試用期間は契約社員として雇用することは可能か詳しく解説
更新日: 2022.12.13
公開日: 2022.9.21
目黒颯己
企業の中には、採用した人材のスキルや適性を見極めるために、試用期間を設けるところもあります。
試用期間中、適性がないとわかった場合は採用を見送ることも考えなければなりませんが、一度正社員として雇用すると容易に解雇することができなくなります。
試用期間に合わせた有期雇用の契約社員として採用すれば、ミスマッチが発生したときのリスクを回避できますが、試用期間中の人材を契約社員として雇用することに問題はないのでしょうか?
今回は、試用期間中に契約社員として雇用することは可能かどうか、その場合の問題やリスク、試用期間中の適切な雇用方法について解説します。
目次
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1. 試用期間は契約社員として雇用することは可能?
正社員として採用した人材でも、試用期間中は有期雇用の契約社員として雇用することは、基本的に可能です。
ただ、正社員としての契約と、契約社員としての契約は一緒くたにすることはできません。
試用期間中は契約社員として雇用し、試用期間終了後は正社員として採用するという場合、まず有期雇用の契約社員として契約を締結し、試用期間が終了した時点で新たに正社員としての契約を結ぶ必要があります。
最初から正社員として契約する場合に比べると手間はかかりますが、試用期間中のみ契約社員として雇用するケースには、以下のようなメリットがあります。
1-1. ミスマッチを回避しやすい
人柄や能力を考慮して採用したものの、実際に業務を任せてみたら適性がなかった…というケースは少なくありません。
最初から有期雇用の契約社員として採用すれば、スキルや適性が一定基準に満たなかった場合、契約を更新しないことで人材のミスマッチを回避することができます。
1-2. 理解を得られれば、トラブルリスクが減る
最初から本採用を前提として試用期間を設けた場合、従業員は試用期間終了後、自動的に正社員として雇用されるものと認識します。
そのため、試用期間終了後に、適性がないから採用を見送ると通達した場合、労使間のトラブルに発展するおそれがあります。
一方、当初から◯ヶ月間は有期雇用の契約社員として雇用し、その結果次第で試用期間終了後に正社員として採用するという話を従業員にしておけば、試用期間が終わった時点で採用を見送ったとしても、トラブルに発展するリスクは低くなります。
2. 試用期間に契約社員として雇用することの問題・リスク
試用期間中の従業員を契約社員として雇用することには、メリットがある反面、いくつかの問題点があります。
リスクを正しく把握しないまま試用期間中に有期雇用契約を締結すると、後のトラブルの原因となりますので、デメリットもしっかり把握しておきましょう。
2-1. 契約期間中の解雇のハードルが高い
労働契約法第17条では、有期雇用契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間、労働者を解雇できないと定めています。(※注1)
ここでいう「やむを得ない自由」とは、当該契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず、期間満了を待たずに直ちに雇用を終了させざるを得ないような、特別な重大な事由を意味します。(※注2)
そのため、「能力が不足しているから」「適性がないから」といった単純な理由だけでは、試用期間中の有期雇用の契約を解除できないことになります。
試用期間の長さは企業によって異なりますが、たとえば試用期間を3ヶ月として有期雇用の契約を締結した場合、試用期間終了後の採用の有無にかかわらず、3ヶ月間は雇用し続ける必要があります。
※注1:労働契約法|e-Gov法令検索
※注2:有期契約労働者の期間途中解雇|厚生労働省
2-2. 試用期間とみなされる可能性がある
有期雇用契約は本来、試用期間として活用することを目的としたものではありません。
そのため、有期雇用契約終了後、ミスマッチを理由に契約更新を行わずに不採用とした場合、従業員側から有期雇用契約が試用期間だったと主張される可能性があります。
有期雇用契約が試用期間とみなされた場合、契約満了にともなう労働契約の終了は不当解雇にあたると判断されるおそれがあります。
実際、過去には、1年間の試用期間として有期雇用契約を締結した従業員の本採用を拒否し、解雇した事例について、不当解雇という判決が下されています。(※注3)
※注3:地位確認等請求事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会
2-3. 優秀な人材が集まりにくい
試用期間中、契約社員として雇用することを募集時に明示すると、就活者から「有期雇用期間が終了した後に、解雇される可能性がある」とみなされます。
試用期間後に本採用に至らない可能性がある職場は、就活生にとってハイリスクなので、そもそも応募先として選ばれなくなる可能性があります。
特に優秀な人材はあえてハイリスクな職場を選ぶ理由がないため、能力のある人を採用しにくくなるという欠点があります。
3. 試用期間中の適切な雇用方法
労使間のトラブルを避けるために、試用期間中の適切な雇用方法について、以下のポイントを押さえておきましょう。
3-1. 求人に契約社員として雇用することを明記する
試用期間の代替として有期雇用契約を締結する場合は、その旨を求人に明記する必要があります。
当初数カ月は有期雇用契約であること、期間中に適性がないと判断された場合は本採用を見送る可能性があることをきちんと求人に記載しないと、従業員との間でトラブルに発展する可能性があるので要注意です。
また、求人に記載するだけでなく、採用面接の際にも念を押し、誤解や食い違いが生じていないかどうか確認することも大切です。
3-2. 有期雇用期間と試用期間の違いについて説明する
試用期間の代替として有期雇用契約を行う場合、当該従業員には試用期間と有期雇用契約の違いについて十分な説明を行う必要があります。
というのも、試用期間は本来、解約権留保付労働契約に該当し、有期雇用契約とは契約形態が異なるためです。
解約権留保付労働契約は、一般的な解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められる契約ですが、解雇する場合は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされるものでなくてはなりません。(※注4)
一方の有期雇用契約は、契約更新を行わないことについて、あらかじめ労使間で明確な合意を得ていれば、雇い止めすることが認められます。
両者の違いを認識せず、有期雇用契約を解約権留保付労働契約(試用期間)と誤認されていた場合、労使間のトラブルに発展する可能性があります。
採用面接の際は、当初締結するのはあくまで有期雇用契約であり、解約権留保付労働契約ではないこと。前項目1に従って、契約満了の際は更新しない(本採用しない)可能性があることをきちんと説明しておきましょう。
※注4:試用期間中の解雇|厚生労働省
3-3. 本採用の可否は早めに伝える
試用期間の代替として有期雇用契約を締結する場合は、本採用の可否について早めに従業員に伝えることが大切です。
なぜなら、本採用を見送る場合、従業員は有期雇用契約期間の満了後、直ちに今後の身の振り方を決めなければならないからです。
契約社員の場合、本採用の可否にかかわらず、原則として契約期間満了までは雇用する決まりになっていますので、その間に今後の身の振り方を考えられるよう、なるべく早めに結果を伝えるようにしましょう。
4. 試用期間に契約社員として雇用する際は、十分な説明が不可欠
試用期間に代えて、当初数ヶ月間を有期雇用契約、すなわち契約社員として雇用することは可能です。
ただ、契約時点で有期雇用契約であること、契約期間が満了した時点で本採用に至らず、契約を終了する可能性があることについて、あらかじめ合意を得ておかないと、後のトラブルの原因になる可能性があります。
特に本来の試用期間にあたる解約権留保付労働契約と有期雇用契約の違いを誤認していると、不当な解雇と訴えられるおそれがありますので、契約の際はきちんと説明し、正しく理解してもらえるよう努めましょう。
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