ピープルアナリティクスとは?メリットや分析手法、事例を解説
更新日: 2024.10.25
公開日: 2024.2.29
OHSUGI
ピープルアナリティクスとは、従業員のデータを収集・分析し、人材採用や部署の配属に関わる課題などを解決に導く手法です。
採用や配属などの課題は解決が難しいため、ピープルアナリティクスに興味を持つ担当者の方も多いのではないでしょうか。しかし、「ピープルアナリティクスを上手く活用できるのか」「メリットや成功事例はあるのか?」などの不安を感じる方も多く、興味がありながらも導入を先延ばしにしているということもあるかもしれません。
そこで、本記事ではピープルアナリティクスの活用手順やメリット、成功事例などを詳しく解説していきます。
目次
人材不足が課題の昨今、職場定着率の低さ・若年層の早期退職は深刻な問題です。
このようなケースに該当する企業において、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
この解決方法として、職場改善を目的とした従業員のモチベーション管理の仕組みを積極的に取り入れる企業が増えており、従業員満足度の調査ツールが注目を集めています。
当サイトでは、「モチベーション管理において、まず何から始めていいのかわからない」「具体的にどのような分析・活用をすべきなのか知りたい」という人事担当者の方に向けて「従業員満足度調査のハンドブック」を無料配布しています。
ツールの選び方から調査方法、結果の活用方法までわかりやすく解説していますので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方はこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. ピープルアナリティクスとは
ピープルアナリティクスとは、従業員のデータを収集・分析することで、人事領域の課題を解決に導く手法です。
データを用いるため、感覚や経験則から検討するよりも、分析精度の向上が期待できます。
また、個人の思考傾向に偏らない意思決定が可能となるため、従来は解決に至らなかった人材採用や教育などの課題を、幅広い視野で解決できるでしょう。
2. ピープルアナリティクスの3つのメリット
ピープルアナリティクスのメリットは、以下の4つです。
- 作用時に客観的で正確な判断ができる
- 従業員の生産性向上につながる
- 離職を防止できる
- 適材適所の人材配置ができる
ここでは、これらのメリットについて解説していきます。
2-1. 客観的で正確な判断ができる
ピープルアナリティクスを活用すれば、客観的で正確な判断ができます。その理由は、個人の感覚ではなく収集したデータをもとに、採用の意思決定をおこなえるからです。
人事が主観的に判断すると、自社に適していない人材を採用するリスクがあります。また、人材配置の面でも、従業員の能力を十分に活かせない可能性があるでしょう。
ピープルアナリティクスは、データに基づいて人事決定をおこなうので、勘に頼るよりも正確な判断ができるというメリットがあるのです。
2-2. 従業員の生産性向上につながる
ピープルアナリティクスを活用すると、従業員の生産性向上につながるというメリットが得られます。その理由は、一人ひとりが持つ能力や行動パターンから、ふさわしい部署に配置し、特性にマッチした役割を与えられるからです。
従業員の特性を的確に把握できていないまま人材配置をおこなうと、チームワークの悪化を招きやすくなるでしょう。
ピープルアナリティクスで各従業員に合った環境を見出せれば、最大限のパフォーマンス力を引き出せます。
2-3. 離職を防止できる
ピープルアナリティクスを活用することで、離職を防止できるというメリットもあります。退職した従業員のデータを分析すれば、同じ傾向にある社員に適切なフォローができるからです。
退職を検討し始めた社員の具体的な勤務態度は、以下のようなものが挙げられます。
- 仕事への意欲が低下し会議などでの発言が減る
- 同僚や上司とのコミュニケーションが減る
- 新しい仕事に関心を示さなくなる
データから退職しやすい従業員を把握できれば、面談や業務中のフォローで離職を防止できるでしょう。
早期離職はコスト面の負担も大きいため、早めに手を打っておくことをおすすめします。
2-4.適材適所の人材配置ができる
ピープルアナリティクスを活用すると、適材適所の人材配置ができるというメリットも得られます。
ピープルアナリティクスは、従業員の特性を細かく分析できるのが特徴です。特性には、業績に関わる行動特性と、行動する前に考える能力特性の2種類があります。
データに基づき、従業員がどちらの特性を持っているかを見極めることで、それぞれが活躍できる業務に異動させたり部署へ配置したりできるのです。
人材が能力を発揮できる業務や部署へ配置できれば、生産性も向上するという効果も期待できるでしょう。
3. ピープルアナリティクスの分析手法
ピープルアナリティクスの分析手法は、以下のステップとなります。
- データを収集する
- 目的を明確にする
- データを分析する
- 仮説を検証する
ここでは、各ステップについて解説していきます。
3-1. データを収集する
まずは、分析するための元となるデータを収集します。
従業員のデータは、それぞれの部署で管理しているものが異なるため、全部署に協力してもらって集める必要があるかもしれません。
すべてを1度に集めようとすると作業が膨大になるため、デジタルデータや人材データのように収集しやすいものから始めて、余裕が出てきたらオフィスデータや行動データというように集めていくとよいでしょう。
また、あらかじめ以下のルールや役割などを決定しておくと、スムーズに実施できるでしょう。
- データファイルの保存場所
- データの更新頻度
- データを管理する担当者
データの種類は多岐に渡るため、厳重に管理する必要があります。
3-2. 目的を明確にする
次に、ピープルアナリティクスを実施する目的を明確にしましょう。ただデータを収集するだけでは課題解決につながらないため、以下のように目的を明確に決めてください。
- 早期離職を防ぎたい
- 適切に配属先を決定したい
- 各従業員の特性に合った教育をおこないたい
目的が明らかになっていれば、データの分析もしやすくなります。
3-3. データを分析する
目的を明確にしたら、収集したデータを分析していきます。すべてのデータを総合して分析すると複雑になるため、まずは大まかな傾向を掴むことから始めましょう。
徐々に細分化しながら、段階を踏んで分析していくと円滑に進めやすくなります。
分析をするときに注意したいのは、データから読み取れること鵜呑みにしないことです。特に、従業員のキャリアプランやモチベーションなどはデータとして反映されにくいため、鵜呑みにすると従業員の意志と乖離してしまうかもしれません。
そのため、人材配置に活用するために分析をおこなう場合は、データはあくまでも参考資料として使い、従業員と面談をして判断するようにしましょう。
3-4. 仮説を検証する
データ分析の結果をもとに、仮説を立てて検証します。
仮説の立て方や検証の仕方の例は、以下のとおりです。
仮説 | 検証 |
早期離職した人の特徴はコミュニケーション不足 | 積極的にコミュニケーションが取れていない社員を定期的にフォローする |
営業部門で活躍している人の傾向・特性は分析力や言語化能力の高さ | 同じ傾向がある社員を配属させる |
長時間労働は会議の多さが原因 | 会議時間の短縮や、会議の優先順位・必要性を明確にする |
仮説に誤りがあれば再度見直し、繰り返し検証してみましょう。
4. ピープルアナリティクスで収集するデータの例
ピープルアナリティクスで収集する主なデータには、以下のような種類があります。
- 人材データ
- デバイスデータ
- 行動データ
- コミュニケーションデータ
- 認知データ
ここでは、これらのデータについて解説していきます。
4-1. 人材データ
人材データは、従業員に関する基本的な情報であり、主な例は以下です。
- 年齢
- 所属部署
- スキル
- 勤怠
スキルに関するデータがあれば、課題解決に必要なスキルを持っている社員をプロジェクトに参加させられます。
4-2. デバイスデータ
デバイスデータは、社用のデバイスに残る情報です。具体的には、通話履歴やメールの使用履歴、デバイスの使用時間などを指します。
デバイスデータを分析することで、従業員の業務状況が把握しやすくなるでしょう。
4-3. 行動データ
行動データは、以下などの従業員の社内での行動に関する情報です。
- 会議への参加時間
- 社内でのコミュニケーション状況
- 離席時間やオフィスの入退室に関わる情報
- メールやチャットの送信情報
普段から取っている行動パターンからデータを収集します。
行動データは、認知や成果の要因分析に活用するので、できる限り細かく情報を集めることが重要です。
4-4. コミュニケーションデータ
コミュニケーションデータは、従業員同士のコミュニケーションに関するデータです。
一般的に、従業員同士もしくは上司と部下のコミュニケーションが円滑であれば、エンゲージメントが向上することで生産性が高まるといわれています。また、職場環境もよくなることで離職を防ぐ効果も期待できます。
このように、コミュニケーションと生産性は大きく関わるため、部署の成果とコミュニケーションの関係性を分析することで、何をどのように改善していけばよいのか、という施策が洗い出せます。
4-5. 認知データ
認知データというのは、アンケートに回答してもらうことで、従業員のストレスチェックやキャリアプラン、業務や待遇への満足度などを調査し、その結果をデータ化したものです。
従業員に回答してもらうので、「会社に不満がないか」「将来どのような業務につきたいのか」など可視化しにくい項目をデータ化することが可能です。
このデータがあれば、部署異動や配置転換などの際に、従業員の意向に沿った人事ができます。
5. ピープルアナリティクスの3つの成功事例
ピープルアナリティクスには、以下のような成功事例があります。
- エンゲージメントスコアの向上
- 新卒社員の分析精度の向上
- リモートワーク中の健康管理を強化
ここでは、これらの成功事例を紹介していきます。
5-1. エンゲージメントスコアの向上
自動車の販売などをおこなっているA社では、マネジメント方法の変革やエンゲージメントの向上に課題がありました。エンゲージメントの向上は、スタッフの意識を変える意味でも重要な課題と捉えていたようです。
A社は課題解決のため、従業員のエンゲージメントを可視化するサービスの導入を決めます。
導入後は、改善すべき課題の優先順位が明確になり、エンゲージメントスコアも向上したようです。
5-2. 新卒社員の分析精度の向上
クレジットカード業務を展開しているB社では、新卒の配属部署を検討する際の見極めに課題を抱えていました。
B社は課題解決のため、AIを活用した適性検査のサービスを導入し、特性ごとのグループ分けなどをおこなったようです。
導入後には、新卒社員に対する分析結果の精度が向上しました。意思決定に迷いがあった場合にはデータを参照し、判断に役立てています。
5-3. リモートワーク中の健康管理を強化
IT技術を活用したマーケティング事業などを展開するC社では、リモートワーク中の社員の健康管理に課題がありました。リモートワークでの過重労働を抑え、社員の健康を守ろうと検討していたようです。
C社は課題解決のため、PCやアプリの使用状況を可視化できるサービスの導入を決めます。
導入後は、勤務時間とPCの稼働時間の乖離があれば社員に確認するなど、客観的な判断が可能になりました。
6. ピープルアナリティクスにおける2つの課題
ピープルアナリティクスにおける課題は、以下の2つです。
- データ収集後の分析が重要
- 従業員に関する個人情報の保護
ここでは、これらの課題を解説していきます。
6-1. データ収集後の分析が重要
ピープルアナリティクスは、収集後の分析がとても重要です。
データの収集には時間も手間もかかるので、集め終わるとそれで満足してしまい、分析まで手がまわらないということも少なくありません。しかし、データの収集は分析をして、課題を解決するためにおこなうものだということを忘れないようにしましょう。
また、分析は社内で検討しながらおこなう必要があります。
客観的なデータが収集できても、分析に主観性が目立ったり、誤った分析をしたりするとデータの意味がありません。そのため、正確に分析できる従業員を選出しましょう。
分析に誤りがあった場合は、スムーズに軌道修正できるように、分析過程に透明性を確保することも必要です。
6-2. 従業員に関する個人情報の保護
ピープルアナリティクスを活用する上では、従業員の大切なデータを扱うため、個人情報の保護に注意が必要です。
具体的には、下記の点に注意してください。
- 課題解決に必要なデータのみを収集する
- 従業員にデータを収集する目的を説明する
収集するデータは多ければよいというものではありませんし、その分管理の手間がかかります。そのため、必要な情報は厳選し、範囲は明確に決めましょう。
また、ピープルアナリティクスの実施目的を事前に従業員に説明し、合意を得ることも忘れないようにしてください。
7. ピープルアナリティクスを採用や育成に活かそう
ピープルアナリティクスを活用すると、データをもとに客観的に判断をすることが可能です。
管理者や人事の感覚ではなく、社員の特性を正確に把握し採用や配属をおこなうことで、社員の働きやすさにもつながりますし、満足度やエンゲージメントの向上にも効果が期待できます。
ピープルアナリティクスは一見複雑な手法に思えるかもしれませんが、目的を明確にして段階を踏みながら分析すると、スムーズに実施できます。
データ収集は大変かもしれませんが、集めたデータを幅広い人事領域で活かし、課題の解決に役立てましょう。
人材不足が課題の昨今、職場定着率の低さ・若年層の早期退職は深刻な問題です。
このようなケースに該当する企業において、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
この解決方法として、職場改善を目的とした従業員のモチベーション管理の仕組みを積極的に取り入れる企業が増えており、従業員満足度の調査ツールが注目を集めています。
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