タレントマネジメントの導入で必要な項目
更新日: 2024.7.11
公開日: 2020.9.7
OHSUGI
タレントマネジメントは、従業員の能力や経験を一元管理し、適切な人材配置やリーダー育成、採用などに活用できるマネジメント手法です。
マネジメントに必要な情報を収集する際には、さまざまな項目ごとに社員を評価・判断します。そのため、項目設定を間違えると運用がうまくできない可能性があります。
基本的で欠かせない項目に加え、それぞれの会社が抱える課題を反映させた項目を設定することで、人事上の問題を解決しやすくなるでしょう。
ここでは、タレントマネジメントにおける項目設定の重要性や欠かせない項目、マネジメントをおこなう際のポイントなどについて説明します。
目次
1. タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、社員情報を把握して適材適所の人員配置をおこなうためのマネジメント手法です。
情報をデータ化する際には、社員1人ひとりを指標ごとに評価・判断しますが、この指標を一般的に「項目」と呼びます。
これらの項目を総合的に判断することで、その社員が持っているスキルや経験してきた業務、実力などがわかるので、当該社員の能力を最大限に発揮できるような人員配置が可能になります。
2. タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントの活用方法はいろいろあるので、目的は企業によって異なるかもしれませんが、主に「適材適所の人材配置による定着化」と「リーダーの育成」の2つが挙げられます。
近年は、少子高齢化により労働人口がどんどん減少しています。そのため、求人募集をしても優秀な人材が見つからないということも少なくありません。つまり、企業にとって今いる従業員は大切な財産となっているので、離職を事前に防ぐことが重要課題になります。
タレントマネジメントは、従業員のスキルや経験、思考を把握できるので、適材適所に人材を配置できます。自分に合った、もしくは自分が求める業務につければ従業員の満足度もあがり、定着化させることも可能になるのです。
また、タレントマネジメントを活用すれば、従業員が描くキャリアビジョンも把握できます。目指すビジョンに「リーダー」や「役職」があれば、そのための業務をアサインしたり適した研修を実施したりできるので、効率よくリーダーを育成することが可能です。
3. タレントマネジメントでの項目設定の重要性
タレントマネジメントは自社の人事課題を解決するためのものなので、導入する前に人事における課題を明確にしておかなければなりません。
人員の配置がうまくいってないのか、後継者候補が育っていないのか、会社ごとに人事上の課題は異なります。その課題を要素分解していくことで、課題を解決するためにはどのような項目をもって社員を評価・管理すべきかを決めることができます。
項目設定が間違っていると、タレントマネジメントの運用自体はうまくいったとしても、その結果が自社の課題の解決に直結しないということになります。
そのためタレントマネジメントでは、項目設定が非常に重要な意味を持つのです。
4. タレントマネジメントで必要な項目
タレントマネジメントで設定すべき項目は会社ごとに異なりますが、主に5つの項目が挙げられます。
- 従業員の基本的な属性に関する情報
- 従業員の能力・やスキル情報
- 従業員の価値観・考え方の情報
- 従業員の勤怠・行動情報
- 従業員のキャリア情報
これらの項目は、業態業種に関わらずどのような会社でも必要になりますが、さらに必要な場合はマネジメントの目的に合わせて決めていきましょう。
ここえは、基本となる5つの項目を解説します。
4-1. 従業員の基本情報
従業員の情報は、業種や職種、マネジメントの目的に関係なく絶対に必要な項目です。
基本的な属性には年齢・性別・所属部署・役職などが含まれ、社員を検索する際には必ず必要であり、かつ使用する機会も多い情報です。
また、変わることの多い情報でもあるので、社員の状況を適切に把握するためにも、情報は常に最新の状態に更新しておかなければなりません。
4-2. 従業員の能力・スキル情報
社員の能力やスキルは、適切な人員配置をおこなううえで欠かせない情報のひとつです。
例えば、TOEIC950点の社員がいることが分かれば、その社員を海外との折衝をおこなう部署に配属することで、業務がうまく回る可能性が高くなるでしょう。
しかし、能力やスキルの中には、資格などでは測れない類のものも存在します。
例えば、リーダーシップや協調性、物事の本質を見抜く力などはいずれも仕事をすすめるうえで重要ですが、それらを数値で表すことのできるテストが存在するわけではありません。
そのため、このような能力やスキルを判断するためには、それぞれの会社で評価基準となる項目を設定して、上司や同僚・社員自身の評価によって会社独自の点数付けをするなどの工夫が必要です。
項目を自由に設定できることでフレキシブルな運用が可能なのも、タレントマネジメントの大きなメリットのひとつと言えます。
4-3. 従業員の価値観・考え方の情報
社員の価値観や考え方は、これまでの人生で親にどのように育てられてきたか、人とどのように接してきたか、どのような経験をしてきたかである程度方向性が決まります。
そしてこの価値観や考え方は、仕事をおこなううえでのモチベーションに大きく関わってくるので、社員の価値観や考え方に沿った人員配置を実施することが重要です。
ひとつのことに対して集中し続けて、その技術を磨くことに喜びを感じる人であれば、工場での生産部門に配属することで仕事に対する満足感が高まる可能性が高いです。
いろいろな人と接することや新しい環境に身を置くことを苦としない人であれば、営業で新規開拓を任せれば新しい取引先をどんどんと見つけてくるかもしれません。
価値観や考え方に関する情報は、就職活動時におこなわれる試験や面接である程度収集されていることが多いです。
ただし、そういった場だけでは収集しきれない情報も多いので、タレントマネジメントの項目に組み込んでチェックする必要性は高いと言えるでしょう。
4-4. 従業員の勤怠・行動情報
社員が普段の仕事においてどのように行動しているかに関する情報も、人員配置をおこなううえで重要な情報です。
営業であれば新規アポイントの回数や既存の顧客に対する電話連絡の頻度、接待の回数などが評価指標となるでしょう。
内勤であれば社内の人間との打ち合わせ回数や資料作成時間、部署内の会議での発言回数などが評価指標となりえます。また、遅刻・早退・欠勤といったネガティブな要素や、月の残業時間などは内勤・外勤に限らず重要な項目です。
いくら営業成績が良くても、遅刻が多いような社員の評価は高くなりませんし、立派な資料を作成していようともその分残業時間が多い場合も、手放しでの高評価とはならないでしょう。
4-5. 従業員のキャリア情報
社員がこれまでどのようなキャリアを歩んできたかも、タレントマネジメントで管理すべき項目のひとつです。
歩んできたキャリアを確認することで、その社員が希望している仕事の方向性が分かることが多いので、人員配置に役立てることができるからです。
所属してきた会社・部署だけでなく、その中でどのような仕事を手がけてきたかまで分かると、人員配置の精度がより高まります。
また、社内での表彰経験や参加したことのある研修の内容なども合わせて把握しておくと、より多方面からの判断が可能になります(これらの要素は能力やスキルに関する情報として管理される場合もある)。
社員が今後希望しているキャリアと、会社が社員に対して今後期待しているキャリアが合致することで、社員もモチベーションを高く維持しながら働くことができるでしょう。
5. タレントマネジメントの項目からわかること
タレントマネジメントの項目によってわかることは、以下の3つがあります。
- 性格(先天的・後天的)
- 行動特性
- スキルや経験
によってそれぞれの社員を管理することで、各社員について以下のようなことが把握しやすくなります。
5-1. 性格(先天的・後天的)
タレントマネジメントの項目を記入してもらうことで、従業員の性格を把握できます。
先天的な性格は生まれ持ったものなので、会社に入ってからの指導や教育でそう簡単に変えられるようなものではありません。そのため、その人の性格に沿った人員配置を考える必要があります。
後天的な性格や価値観は、家庭環境や周囲の人間との関わりによって長い時間をかけて形成されるものであり、先天的な性格同様に容易には変えられません。
ただ、先天的な性格よりは変更できる余地があるので、その社員がずっと自社で働き続けるという前提があるのであれば、業務を通じて会社が求める方向に徐々に矯正していける可能性はあります。
5-2. 行動特性
タレントマネジメントの勤務態度や業績を評価する項目からは、行動特性を把握することができます。
行動特性とは、目的を達成するためにその人がどのような行動を取る傾向にあるかを示すものです。何かわからないことが発生したとき、周囲の人にすぐ聞いて確認する人もいれば、まずは自力で調べようとする人もいます。
プレゼンをおこなう際に、定量的なデータを中心に資料作成する人もいれば、自分の足で稼いだ情報をもとにして主張する人もいます。
優れた業績を挙げている人の行動特性を分析していくと、他の社員には見られないような行動特性が業績に直結しているケースもあるので、そういった行動を社内で推奨することで業績の向上が期待できます。
また、独自の行動特性をおこなうきっかけになったのが、何らかのセミナーや研修である場合は、会社として社員を当該セミナーや研修に参加させるきっかけにもなるでしょう。
5-3. スキルや経験
タレントマネジメントでは、スキルを「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分類することが多いです。
ヒューマンスキルは対人関係において発揮される能力であり、テクニカルスキルはある特定分野での高い知識や技術を指します。コンセプチュアルスキルは物事を構造的・概念的にとらえることで、本質を把握して適切に対処できる能力です。
知覚しやすいスキルとそうでないスキルがありますが、業務経験も併せて考えることで、社員それぞれが長けているスキルを把握しやすくなるでしょう。
社員の育成方針などにもよりますが、社員が持っているスキルと部署が必要としているスキルが異なる場合は、なるべく早く人事異動を行うようにするなどの手が打てます。
6. タレントマネジメントをおこなう際のポイント
タレントマネジメントをおこなう際のポイントは、下記の3つになります。
- システムの導入を検討する
- 経営者・後継者候補に対しては異なる項目設定が必要
- 最初から完ぺきを目指さない
ここでは、これら3つのポイントを解説していきます。
6-1. システムの導入を検討する
紙ベースやエクセルなどアナログな方法で社員の情報管理をおこなっている場合、システムの導入を検討してみるのがポイントです。
もちろんアナログな方法でも管理できますが、あらたにマネジメントシステムを導入する場合は流れを整えるだけでも膨大な時間がかかります。さらに、必要な情報を取り出すのも大変です。
システムであれば、入力するだけでデータが作れて一元管理ができますし、情報を検索したり更新したりするのも簡単です。また、製品によってはクロス分析のように、経営戦略の人事に役立つ機能が搭載されているものもあるので、担当者の負担を最大限に抑えつつ、導入することが可能になります。
6-2. 経営者・後継者候補に対しては異なる項目設定が必要
タレントマネジメントでは経営者の育成をおこなうことも可能ですが、経営者や後継者候補となる人材に対しては、通常とは異なる項目設定をしなければなりません。
一般的な社員であれば、目の前にある課題に対処して自身が所属する部署が必要とする能力を磨いていけばOKです。それに対して経営者候補となる人材は、中長期的な課題に対処して自社のビジネスを横断的に俯瞰できる力を養わなければならないので、通常の人材とは判断指標が異なります。
そのため、経営者や後継者候補となる人材に対しては、リーダーシップの有無・最終決定権者の経験・長期的な課題に取り組んだ経験などが、タレントマネジメントでの評価項目となります。
ただし、会社によってビジョンや社会での立ち位置は異なるので、経営者に求められる条件も各会社で異なるのが一般的です。自社の経営者に求められる人物像を要素分解したうえで、それぞれの要素をタレントマネジメントでの項目として設定しましょう。
6-3. 最初から完ぺきを目指さない
最初から完ぺきなタレントマネジメントをおこなおうとすると、項目が多くなってしまい、情報の一元管理ができるようになるまでに膨大な手間と時間がかかってしまいます。
確かに、情報が多ければその分正確な分析ができるかもしれません。しかし、データ化までに時間がかかると情報が古くなってしまい人事業務に活かせない可能性もあります。
その間に人事異動がある場合は、結局不完全なデータでマネジメントをすることになるので、最初は基本的な情報から集めていくのがベストです。
また、人事部だけで集めようとするのではなく、各部署に協力してもらい、人事部に集めるような形にするとスムーズに進められるでしょう。
7. タレントマネジメントは自社にあった項目を設定しよう
タレントマネジメントでは、自社が抱えている人事上の悩みを解決することを踏まえたうえで、項目設定をおこなう必要があります。
能力やスキルに関する情報・価値観や考え方に関する情報などの欠かせない項目に加えて、自社独自の事情を反映させた項目を設定しましょう。
適切な項目設定ができれば、各社員の項目をチェックするだけで、的確な人員配置をおこなえるようになるので、組織としてのパフォーマンスの向上が期待できます。
また、経営者や後継者候補に対しては、通常とは異なる運用を実施し、効率的に人材の発見・育成をおこなえるように活用していきましょう。
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