昇格試験とは?昇進試験との違いや試験方法を詳しく紹介
更新日: 2024.11.20
公開日: 2023.5.27
OHSUGI
昇格試験とは、職能資格制度を採用する企業が、従業員の等級を上げる際に実施する試験です。昇格試験の実施は、昇格基準の公平性を保てるだけでなく、人材の適性も事前に評価できる点がメリットです。
昇格試験と似たワードで昇進試験というものがありますが、この試験は従業員の職位を上げるときに実施するもので、昇格試験以上に管理的能力の把握が重要となります。そのため、「昇格試験」と「昇進試験」はしっかり分けて考えなければなりません。
本記事では昇格試験の概要や目的、昇進試験との違い、試験項目、試験を実施するときの注意点などを解説していきます。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1.昇格試験とは?
昇格試験とは、職能資格制度を導入する企業が従業員の等級を上げるときに実施する試験のことです。たとえば、3等級から4等級に昇格する際などに実施します。
昇格試験の科目は小論文や面接などが採用されるため、試験を実施することで従業員の適性を見極めたり、昇格の公平性を担保したりできます。
ここでは、昇格試験の目的や昇格試験が必要となる職能資格制度、各待遇の違いを解説します。
1-1.昇格試験の目的
昇格試験を実施する目的は公平性の担保と、従業員の適性の見極めです。
1つ目の「公平性の担保」というのは、昇格時に客観性の高い試験結果を元にし、他の従業員の納得感につなげることです。また、試験のように昇格条件が明確であれば、キャリアプラン実現のために事前にスキルアップをするなど、従業員の能力開発にも役立ちます。
頑張りに応じ平等に昇格するチャンスがあるとわかれば、従業員の帰属意識の向上にも役立ちます。
2つ目の「従業員の適性を見極めるため」というのは、とくに管理職の登用時に重要です。管理職にはリーダーシップ・マネジメント能力・コミュニケーション能力など、人事評価のみでは把握が難しい複数の能力が必要です。
そのため、試験の実施により客観的に能力を計れれば、登用後の人材の不一致防止に役立ちます。
1-2.職能資格制度とは
昇格試験を実施する企業の多くは職能資格制度を導入しているため、同制度の理解を深めることも大切です。職能資格制度とは、職務遂行に必要な能力を元に、評価や賃金決定時の基準となる等級を設け、社員の能力に合わせてランク付けする仕組みです。
職能資格制度はキャリアプランが明確になる、頑張りにより昇格できモチベーションが向上する、勤務年数も評価項目に盛り込めるなどのメリットがあります。
一方で、昇格基準が曖昧であれば従業員の不信感につながり、帰属意識が低下する点に注意が必要です。しかし、昇格試験の結果を基準とすれば、等級が上がったり下がったりする理由が明確になるので、従業員の納得感を得やすくなります。
1-3.昇格・昇進・昇給の違い
昇格と似た言葉に昇進と昇給があります。それぞれ試験を実施するか、しないかの違いもあるため、念のため各用語の意味を確認しましょう。
昇格とは、従業員の等級が上がることを指すため、必ずしも職務の上昇がともなう訳ではありません。たとえば、一般職のS1からS2にランクが上がったときなどが該当し、社内のみで通用する点も特徴です。
昇進とは役職が上がることです。たとえば、係長から課長に職位が変わったときを昇進といいます。昇進は対外的な役割の変更でもあるため、名刺など肩書の変更も必要です。なお、昇格と昇進は同時に起こるとは限りません。
昇給とは基本給が上がることです。職能資格制度を導入する企業では等級と賃金がセットになっていることが多いため、昇格時は基本給も上昇することが多いでしょう。
上記のような定期昇給のほかに、労働組合と会社が春闘で交渉し、全従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップも昇給に含まれます。
2.昇格試験と昇進試験の違い
昇格が企業内の等級の上昇に対し、昇進は対外的にも有効な職位の上昇となるため、それぞれ試験をおこなう目的が異なります。
昇格試験は従業員が昇格に値するだけの能力があるか確認するためにおこないます。
一方、昇進試験は主任から係長のように、管理的立場への変化がともないます。そのため、職務遂行能力に加え、マネジメントの適性を検証するという意味合いが強くなります。
3.昇格試験の方法
昇格試験や昇進試験は、適性検査・小論文・面接の3つが一般的です。
なお、近年ではプレゼンテーションや語学試験を実施し、人材の適性を確認する企業も増えていますが、試験の内容に明確な規程はないので、自社で決めて問題ありません。
ここでは、試験の主流となっている適性検査・小論文・面接について解説します。
3-1.適性検査
適性検査には、能力検査・性格検査(指向検査)の2種類があり、従業員の能力を定量的に計測できます。
能力検査では、言語力・計算力・論理的思考など、職務遂行に必要な基礎力全般を測定できます。性格検査では従業員のストレス耐性や資質などの性格を客観的に分析できます。
なお、性格の良し悪しを判断するテストではありません。性格検査の中でもキャリアに対する考えや興味などに特化して検査を指向検査といいます。
これらの検査の実施により、面接のみでは計り得ない従業員の基礎力や内面の価値観を理解できます。
3-2.小論文
与えられたテーマに対し、自分の意見を客観的な根拠を元に示した文章のことです。小論文では、従業員の問題発見能力、課題解決能力、論理的思考を確認できます。
昇格試験の小論文では以下のテーマを用いることが多く、求める人材像により適したテーマを選ぶとよいでしょう。
- 職場における自身の役割
- コミュニケーション課題と解決方法
- 業務効率化の課題と解決方法
- マネジメントの課題と解決方法
3-3.面接
質疑応答により従業員の能力や意欲、人格などを総合的に判断する方法です。昇格試験の面接では、複数の役員による役員面接の実施が多くなります。
管理職の登用では現在の仕事の成果だけでなく、マネジメント能力やリーダーシップ、決断力などを判断できる、以下のような質問をするとよいでしょう。
- 現在の仕事での取り組み
- これまでの仕事での実績
- チームが抱える課題と解決方法
- 自社の経営方針に対する考え
- 不正が発生したときの対処法
- ストレス発散方法
3-4.プレゼンテーション
欧米の昇格試験に倣いプレゼンテーションを導入する企業も増えています。プレゼンテーショでは、結果や実力だけでなく、従業員の戦略論的思考や説得力、他者への影響力も確認できます。
テーマは企業が必要とする人材像により柔軟に変更できる以下が一般的です。
- 自身の実績や功績
- 企業の今後の展望
- 業務課題と対応策
3-5.語学試験
外国人人材が多い企業や、海外との取り引きが多い企業では、昇格試験の際に英語力を検査します。語学試験では実際に試験問題を解かせるだけでなく、TOEICスコア(600点以上)を基準とする企業も多くあります。
なお、会話力を確認したい場合、英語面接や英語でのプレゼンテーションを導入するのも方法です。
4.昇格試験実施時の注意点
昇格試験を実施する際は評価が偏らないよう、複数の試験を実施し多角的に評価しましょう。評価者により偏りが出ないよう複数人でおこなうだけでなく、評価方法を統一し事前にトレーニングすることも大切です。
また、試験の評価基準や昇格に必要な点数などは従業員に事前に公表し透明化しましょう。
最後に、試験に落ちた従業員には結果のみ伝えるのではなく、丁寧なフィードバックによりサポートすることも忘れないでください。
昇格する意欲を評価し、次回の昇格試験に活かせるよう課題を話し合うなどして、モチベーションの低下を防ぎましょう。
5.昇格試験を実施して従業員を多角的に評価しよう
昇格試験は従業員の等級を上げるときに実施する試験のことです。試験を導入すれば、従業員に対し昇格基準の透明性を示す上でも役立ちます。
また、企業は管理職の適性があるかなど、従業員の能力や人格を事前に判断できるため、登用時の失敗を防ぐ上でも有効な方法です。
昇格試験や昇進試験は複数人の評価者で実施するため、結果を一元管理できるシステムを導入し、効率よく進めましょう。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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