の払込実績通知書とよばれるハガキに記載があります。毎月の付与額や今まで積み立てた金額についても、同様のハガキで確認可能です。
3-2. 年金払い退職給付の受給要件
年金払い退職給付を受け取るには、1年以上組合員である必要があります。原則として65歳から支給開始ですが、60歳への繰り上げや75歳までの繰り下げも可能です。
加えて、すでに退職していることが条件となっています。65歳を超えても再雇用などで働いている場合、支給されない可能性があるため注意が必要です。
4. 年金払い退職給付の種類
年金払い退職給付には、次の3つの種類があります。
- 退職年金
- 公務障害年金
- 公務遺族年金
4-1. 退職年金
退職年金は公務員が退職後に受け取るもので、民間企業の「企業年金」に相当します。退職給付には給付算定基礎額の半分を一定期間で受け取る有期年金と、終身年金として支給される半分があります。
退職後の安定した生活を支えるために重要な役割を果たすでしょう。通常、年金払い退職給付といえば、退職年金のことを指すことが多いです。
4-2. 公務障害年金
公務障害年金は、組合員である間に仕事が原因でけがや病気をし、一定の障がい状態になった場合に支給される年金です。
初めて診察を受けた日から1年6カ月後、障害等級の1〜3級にあたると判断されたときに受け取れます。もしその時点で該当しなくても、65歳になるまでに障がいが悪化すれば支給対象です。
また、軽い障がいの人が別のけがや病気で障害等級に該当する状態になった場合も、併せて支給されます。
4-3. 公務遺族年金
公務遺族年金は、仕事でのけがや病気が原因で亡くなった場合、その家族が受け取れる年金です。支給される条件は以下のとおりとなっています。
- 仕事中のけがや病気で組合員が亡くなった場合
- 退職後でも、公務によるけがや病気が原因で5年以内に亡くなった場合
- 1級または2級の障がいで年金を受け取っていた人が、その原因で亡くなった場合
家族の中で受け取れる人には、配偶者(夫や妻)、子ども、両親、孫、祖父母、兄弟姉妹などが含まれます。
5. 年金払い退職給付の受け取り方法
受け取りは、以下の2通りに分けて受け取る仕組みです。どちらかを選べるのではなく、自動的に半分ずつ分配されます。
- 有期退職年金
- 終身退職年金
5-1. 有期退職年金の受け取り方法
有期退職年金部分はさらに以下の3通りから選ぶ方式です。
- 20年で分割して受け取る
- 10年で分割して受け取る
- 一括で受け取る
受け取り年数に応じて「有期年金現価率」とよばれる数字が設定されています。この数値を積み立てた金額で割ることで、毎月受け取れる金額が決まる仕組みです。
有期年金現価率は通知書であるハガキに記載されています。まとめると、計算式は以下の通りです。
年金算定基礎額(積み立てた金額の合計) ÷ 有期年金現価率 = 有期退職年金額(有期部分の1カ月あたりの受け取り額)
なお、受給中に受取人が亡くなった場合、残りの部分は遺族が一括で受け取ることとなります。
5-2. 終身退職年金の受け取り方法
残りの半分である終身退職年金は、本人が亡くなるまで毎月受け取れます。
計算方法は有期退職年金と同様で、積み立てた金額を「終身年金原価率」で割ることで毎月の受取額が決まる仕組みです。計算式は以下となります。
年金算定基礎額(積み立てた金額の合計) ÷ 終身年金原価率 = 終身退職年金額(終身部分の1カ月あたりの受け取り額)
ただし、終身退職年金は受取人が亡くなった時点で支給が終了します。有期退職年金のように遺族に引き継がれる仕組みはありません。
6. 年金払い退職給付の計算方法とシミュレーション
年金払い退職給付はどれだけ受け取れるのか、以下の前提条件でシミュレーションをおこないます。
- 合計300万円積み立てたとする
- 有期退職年金の部分は10年で分割して受け取るとする
- 10年で受け取る場合の有期年金現価率は、10.0000とする
- 終身年金現価率は27.162255とする
<有期退職年金受け取り部分>
まず有期退職年金の受け取り部分を計算します。
- 有期と終身で半分に割る必要があるため二等分する
300万円(積み立てた金額の合計額) ÷ 2 = 150万円 - 有期年金現価率で割る
150万円(1で求めた金額) ÷ 10.0000(有期年金現価率) = 15万円 - 12カ月で割る
15万円(2で求めた金額) ÷ 12 = 12,500円
この12,500円が、有期退職年金部分の上乗せ額です。
<終身退職年金受け取り部分>
次に終身退職年金の受け取り部分です。
- 有期と終身で半分に割る必要があるため二等分する
300万円(積み立てた金額の合計額) ÷ 2 = 150万円 - 終身年金現価率で割る
150万円(1で求めた金額) ÷ 27.162255(終身年金現価率) = 55,224円 - 12カ月で割る
55,224円(2で求めた金額) ÷ 12 = 4,602円
この4,602円が終身退職年金部分の上乗せ額です。
<合計額>
今回、有期退職年金の受け取りを10年間としているため、初めの10年間は2つを足した以下の金額が上乗せされることになります。
12,500円(有期退職年金) + 4,602円(終身退職年金) = 17,102円
なお、10年経過後は終身退職年金の部分である、4,602円のみ上乗せされます。
7. 年金払い退職給付は複雑なためポイントを押さえて理解しよう
年金払い退職給付は、公務員向けの退職後支援制度で、積立方式によって年金形式で支給される仕組みです。退職後の生活を支えるため、有期年金と終身年金が組み合わされており、それぞれ異なる期間で支給が続きます。
給付額は毎月の給料や賞与を基にした独自の計算方法で決定され、受給には組合員期間や年齢などの条件が設定されている制度です。複雑な仕組みですが、要点を押さえて全体の仕組みや受給条件を理解しておきましょう。
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