人材ポートフォリオとは?作り方や作成上の注意点を紹介
更新日: 2024.1.16
公開日: 2023.6.7
OHSUGI
企業の人事部門が効率化を目的として人材ポートフォリオを用いる例があります。人材ポートフォリオを活用すれば、組織の活動に必要な人材タイプを把握したり、人的資源がどのように構成されているのかを分析したりすることが可能となります。
企業の人材マネジメントを効率化するためにも、ぜひ人材ポートフォリオを導入しましょう。本記事では人材ポートフォリオの作成方法や運用のポイントについて説明します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人材ポートフォリオとは?
人材ポートフォリオとは、企業にとっての必要な人材が社内でどう構成されているのかを分析するマネジメント手法を意味します。
企業が事業計画を実現し業務の効率化を高めるためには、部署ごとに必要となる人材の種類や人数を把握しなければなりません。人材ポートフォリオを活用すれば、企業に求められる人材の分析や整理を効率よく行えます。
社内のどこにどんな人材がどれくらいいるのが効果的かというのが、人材ポートフォリオの軸となる考え方です。
「どこに」の部分では社内の部門やポジション、役職などを考えます。「どんな」の部分には、従業員のスキルや担当する業務内容、能力や適性、性格やビジョンといった要素が入ります。「どれくらい」の部分では従業員の人数に加え、勤務年数も考慮します。
項目ごとに社内の人員を分類して分析すれば、どんな人材が足りていないか、どの部署に余剰が生じているかを可視化できます。
1-1. 人材ポートフォリオが注目される理由
人材ポートフォリオが注目される理由は、2020年9月に経済産業省が発表した『持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会』における報告書『人材版伊藤レポート』で、人材ポートフォリオの重要性が説かれたからです。
『人材版伊藤レポート』では企業が継続して成長するために、人材を資本として捉える人的資本経営を提唱しています。この人的資本経営にとって重要になるのが、動的人材ポートフォリオです。組織に必要な人材を把握して、理想の状態に向けて柔軟に採用や配置、育成することが、企業としての成長につながります。
1-2. 人材ポートフォリオとタレントマネジメントの関係
人材ポートフォリオと大きく関係するのがタレントマネジメントです。タレントマネジメントは従業員の経験やスキルを社内で一括管理して、マネジメントに活かすことを意味します。そのため、人材の情報をまとめている人材ポートフォリオは、タレントマネジメントをおこなううえで欠かせないでしょう。
2. 人材ポートフォリオの作り方
まずは人材ポートフォリオを活用すべき理由や目的を明確にしましょう。続いて、具体的な人材ポートフォリオを作成し、分析や必要な対処を進めていきます。
ここからは、実際に人材ポートフォリオを作るときの流れを解説します。
2-1. 人材ポートフォリオの設定と分類を行う
人材ポートフォリオの作成では、自社に必要な人材のタイプを定義することが重要です。人材ポートフォリオの具体的な作成の方法はいくつかありますが、多くの企業では基準の軸をもとに人材タイプを分類し、作成に役立てています。
企業には個人で行う仕事やチームで行う仕事、既存のものを運用する仕事や新しいものを創造する仕事があります。人材ポートフォリオを作るにあたっては、個人やチームという要素をX軸に、運用や創造という要素をY軸に設定してみましょう。
続いて、この2軸と4象限の分類に対して自社の社員を当てはめていきます。このとき重要なのは、個々の従業員の性質を客観的に分析し、分類していくことです。
例えば、個人でおこない既存のものを運用する仕事の枠には、定められた作業を根気よく行える人材が適しています。組織で行い新しいものを創造していく業務の枠には、新プロジェクトを企画できる人材やマネジメント人材などが当てはまります。
人材ポートフォリオ作成にあたっての2軸4象限に設定すべき項目は個人やチーム、運用や創造という要素でなくてもかまいません。従業員の得意分野や志向、仕事のスタイルや考え方などを軸に、自社に合った項目を設定しましょう。
2-2. 人材ポートフォリオの内容を検証する
2軸と4象限の人材ポートフォリオを作成して従業員の分類を終えたら、その内容を検証していきます。
多くの場合、人材ポートフォリオの分析では枠ごとに余剰や不足が起きているものです。ルーティンワークが得意な人材に余剰がある、マネジメントができる人材が少ない、専門職が足りていないといったように、属性の偏りをチェックしていきましょう。
適切に分析をおこなえば、自社において強化や改革をすべきポイントも明らかになってきます。
2-3. 理想的な人材ポートフォリオに近づける
人材ポートフォリオの内容をもとに、理想となる人材ポートフォリオに近づける方法を検討していきましょう。
人材のバランスを理想的な状態にするための手段には、従業員の配置転換や新規採用といった方法が考えられます。また、研修や勉強会を実施して必要な人材を育てたり、評価制度や目標管理を通してスキルを補ったりするのも有効な手段です。
一部の枠に余剰な人材が多く固まっているときには、退出や解雇といったかたちで対応することもあります。しかし、従業員の退職や解雇を推奨するのはハードルが高いため、最終的な手段と考えるのが無難です。
まずは自社に在籍する従業員の配置換えや育成といった方法で、少しずつ理想的な方向へと調整していきましょう。
3. 人材ポートフォリオを活用するメリット
人材ポートフォリオを活用することで、次のようなメリットを得られます。
マネジメントに活用できる
自社の人材が明確になる
自社の方針や従業員に応じたキャリアの支援ができる
3-1. マネジメントに活用できる
人材ポートフォリオはマネジメントに活用可能です。人材ポートフォリオによって従業員それぞれの得意不得意やキャリアプランなどが把握できるため、それぞれに応じた部署や業務に配属できます。また、それぞれに応じた部署に配属することで人材育成やモチベーションのアップにもつながります。
3-2. 自社の人材が明確になる
人材ポートフォリオを作成するには、従業員について評価、分析が必要です。このように評価、分析をしているうちに自社にどのような人材がいるか、反対にどのような人材が足りていないかが明確になります。
3-3. 自社の方針や従業員に応じたキャリアの支援ができる
人材ポートフォリオでは、従業員がどのようにキャリアについて考えているかを把握できます。そのため、自社の方針や従業員に応じてキャリアの支援が可能です。特に自社のビジョンと合致したキャリア志向を持っている従業員であれば、より効果的にキャリアアップを進められるでしょう。
4.人材ポートフォリオのデメリット
人材ポートフォリオはマネジメントへの活用、自社の人材が明確になるなどのメリットがあります。一方で人材ポートフォリオを作成するための適性分析には時間がかかるというデメリットもあるため、注意しましょう。適正分析を誤ってしまうと、従業員に適さない配置先に配属してしまい、従業員の不満増加につながりかねません。
そのため、しっかりと作り方を把握したうえで、適正な分析につなげましょう。
5. 人材ポートフォリオを作成するときの注意点
人材ポートフォリオを適切に作成すれば分析や改善に役立ちます。一方で、間違った作り方で作成すると思ったような成果が得られないため注意が必要です。
ここからは、人材ポートフォリオを作成するときの注意するポイントを紹介します。
5-1. 従業員に優劣をつけない
人材ポートフォリオはあくまで社内の状況を分析するためのツールです。人材ポートフォリオの分類をもとに従業員に優劣をつけるのは不適切です。
企業にはさまざまなタイプの人材が混在しているものです。従業員に優劣をつけて判断した結果、人材のタイプがさらに偏ってしまう可能性も考えられます。また、一部の従業員の不満を煽るリスクも考えられるので気をつけましょう。
5-2. 従業員の希望を考慮する
人材ポートフォリオの内容をもとにして企業の人事異動などの対処を行うこともあると思います。しかし、企業側の考えや都合のみで人事異動を行うと、従業員が不満を抱える可能性があります。
希望に沿わない配置換えをおこなった結果、モチベーションが大きく低下したり離職を招いたりしては意味がありません。人事異動などの対処をする際には、従業員の意思や要望をできるだけ考慮しましょう。
5-3. すべての従業員を対象にする
人材ポートフォリオは正社員だけでなく、アルバイトやパート、派遣社員などすべての従業員を対象として作成します。
一部の社員のみの情報を使って人材ポートフォリオを作成しても、社内のバランスを検証することはできません。全体像を把握するためにも、雇用形態を限定せずに分析をおこないましょう。
5-4. 時間をかけて戦略的に運用する
人材ポートフォリオは単に作成すればそれで効果を発揮するというものではありません。人材ポートフォリオの作成や分析にはある程度の手間や予算がかかります。
人材ポートフォリオ作成では、社内のすべての従業員のデータを集める必要があります。これらを枠組みに当てはめて分析し、人事戦略に活かすことでやっと効果を発揮するのです。
人材ポートフォリオを作成する意義や目的を見極め、検討を重ねながら長期的に取り組むことが大切です。
5-5. 動的に管理する
人材ポートフォリオを有効活用するには、状況に合わせた動的な管理が大切です。先述のように人的資本経営につなげるには、状況に応じた柔軟にポートフォリオを動的に管理することが欠かせません。
6. 人材ポートフォリオを導入している企業の事例
人材ポートフォリオを実際に導入している企業の事例を紹介します。人材ポートフォリオは次のように活用可能です。
- 人材ポートフォリオに基づいた採用・教育を実施
- 人材ポートフォリオによる経営プログラムを実施
6-1. 人材ポートフォリオに基づいて採用・教育を実施
この事例では作成した人材ポートフォリオに基づいた採用・教育を実施しています。年に1回、全社を挙げて必要となる人材の要件や人数を人材ポートフォリオとして洗い出して、その結果を採用や教育に活用しています。
6-2. 人材ポートフォリオによって年齢や社歴に関係なく幅広い層に向けた経営プログラムを実施
優秀な人材の確保や育成を目的に、年齢や社歴に関係なく経営陣レベルで人材ポートフォリオを活用している事例です。年齢や社歴に関係なく人材ポートフォリオを活用することで、幅広い世代に向けた経営プログラムを実施できます。
7. 人材ポートフォリオを作成して効率的な人事戦略を進めよう
人材ポートフォリオとは人材タイプの過不足をチェックするためのツールです。各部署やプロジェクトに対して必要な人材を適切に配置すれば、企業全体の業務効率を高められます。
人材ポートフォリオを運用する際には、より効果が出る手法を見極めることが大切です。自社に合った項目を設定したり従業員を丁寧に分析したりと工夫し、人事戦略に役立つ人材ポートフォリオへと昇華させましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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