心理的安全性研修とは?研修のメリットや流れなどを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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心理的安全性研修とは?研修のメリットや流れなどを解説

ビル

近年は少子化の影響で人材確保が難しく、人材の定着や育成が困難になる企業が後を絶ちません。そのような状況で注目されているのが「心理的安全性研修」です。
心理的安全性の向上は、人材確保や育成を促し、企業全体の生産性向上や業績アップにつながっていきます。そのためにはどのような施策や改革が必要なのかを学ぶのが、心理的安全性研修です。
本記事では心理的安全性研修の概要や目的、具体的な内容とともに注意点についても解説します。職場環境の向上に役立てるために、ぜひ参考にしてください。

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従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

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1. 心理的安全性とは

会議する人たち

心理的安全性とは、一人ひとりがチームに対して気兼ねなく発言でき、疑問やアイデアを安心して話せる職場環境が整っている度合いのことを指します。

しかし、企業の多くはトップダウン型が多く、役職や立場に関係なく自分の意見が言える環境を作るのは難しい状態です。そこで注目されているのが、「心理的安全性研修」です。「研修」という率直に話すことが許される環境に身を置くことで、チームメンバーとの食い違いやその報復などを恐れずに発言する経験を積むことができます。

研修では心理的安全性の概要を学んで現状を分析し、心理的安全性の高い職場と低い職場の違いを考えます。また、心理的安全性を高めるリーダーとして、どのような言動が適しているかについても理解を高めることができるため、スムーズに「心理的安全性」が高い環境を整えることが可能です。

1-1. 心理的安全性が必要とされる背景

日々変化するビジネス環境において、職場の多様性や価値観の違いを尊重し、個々の意見を受け入れる環境を整えることは企業にとって急務となっています。従業員同士が自由に意見を交換したり、失敗やミスを恐れたりせずに挑戦できる「心理的に安全な環境」を作ることは、変化に強い組織づくりはもちろん現代社会に適応するという点でも欠かせません。

特に近年は、パワハラやメンタルヘルスの問題が企業リスクとして顕在化しており、心理的安全性が低い職場では従業員のエンゲージメント低下や離職にもつながりかねません。そのため、企業は心理的安全性の必要性を理解し、組織全体で取り組んでいくことが重要となっているのです。

1-2. 心理的安全性とハラスメントの関係

近年はさまざまな場所で「ハラスメント」という言葉を目にします。企業内においては、パワーハラスメント・セクシャルハラスメント・マタニティハラスメントの3つが深刻なハラスメントとして取り上げられます。

こうしたハラスメントが発生している環境は、心理的安全性欠如の代表的な状態です。心理的安全性を確保するには、まずはハラスメントの有無を入念に確認し、被害があるようなら問題を解決することを優先しなければなりません。

ただし、双方向のコミュニケーションが取れている場合は、外部から見るとハラスメントに見えても該当しないケースもあります。

たとえば、上司が「もっと早く仕事を終わらせろ!」と発言し、それに対して部下が「こんな量は無理に決まっている!」と反論していた場合は、必ずしもハラスメントが発生しているとは限りません。

表現は過激だとしても、部下も上司に意見を述べているため、ある意味では双方向のコミュニケーションが取れており、心理的安全性は確保されている可能性があります。

また、反対にチームワークがよさそうな現場でも、裏では陰湿な嫌がらせや業務負担の偏りなどがある「見えないハラスメント」が発生しているケースもあります。

ハラスメントの有無を外部から見極めることは非常に難しいです。疑いがある場合は心理的安全性研修をする前に、配慮をしつつも踏み込んだ調査が求められます。

2. 心理的安全性が確保されていないとどうなる?

拒否する男性

心理的安全性が確保されていないと、その部署やチームの人は意見や提案を言えなくなり、さまざまな問題が発生するリスクを抱えてしまいます。心理的安全性がないチームの特徴や悪影響を知り、早い段階で対策をしていきましょう。

2-1. 心理的安全性がないチームの特徴

心理的安全性がない状況は、必ずしもわかりやすい形で現れるものではありません。一見すると仲がよさそうなチームでも、距離が近いことが原因で発言を控えたり、特定の人の気分を害さないように気を使ったりしていることがあるからです。

心理的安全性と従業員同士の仲の良さは切り離して考えるようにしましょう。

そのうえで、従業員同士のやり取りを見ていきましょう。以下のような言動が頻繁にみられるチームは心理的安全性が低いと考えられます。

  • 同じ部署内で上司や一部の人ばかりが発言している
  • 新人や若手の発言が遮られたり、汲み取ってもらえていない
  • 質問や相談ができずに問題が後回しにされている
  • 責任を追及したりミスをフォローせずに責めるだけになっている
  • 決定事項を一方的に押し付けられている人がいる
  • 上司やリーダーの決定に意見する人がいない

心理的安全性が低いチームでは、自由な発言ができず、一方的な押し付けが起きやすいです。このような様子が頻繁に見られる、多数の人に当てはまるようなチームは、表面化していなくても問題を抱えている可能性があります。

2-2. 企業全体に悪影響がでることもある

心理的安全性が低いと「言っても嫌な顔をされるだろう」と考え、意見や提案を出しにくくなります。上司やリーダーの独断で進んでしまうため、業務の質が下がりやすいです。イノベーションも起きずに停滞してしまうでしょう。

また、心理的安全性が低い従業員は、ストレスを抱えやすく、問題を抱えるだけでなく引き起こすこともあります。

評価されるために自己の印象操作をすることや、萎縮して能力が発揮できずにミスをしてしまうかもしれません。そしてそのミスを隠ぺいしたり不正行為に走るおそれもあります。

こうした状況が複数のチームや部署で発生すれば、企業全体の生産性を低下させることになります。また、ストレスを抱える従業員が増えれば、離職や退職者も増えて人材の流出も始まってしまうでしょう。

心理的安全性の低さは企業全体を脅かす大きなリスクなのです。

3. 心理的安全性を高める研修をおこなうメリット

パソコンと時計

心理的安全性を高める研修をおこなうメリットは、以下の3つが挙げられます。

  1. チーム学習能力の向上
  2. 生産性の向上
  3. 人材の定着とエンゲージメントの向上

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

3-1. チーム学習能力の向上

心理的安全性研修の1つ目のメリットは、チーム学習能力の向上です。心理的安全性が高まると、チーム内での学習が活発になり個人個人が成長していきます。その結果、より良いアイデアや意見を出し合えるようになるでしょう。また、学ぶ速度が早くなれば新人の早期戦力化や既存メンバーの再学習の促進も期待できます。

「失敗を恐れない」というのも心理的安全性の一つであるため、研修をおこなうことで経験を次に活かす姿勢を育てることも可能です。例え失敗があったとしてもそれを活かすというポジティブな発想は、チーム学習能力の継続的な向上にもつながります。

従業員一人ひとりがアクティブで、お互いに刺激しあえる環境は成長やスキルアップにつながっていくでしょう。

3-2. 生産性の向上

心理的安全性研修の2つ目のメリットは、生産性の向上です。周囲の視線への不安・緊張がなくなると仕事に集中できるようになり、個人のパフォーマンスが高まります。また、コミュニケーションの壁がなくなれば、報連相がしっかりとおこなわれるようになり、無駄な確認や誤解が減って仕事の質も向上します。

課題や問題点を隠さずに共有できる環境であれば、問題に対する改善対策もスムーズにおこなえるでしょう。1人で抱え込むこともなくなるため、結果としてミスやロスの削減にもつながります。研修では、信頼関係を構築する方法を学べるため、職場ですぐに実践することも可能です。心理的安全性によって働きやすさや協働の質を高めれば、組織全体の生産性も自然と引き上げられるでしょう。

3-3. 人材の定着と育成

心理的安全性研修の3つ目のメリットは、人材の定着と育成です。

心理的安全性が高い職場では、従業員が組織に対して信頼と安心を感じやすく、長期的に働き続けたいという意欲も高まります。また、失敗やミスを責められるのではなく、成長の糧として受け入れてもらえる環境では、新入社員や若手が斬新な提案や挑戦をしやすくなります。その結果、自分の提案やがんばりが認められる達成感や、失敗から学ぶ機会を得て、仕事に対する満足度が高まるでしょう。

仕事に対する姿勢が前向きになると、人間関係も好転し、信頼によって自己肯定感が高まっていきます。会社に貢献できているという実感は、エンゲージメントの向上にもつながるはずです。

エンゲージメントが向上すれば、結果的に現在の仕事を続けたいと考える従業員が増えるため、定着率が高まるという大きなメリットにつながっていきます。

4. 心理的安全性研修を高める研修の流れ

セミナー

心理的安全性研修を高める研修の流れは、以下の通りです。

  1. アンケートとインタビューで現状把握
  2. 研修対象の階層を決める
  3. 研修の実施方法を決める
  4. 研修の実施方法を決める
  5. ゴールと目標設定を具体的にする
  6. 研修後の対策方法を決める

心理的安全性を高める研修を効果的に実施するには、事前準備からアフターフォローまで、段階的な流れを押さえることが重要です。各ステップを詳しく解説していきます。

4-1. アンケートとインタビューで現状把握

心理的安全性研修の第一歩は、全従業員を対象としたアンケート調査と、一部の従業員へのインタビューを実施することです。

ハーバード・ビジネススクール教授のエドモンドソンが、心理的安全性を7つの質問で計測する方法を提言しています。

  1. このチームでミスをすると、たいてい咎められる
  2. このチームでは、メンバーが困難や問題を提起できる
  3. このチームの人々は、ほかと違っていることを認めない
  4. このチームでは、安心してリスクある行動ができる
  5. このチームのメンバーには助けを求めにくい
  6. このチームには、自分の努力をおとしめる行動を故意にする人はいない
  7. このチームのメンバーと仕事をするときには、自分のスキルと才能が高く評価され、活用されている

この回答結果を分析すると会社全体の状況を把握できるため、従業員の意識傾向がわかります。このように、数値から見えない悩みや問題点にも目を向けることが研修成功のポイントです。

4-2. 研修対象の階層を決める

心理的安全性研修は、対象となる階層を明確に設定することが成功のポイントです。

経営層、管理職、一般社員など、立場が変われば抱える課題や求められるスキルが異なるため、一律の研修内容では効果が出にくくなってしまいます。

そのため、経営層の場合は組織の方針に対する理解を深める内容、管理職には部下とのコミュニケーション強化や指導・管理スキル、一般社員には発言スキルやチームワークの促進というように、階層ごとに最適な研修プログラムを用意することが大切です。

階層ごとに最適な研修で効果を出すには、事前に対象者の役割を把握し、段階的に研修をおこなうことが大切です。研修対象の社内での役割を十分に理解し、研修プログラムを組みましょう。

4-3. 研修の実施方法を決める

心理的安全性研修の効果を最大化するには、内容だけでなく「どのように実施するか」も重要です。

対面やオンラインなどの研修形式を選ぶ際には、受講する従業員の業務環境や状況を考慮して、参加しやすい方法を選ぶのがベストです。また、研修の内容によっては、研修形式だけでなくディスカッションやグループワークを取り入れることで、より研修効果を高めることができます。

例えば、実際の業務課題をテーマにしたワークをおこなえば、業務に戻った際に研修で学んだことを実践的に生かせます。

目的や研修対象に応じた柔軟な実施方法を取り入れることで、研修の実効性を高めることが可能です。

4-4. 研修をおこなう期間を決める

研修の効果は「一度きり」で実感できるものではありません。

心理的安全性を定着させるためには、継続的に研修に取り組むことが重要です。そのため、研修は1回だけではなく複数回に分けて実施する、もしくはフォローアップの機会を設けるなど、長期的な視点でおこなえるようにしましょう。

特に、管理職やリーダー層向けに対しては、一定期間ごとに進捗確認をおこなうことで、日常の業務に落とし込みやすくなります。ただし、期間を設定する際には、業務とのバランスも考慮し、過度な負担をかけないことも大切です。

研修プログラムは、無理なく続けられる内容と期間を設定することで、心理的安全性の定着がより実現しやすくなります。

4-5. ゴールと目標設定を具体的にする

研修の目的が曖昧なままだと、受講する従業員のモチベーションが上がらず、効果も出にくくなってしまいます。的確に効果を出していくには、心理的安全性研修で「この研修で何を得られるのか」「どのような状態を目指すのか」を明確にする必要があります。

例えば、「会議で発言する社員の割合を増やす」「上司に対するフィードバックを月1回実施する」というようなゴールや達成基準を設けることで、研修の進捗や効果を可視化できます。また、個人ごとに目標設定をすれば、研修に対する自発的な参加意識を持たせることも可能です。

組織としてのゴールと従業員それぞれの目標設定を具体的にしていけば、行動に移しやすくなり、心理的安全性の向上につながっていきます。

4-6. 研修後の対策方法を決める

研修は受講しただけで終わりにせず、その後の行動にどうつなげていくかが重要です。残念ながら、しっかりした研修をおこなっても、その後の対策を会社側が実施しないと、従業員の「心理的安全性」に対する意識は薄れていきます。学んだ内容を従業員がそれぞれの職場で実践するだけでなく、その結果を振り返る機会を設けることで、行動の定着や継続が可能になるのです。

研修後の対策としては、例えば、研修後1か月以内にフィードバックセッションを実施したり、参加者同士で実践内容を共有する場を設けたりする方法があります。また、上司や人事担当者などが日常的に声かけをおこなうことで、職場全体で意識を高めることができます。

研修はあくまでも「スタート」です。心理的安全性を構築し持続するためのフォローもしっかりおこなっていきましょう。

5. 心理的安全性研修の具体的な内容

ふきだしのはてな

心理的安全性研修の具体的な内容は以下のとおりです。

  • 【講義】心理的安全性の意義を解説
  • 【ディスカッション】対話と気づきの共有
  • 【ワーク】習得した知識の実践
  • 【アクションプラン】職場で生かせる行動プランの立案

ここでは、これらの内容について解説します。

5-1.【講義】心理的安全性の意義を解説

心理的安全性の具体的な内容の1つ目は、講義で心理的安全性の意義を解説することです。「心理的安全性とは何か」「なぜ今、必要とされているのか」を正しく理解してもらわないと、研修効果が得られません。

受講する従業員の興味を引きつけられるよう、Googleの研究をはじめとするエビデンスや、心理的安全性が低い職場のリスク、逆に高い職場のメリットなど具体的事例を活用しながら、論理的にわかりやすく伝えましょう。

研修前にe-ラーニング教材や動画などを使って各自で基礎知識を習得してもらう方法も効果的です。理解を深め、疑問を解消し主体的な学びにつなげるために、質疑応答の時間も設けてください。

この段階で、従業員が「自分ごと」として心理的安全性を捉えられるかどうかが、研修の効果を左右します。

5-2.【ディスカッション】対話と気づきの共有

心理的安全性研修の2つ目は、対話と気づきを共有するディスカッションです。学んだ基礎概念をもとにして受講者同士でディスカッションをおこない、より意識を高めます。

まずは、少人数のグループに分かれて具体的に意見を交換しましょう。ディスカッション後は成果を全体で共有します。

「安心して発言できた経験・できなかった経験」などをテーマにディスカッションすることで、自分や他の人がどのような場面で心理的安全性を感じるのかを共有することができます。

ここで重要なのは、正解不正解をジャッジしないことです。ジャッジをしなければ、自分とは違う意見であっても尊重し合う姿勢が自然と生まれるため、チーム内の信頼感向上にもつながります。

5-3.【ワーク】習得した知識の実践

心理的安全性研修の3つ目は、講義とディスカッションによって習得した知識を実践するワークです。

例えば「心理的安全性を高める会話スキル」や「安心感を与えるフィードバックの練習」など、具体的なシチュエーションをもとにしたロールプレイがおすすめです。リアルな場面を想定し、3人1組で上司役、部下役、オブザーバー役に分かれて異なる立場から発言してみましょう。役割交代して3役を全員が経験すれば、多角的な考えを学べたり、自分の癖や改善点に気づいたりすることができます。

また、実際に使えるフレーズや対応の仕方を身に着けることで、職場でもすぐに実践できるようになります。

5-4.【アクションプラン】職場で生かせる行動プランの立案

心理的安全性の具体的な内容の4つ目は、習得した学びを職場で生かせる行動プランの立案です。

まずは、研修で得た学びを、自分自身の職場にどう生かすかを考える時間を設けます。「どんな行動をいつまでに実行するか」を具体的に記したアクションプランを立てることで、「やるべきこと」として定着します。

例えば、「部下の意見をまず受け止める姿勢を心がける」「週1回、チームメンバーに感謝の言葉を伝える」「普段から相手のよい点を称賛する」など、行動の内容はシンプルなもので構いません。さらに、プランをチームで共有してから決意表明すれば、周囲の協力体制を整えられます。

また、1か月後などにそれぞれの「やるべきこと」の進捗を確認する場があると、行動の継続性も高まるでしょう。

6. 心理的安全性を阻害する要素

悩む男性

心理的安全性を高めるために研修は非常に有効な手段です。

しかし、心理的安全性を阻害する要素が多いと、研修をおこなっても十分な効果は得られません。研修の妨げになりやすい4つの心理的な要素を知っておきましょう。

6-1. 無知だと思われてしまう恥ずかしさ

「こんなことを聞いたら何もわかってないと思われないだろうか」「今更こんなことを聞くのは恥ずかしい」このように感じた経験を持つ人は多いです。

自分の知識量や理解度に不安を持っていると、周囲との差を感じて陥りやすい状況です。

心理的安全性が低い環境では、この意識を持ちやすく、質問を控えてしまう傾向が強くなります。特に新入社員や異動したばかりの従業員は、環境に慣れておらず人間関係も構築できていないため、わからなくても抱え込みやすいでしょう。

反対にベテラン社員でも、プライドや立場が邪魔をし、質問をする恥ずかしさが勝って質問を避けてしまうこともあります。

こうした「無知だと思われたくない」という意識が強い環境では、心理的安全性研修をおこなっても心理的障壁が高く、なかなか効果を発揮しません。

6-2. 能力が低いと思われることへの不安

「ミスをして責められるのが嫌だ」「失敗して無能だと思われてしまうのが怖い」こうした感覚は誰しも持っているものです。人間は誰しもミスや失敗をするものですが、職場では1つのミスや失敗が出世や業績に響くこともあるため、こうした意識は強くなりやすいです。

心理的安全性が低いとこの意識がより強くなり「何かを提案しても馬鹿にされるのでは」「挑戦したいけど失敗したら評価が下がるのではないか」という不安から、何もしないという安全策をとりやすくなります。

この感覚はプライベートでの経験の影響も大きく、根強いことが多いです。そのため、心理的安全性研修の効果を発揮させるには、失敗は成功の糧であることや、挑戦すること自体が評価に値することなどを浸透させる必要があります。

6-3. ネガティブな印象を与えたくない

「指摘をしたら嫌な奴だと思われてしまうかもしれない」「反対をしたら協調性がないと思われるだろうか」こうした不安は、ミーティングや会議の場で生まれやすいです。問題や懸念を感じつつも、周囲からの評価を気にして発言を控えてしまう要因になります。

部署やチーム内の心理的安全性が確保されていない場合に起きやすく、これが原因で問題点が見過ごされたり、リスク管理が不十分になったりすることがあります。

上下関係が厳しい風潮や年功序列が根強い現場では解消しにくい部分ですが、心理的安全性を確保するうえでは排除しなければならない要素です。部署やチーム内での信頼関係を構築し、反対意見も建設的に捉えられる風潮を作りましょう。

6-4. 邪魔をしたと思われたくない

「ここで口を挟んだらミーティングが長引いてしまうだろう」「忙しそうなのにこれを伝えたら迷惑かもしれない」こうした「相手の邪魔になるかもしれない」という意識も心理的安全性を確保するうえでの障害になります。

情報伝達の遅れや、助けや協力が必要な状況が放置されることにつながり、その結果「なぜ言わなかったのか」と責められ、さらに心理的安全性が下がる流れにもなりやすいです。

前述の「ネガティブな印象を与えたくない」という心理的障壁と近いものがあり、こちらも部署やチーム内での信頼関係を構築しなければなかなか解消しません。心理的安全性の土台となる人間関係に問題がある場合は、まずはそこを解決することも視野に入れる必要があります。

7. 心理的安全性を高める研修のポイント

会議する人たち

心理的安全性研修の効果を高めるには、前述の心理的安全性を阻害する要素の排除をしつつ、以下のポイントを押さえることが大切です。部署やチームなど、1つのグループにおける心理的安全性は、そのグループのリーダーによって大きく変わることも知っておきましょう。

7-1. チームの心理的安全性はリーダーで変わる

心理的安全性は、グループ内の人間関係が良好な場合でも自然と高まるものではありません。グループのリーダーとなる人物が、心理的安全性を作り出すことが大切です。

人間は誰しもが心理的障壁(心理的安全性を阻害する要素)を持っています。それらを「このグループでは心配しなくてよいのだ」と、根底から考え方を覆すことで心理的安全性は大きく高まります。

心理的安全性を確保するには、これができるリーダーであることが求められます。

そのためにはリーダーとなる人物の心理的安全性に対する理解や、本人の価値観や仕事に対する姿勢が非常に重要です。

カリスマ性や強いリーダーシップは必ずしも必要ではなく、リーダーが率先して心理的安全性を高める行動をし、メンバーを信頼し、サポートする姿勢が求められます。

7-2. 心理的安全性の研修はゲーム形式がおすすめ

心理的安全性の研修では、理論を理解するだけでなく「体験」を通して気づくことが重要です。

座学だけでは感覚的に理解しにくいため、簡単なゲームやシミュレーションを取り入れ、チーム内での信頼や不安が生まれるプロセスを体感してもらうことが効果的です。例えば、制限付きのグループワークをおこなったり、発言しにくい状況を再現したりするワークなどを通じて、「なぜ心理的安全性が欠けるとパフォーマンスが落ちるのか」を実感してもらうのがポイントです。

また、自社の理念や組織文化と結びつけて考えるワークも効果的です。講習を受ける従業員が研修の本質を理解して、行動変容に対して前向きになることで、「心理的安全性」への取り組みに説得力が生まれます。

7-3. 心理的安全性について正確に理解してもらう

研修を修了したとしても、心理的安全性の概念を理解していないまま現場に戻ってしまうと逆効果になりかねません。例えば「心理的安全=甘やかし」「心理的安全性=馴れ合い」と捉えてしまった場合、従業員同士の認識の違いによるギャップが生じます。

このようなことにならないよう、心理的安全性とは「対人関係における安心感」であることや、「業績・業務効率を上げるために不可欠な環境」であることを繰り返し伝えることが大切です。

また、メンバーからの信頼を得るためのコミュニケーションスキルなど、現場で役立つ実践的なノウハウを盛り込むことで、理解と納得が深まります。

7-4. 心理的安全性研修は管理職からおこなう

心理的安全性はリーダーで変わるというお話をしたとおり、心理的安全性を確保するには中心人物が非常に重要な役割を担います。そのため、まずは中核となる管理職が変わることが重要です。

管理職が安心して本音を語れない職場では、一般社員も同じように発言を控えてしまいます。そのため、心理的安全性の研修では、管理職が「自分の言動がどのように影響を与えているか」に気づいてもらうことが大きな目的の1つです。

管理職の意識を変えるには、日常的におこなう従業員への指導・管理の仕方や、従業員の意見を引き出すスキル、対話の姿勢を身につけるワークなどが必要になってきます。また、他部門の管理職との対話を通して「自分の職場だけでなく、組織全体の課題である」と気づくことも、行動変容のきっかけになります。このように、管理職が率先して研修に関わっていくことが、一般社員の意識を変える一歩につながります。

7-5. 実務への活かし方を考えておく

一般社員にとっての心理的安全性は、「自分が安心して働けるかどうか」に直結します。とはいえ、研修というのは上司や同僚との関係性に影響を与える内容が多いため、「どうやって実践すればいいかわからない」と戸惑うこともあるかもしれません。

研修を実務に活かすには、「自分がどんな言動で安心感を与えられるのか」「どんな言動で安心感を損なってしまうのか」などを具体的に考えるワークが効果的です。また、「心理的安全性の高い人のふるまい」「チームでのよい関わり方」など、すぐ実践できるヒントを提示すると、実務に活かしやすくなります。

心理的安全性を一人で築き上げることはできません。上下役職関係なく全社員が当事者意識を持ち、職場全体での意識改革を進めることが大切です。

8. 心理的安全性研修を実施する際の注意

注意のイメージ

心理的安全性研修は、管理職や従業員の意識を変え、会社全体の生産性を高めるために非常に有効な手段です。しかし、正しい理解と適切な方法で進めなければ逆効果になることもあります。

3つの注意点に留意し、心理的安全性研修を効果的なものにしましょう。

8-1. 長期的な取り組みとして考える

心理的安全性は研修や改革をしたとしても、すぐに高まるものではありません。

管理職や従業員の行動・考え方・姿勢などが変化し、少しずつ信頼関係が構築され、その結果に心理的安全性の向上があります。

とくに従業員側は、これまで控えていた言動(質問・意見・挑戦など)をし、それをしても「迷惑そうにされなかった」「失敗しても責められなかった」という経験を繰り返し、安心感を積み重ねていく必要があります。これには長い時間がかかり、個人差もあるでしょう。

この点を十分に理解し、長期的な視点をもって取り組むことが大切です。心理的安全性の研修も一度きりでは終わらせず、繰り返し実施して浸透させることが求められます。

心理的安全性の確保を急ぐあまり、研修が負担になることや、上辺だけの取り繕った関係で隠されるということが起きては本末転倒です。

8-2. 混乱の発生や関係が悪化する時期がある

心理的安全性研修の効果が出始めると、これまではなかった言動が出てくるようになります。

  • 上司の指示や提案に意見をいう部下が現れる
  • 同僚に対して本音を伝えるようになる
  • ミーティングで発言が増え時間が長くなる
  • 会議で反対意見が出て対立することがある

あくまでも一例ですが、このような変化が発生することが考えられます。控えていた発言や抑えていた感情が出てくると、一時的に関係が悪化することもあるでしょう。ストレスを感じる人や、ショックを受ける人も出てくるはずです。

このような混乱や摩擦は、心理的安全性が低いグループで、心理的安全性が高くなりはじめると起きやすい現象です。この時期は非常に不安定で、フォローが足りていないとチームがバラバラになってしまうおそれもあります。

リーダーはチームをまとめ、これが正しい変化であることを研修をとおして伝えることが非常に重要です。

8-3. 管理職やリーダーにネガティブな印象を与えない

心理的安全性に限らず、「研修をする」と伝えられると「研修の内容が自分に足りていなかったのか」と感じる人が少なからずいます。ダメだしをされているように受け取ってしまう人もいるでしょう。

とくに管理職やチームのリーダーなど、部下をまとめる立場にある人が心理的安全性の研修を受ける場合は「自分の管理が不十分だったから研修になった」と思いやすいです。こうしたネガティブな印象は、モチベーションを下げ、研修に対する姿勢にも影響します。

心理的安全性を向上させるには、リーダーとなる人物の認識が非常に重要です。

「働く環境をよりよくするための取り組み」であることを最初に伝え、会社やチームにとってのメリットも十分に理解してもらいましょう。

「自分がチームをもっと良いものにするぞ!」という意識を芽生えさせ、自分のスキルや経験、研修の内容を実際に活かす行動に移ってもらうことが重要です。

9. 心理的安全性研修で自由に発言できる環境を作ろう

笑顔で話し合う人たち

心理的安全性は、「従業員からの信頼」や「従業員同士のコミュニケーション」などの環境がないと育てることはできません。しかし、研修をおこなうことで、土台を整えることができます。
「相手の話を最後まで聴く」「意見の違いを尊重する」「間違いや失敗を責めない」など日常のちょっとした言動が、心理的安全性を高める大きな要素です。研修を通して、組織全体でこのような行動を「当たり前」にしていくことは、風通しの良い職場づくりにつながります。
また、心理的安全性が高まれば、従業員同士の率直な意見交換や学び合いが活発になり、結果的に業務の質やスピードも向上します。心理的安全性の実現は、従業員一人ひとりのコミュニケーション習慣が重要となるため、研修をきっかけに変えていきましょう。

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従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

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