人事制度とは?等級制度等の構成要素や、トレンド、設計の流れを解説! - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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人事制度とは?等級制度等の構成要素や、トレンド、設計の流れを解説!

周りから祝福される女性

会社を経営するには、会社の経営理念や目指している姿を理解し、それに基づいて行動できる人材が必要です。

人事制度とは、会社の持続的な発展と従業員の成長のために、誰がどのような役割で何をするかを示したもので、人材を最大限に活用する仕組みの土台とも言えます。

人事制度と一言で言ってもとらえ方が様々ありますが、本記事では、「従業員の処遇を決定する仕組み」に限定した「人事制度」について、設ける目的や設計・構築の流れをわかりやすく解説します。

現在の人事制度におけるトレンドについても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

【従業員の評価、適切におこなえていますか?】

人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。

しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。

本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。

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1. 人事制度とは

おもちゃの車で運ぶ

人事制度とは、企業が人材を管理するための仕組み全般のことを指します。

広い意味でとらえると、採用から昇進、賃金、働き方、福利厚生などの仕組みを指しますが、近年では「従業員の処遇を決定する仕組み」に限定して「人事制度」と呼ぶことが多くなっています。

2. 人事制度の構成要素

水色の背景にピース

「従業員の処遇を決定する仕組み」は、「等級制度」「評価制度」「賃金制度」の3つから成り立っています。各項目について内容を詳しく解説します。

2-1. 「等級制度」

等級制度とは、従業員を区分・序列化し、その区分・序列に応じて業務の範囲や責任、処遇などを定める仕組みです。

等級制度は大きく、能力を軸とした「職能資格制度」、職務を軸とした「職務等級制度」、役割を軸とした「役割等級制度」の3つに分類されます。それぞれメリット・デメリットがあり、自社の組織の状況や文化に応じて導入します。

職能資格制度

職能資格制度とは、従業員の職業遂行能力に着目して、役職とは別の資格を付与し、賃金テーブルを設定する制度です。

それぞれの制度のメリット・デメリットは以下のとおりです。

制度 メリット デメリット
職能資格制度
  • 人事異動や職務変更が柔軟におこなえる
  • ゼネラリストの育成につながる
  • 職務を超えて評価をおこなうため年功序列になりやすい
  • 等級があがるにつれ役職が不足し、人件費が高めになる

職務等級制度

職務等級制度とは、社員一人ひとりの職務に着目し、職務の重要度や困難度に応じて等級を決める制度です。

それぞれの制度のメリット・デメリットは以下のとおりです。

制度 メリット デメリット
職務等級制度
  • 賃金テーブルの根拠が明確になる
  • 職務に長けたスペシャリストの育成につながる
  • 職務記述書の作成に手間がかかる
  • 勤続年数のメリットが失われ、定着率が低下する恐れがある
  • 評価対象外の職務に対する意欲が失われる

役割等級制度

役割等級制度とは、社員に任せる役割に応じて等級を決める制度です。

それぞれの制度のメリット・デメリットは以下のとおりです。

制度 メリット デメリット
役割等級制度
  • 従業員の役割が明確になる
  • 賃金テーブルの根拠が明確になる
  • 人事異動や職務変更が柔軟におこなえる
  • 役割の定義が難しい

等級制度を定めることで、的確な人材育成や従業員の配置が出来るだけでなく、従業員のモチベーションアップにも繋がります。

人事評価制度の根幹ともなるものなので、自社の組織の状況を見極めて適切な設計と運用をおこなうことが大切です。

2-2. 「評価制度」

続いて評価制度とは、企業の指針を明示した上で、一定期間の従業員の行動や成果を評価する仕組みです。評価制度にはいくつか種類があり、目的に応じた制度を導入します。

人事評価は、昇給や昇格、従業員の配置の最適化といった目的もありますが、従業員のモチベーション管理や生産性向上にも影響します。

自社にあった制度の導入や、状況に応じて定期的に改善していく必要がありますので、主な4種類について説明します。

能力評価

能力評価とは、職能資格制度に基づく人事考課の一部であり、従業員の職務遂行能力を測るために実施されます。主に、職能要件書や職能資格基準書に基づき、具体的な能力が評価対象となります。

このプロセスは、従業員の成長を促し、スキルの適正な活用を目指します。他の評価項目に比べ、特に能力評価に重点が置かれるため、企業において重要な役割を果たします。

職務評価

職務評価は、職務分析から得た職務記述書を基に行われます。この評価は、従業員が担う職務の内容、責任、作業条件に基づいて、その職務の相対的な価値を評価するプロセスです。従って、個々の能力が高くても、特定の職務に就いていない限り、等級や報酬は低くなることがあります。このため、職務評価は組織の公正性や透明性を高める重要な手段となります。

役割評価

役割評価は、従業員の役割に基づいて評価を行う手法です。これは各職位ごとに求められる成果責任、つまり会社業績への貢献度に焦点を当てています。

この評価手法が重要視されるようになった背景には、従来の職務評価での課題を克服し、より合理的な評価方法としての実績があるからです。役割評価によって、明確な基準に基づいた公正な評価が可能になり、従業員のモチベーション向上にも寄与しています。

成果評価

成果評価は、成果主義に基づく重要な評価の仕組みです。各従業員には成果を上げる責任があり、これを評価することで業績への貢献度を測ります。

この評価は、企業全体の経営課題に対する解決貢献度も考慮されます。成果評価を行う際には、目標管理制度に基づく目標管理シートが利用され、その結果は昇給や賞与の決定に影響を与えます。

その他の評価

  • OKR(定量評価)
  • バリュー評価
  • 360度評価
  • ノーレイティング
  • チェックイン
  • MBO
  • リアルタイム評価

このように評価制度といっても種類は様々です。自社の運用イメージに最も近いものを取り入れるようにしましょう。

また当サイトでは、各制度の内容や事例を以下の記事で紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:人事評価制度の事例を6つ紹介|成功事例と導入の注意点

2-3. 「報酬制度」

報酬制度とは、評価をもとに従業員がどのような賃金を与えるか決める仕組みで、賃金制度とも呼ばれています。前述の等級と評価にもとづいて賃金が決まります。

賃金は大きく「基本給」「手当」「賞与」「退職金」の4つに分けられ、ときには待遇の改善や学習機会の提供といった報酬を提供することもあります。

どのような評価をおこなったかを明示し、成果に見合った報酬を与えることで従業員の意欲向上に繋がりますし、企業にとっては生産性の高い分野や人材への投資とも言えるため人件費の適正化にもつながります。

基本給

基本給は、従業員に毎月固定的に支払われる給与の中で最も基本的な要素です。基本給は大きく分けて、属人的な要素に基づく「属人給(年齢給)」と職務に関連する要素による「仕事給」によって構成されています。

属人給は、年齢や勤続年数、学歴など個人の特性に基づいて決まる部分で、一般的には従業員が会社にどれだけ長く在籍しているかや、年齢が上がることによって基本給が高くなる傾向があります。一方、仕事給は、業務の内容や能力、業績に則して決まる部分であり、仕事内容に応じて異なる評価を受けることが特徴です。

この基本給の決定方式には主に三つの方法があります。

決定方式 概要 特徴
給与表方式 年齢や等級、経験年数ごとに定められた給与表を基に決定 企業における均等待遇を保つために効果的ですが、従業員の個別の能力や業績を反映しにくいという側面があります。
昇給方式 前年度の基本給に対して今年度の昇給額を加算する、もしくは前年の基本給に昇給率を乗じて決定 従業員の評価に基づいた昇給を組み込みつつ、過去の成果を重視する特徴があります。
洗い替え方式 前年度の基本給には関係なく、従業員の能力や職務のレベルに応じて毎年基本給を決定 業務の変化に柔軟に対応できる一方、個々の従業員に対して大きなインセンティブを提供することができる利点があります。

これらの方式の選定は、人事制度全体の方向性や企業文化に影響を与える重要な決定事項であり、賃金制度を適切に設計するためには、各企業の特性を考慮することが不可欠です。

手当

手当は、企業の報酬制度の一環として、従業員に対して基本給とは別に支給される給与のことです。これは、職務の特殊性や勤務地、扶養家族の状況などに応じて支給基準を満たした従業員に対し、基本給に上乗せする形で行われます。

  • 等級手当:従業員が在籍する等級に応じて定額が支給される手当
  • 役職手当:役職や職位に基づいて支給されるもので、経営層や管理職などの特権的なポジションにある場合に重要とされる手当
  • 特殊勤務手当:特殊な作業環境で働く従業員に対して支給され、危険度や困難度の高い作業に対する補償
  • 住宅手当:住居費を補助するために支給
  • 通勤手当:交通費を補助し、一部が非課税となるため、従業員にとっては経済的な負担軽減となる手当
  • 家族手当:家族手当は扶養家族の人数に応じて支給(※1)

(※1)近年はこの制度が見直されつつあります。例えば、妻に対する家族手当は、女性の社会進出に対して障壁となるとの指摘があり、多くの企業がこの手当を縮小または廃止する方向に転じています。

昨今では、手当の意義についても再評価が進んでおり、職務や能力の違いを手当ではなく基本給で反映させるべきだとの考え方が強まっています。この流れにより、手当制度は縮小すると同時に、より透明性が求められるようになっています。このような状況の中で、自社に合った手当制度の設計や運用が求められています。

賞与

賞与は、企業の報酬制度の重要な一部であり、従業員のモチベーションや業績向上に寄与するものです。日本の多くの企業では、月例給与とは別に年2回から3回の割合で支払われることが一般的です。具体的には、「夏季賞与」「冬季賞与(年末賞与)」、「決算賞与」といった形で、会社の業績に応じて支給されます。

労働基準法では賞与に対する具体的な規制は設けられていませんが、そのため企業は賞与の支払うかどうか、支払う頻度や時期を自由に決定できます。このような柔軟性を生かし、多くの企業は経営上の成果や業績を考慮した支給基準を設けています。賞与は基本的に成果配分や業績還元の性格を持ち、このため支給原資も経営成績とリンクさせることが一般的です。

具体的な支給基準については、いくつかの方法があります。

決定方式 概要 特徴
売上リンク方式 支給原資の全体または一部を売上に基づいて決定 粗利益や営業利益、純利益などの指標と結び付けることで、より業績に応じた支給が可能
付加価値リンク方式 与は従業員に対するインセンティブであると同時に、企業の経営状況を反映した報酬制度 従業員の業績向上を図り、組織全体の生産性を向上させることが期待できる

退職金

退職金は、従業員が退職する際に支給される報酬であり、日本の企業文化において一般的に見られる制度です。この制度は法的に義務付けられているものではなく、企業の任意で整備されているため、退職金制度を導入していない企業や廃止する企業も増加しています。特に人材の流動性が高まっている昨今、退職金制度の見直しが求められています。

退職金は、賃金の後払いという性質を持ち、その算定方法にはいくつかの方式が存在します。

算定方式 概要 特徴
「基礎給 × 支給率」 退職時の基礎給に勤続年数に応じた支給率を掛けて退職金を算出 定期昇給やベースアップがあった場合、これが退職金に反映され、企業にとって負担が重くなる可能性があります。
別テーブル方式 退職金専用の賃金表を使用し、勤続年数に基づく支給率を掛け算して算出 昇給が退職金に影響しないため、企業の負担を軽減できるメリットがあります。
ポイント方式 「ポイント × 単価」という形で退職金を計算 能力や実績を反映させることができ、定期昇給やベースアップの影響を排除できる利点があります。
定額方式 勤続年数などに基づいて退職金が事前に設定 シンプルで分かりやすい一方、従業員の能力や業績が考慮されにくい

このように、退職金制度にはさまざまな算定方法があり、それぞれに固有のメリット・デメリットがあります。企業は自社の状況や人事戦略に応じた退職金制度を検討することが重要です。

3. 人事制度の変遷とトレンド

的を囲う

近年では働き方改革やビジネスモデルにおけるトレンドの変化の影響で、人事制度はじめ評価においても大きな変化が見られます。ここでは変わりつつある現在のトレンドを紹介します。

3-1. 年功序列が古くなり成果主義へ

日本の人事制度は、長い間年功序列に基づくものとされていました。この制度は勤続年数を重視し、定期昇給制度が定着した1950年代から始まり、1970年代にはほぼ全ての企業に浸透しました。年功序列と共に、終身雇用の概念も根付いており、「安定した雇用」と「徐々に昇進するキャリア」が理想とされていました。

しかし、1980年代に入ると経済の変化に伴い、資格を基にした職能資格制度も導入され、多様な評価軸が形成され始めました。1990年代にはバブル崩壊の影響を受けて、特に成果を重視する評価制度が急速に広がりました。この時期の変化は、従業員の能力や業績に基づいて報酬を決定する動きが強まったことを示しています。

さらに2000年代に入ると、役割主義が登場し、従業員が任された役割や業務内容に応じて評価が行われるようになりました。このように、年功序列から成果主義へとシフトする背景には、能力の高い若手社員が年齢差によって評価が低くなることや、モチベーションの低下を懸念する声が増えていたことがありました。

とはいえ、完全な成果主義には多くの課題も伴います。個人の成果を重視するあまり、協力し合う集団活動が疎かになるリスクもあるため、多くの企業では成果主義と他の制度を組み合わせ、役割主義などを取り入れるアプローチが増えてきています。

3-2. 評価軸が役割主義に変化

近年、多くの企業が評価軸を役割主義にシフトしています。役割主義は、従業員の評価を企業が期待する役割に基づいて行うもので、これまでの成果主義の問題点を克服する手段とされています。

従来の成果主義は、短期的な成果を重視するあまりに、従業員間の協力関係を疎外し、チームワークの低下を招くことがありました。また、個々の成果のみが評価されることで、従業員の離職率が上昇し、職場の心理的安定性も損なわれる問題が指摘されました。

役割主義のアプローチでは、職務遂行能力を基準にした職能資格制度と、具体的な職務を基準にした職務等級制度の両方を活用することで、よりバランスの取れた評価が可能になります。特に、管理職の場合は、各部門の役割に応じて全体のポジションを序列化し、適切な評価を行います。

一般社員に対しても、企業の目標達成にどれだけ貢献できるかが重要視され、従業員の能力やその発揮の程度が評価基準となります。役割主義を導入することで、職務等級を通じて長年維持してきた能力育成の機能を保持しつつ、経営戦略や経営管理の視点も統合することが可能となります。

このような評価軸の変化は、企業の成長や従業員の定着率向上に寄与することが期待されます。評価制度の見直しによって、従業員が自らの役割を理解し、業務に対する意識を高める効果があり、企業全体の生産性向上に繋がると言えるでしょう。

3-3. 評価指標の明確化

評価指標の明確化は、現代の人事制度の重要なトレンドとして浮上しています。

かつては、人事評価の基準や結果は経営側だけが知る「ブラックボックス」とされることが一般的でした。従業員はどのような基準で評価されているのか不明で、これが企業に対する不信感を生む要因となっていました。しかし、評価の透明性が確保されることで、従業員は自己の成長や業務改善のために必要な課題を理解しやすくなります。

具体的には、企業が評価指標を明確にし、従業員に対してその基準を説明することで、納得感が生まれ、モチベーションの向上につながる可能性があります。たとえば、評価基準を数値化し、定期的にフィードバックを行うことで、従業員は自分のパフォーマンスを客観的に把握できるようになります。これにより、自己改善に向けた具体的な行動を取る意欲が促進されます。

また、働き方の多様化や変化に対しても、明確な評価基準が求められる時代です。リモートワークやフレックスタイム制度の普及により、評価の公正を担保するために多様な視点や要素が考慮されなければならなくなりました。人事評価システムの導入により、評価指標の一元管理や必要な情報の公開が進み、データを基にした透明性の高い評価が実現可能となっています。

このように、評価指標の明確化は、企業にとっても社内の透明性や公平性を高めるための重要な要素であり、従業員の信頼を得るための基本的な取り組みと言えるでしょう。これにより、全体のエンゲージメントが向上し、企業全体のパフォーマンスにも良い影響を与える可能性があります。

3-4. 評価をおこなうタイミングの変化

評価をおこなうタイミングの変化は、人事制度の重要なトレンドの一つです。従来の等級制度では、評価は通常年度末に一度行われることが多く、評価期間が長くなるため、常に実際の業務と乖離してしまうリスクがありました。このような評価システムでは、特に中間層の従業員に対する評価が困難であり、能力や成果を正確に反映することができませんでした。これにより、組織全体の生産性やモチベーションが低下することが懸念されます。

こうした問題を解決するために、近年では「ノーレイティング」や「リアルタイム評価」といった新たなアプローチが導入されています。ノーレイティングでは、従来のようにランク付けを行わず、代わりにフィードバックや成長を重視します。これは、従業員が自分の強みや改善点を理解しやすくするため、より建設的なコミュニケーションが促進される効果があります。

一方、リアルタイム評価は、短期間での評価を行うことで、従業員が日々の成果や課題に対する即時のフィードバックを受け取ることができる仕組みです。たとえば、数日ごとに評価を行うことで、従業員は常に自分のパフォーマンスを意識しやすくなり、迅速な改善が可能となります。これにより、評価基準の明確化や評価結果への納得感が向上し、従業員のエンゲージメントを高めることが期待されます。

今後も、企業は多様な評価手法を模索し、それぞれの従業員の特性や役割に併せた評価プロセスを設計することが求められます。この変化は、より柔軟で効率的な評価が実現される方向へと進んでいくでしょう。

4. 人事制度の設計の流れ

デジタルの矢印

人事制度を設計するには何から始めたらいいのかお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。標準的な設計の流れをご紹介します。

4-1. 準備の内容とポイント

まずは企業の指針を再確認します。前述の通り、人事評価制度は企業の目標や理念と連携させることができ、企業の方向性を従業員へ伝えるための手段も担っています。改めて指針を理解・把握することで、人事評価制度を設計するうえでのよりどころをつくります。

次に、自社を分析し現状を把握します。管理職へのヒアリングや、従業員へのアンケート、離職率、業績との関係などの情報を収集して、どこに課題があるのか洗い出します。

4-2. 設計の内容とポイント

準備が完了したら設計です。準備工程で洗い出した課題を解決するために、本記事の2章で述べた「等級制度」「評価制度」「賃金制度」をそれぞれ設計していきます。

3つの中でも「等級制度」は従業員の位置づけを示すものであるため、はじめに「等級制度」を設計し、その後「評価制度」「賃金制度」を設計していくとスムーズです。

また、3つの制度は相互関係にあるため一つずつ設計するのではなく、微調整を繰り返しバランスを見極めながら完成を目指していきます。

方針が定まったら、すべての従業員に平等かつ明確に伝わるように明文化します。明文化後に、法的に問題がないか弁護士など専門家のチェックを受けます。

法的チェックで内容に問題がないことを確認できたら、導入に向けて従業員へ説明を実施します。当事者である従業員に受け入れられなければ、せっかく作成した制度が機能しません。従業員の説明や導入するタイミングなども踏まえて、設計のスケジュールを立てましょう。

4-3. 運用の内容とポイント

人事制度の設計は導入して終わりではなく、導入後いかに定着させるかが重要です。従業員に不満なく活用してもらうために、新たな制度の理解向上を促す情報共有や、管理職への研修、従業員へのアンケートなどを用いて、運用状況を把握し問題点があれば改善します。

当サイトでは、具体的なモチベーションやコンディション管理をはじめ、従業員満足度を計りたいという人事担当者に向けて、無料ガイドブックを配布しています。資料では、調査・分析・活用方法をわかりやすく解説していますので、組織課題を解決したいという方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。

5. 人事制度の設計の注意点

迷路の中の電球それでは実際に人事制度の設計を見直す際の注意点を紹介します。

5-1. 人事制度の根本的な目的を意識する

人事制度の根本的な目的を意識することは、企業の持続的成長にとって不可欠です。

人事制度は、人材の能力を最大限に引き出し、事業目的を達成するためのフレームワークです。優秀な人材がその力を発揮できる環境を整えることが求められます。

そのためには、適材適所に人材を配置し、役割や責任を理解させることが重要です。さらに、従業員のモチベーションを高める仕組みを導入することで、企業の競争力を向上させることが可能になります。

5-2. 企業理念との連携を踏まえる

人事制度の設計には、企業理念との連携が不可欠です。理念が数理的なものではなく、企業文化や価値観の反映であるため、その理解に基づく制度設計が求められます。

目先の問題解決だけでなく、自社に最適な組織のあり方を考慮することが重要です。理念に沿った人事制度を構築することで、従業員の適性やモチベーションが最大限に引き出され、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

したがって、企業理念を明確にし、それに基づいた人事制度を整えることが、持続可能な成長を促すための鍵となります。

6. 人事制度の成功事例

ビックリマークの積み木続いてトレンドや時代背景を意識した人事制度を取り入れて成功した事例を紹介します。自社のイメージにより近いものを参考として取り入れていきましょう。

6-1. バリュー評価を取り入れた事例

A社では、社員の行動や価値観を評価する「バリュー評価」を取り入れることで、自社の文化にマッチした人材育成を目指しています。この制度では、行動評価が中心となり、A社が重視する企業文化に沿った行動が行われているかどうかが焦点となります。具体的には、企業のコアバリューを基にした評価軸を設け、従業員がそれに従った行動をしているかを定期的にチェックします。

このバリュー評価は、将来的に企業に対して大きな貢献が期待される人材を見極めるためのものです。つまり、バリューに沿った行動を示す従業員は、業績評価においても高い評価を受ける可能性が高くなり、結果的に給与へと反映される仕組みが整えられています。これにより、社員は企業の価値観を理解し、日々の業務に活かすことが求められます。

6-2. 等級ランクを公開した事例

B社は、等級ランクを公開することで、人事評価の透明性を高めています。この取り組みは、特に360度評価を導入することで実現しました。具体的には、従業員が自身の評価がどの等級に該当するかを明確に理解できるため、評価結果に基づいたキャリアプランを立てやすくなります。

公開された等級ランクにより、従業員は自分がどのように評価されているのか、また他の部署の従業員がどのように評価されているのかを一目で確認できます。これにより、情報の非対称性が解消され、評価に対する疑念や不満が減少しました。

実際に、B社ではこの新しい評価制度を導入した結果、従業員の評価に対する満足度が大幅に向上しています。各等級の基準が明確に示されているため、従業員は自らの成長ポイントを把握しやすく、これにより自己改善へつながる意欲も高まります。

7. 自社に合った人事制度を導入しよう

朝焼けの道を歩く男性

人事制度とは、広義では「採用から昇進、賃金、働き方、福利厚生などの仕組み」を指し、狭義では「従業員の処遇を決定する仕組み」を指します。

どちらも制度の検討にあたり大切なことは、自社の現状を理解し、取り入れる制度をメリット・デメリットの両面から理解したうえで、自社にあった人事制度の導入を検討することです。

会社の持続的な発展と従業員の成長に繋がるため、会社の経営戦略をもとに「誰がどのような役割で何をすればよいのか」を示したのが人事制度です。

人事制度の導入や見直しを検討する際は、経営者・従業員・会社をとりまく社会環境の3つの視点を持ちながら、自社に合った人事制度は何なのかといった観点で進めるのがよいでしょう。

【従業員の評価、適切におこなえていますか?】

人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
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クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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