棚卸資産回転期間を経営に活かす!計算方法や棚卸期間回転率との関係についても解説
更新日: 2022.12.13
公開日: 2022.8.17
目黒颯己
商品の仕入から販売までを「1回転」といい、ある期間に何回転したかを表すのが棚卸資産回転期間です。回転期間を把握することで、効率よく在庫を使えているか、在庫過多は発生していないか確認する上でも役立ちます。
本記事では、棚卸資産回転期間の概要や計算方法、棚卸期間回転率との関係、経営へ活かす方法を解説します。
関連記事:棚卸とは?棚卸の目的や実施の時期、方法や流れについて解説
目次
1. 棚卸資産回転期間とは商品の仕入から販売までにかかる期間のこと
棚卸資産回転期間とは、商品を仕入れてから販売するまでにどのくらい時間がかかるかを示す指標です。
仕入から販売までのサイクルは「回転」で表し、計測する期間は、年・月・日のいずれかを利用します。
一般的に、棚卸資産回転期間は短いほど棚卸資産が滞留せず、早期に収益化できていると考えます。回転期間が長ければ、過剰在庫や販売期間の長期化などが懸念され、棚卸資産を有効活用できていないと考えられます。
とはいえ、回転期間が短すぎれば、適正在庫が保たれていない可能性もあるため、業界平均を確認し同程度に留めるのが理想的です。
関連記事:棚卸資産とは?棚卸資産に該当するものや棚卸資産の評価方法も紹介
1-1. 棚卸資産回転期間は業種により異なる
棚卸資産回転期間の長短は、業界や事業規模によっても異なります。
財務省の資料によると2018年度の全産業・全規模の棚卸資産回転期間は0.95月となり、資本金別・産業別に見る平均期間は次のとおりです。[注1]
【資本金1,000万円未満】
製造業:0.67月
非製造業:0.69月
【資本金1,000万円~1億円】
製造業:1.30月
非製造業:0.92月
【資本金1億円~10億円】
製造業:1.30月
非製造業:0.65月
【資本金10億円以上】
製造業:1.33月
非製造業:0.86月
資本金額が少ないほど、回転期間は短くなる傾向にあります。
また、非製造業よりも、製造業の方が長期化する傾向にあります。
[注1] 法人企業統計調査からみる日本企業の特徴|財務省
2. 棚卸資産回転期間の計算方法
ここでは月・日で求める方法を解説します。
2-1. 月数ベースで知りたい場合
月別の棚卸資産回転期間は以下の計算式で求められます。
棚卸資産回転期間(月)= 棚卸資産 ÷(売上高/12)
なお、棚卸資産額は、期首と期末の平均値を取ります。
例えば、業界平均が0.95月なら約28日で仕入れた商品が売り切れると分かります。
2-2. 日数ベースで知りたい場合
日別の棚卸資産回転期間は以下の計算式で求められます。
棚卸資産回転期間(日)= 棚卸資産 ÷(売上高/365)
小売業のように、回転の早い商品を扱う場合、日数ベースで期間を把握した方が分かりやすいでしょう。
3. 棚卸資産回転期間と棚卸資産回転率の相違点
棚卸資産回転率とは棚卸資産の運用効率を計る指標で、在庫回転率とも呼ばれています。
1年間に何回在庫が入れ替わっているかを表し、単位は「回転」を使います。
なお、設定する期間は1年ではなく、1ヵ月などでもかまいません。
棚卸資産回転率は高いほど棚卸資産を効率的に販売していることを意味し、低ければ販売が滞っている可能性があります。
なお、高ければ高いほどよいというものでもないため、業界平均程度に収めることが望ましいでしょう。
両指標の違いは、以下のとおりです。
棚卸資産回転期間:在庫が1回転するのにどの程度時間がかかるかを知るための指標。
棚卸資産回転率:1年で在庫が何回転するか理解するための数値。
3-1. 棚卸資産回転率の計算方法
売上高か売上原価のどちらかを使います。それぞれ方法を解説します。
3-1-1. 売上高を使う方法
売上高を使った計算では、以下の算式により回転率が求められます。
棚卸資産回転率=売上高÷棚卸資産
棚卸資産が売上高に対して何回転したか分かるため、財務分析に適した指標です。
ただし、売上高には利益も含まれるため回転率が高くなります。
そこで、より実情に則した数値を知りたい場合、次に紹介する売上原価による方法が有効です。
3-1-2. 売上原価を使う方法
利益分を含まない棚卸資産の回転率を知りたいときは、売上原価を元に計算します。
棚卸資産回転率=売上原価÷棚卸資産
純粋な棚卸資産の回転率を把握できるため、在庫管理の際に役立つ指標です。
3-2. 棚卸資産回転率から棚卸資産回転期間を計算する方法
棚卸資産回転率が分かれば、以下のように棚卸資産回転期間を求めることもできます。
棚卸資産回転期間(月) = 12 / 棚卸資産回転率
棚卸資産回転期間 (日)= 365 / 棚卸資産回転率
上記により、在庫が何日分あるか分かるため、適正在庫の把握に役立ちます。
4. 棚卸資産回転期間の経営への活かし方
棚卸資産回転期間は、財務分析、在庫管理どちらでも活かすことが可能です。それぞれ、具体的な方法を解説します。
4-1. 財務分析では同業同規模の会社平均と比較する
棚卸資産回転期間は、業種や事業規模によっても平均値が異なるため同業同規模の事業者と比較しましょう。
比較した結果、回転期間が短すぎるなら販売機会を逃している可能性があります。現場担当者に確認し、在庫不足が発生していないか確認しましょう。
また、回転期間が長く在庫過多が発生し、販売機会を失えば、商品の劣化や破棄につながってしまいます。
まずは、安全在庫を把握しその数量にとどまるように調整しましょう。
4-2. 在庫管理では商品別に回転期間を把握する
現場の在庫管理では、商品別に棚卸資産回転期間や回転率を把握すると、人気・不人気が把握しやすくなります。
特に、商品の発注を現場で行っている場合、担当者の感覚で仕入れをしていると、適正在庫を維持できない原因となります。
まずは、商品別に状況を把握し、売れ筋商品は在庫を切らさないようにする、不人気商品は一旦在庫を減らし、場合によっては取りやめも検討しましょう。
また、季節性の高い商品を扱っているなど、売上状況が変わりやすいなら、ABC分析を活用し、商品を重要度別に管理するのも有効です。ABC分析とは、商品の重要度をA(大)、B(中)、C(小)に分類し在庫管理をする方法です。
4-3. 棚卸資産回転率の活かし方
自社の直近の回転率と比較した場合、以下の3つのパターンに分析できます。
1. 売上高や棚卸資産額は異なるが回転率が同程度になる
2. 棚卸資産は同程度だが売上高が異なりため回転率に差が出ている
3. 売上高は同程度だが棚卸資産金額が異なるため回転率に差が出ている
1.の場合、事業規模が拡大または縮小したと考えられます。
2.の場合、売上高が大きいほど回転率も高くなります。回転率が下がっているなら、頻繁に値引きなどしていないかの確認が必要です。
3.の場合、棚卸資産が少ないほど回転率は高くなります。回転率が下がっているなら、在庫が過剰になっていないか、管理体制を見直してみましょう。
5. 適切な棚卸資産回転期間を確認して在庫管理に活かそう!
棚卸資産回転期間は業界により異なるため、同業同規模の事業者と比べて、長短を確認したほうがよい。
また、期間が短いと在庫効率がよいとされるものの、あまりにも短すぎれば適正在庫が保たれず、販売機会の損失を招いている可能性もあるため、現場に確認が必要。
在庫は商品原価を決める重要な要素のため、棚卸資産回転期間や回転率を把握し管理に活かしましょう。s
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