定性目標とは?意味や設定方法をわかりやすく解説
更新日: 2026.3.17 公開日: 2023.6.6 jinjer Blog 編集部

企業の人事評価制度では、数値で表すことができる定量目標に加えて、数値化できない定性目標を組み合わせることが一般的です。定性目標とは、具体的にどのような目標を指すのでしょうか。また、定性目標を設定するときにどのような点に注意すべきでしょうか。本記事では、定性目標の意味や立て方、設定するときのポイントをわかりやすく解説します。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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1. 定性目標とは

社員の目標を設定する場合、定性目標と定量目標の2種類を組み合わせることが大切です。数値や数量で表せる定量目標に対し、定性目標は数値化できない目標のことを指します。実績や成果ではなく、社員の行動がもたらす価値(行動価値)を重視するため、行動目標と呼ばれることもあります。定性目標と定量目標のバランスを考慮することで、より納得感のある人事評価制度を構築することが可能です。
1-1. 定性目標の意味や定義
定性目標の「定性」とは、数値や数量で明確に表せない、質的な部分に着目することを意味します。例えば、デジタル大辞泉で「定性的」を引くと、以下のような意味が出てきます。
ていせい‐てき【定性的】 の解説
[形動]1 性質に関するさま。ある物質にその成分が含まれるかどうかを表す場合などに用いる。「―検査」⇔定量的。
2 数値・数量で表せないさま。「人事の―評価」⇔定量的。
人事評価制度における定性目標では、実績や成果だけではわからない、社員の理想像を目標として設定します。例えば、社員の姿勢や働きぶり、生産性、業務効率、業務品質、スキルやノウハウなどが定性目標の一例です。社員が定性目標の達成に向けて努力し、より自分の理想像に近づくことで、企業にとって必要な人材を育てることが可能です。
また、定性目標と定量目標をバランスよく組み合わせることで、社員が「数字だけでなく、目に見えない働きぶりも評価してくれている」と実感できるため、公平で納得感のある人事評価制度になります。定性目標を用いた人事評価のことを「定性評価」と呼ぶこともあります。
1-2. 定性目標を決めるメリット
定性目標を決めるメリットは、評価基準や課題を明確化しやすくなる点にあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、3つ紹介します。
組織が求める人物像を明確化できる
定性目標では、会社が必要とするスキルや能力、人物像、行動の質などを言語化し、明確に設定します。数値ではなく言語として設定することで、数字にとらわれず、会社が求める理想像を目標にできることが大きなメリットです。
現状の課題を早期に発見・解決しやすい
目標を数値にしてしまうと、数字さえ達成していれば課題や欠点が目につきにくくなります。「なぜ達成できたのか」を考える機会がないため、よりよい方法の発見や課題の解決につながりにくいです。定性目標を設定していれば、プロセスを見直すことで成功に隠された課題を発見、解決できるでしょう。
また、目標が達成できなかった場合も、定性目標を設定していればプロセスが明確になるため、「どこに問題があったのか」を考えやすくなります。
数値化しにくい貢献を評価できる
数字や成果になりやすい営業や販売などと比べると、バックオフィス業務は定量的に評価をすることが難しいです。しかし、定性目標を設定しておけば、仕事ぶりや責任感、協調性など数字にならない貢献を評価できます。
これによって人事評価の不公平感を減らし、信頼関係を構築して従業員のモチベーションを維持しやすくなります。
2. 定性目標と定量目標の違い・使い分け

定性目標と定量目標は、それぞれの内容や違いを理解し、使い分けることでより適切な目標管理ができ、公平性の高い評価にもつながります。違いと使い分け方を具体的な例を用いて解説します。
2-1. 定性目標と定量目標の違い
定性目標は数値化できない人物像や能力などを中心に目標とし、定量目標は数値化できる売上や契約数などを目標とします。そのほかにも以下のような違いがあります。
| 定性目標 | 定量目標 | |
| 目的 | 数値化できない個人の質や状態を目標とし、成長や関係性の改善、社内文化の強化などを図ること | 売上や達成度など数値化できるものを目標とし、収益の改善や具体的な行動計画につなげること |
| 評価方法 | 評価者の主観やフィードバック | 数値やデータ |
| 活用場面 | 人材育成、コミュニケーションの改善、顧客満足度の向上など、行動指針を必要とする場面 | 売上向上、コスト削減など数値によって成果が図れる場面や、客観的な評価が求められる場面 |
2-2. 定性目標と定量目標の使い分け
目標管理をするうえで重要なのは、定性目標と定量目標を使い分け、組み合わせることです。どちらかに偏らず、業務の性質や目標達成までの期間で使い分けるとよいです。
たとえば、営業や生産部門などは、実績や成果を数値化しやすいです。こうした業務は数字による目標が設定しやすいため、定量目標が適しています。
一方でバックオフィス業務など、チームワークや顧客へのサポートなど、数値化できない業務に対しては定性目標が適しています。
また、中長期的な目標は定性目標、短期目標には定量目標で管理するとよいでしょう。中長期的な定性目標として「顧客満足度を改善する」を設定したとします。これを達成するために、短期的な定量目標として「納期の遅れを〇%減らす」そのために「業務効率を〇%改善する」などのように設定すると効果的です。
関連記事:定量目標と定性目標の違いや使い分けのポイントを解説
3. 定性目標の設定方法と評価方法

定性目標は数値や数量で表せないため、設定する際に戸惑いを覚える人もいるかもしれません。定性目標の設定方法を3つのステップに分けて解説していきます。
3-1. 社員の理想像を言語化する
まずは社員の理想像を言語化しましょう。「自社にとってどのような人物像が望ましいか」「自社の経営目標を達成するため、どのような人材が必要か」「業務遂行にあたって、どのようなスキルセット(社員の能力や資質)が必要か」といった視点から、中長期的な定性目標を設定します。例えば、顧客満足度の改善が企業の経営課題の場合「接客技術の向上」や「お客様への誠実さ」などを定性目標として設定します。
3-2. より短期的な行動目標を決める
中長期的な定性目標を実現するために必要な要素を洗い出し、より短期的な行動目標を決めましょう。社員の理想像は、あくまでも最終的に目指すべきゴールです。定性目標の達成に向けて何が必要か逆算し、目標達成に向けたToDoリストを作成していきます。
3-3. 定期的に定性目標を振り返る
定性目標を設定したら終わりではなく、定期的に振り返りやフィードバックをおこなうことが大切です。社員が苦戦している場合は、目標達成に向けたプロセスが適切か、別の目標のほうが適切かなどを考慮し、定性目標を見直します。上司と部下の1on1ミーティングや、週1回のチェックインミーティング(参加者が1人ずつ順番に話すミーティング)などの機会を設ければ、より効果的に定性目標の振り返りをおこなうことができます。
3-4. 達成基準と評価方法を決める
達成基準と評価方法も決める必要があります。
定性目標では達成基準や評価方法があやふやになりやすいため、明確化する必要があります。
たとえば、必達目標と努力目標を分けて設定し、達成度合いによって点数を割り振り、それを元に評価する方法があります。
必達目標を達成した:3点
必達目標を達成していないが改善があった:2点
必達目標達成せず改善も見られない:1点
努力目標以上の成果を出した:5点
努力目標を達成した:4点
一例ですが、このように設定しておくと定性評価でも曖昧さがなくなります。しかし、これだけでは見えにくい部分もあるため、人間性や協調性、主体性など、個人の行動を客観的に見て、評価する項目を設定しておくとよいでしょう。
4. 定性目標を設定する際のポイント

定性目標を設定するときのポイントは4つあります。
- 目標達成までの道筋をしっかりと考える
- 定量目標とのバランスを考慮する
- 目標管理シートを併用する
- 振り返りや見直しを定期的にする
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
4-1. 目標達成までの道筋をしっかりと考える
定性目標は数値や数量で表せないため、人によって何をすべきかが変わります。例えば「電話対応を明るく元気におこなう」という定性目標を設定する場合、社員によって明るさや元気のよさの解釈が異なるかもしれません。定性目標を設定するときは、目標達成までの道筋を考え抜き、しっかりと社員に課題を提示することが大切です。その点でも、中長期的な定性目標とセットで、より具体的な短期目標を設定することをおすすめします。
4-2. 定量目標とのバランスを考慮する
人事評価制度に定性目標を取り入れる場合は、定量目標とのバランスを考慮しましょう。実績や成果を重視した定量目標に偏ると、社員が人事評価に納得せず、不満やストレスを感じる可能性があります。一方、定性目標の比重が大きすぎる人事評価制度も問題です。定性評価は人事担当者の価値観に左右される部分が多く、客観性が欠けやすいというデメリットがあります。また、数字で表せない社員の行動や資質をひとつずつチェックしていくのは、人事担当者にとって負担が大きくなります。こうした観点から、定量目標と定性目標のバランスは、定量目標が6、定性目標が4の割合で設定するのが適切と考えられています。
関連記事:定量目標と定性目標の違いや使い分けのポイントを解説
4-3. 目標管理シートを併用する
目標管理シートで目標を可視化しておくと、定性目標の曖昧さを解消しやすくなります。
定性目標として設定することが多いのは、プロセスや行動、姿勢、スキルなどですが、それらを目標管理シートで管理できれば達成度合いやどのように達成したかなどが分かりやすくなります。
その結果、納得感が高まり、つぎに目指すべき目標も見えてくるため、モチベーションの維持や自己評価のしやすさにつながります。
4-4. 振り返りや見直しを定期的にする
定性目標は設定したあとにも定期的に見直し、達成度や次の目標の設定などを考えていく必要があります。
行き詰っている場合や目標がぼやけているような場合は、1on1ミーティングやチェックインミーティングによってサポートしなければなりません。従業員一人ひとりの状態を確認するためにも、定期的な振り返りが必要です。
定性目標の設定だけして放置している状態では、目標を達成しているのかもわからず、課題や改善点も見いだせないまま意味のないものになってしまうでしょう。
5. 定性目標の書き方・具体例

人事評価制度に定性目標を取り入れようか考えている人事担当者向けに、定性目標の具体例を3つ紹介します。本記事で紹介した例を参考に、自社に合わせて定性目標を設定しましょう。
5-1. 営業職の例
営業職の場合、売上目標や新規顧客獲得数など、数字で表せる定量目標を用いた人事評価が中心となります。しかし、定量目標だけでは社員が人事評価に不満を抱く可能性があるため、適度に定性目標を用いて勤務態度や働きぶり、コミュニケーション、チームワークなどの目に見えない項目を評価することが大切です。例えば、営業職の定性目標の例は以下のとおりです。
- 営業チームと積極的にコミュニケーションをとる
- リーダーシップを発揮し、チームメンバーをまとめる
- 顧客との商談の際、アイスブレイクに力を入れてみる
5-2. 事務職の例
事務職の人事評価では、実績や成果で表せる項目が少ないため、定性評価がメインとなります。事務職の場合、仕事に対する姿勢や正確性、業務効率改善への取り組み、協調性などを定性目標として設定しましょう。例えば、事務職の定性目標の例は以下のとおりです。
- 業務改善の提案を積極的にする
- 事務作業の生産性を高める
- メリハリをつけて仕事をする
5-3. SE(システムエンジニア)の例
SE(システムエンジニア)の定性目標を設定する場合、業務品質やスケジュール管理、新しいスキルの獲得などが主なゴールとなります。例えば、SEの定性目標の例は以下のとおりです。
- 納品物の品質を先月よりも高める
- 納品物の漏れや遅延を0回にする
- 新しいプログラミング言語を勉強する
- プログラミング言語の資格を習得する
6. 失敗につながりやすい定性目標の例と解決策

定性目標を設定しても、形骸化してしまったり、不満がでてしまったりすることがあります。そうした失敗をしないために、失敗例を知っておきましょう。
6-1. 定性目標の理想像が高すぎる
定性目標は数値化できない目標を設定します。しかし、その場合でもあまりにも高すぎる目標にしてしまうと、現実性がなく形骸化しやすくなります。
たとえば、「自社ではこんな人物像を求めている」として、理想の人物像を目標に設定したとしましょう。それが主体性や協調性があり、コミュニケーションもしっかりとれて仕事も効率的にでき、スキルアップも自らしている、のような完璧な姿だと「自分とは程遠いから無理だ」と諦めてしまいます。将来的にそうした理想の人物像を目指すことは大切ですが、まずは現実的な人物像を作り、手が届きそうな目標にすることが大切です。
6-2. 具体性がなく目標がぼやけてしまう
定性目標は数値化できない目標を言語化しますが、進捗を可視化することが難しいです。そのため「自分はどれくらい達成できているだろうか」という不安が生まれやすく、目標もぼやけやすいです。
解消するには目標管理シートや小目標を設定し、プロセスや達成度を明確化していきましょう。定期的に上司とミーティングをし、客観的な評価を得ることも効果的です。
6-3. 評価が不正確で公平性がない
定性目標の達成度は、評価者の主観やフィードバックが基本です。そのため、評価者が評価エラーを起こしていたり、フィードバックが不十分だったりすると、不正確な評価になってしまいます。
公平な評価をするためには、達成基準を設定し、定期的なフィードバックを受けることが必要です。
6-4. 定性目標を立てただけで終わってしまう
一定の数値を達成しなければならない定量目標と比べると、定性目標は達成への意識が弱くなりやすいです。「いずれ達成できればいいだろう」「やってもやらなくても変わらない」のように受け止められることも多いため、定性目標の重要性や評価方法などを十分に周知しなければなりません。
定性目標がどのように組織全体に影響するのか、しっかりと会社全体で考えて意識を変えましょう。
7. 定性目標の意味や設定方法を知り、社員のモチベーションを高めよう

定性目標は、数値や数量で明確に表せない定性的な目標のことです。企業の人事評価制度では、「月の売上●●万円」「新規顧客獲得●●件」など、数値化可能な定量目標と対になっています。公平で納得感のある人事評価制度を構築するうえで、定性目標と定量目標をバランスよく組み合わせることが大切です。
定性目標を設定するステップは3つに分けられます。
- 社員の理想像を言語化する
- より短期的な行動目標を決める
- 定期的に定性目標を振り返る
定性目標を設定したら終わりではなく、1on1ミーティングやチェックインミーティングなどの機会を設け、定期的に目標達成状況を振り返りましょう。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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