試用期間満了で解雇するときの手続きをわかりやすく解説
更新日: 2023.8.28
公開日: 2022.9.27
MEGURO
試用期間を設け、本採用前に従業員の適性を判断している企業は多いでしょう。試用期間満了時に「本採用はできない」として解雇することはできるのでしょうか。
この記事では、試用期間満了での解雇について詳しく解説するとともに、手続きの流れや注意点をあわせて解説しています。
目次
紙で雇用契約書を取り交わしている場合、以下のような課題はないでしょうか。
・労働条件通知書を交付するために来社してもらったり、郵送したりするのが手間
・早く働き始めてほしいが、雇用契約の締結に時間がかかってしまう
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1. 試用期間満了で解雇できる?
「試用期間」という言葉から、お試し期間という気軽なイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、試用期間での雇用契約と本採用後の契約に違いはなく、同じ労働契約であることを理解しておく必要があります。
試用期間だからといって、会社が自由に本採用するかしないかを決められるわけではありません。理由があって試用期間満了時に本採用を見送る場合、それは「解雇」として取り扱われます。
通常、雇用している正社員を解雇することは容易ではなく、よほどの理由がない限りは難しいでしょう。試用期間満了時に解雇する場合は、通常の正社員と比べると解雇しやすいですが、客観的で合理的な理由があり、なおかつ社会通念上相当である必要があります。
合理的な解雇事由には、無断欠勤が多いことや、著しく協調性が欠けている場合などが挙げられますが、指導により改善の見込みがある場合、解雇は認められません。
「仕事の成果を出していない」「効率が悪くミスが多い」などの理由だけで本採用を拒否した場合は、不当解雇と判断される可能性が高いでしょう。
2. 試用期間満了で解雇するときの手続き
試用期間満了で解雇をする場合、通常解雇の流れと基本は同じです。しかし、本採用拒否の理由明示が必要になるなど少し異なる点もありますので、確認しておきましょう。
2-1. 就業規則の解雇事由を確認する
試用期間が終了して、本採用を拒否することができるのは、就業規則に解雇事由が明示されている場合です。そのため、まずは就業規則に試用期間での解雇について記載があるかどうか確認する必要があります。
就業規則に記載されている解雇事由を確認したら、解雇する従業員がその内容に該当するかどうかを見極めなければなりません。
解雇をするにあたっての正当な理由には、「勤務態度が著しく悪い」「業務遂行能力がない」なども含まれますが、これらは繰り返しの指導や注意を行っても改善が見られない場合にのみ、認められるものです。
就業規則で定めていた内容に該当していても、客観的な判断がなければ不当解雇になってしまいますので気を付けましょう。
2-2. 解雇予告を行う
試用期間開始から14日が経過している場合は、30日以上前に解雇予告を行う必要があります。予告をしない場合や、30日より前に解雇する場合は、不足分の手当を支払わなければなりません。
例えば、10日前に解雇予告をした場合、20日分は平均賃金から計算した手当を支払う必要があります。
なお、14日以内であれば解雇予告と手当は必要ありません。即日解雇が可能であるため、14日以内なら簡単に解雇しても良いと勘違いされがちですが、通常の解雇と同じように正当な理由が必要です。
極めて短い期間で適性がないと判断することは難しく、解雇権濫用とみなされるケースもあることに注意しましょう。
2-3. 解雇理由証明書を交付する
解雇理由証明書とは、解雇理由が記載された書類です。これは、会社が必ずしも発行しなければならないものではありません。しかし、従業員から請求された場合は発行義務が生じるため、2~3日以内を目安に速やかに交付する必要があります。
内容は従業員が希望する項目のみ記載するので、本人に確認を取った方が良いでしょう。解雇理由は、就業規則の規定に該当する具体的な理由を記載します。
書式は自由なので必要項目に合わせて作成しましょう。
3. 試用期間満了で解雇するときの4つの注意点
試用期間であるとはいえ、解雇は労使トラブルが起きやすい問題のひとつです。紹介する4つの注意点を把握し、不当解雇や法律違反にならないよう、適切に対応しましょう。
3-1. 試用期間中に指導や改善の機会を与えること
解雇の理由として、能力不足が挙げられることがありますが、短期間で能力がないと判断して解雇することは簡単ではありません。
経験者の中途採用では、能力に期待して採用することが多いかもしれませんが、適切な指導を行っていない状態で業務遂行能力がないと決めつけた場合、解雇が無効になる可能性があります。
たとえ、無断欠勤が多い場合でも注意や指導を行い、改善の機会を与えなければなりません。繰り返し指導や注意をしても全く改善されない場合において、はじめて解雇の有効性が高くなるのです。
3-2. 解雇前に面談を行い事前に伝えること
試用期間終了まで、本採用拒否についての会社側の意思表示が何もなく、突然解雇を言い渡した場合は、無効になるケースがあります。
解雇予告を行わず手当を支払ったとしても、解雇前には一度本採用が難しい可能性があることを面談等で伝えることが望ましいでしょう。
話し合いを一切せずに解雇した場合、万が一裁判等になったときに、強引な不当解雇であったと主張されるかもしれません。
なぜ試用期間満了で解雇をするのか、その理由を具体的に説明し、本人の気持ちや言い分を聞くことが大切です。
3-3. 就業規則に解雇についての規定があること
先ほど述べた通り、本採用を拒否するためには、解雇について就業規則で規定しておく必要があります。就業規則は労働契約の内容でもあるので、規定がない場合は解雇が無効になる可能性が高いでしょう。
どのような理由で解雇するのかを記載し、解雇できる基準を明確にしておくことが重要です。解雇できるかどうかの判断は就業規則に沿って行うため、トラブル防止のためにも必ず規定しておきましょう。
3-4. 新卒者の場合は要注意
新卒者は社会経験が少なく、即戦力を期待して採用するわけではないため、能力面や勤務態度などを理由とした解雇は注意が必要です。
裁判において新卒者は「できなくてあたり前」という考えが前提にあるので、解雇した場合、会社側の指導が足りていないことが問題視される可能性があります。
社会人としての一般常識やビジネスマナーなどから教え、会社が新卒者を育てていくことが求められるため、試用期間満了での解雇は難しいケースが多いでしょう。
4. 試用期間の途中で解雇する場合
試用期間の途中であっても通常の解雇と同様に、合理的な理由がある場合は解雇できます。しかし、満了時に本採用を拒否することと比べると、途中での解雇はよりハードルが高くなるでしょう。
満了時であっても、短期間で適性があるかどうかの判断は難しいものです。さらに早い試用期間の途中での解雇は、よほどのことがない限り正当な理由として認められないことがあります。
「試用期間中に重大なトラブルを起こした」「経歴詐称があった」など、途中で解雇するほど問題があった場合は、それを証明できる書類や証拠を集めておく必要があるでしょう。
5. 試用期間満了での解雇は合理的な理由が必要
客観的に正当な理由であり、社会一般に見ても相当であることが証明できる場合は、試用期間満了で解雇可能です。
手続き方法は基本的に通常の解雇と同じですが、就業規則で規定した解雇事由に沿って判断されるため、規定する内容は重要になります。
しかし、短期間で適性がないと判断して解雇することは容易ではありません。会社は、従業員への指導を十分に行った上で、改善の見込みがない合理的な理由を証明する必要があるのです。
トラブルを防ぐためにも、今回紹介した注意点をしっかり把握して、適切に対処していきましょう。
紙で雇用契約書を取り交わしている場合、以下のような課題はないでしょうか。
・労働条件通知書を交付するために来社してもらったり、郵送したりするのが手間
・早く働き始めてほしいが、雇用契約の締結に時間がかかってしまう
・契約更新の時期になると、大量の労働条件通知書を交付しなくてはならず面倒
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、雇用契約書の電子化です。システムを利用して雇用契約書を電子化すると、オンライン上で雇用契約書の締結や労働条件通知書の交付ができ、時間と場所を選ばずスピーディーに雇用契約を締結することができます。
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