減損会計の対象となる資産やメリット・デメリットを紹介
更新日: 2024.1.16
公開日: 2023.1.28
jinjer Blog 編集部
企業の会計では、ときに減損会計の必要性が生じることがあります。減損会計とは固定資産の資産価値を減少させる会計処理方法です。減損処理には一定のルールがあるので、正しい方法で処理することが大切です。
本記事では、減損会計の対象となる固定資産の種類について、また減損会計のメリットやデメリットについて解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
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1. 減損会計とは固定資産の帳簿上の価値を切り下げる処理のこと
減損会計とは、固定資産の帳簿価額を実態に合わせて調整する会計処理のことです。企業は、事業拡大のために投資を行うことがあります。不動産の購入や新しい設備への投資、特許権や営業権の購入、M&Aシーンでののれん計上など、企業の投資にはさまざまな種類があります。
しかし、投資には少なからずリスクがあります。過去に投資した資産の価値が下落したときには、そのままの状態では回収が見込めません。この場合には、含み損を固定資産の帳簿価額に反映させる処理を行い、企業の財務状況を適切に調整する必要があるのです。
減損会計を行うのは、資産の購入額が高すぎたために投資額の回収ができない場合や、想定していた利益が見込めない場合に限られます。減損会計を行えば、固定資産の価値を回収可能な金額に下げることが可能となります。
ただし、減損会計の処理方法には一定のルールが設けられており、これに従う必要があります。減損会計に厳密なルールが設けられているのは、資産を購入したあとに減損会計で節税するという不当な処理が行われる可能性があるためです。
2. 減損会計の対象となる資産とは
減損会計の対象となる固定資産は、有形固定資産と無形固定資産、そして投資その他の資産の3種類です。これらに該当しない金融資産などは減損会計で処理することができません。
具体的には、以下のようなケースが減損会計の対象となります。
2-1. 有形固定資産
有形固定資産とは形をもつ資産のことです。機械装置や工具器具のほか、土地や建物、建設仮勘定なども有形固定資産に該当します。
たとえば、新たなプロジェクトを立ち上げるときには、新しい機械や器具を導入することになるのが一般的です。また、事業拡大に合わせて建物を購入するケースもあると思います。
こういった形で有形固定資産を導入したものの思ったような収益が上げられないというケースでは、購入した有形固定資産分に相当する売上が確保できないことになります。この場合には、対象となる有形固定資産の減損会計という方法で処理をするのが有効です。
2-2. 無形固定資産
無形固定資産とは形をもたない資産のことで、ソフトウェアやのれん、商標権や借地権などが該当します。
ソフトウェアを減損会計するときの考え方は有形固定資産の減損会計とそれほど変わりません。投資しても利益が得られないと判断したタイミングで減損処理をし計上します。
のれんは、M&Aのシーンで計上される勘定科目です。買収の際には将来性を見据えてのれん代を上乗せすることがありますが、のれんはあくまで予測値に過ぎませんM&Aで想定していたほどの収益が得られなかったときには、のれん代の回収ができなくなるおそれがあります。
この場合には、減損会計で処理し、特別損失として計上します。
2-3. 投資その他の資産
投資その他の資産とは、企業が投資を目的として保有している資産の総称です。株式や不動産、長期前払費用などが投資その他の資産に該当します。
たとえば、企業が投資を目的として株式を購入したものの、株価が下落して回復が見込めないというケースもあるものです。
こういったときには、投資額を回収できないと判断したタイミングで、株式の減損処理を行う必要があります。
3. 減損会計の対象とならない資産もある
企業が所有する資産のうち減損会計の対象となる資産は、有形固定資産や無形固定資産、投資その他の資産に限られます。その他の資産は減損会計の対象とならないため、処理方法に気をつけましょう。
たとえば、金融資産や繰延税金資産には減損会計という処理方法を用いません。退職給付に関する会計基準がある資産も、個別の処理指針が定められているため減損会計の対象外となります。
また、仕入れた商品の価値が大きく下落し回収が難しいというケースも減損会計の対象にはなりません。この場合も保有する資産の価値が下落して損失が発生していることに変わりはありませんが、減損処理ではなく評価損として計上する必要があります。
4. 減損会計のメリット
減損会計に対し、損をするようなマイナスイメージをもつ方もいるかもしれません。しかし、減損会計の実施には多くのメリットが考えられます。
減損会計には、固定資産の帳簿上の価値を減額する効果があります。固定資産を取得したあとには一定期間内で減価償却を行う必要がありますが、減損処理を行えばその後の減価償却費を大きく圧縮することが可能となるのです。
減損会計をすると、翌年度以降に計上する費用が減ってしまう一方で、利益は出やすくなります。少ない資産で大きな利益を計上できる状態に改善できるため、資産効率もアップします。単純に利益が増加するだけでなく、減損処理後には自己資本利益率(ROE)や総資本事業利益率(ROA)の指標も向上します。
利益が見込めない資産を早い段階で費用として扱えるのも減損会計のメリットです。減損会計では該当年度の損失が大きく増加したように見えますが、これはあくまで売上見込の減少にすぎません。
本来であれば翌年度以降に引き継ぐ費用ではないため、減損会計を行ってもなんら問題はないのです。減損会計の翌年度以降には、現状の企業の資産に近い形の損益計算書を作成できるようになります。
減損会計では損失を計上しますが、現金の支出は必要ありません。企業に会計上のダメージが及びにくいのも減損会計のメリットです。また、減損会計によって利益自体は圧縮されますが、税金面で節約できるという側面もあります。
5. 減損会計のデメリット
減損会計には多くのメリットがあるものの、会計上赤字になるというデメリットも考えられます。
減損処理を行った年度は利益が大幅に圧縮されるため、株主への配当を減らすことになるかもしれません。まずは投資家や株主に事情を説明し、納得してもらう必要があります。
配当を減らした場合には先行き不安から株式が売却される可能性があります。
減損会計で多額の損失を計上すると繰越利益余剰金に影響を及ぼすおそれもあります。また、謙遜会計によって投資やM&Aが失敗したことが明らかになってしまうのもデメリットです。
経営判断が間違っていたと対外的に知れ渡ってしまうことにより、企業の評価や価値が大きく下がってしまうこともあるものです。
6. 事業利益が予想を下回る場合には減損会計で調整するのが効果的!
企業は将来の利益を見込んで投資や固定資産の購入を行いますが、残念ながら利益につながらないケースもあります。事業利益が予想を大きく下回る場合には、減損会計による調整を行うのが効果的です。
減損会計は一時的にマイナスな印象を抱かれやすいというデメリットがありますが、長期的に見れば経営改善の有効策になり得ます。減損会計の意義を十分に把握し、状況に応じて最適な判断を行うことが重要です。
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