減価償却累計額とは?減価償却との違いや直説法・間接法の違いをわかりやすく解説
更新日: 2024.5.27
公開日: 2022.7.6
jinjer Blog 編集部
減価償却累計額とは、過去に減価償却費として計上した費用を合計した金額のことを指しています。減価償却は資産の購入費用を将来にわたって分割して費用に計上するため、今後の節税効果も期待できます。しかし、計算や仕訳方法が複雑な部分もあり、迷う人が少なくありません。
この記事では、減価償却累計額の概要や減価償却との違い、処理方法の違いなどをご紹介します。また、減価償却累計額の仕訳も、事例を用いてわかりやすく解説していきます。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 減価償却累計額とは
まずは減価償却累計額がどのような金額なのか基本的なことを知っておきましょう。減価償却の意味と合わせて解説していきます。
1-1. 減価償却の概要を再確認
減価償却とは、資産の購入価格を単一年度だけで費用計上するのではなく、数年から数十年分に分割して費用計上する考え方のことです。なぜ分割して費用計上するのかというと、資産は年を経るごとに価値が下がっていくものの、長期に渡って事業に使用するものであるからです。
関連記事:減価償却費とは?メリット・デメリット・計算方法などをわかりやすく解説
1-2. 減価償却累計額は減価償却費を積み上げた金額
減価償却の累計額とは、毎年計上される減価償却費を積み上げた金額のことを指しています。減価償却の累計額は財務諸表を作成する際に使う勘定科目の一つではありますが、減価償却費をどのように処理するかによって、減価償却累計額を使うケースと使わないケースに分かれます。詳しくは後述しますが、減価償却費を間接控除法で処理する場合は減価償却累計額を使用し、減価償却費を直接控除法で処理する場合は使用しません。
2. 「減価償却累計額」と「減価償却」の違い
減価償却累計額と減価償却の違いについて見ていきましょう。言葉で見ると「累計額」という単語のありなしの違いだけではありますが、会計上は全く異なる性質の勘定科目になります。
2-1. 勘定科目としての違い
はじめに勘定科目としての違いを見ていきます。減価償却累計額は「資産」の勘定科目の一つとして扱われますが、減価償却は「費用」の勘定科目の一つです。減価償却累計額は「資産」の中で、控除科目として利用されます。資産価値が毎年減少していく様子を数字で表すために、資産の減額分を決算の度に減価償却累計額として積み上げていきます。
一方減価償却は、「費用」の中で、単年度の資産価値の減少額を示したものになります。減価償却累計額が資産のマイナス分を示しているのに対して、減価償却は損益のマイナス分を示しているということです。
関連記事:減価償却の仕訳とは?「減価償却費」 と 「減価償却累計額」の違いや仕分け方法を解説
2-2. 財務諸表の記載場所の違い
続いて財務諸表の記載場所の違いを見ていきます。減価償却累計額は「資産」の勘定科目であることをここまでで解説してきました。資産は貸借対照表で表示される一項目であるため、減価償却累計額は貸借対照表で記載される勘定科目であるということです。
対して減価償却は「費用」の勘定科目であることをご紹介しました。費用は損益計算書の項目として使われているため、減価償却は損益計算書に記載される勘定科目ということになります。それぞれ使われる財務諸表の種類が異なるわけです。
2-3. 記載方法の違い
最後に記載方法の違いを見ていきます。資産は取得してから毎年価値が減少していきますが、減価償却累計額はその毎年の減少分を合計した金額を示しています。
対して減価償却は、単年における資産価値が減少した分の金額を示しています。つまり、減価償却累計額は毎年費用計上する減価償却の合計と一致することになります。書き方の違いはあれど、両者は密接な繋がりがあるということです。
3. 減価償却の処理方法「直接控除法」「間接控除法」
減価償却の処理方法には「直接控除法」と「間接控除法」の2つがあります。いずれかをもちいて償却資産の簿価や減価償却費の合計額を貸借対照表に記帳していきます。
3-1. 直接控除法
直接控除法とは、固定資産から減価償却費を直接差し引く方法です。帳簿上では借方に「減価償却費」を記入し、貸方に「固定資産」を勘定科目として記入します。直接控除法のメリットとしては、固定資産の現在価値を、貸借対照表上からひと目で把握できるという点が挙げられます。
理由は、固定資産から直接減価償却費を差し引いているため、常に資産の現在価値が帳簿価額として反映されているからです。資産の売却などを検討する際は、貸借対照表からひと目で現在価値が分かります。
ただし、直接控除法にはデメリットもあり、常に現在価格を反映しているため、貸借対照表ではその資産の購入価格がわかりません。新たな資産を購入する際に、今の資産の購入価格と比較したい場合は、別の資産台帳などを参考にする必要があります。
3-2. 間接控除法
間接控除法とは、固定資産から減価償却費を間接的に差し引く方法です。具体的には、「減価償却累計額」という勘定科目を新たにもちいることで、資産から直接費用を差し引くことがないように処理をします。帳簿上では借方に「減価償却費」を、貸方に資産の代わりに「減価償却累計額」を記入します。
間接控除法のメリットは、貸借対照表で資産の購入価格がすぐにわかることです。購入価格を比較して新たな資産の購入を検討する場合に便利です。
デメリットとしては、貸借対照表上の資産の価値は購入時から変わらないため、資産の現在価値がわからないことです。資産の現在価格を知るには、資産価額から減価償却累計額を差し引いて計算する手間がかかります。
4. 減価償却累計額の仕訳例
具体的な減価償却累計額の仕訳方法を見ていきましょう。例として、建物1,000万円・耐用年数50年の資産を定額法で減価償却費の仕訳をおこないます。
4-1. 直接控除法
直接控除法では、減価償却費を固定資産から直接差し引いていきます。仕訳方法としては以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | ‐200,000 | 建物 | -200,000 |
4-2. 間接控除法
対して間接控除法では、固定資産の代わりに減価償却累計額を新たな勘定科目として加え、間接的に減価償却費を差し引いていきます。仕分け方法は以下になります。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | ‐200,000 | 減価償却累計額 | -200,000 |
4-3. 貸借対照表
間接法で減価償却費を計上した場合の貸借対照表を見ていきます。上記で仕訳をした「建物」と「減価償却累計額」は貸借対照表の資産の部に以下のように記帳します。
建物:10,000,000
減価償却累計額:-200,000
減価償却累計額は、建物と同様に資産の部にマイナスの資産として記載します。建物の取得価格から減価償却累計額を引くと9,800,000円になり、資産の現在価格を計算できますね。
4-4. 損益計算書
減価償却費については直接控除法・間接控除法いずれも同じ記載方法になります。減価償却費は「販売費及び一般管理費」の一項目として以下のように記載します。
減価償却費:200,000
直接控除法・間接控除法それぞれの仕訳方法について確認しました。
5. 減価償却累計額は直接控除法か間接控除法を用いて正しく仕訳をしよう
減価償却累計額は、今まで減価償却費として計上してきた費用を合計した金額のことです。間接控除方法で減価償却費を計上する際に利用する勘定科目ですが、会計のセオリーとしては間接控除法で処理をするのが一般的です。ただし、個人事業主やひとり社長の場合は分かりやすいよう直接控除法での処理も問題ないでしょう。違いを把握して、適切な決算書類を作成することが大切です。
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