社債利息とは?税率や仕訳方法を詳しく解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2023.4.19
jinjer Blog 編集部
社債利息は社債権者に支払う利息を示す勘定科目です。しかし、社債利息の仕訳には注意すべきポイントが多く、苦手とする人も少なくありません。
社債利息の計上を必要とする際は金融機関に支払う利息との違いなどを踏まえて適切に処理しましょう。
本記事では経理担当者なら知っておきたい社債利息の基礎知識のほか、社債利息にかかる税率や会計処理における仕訳方法について解説します。
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1. 社債利息とは?
社債利息とは、自社の社債を購入した人に対して支払う利息のことです。
ここでは社債と社債利息の基礎知識についてみていきましょう。
1-1. 社債は企業が発行する有価証券
社債とは、企業が投資家からの資金調達を目的として発行する有価証券です。社債発行により調達した資金は金融機関からの融資と同様に借入金であるため、満期を迎えた社債は必ず全額返済しなければなりません。
なお、企業が投資家から経営資金を調達する手段としては、社債発行のほかに株式発行があります。社債と株式の大きな違いは調達資金に対する返済義務の有無です。
先述の通り、社債により調達した資金は返済義務のある他人資本であり、会計上は企業の負債として計上されます。対して株式により調達した資金は企業の自己資本であり、返済義務はありません。そのため、株式による資金は出資金として企業の資産に計上されます。
1-2. 社債利息は社債権者に支払う利息
社債利息とは、企業が自社の社債を購入した人(社債権者)に対して定期的に支払う利息のことです。社債には年間の利息率や利払日が規定されており、企業はその規定に従って社債権者に利息を支払わなければなりません。
社債権者には株主のように企業の利益分配を受ける権利はなく、社債利息の受取によって投資の見返りを得ます。投資家の目線からすると社債利息の利率はその社債を購入するか否かの重要な判断材料です。
なお、社債利息の金額は社債額に予め規定された年利を乗じて算出します。利息を支払う日を利払日と言い、社債利息の場合は1年間に2回の利払日を設けて分割して支払うケースが一般的です。利払日の回数は社債を発行する企業が任意で設定できるため、事前に確認しておきましょう。
1-3. 勘定科目としての社債利息
会計処理においても、自社が社債権者に支払う利息は「社債利息」の勘定科目を用いて計上します。通常、金融機関等に支払う借入金利息に用いる勘定科目は「支払利息」です。
しかし、社債は金融機関からの借入金とは性格が異なるため、支払う利息についても明確に分けて計上する必要があります。
なお、社債利息の勘定科目が用いられるのは、主に社債権者への利払いが生じたとき、もしくは決算時の整理仕訳で前払いした社債利息を償却原価法で処理するときの2パターンです。特に償却原価法は簿記2級以上で習得する知識であり、考え方が少し複雑になるため、正しく理解しておきましょう。
また、社債利息は自社が支払った利息に対してのみ用いられる勘定科目です。他社から受領した社債利息については「有価証券利息」の勘定科目が用いられます。
社債利息に関する仕訳では類似の勘定科目との混同が生じやすいため、それぞれの勘定科目の意味を把握しておくことが大切です。
2. 自社が受領した社債利息にかかる税率
社債を購入したことで得られる利息は税制上の利子所得として扱われます。そのため、社債利息を受領した場合は所得に応じた納税が必要です。
ここでは受領した社債利息にかかる税率と納税方法を解説します。
2-1. 利子所得にかかる税率
法人の利子所得にかかる税金は所得税(税率15%)に加え、東日本大震災を受けて設けられた復興特別所得税(税率0.315%)の2種類です。
<法人の利子所得にかかる税率>
所得税15%+復興特別所得税0.315%=計15.315%
2-2. 社債利息にかかる税金の納税方法
社債にかかる所得税の納税方法は、その社債の発行者が未上場企業か上場企業かによって扱いが異なります。
未上場企業が発行する社債は「一般公社債」です。一般公社債の利子所得には他の所得と分離して一定の税率で税金が源泉徴収される源泉分離課税が適用されるため、確定申告による納税手続きは必要ありません。
一方で、上場企業が発行する社債は「特別公社債」に該当します。特別公社債の利子所得には申告扶養制度も適用されますが、申告分離課税であるため確定申告によって不動産の譲渡益や株式の譲渡益など一部の所得との損益通算が可能です。
また、確定申告を行うことにより税金の還付が受けられるケースもあります。
3. 社債利息の具体的な仕訳方法
社債利息に関する仕訳は、償却原価法が関わってくることもあり苦手とする人も少なくありません。
ここからは「社債の発行」「社債利息の支払い」「償却原価法による社債利息の決算整理」「満期の社債の返済」の4段階に分けて仕訳の方法を解説します。
なお、ここでは以下の条件の社債を仕分けするものとします。
- 発行日:4月1日(期首)
- 額面総額:1,000,000円
- 払込額:970,000円
- 年利:5%
- 利払日:年間2回
- 満期:5年
※払込は現金とする。
3-1. 社債を発行したときの仕訳
まず、上記の条件で社債を発行した時の仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 970,000円 | 社債 | 970,000円 |
社債を発行した際は借方を現金、貸方を社債として仕訳を行います。なお、発行した社債の額面は100万円ですが、実際に購入者から払い込まれた現金は97万円であるため、貸方・社債それぞれに計上する金額も97万円です。
額面との差額3万円は「前払いした社債利息」と考えられ、後述する決算時の整理仕訳で償却原価法による処理を行います。
3-2. 社債利息を支払ったときの仕訳
次に社債権者に支払った社債利息の仕訳を見ていきましょう。上記の条件では以下のような仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
社債利息 | 25,000円 | 現金 | 25,000円 |
社債利息は社債の額面金額に年利を乗じて算出するため、1年間で支払う利息は100万円の5%にあたる5万円です。上記の条件では利払日が年2回設定されているため、1回の利払日に支払う利息は年間利息額の半分にあたる2万5,000円となります。
3-3. 償却原価法による決算整理の仕訳
社債利息の仕訳で特に厄介と言えるのが、決算時に行う前払い利息の償却原価法による処理です。償却原価法とは「額面金額から払込金額を差し引いた金額を、満期日までの期間で配分すること」を指します。
額面金額と払込金額の差額を前払いした利息とみなし、前払いした利息を満期までの各期間で均等に処理しようとするのが償却原価法です。
償却原価法による具体的な仕訳方法をみてみましょう。
借方 | 貸方 | ||
社債利息 | 6,000円 | 社債 | 6,000円 |
償却原価法は説明を聞くと複雑に感じられるかもしれませんが、実際の処理としては額面金額と払込金額の差額を返済期間の年数で割るだけです。今回の例で言えば、社債利息とみなされる差額の3万円を満期までの期間である5年で割り、1年あたり6,000円の社債利息として計上しています。
3-4. 満期の社債を返済するときの仕訳
最後に解説するのは満期を迎えた社債を返済するときの仕訳です。今回の例における仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
社債 | 1,000,000円 | 現金 | 1,000,000円 |
先述の償却原価法により、満期までの5年間で前払い利息を全て社債として計上したため、発行時と異なり借方の社債額も100万円となる点に注意しましょう。借方には社債権者に返金する現金100万円を計上します。
4. 社債利息のポイントを把握して仕訳を行おう
今回は、社債利息の意味や会計処理における仕訳方法などを解説しました。社債利息を仕分けする際のポイントは、他の借入金の利息である支払利息と混同しないこと、そして前払いの社債利息を償却原価法で処理することにあります。
社債利息に苦手意識がある方は、仕訳のポイントをしっかり押さえておきましょう。
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