帰属意識とは?エンゲージメント・ロイヤリティとの違いや高める施策を解説
更新日: 2025.8.19 公開日: 2025.3.28 jinjer Blog 編集部

帰属意識は、企業の成長に影響を与える重要な要素です。帰属意識が高い従業員は、自分の役割を主体的に果たし、企業の発展に意欲的に貢献します。
一方、帰属意識が低いと、離職率が上昇したり生産性の低下を招いたりする可能性があるため、企業は帰属意識を高めるための施策を積極的におこなわなければなりません。
本記事では、帰属意識の定義や似ている用語との違い、高めるための施策について解説します。帰属意識が低下する原因や施策を理解し、企業の成長につなげましょう。
従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、「従業員満足度のハンドブック」を無料でお配りしています。
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1. 帰属意識とは


帰属意識とは、従業員が組織に所属しているという意識・感覚をもつことを指します。企業だけではなく、学校・宗教・自治体など、さまざまな集団において用いられる言葉です。
帰属意識の高い従業員は、組織への愛着や興味・関心が強くなり、組織の一体感が生まれやすくなります。企業の目標達成に向けて、積極的に貢献しようとする気持ちも高くなるでしょう。
また、企業への満足度や信頼感が高まるため、組織に所属し続けたい気持ちが強くなります。帰属意識は企業の継続的な成長のために重要な要素であり、従業員の帰属意識を向上させることは、経営上の重要なテーマといえるでしょう。
1-1. 帰属意識が注目されている理由
少子高齢化による労働力不足が進んでいることは、帰属意識が注目されている理由のひとつです。多くの企業が人材の確保に苦労しており、既存の従業員を長く定着させるために帰属意識を高ようとしています。
人材の流動化が進んでいることも、帰属意識に注目が集まる理由といえるでしょう。転職することが一般的な社会となっているため、採用した従業員に長く活躍してもらうためには、帰属意識を高めなければなりません。
1-2. 帰属意識が「気持ち悪い」といわれる理由
企業がさまざまな施策を通して帰属意識を高めようとする一方、従業員からは「気持ち悪い」などといわれることもあります。帰属意識を高める施策を「愛社精神の押し付け」などと捉え、不快に感じる従業員もいるでしょう。
近年は仕事に対する価値観や働き方の変化に伴い、仕事とプライベートの両立を重視する傾向があります。以前のように会社での飲み会やイベントを実施するだけでは、帰属意識を高めることは難しいでしょう。
むしろ、参加を強制することで帰属意識が低下する可能性もあるため注意が必要です。帰属意識を高めるためには、時代の流れや社風に合った対策を検討しなければなりません。
2. 帰属意識と似た言葉との違い


帰属意識と似た言葉についても確認しておきましょう。代表的な言葉の意味は以下の通りです。
| 意味 | |
| 帰属意識 | ・組織への所属意識や感覚
・従業員から企業への一方的な関係 |
| エンゲージメント | ・約束・絆・契約など企業への貢献意欲
・従業員と企業の双方向の関係性 |
| ロイヤリティ | ・忠誠心・誠実さなど、企業への信頼や愛着の深さ
・企業と従業員の間に主従関係がある |
2-1. 帰属意識とエンゲージメントとの違い
エンゲージメントとは、企業と従業員の深い絆や関係性を表す言葉です。エンゲージメントが高い場合、企業と従業員が良好な関係を築けている状態といえるでしょう。従業員は企業に貢献したいという気持ちが強いため、生産性の向上や企業の成長を期待できます。
帰属意識との大きな違いは、双方向であることです。帰属意識は、従業員から企業への一方的な気持ちであるのに対し、エンゲージメントは企業と従業員の関係性を表します。
エンゲージメントは、帰属意識を確認するための一つの指標といえます。帰属意識が高まれば、エンゲージメントも向上し、組織のパフォーマンスに寄与するでしょう。
2-2. 帰属意識とロイヤリティとの違い
ロイヤリティとは、企業に対する忠誠心や誠実さのことです。ロイヤリティが高い従業員は企業の理念に共感しており、自社の商品やサービスを積極的にアピールしたり、長く働いてくれたりするでしょう。
帰属意識とロイヤリティの大きな違いは、主従関係の有無です。ロイヤリティには企業と従業員の主従関係が存在しますが、帰属意識には主従関係は存在しません。
2-3. 帰属意識と所属意識の違い
所属意識とは、単純にチームや組織に所属しているという認識を示す言葉です。所属しているという事実を認識しているだけで、愛着や忠誠心といった感情的なつながりは弱いといえるでしょう。
一方の帰属意識は、所属している組織に対する愛着や興味が強い状態を意味します。単に所属しているだけではなく、感情的なつながりが強い状態といえるでしょう。
2-4. 帰属意識と帰属感の違い
帰属感は、所属意識と近い意味をもつ言葉であり、チームや組織に所属している感覚を意味します。とくに強い愛着や興味がない場合もあり、その点で帰属意識とは異なっています。
3. 帰属意識が高いメリット


帰属意識が高いメリットは、以下の通りです。
- 組織力や生産性の向上
- 離職率の低下
- 従業員のモチベーションの向上
それぞれのメリットについて簡単に確認しておきましょう。
3-1. 組織力や生産性の向上
帰属意識が高いと、組織が活性化し組織力や企業全体の生産性が向上します。従業員がより良い職場環境を求めて業務改善を進めたり、仕事へ積極的に取り組んだりするためです。
また、意見交換も積極的におこなわれるので、職場の改善に向けた議論が活性化するでしょう。コミュニケーションも活発におこなわれるため、チームワークも強化されます。
3-2. 離職率の低下
帰属意識が高いと、離職率の低下につながります。帰属意識が高い従業員は、ワークエンゲージメントが高く、定着率が上昇するためです。
ワークエンゲージメントとは、仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組んでいる状態を指します。厚生労働省は、従業員のワークエンゲージメントが高い企業は、人手不足でも定着率が上昇していることを公表しました。
人材が定着すれば、採用や教育にかかるコストも削減できるでしょう。
3-3. 従業員のモチベーションの向上
帰属意識が高いと、従業員のモチベーションが向上するメリットがあります。企業への愛着や信頼感から、積極的に貢献しようと考えるためです。
企業やチームの一員である自覚を持ち、全体の成功を自分事と考えて尽力しようとします。仲間意識が強いため、チームワークの強化も期待できるでしょう。
企業やチームに貢献したい気持ちから成長意欲も高まるため、自らスキルアップに努める習慣がつきやすいです。
4. 帰属意識が低いデメリット


帰属意識が低いデメリットは、以下の通りです。
- 離職率の上昇
- 生産性の低下
- 従業員の負担増加
各デメリットの詳細は以下の通りです。
4-1. 離職率の上昇
帰属意識が低いデメリットとして、離職率の上昇が挙げられます。従業員が現職の環境にこだわらなくなり、別の職場環境を視野に入れやすくなるためです。
具体的には「この会社じゃなくてもいい」「別の会社で活躍してみたい」と考えるようになり、そのまま勤め続けたい気持ちが薄れます。終身雇用や年功序列の崩壊など、外部的な要因も相まって、従業員は転職を考えやすくなるでしょう。
帰属意識が低いことでコミュニケーション不足に陥り、人間関係の悪化により離職につながるケースもあります。
4-2. 生産性の低下
帰属意識が低くなることで、企業全体の生産性が低下する可能性もあります。企業や業務に対する愛着が薄れることで貢献意欲がなくなり、生活のために仕方なく働いている状態になるためです。
具体的には組織をより良くしたいという考えがなく、業務改善などの取り組みに対して消極的になるでしょう。業務に対して主体性に欠け、受け身の姿勢になるため、生産性の低下につながります。
4-3. 従業員の負担増加
帰属意識が低下することで離職率が高まると、既存の従業員の負担が増えてしまいます。すぐに新しい人材を補充できれば問題ありませんが、なかなか採用できず、少ない従業員で多くの仕事をこなすケースもあるでしょう。
その結果、従業員のストレスが増え、さらに離職率が高まるという悪循環に陥る可能性もあります。
5. 帰属意識が低下する原因


帰属意識が低下する主な原因は、以下の通りです。
- コミュニケーション不足
- 企業のビジョンが不明瞭
- 待遇や評価への不満
- 働き方の多様化
- サポートの不足
自社が上記のような状態になっていないか、確認しておきましょう。
5-1. コミュニケーション不足
帰属意識が低下する原因として、従業員のコミュニケーション不足が挙げられます。コミュニケーション不足だと、良好な人間関係や協力体制を築けず、仲間意識や一体感をもちにくいです。
日頃から不明点などを気軽に聞けず、周囲に頼れないと考えるため、孤独感が生じやすいでしょう。「わからないことばかりで不安」「ここでうまくやっていける自信がない」と感じ、帰属意識の低下につながります。
5-2. 企業のビジョンが不明瞭
企業のビジョンが不明瞭であることも、帰属意識が低下する原因になります。従業員が組織の一員としての意識を持ちにくくなるためです。
たとえば、目標を達成しても個人的な達成感を得られるばかりで、企業のビジョンとの重なりを実感できません。自分の仕事が企業の成長にどのように貢献しているのかがわからず、帰属意識の低下を招きます。
5-3. 待遇や評価への不満
待遇や評価への不満があることも、帰属意識が低下する原因の一つです。「企業は自分のことを大切にしてくれない」と考え、愛着や信頼が薄れるためです。
企業が従業員に対してどのような待遇を提供しているか、適正に評価しているか、といった点は従業員にとって重要な関心ごとといえます。
従業員の努力に対し適切な評価をしなければ、優秀な人材の流出につながるおそれもあるでしょう。
5-4. 働き方の多様化
働き方の多様化により、帰属意識が低下するケースもあります。とくにリモートワークなどを導入しているとコミュニケーションの機会が減り、人間関係が希薄になったり、孤独を感じたりすることもあるでしょう。
多様な働き方を認め、多くの人材に活躍してもらうことは重要ですが、離れた場所で働くと帰属意識が低下しやすいため注意が必要です。
5-5. サポートの不足
企業や上司のサポートが不足していることも帰属意識が低下する原因のひとつです。教育体制が整っていない、困ったときに相談できない、といった職場環境では、従業員が不安や孤独を感じ、仕事に積極的に取り組めなくなってしまいます。
従業員を成長させるために仕事を任せたり、自分で考えさせたりすることは大切ですが、適度なサポートをおこなわないと帰属意識の低下につながるため注意しましょう。
6. 帰属意識を高めるには


帰属意識を高めるための施策は、以下の通りです。
- 企業のビジョンや価値観を明確にする
- コミュニケーションの活性化を図る
- 働き方や評価制度を見直す
- 福利厚生を充実させる
- 多様性を受け入れる
それぞれの施策について詳しく見ていきましょう。
6-1. 企業のビジョンや価値観を明確にする
帰属意識を高めるためには、企業のビジョンや価値観を明確にすることが重要です。企業文化やバリューを明確にし、従業員に共有することで一体感が生まれます。
すべての従業員が、共通の目標に向かえる環境を整備することが大切です。従業員が企業のビジョンや価値観を把握し、自ら行動し業務に反映できるようにしましょう。
6-2. コミュニケーションの活性化を図る
社内のコミュニケーションの活性化を図ることも重要です。社内の交流が促進されることで、良好な人間関係の構築に役立ち、仲間意識が生まれるためです。
具体的には以下の施策を実施するとよいでしょう。
- 社内イベントの開催
- ランチ会の実施
- ミーティングの実施
- カフェコーナーの設置
業務に関連するコミュニケーションだけではなく、異なる部署やチームメンバーとのコミュニケーションを促すことが有効です。オープンなコミュニケーション文化を醸成することで、従業員同士のつながりを強化できるでしょう。
6-3. 働き方や評価制度を見直す
働き方や評価制度を見直し、適宜改善することも帰属意識を高める施策の一つです。従業員のライフスタイルに合わせた勤務体系を導入すれば、ワークライフバランスを取りやすくなり、満足度が向上します。
また、成果に応じた公平な評価制度を導入することで、従業員の納得感を高め、帰属意識を向上させられます。フィードバックの機会を増やし、努力が正当に評価される環境をつくることを心がけましょう。
6-4. 福利厚生を充実させる
帰属意識を高めるためには、福利厚生を充実させることも重要です。さまざまな福利厚生を取り入れれば、従業員を大切にしているという気持ちが伝わり、組織に対する帰属意識が高まるでしょう。
ただし、従業員のニーズに合った福利厚生を取り入れなければ意味がありません。従業員の意見も聞いたうえで、最適な福利厚生を採用しましょう。
6-5. 多様性を受け入れる
多様性を受け入れることも帰属意識を高める方法のひとつです。年齢・性別・国籍などが異なる多様な人材を受け入れれば、自分も受け入れてもらえるという心理的安全性が高まり、長く働きたいという気持ちが強くなるでしょう。
多様性を受け入れることで、幅広いアイデアが生まれやすくなることも大きなメリットです。
ここで紹介した以外にも多くの施策があるため、気になる場合は下記の記事を参考にしてください。
7. 帰属意識を高め企業の成長につなげよう


今回は、帰属意識の意味や似た言葉との違い、帰属意識を高める方法などを紹介しました。
帰属意識とは、従業員が企業に所属していることを意識することです。帰属意識を高めることで、企業の生産性の向上や離職率の低下など、さまざまなメリットが得られます。
逆に帰属意識が低下すると、モチベーションや生産性が低下したり、離職率が上昇したりするため、適切な対策により帰属意識を高めていきましょう。
帰属意識を高めるためには、企業のビジョンを明確にし、コミュニケーションの活性化や評価制度の適正化に取り組むことが重要です。従業員の帰属意識を高める施策をおこない、企業の持続的な成長につなげましょう。



従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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