法人税等充当金とは?勘定科目や仕訳方法、注意点を確認
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.8.17
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法人税等充当金とは、決算時に見積計上した法人税等を指す税法上の用語です。会計処理では「未払法人税等」として処理します。
法人税等は後日正式な納税額が決定されるため、決算時には見積額を計上し、実際の企業活動と合わせる役割があります。
本記事では、法人税等充当金の概要や未払法人税等との関係、勘定科目、仕訳方法、注意点について解説します。
目次
1. 法人税等充当金とは見積計上する法人税等を指す税法上の用語
法人税等充当金とは決算時に法人税や住民税、事業税の支払いのために計上した概算額のことで税法上の用語です。
確定申告書の別表「別表四」や「別表五(二)」の中に出てくる言葉のため、経理部門でも税務まで担当していないと目にすることがないかもしれません。
会計上、法人税等充当金は費用から支払うものの、税法上は損金不算入のため税効果会計により両者のズレを埋める処理が必要です。
1‐1. 法人の決算と納税の流れ
ではなぜ、決算時に法人税の見積額の計上が必要なのでしょうか。
それは、法人では以下のように決算後に納税額が確定するためです。
・決算書の作成
・確定申告書の作成・提出
・法人税等の納付
法人税等は、その事業年度分をその年度内に収めるのではなく、翌事業年度に収めます。そのため、法人税等充当金を使い概算を決算書に記載すると、実際の企業活動に近い状態で会計処理ができます。
なお、理論上は法人税充当金を設定しなくても会計処理自体はできます。しかし、決算書を見返したときに正確な当期純利益などが判断しづらくなることもあり、法人税等充当金を設定するのが一般的です。
関連記事:法人税とは?特徴や対象となる法人、種類や計算方法を紹介
2. 法人税等充当金と未払法人税等との関係
法人税等充当金と未払法人税等は同じものを意味します。
法人税等充当金は税法上の呼び方であり、将来支払いが必要な未払いの法人税、住民税及び事業税のことです。
対して未払法人税等とは会計上、支払いが必要な法人税等を指す用語で貸借対照表の負債として処理します。
関連記事:未払法人税等とは?仕訳方法や未払法人税等の具体例、計上の手順を解説
3. 法人税等充当金の勘定科目
将来支払う法人税等を立て替えるときや、実際に支払ったときは「未払法人税等」(負債)の科目を使います。
相手勘定科目は「法人税・住民税及び事業税」や「当座預金」「普通預金」「現金」などとなります。
関連記事:法人税の勘定科目とは?ケースごとの仕訳ルールや注意点を解説
4. 法人税等充当金の仕訳方法
法人税等充当金の立て替え時と支払い時の仕訳方法を解説します。なお、一定の条件を満たす法人では、税金の中間申告納付が必要です。その際の仕訳も合わせて解説します。
4-1. 法人税等を立て替えたとき
将来支払う法人税等を立て替えるときは、以下の方法で仕訳します。
なお、納税額は500万円とします。(法人税300万円、住民税90万円、事業税110万円)
(借方)法人税・住民税及び事業税 500
(貸方)未払法人税等 500
納税額は個別に記載するのではなく、「法人税・住民税及び事業税」の科目を使い合算額を記載します。
4-2. 法人税等を支払ったとき
納税後は以下の仕訳により「未払法人税等」を消去します。
(借方)未払法人税等 500
(貸方)普通預金 500
なお、貸方は支払い方法により異なります。
現金で支払ったなら「現金」、小切手を振り出したなら「当座預金」などとなります。
4-3. 中間納付が必要な場合の仕訳
前年の確定法人税額が10万円を超える法人では、納税負担軽減の観点から、中間申告納税が必要です。時期は事業開始年度から6ヵ月経過後に中間決算を行い申告します。
中間申告をする場合「仮払法人税等(仮払金)」という勘定科目を使い、以下の3段階で仕訳を行います。(単位は万円)
【1】中間納付時
(借方)仮払法人税等 100
(貸方)当座預金 100
【2】決算時(追加納付時)
(借方)法人税・住民税及び事業税 220
(貸方)仮払法人税等 100
未払法人税等 120
【3】納付時
(借方)未払法人税等 120
(貸方)現金など 120
決算で決定した法人税などから事前に支払った仮払法人税分を差し引いた額が、期末に支払いが必要な法人税額となります。
関連記事:法人税中間納付とは何か?納付の方法や計算方法、注意点を確認
5. 法人税等充当金に関する注意点
法人税等充当金に関する処理を行う際は、会計上は「未払法人税」に科目を統一する、確定申告の際は発生理由を明記するなどの注意点があります。また、税金の還付を受けた際は「未収金」で仕訳が必要です。
5-1. 会計処理では「未払法人税等」の勘定科目を使う
法人税等充当金はあくまでも税法上の用語のため、通常、勘定科目として用いることはありません。
勘定科目は資産、負債、純資産、収益、費用のいずれかに振り分けて計上するのが原則であり、むやみに名称を増やすと決算時に合計が合わない、消しこまれずに科目が残るなどのトラブルにつながります。
特に、会計システムなどを使っているときは、法人税等充当金と未払法人税等が混在しないように注意しましょう。
5-2. 確定申告では個別財務諸表で明記が必要
会計上と税法上の利益の差を埋める手続きを税効果会計といいます。生じる差には、以下の2つがあります。
一時差異:税法上での益金または損金の算入時期の違いにより生じるもの。
永久差異:上記に該当しない差異。
一時差異が発生する原因のうち、「収益または費用の帰属年度に相違がある場合」については、確定申告の際に詳細をすべて個別に明記しなければいけません。明記する明細書は「別表四」と「別表五(二)」が該当します。
「別表四」は、税法上の利益(課税所得)を求めるために作成します。
会計上の税引き後の当期純利益を記載し、そこから税法上の益金算入や損金不算入などの処理を行います。
「別表五(二)」では、法人税額の発生と納付の状況を明らかにし、納税充当金の処理状況を明確にするために作成します。
これにより、現在どの程度未納金があるか明確にし、また、納税充当金をいくら積み立てているかを明確にします。
5-3. 税金が還付される時は未収金で処理が必要
前払いした納税額よりも確定後の税額が少なかったときは、法人税額の還付を受けられます。この際、未払法人税等の科目ではマイナスが発生するため、会計処理が必要です。なお、税金の還付では未払法人税等の勘定科目は使わず、未収金を使って処理します。
中間納付が800万円、確定税額が500万円とした際の仕訳例は以下のとおりです。
(借方)法人税・住民税及び事業税 500
未収金 300
(貸方)仮払法人税 800
なお、上記のようにあえて未払法人税等を過大計上する方法を「タックス・クッション」といい、大企業の会計処理では多々見られる方法です。
余裕をもたせ税金を前払いすることで決算処理を迅速化し、税額の再計算などの手間を防止する役割があります。
なお、中小企業の場合、税額の計算には2ヵ月程度余裕があるため、上記のような処理は行わず正確な納税額を算出するケースが多いでしょう。
6. 法人税等充当金は税法上の用語!実務では未払法人税等を使って処理しよう
法人税等充当金は、決算時に概算計上する法人税等を指す税法上の用語です。
会計では「未払法人税等」という勘定科目を使って処理するため、両用語が帳簿上で混在しないように注意しましょう。
なお、未払法人税等は中小企業と大企業で処理の流れが異なるケースも多いため、確認の上対処しましょう。
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