減価償却の仕訳とは?「減価償却費」 と 「減価償却累計額」の違いや仕分け方法を解説
更新日: 2024.5.28
公開日: 2022.7.6
jinjer Blog 編集部
会社取引の仕訳作業は決算書を作るための大切な業務です。しかし、減価償却の仕訳を適切にできているか不安になることはないでしょうか。特に、「減価償却費」と「減価償却累計額」の違いが分からず混乱してしまう人もいらっしゃるようです。減価償却は節税効果や財務状況の確認に欠かせないものですから、ミスなく適切に処理したいものです。
今回は、減価償却費と減価償却累計額の違いと仕訳方法を分かりやすく解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
「経理担当になってまだ日が浅く、会計知識をしっかりつけたい!」
「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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1. 減価償却とは
減価償却は、固定資産、リース資産をはじめ会社が所有する資産の価値を簿記上で確認するための考え方です。購入した資産は新たな収益を生み出すために事業で使用していきますが、その資産の価値は損傷や劣化などで年々減少していくものです。価値が下がった分(減価)を費用として計上(償却)することで、現在の資産価値はいくらなのか、取得した時よりどれくらい価値が落ちているのかを把握することができます。
資産価値が残っているうちに売却を検討することもあるかもしれません。そんな時、減価償却処理をしておけば、すぐに所有する資産の価値を確認できます。減価償却をして計上する費用は、資産の購入金額を使用期間で分割して毎年計上していくのですが、資産の種類によって使用可能期間は変動します。
パソコンなどであれば4〜5年、建物であれば構造によって20〜50年の幅があります。減価償却は、事業の収益状況を正しく把握でき、実際の現金出費がないことから節税効果も期待できるので、会社にとって重要な会計処理の一つなのです。
関連記事:減価償却費とは?メリット・デメリット・計算方法などをわかりやすく解説
1-1. 減価償却の仕訳に必要な知識
減価償却の仕訳をする際に必要な知識を2つご紹介します。取得価額と耐用年数です。
1-1-1. 取得価額
取得価額とは、資産の購入費用のことです。ただし、資産そのものの価格だけでなく、事業に使えるようにするためにかかった費用も含まれる点にご注意ください。運送費用や保険料、関税や購入手数料、パソコンであればモニターやマウスなど動作に必要な備品なども、取得価額に含まれています。ただし、資産を購入した際に発生する取得税、資産取得のために借り入れた資金の利子、不動産登記のための司法書士報酬などは含むことはできません。
なお、会計処理に消費税を入れるのかどうかは、自社が採用している消費税の取り扱いによって異なります。税込の経理を採用しているのであれば、税込み金額が取得価額です。一方、税抜経理を採用しているのであれば税を含まない金額が取得価額です。
1-1-2. 耐用年数
耐用年数とは、減価償却をする資産の使用可能年数のことです。減価償却費を計算する際は、資産の取得価額を耐用年数で分割した金額を計上するようにします。なお、耐用年数は資産によって年数が異なっており、財務省令によって定められています。
2. 減価償却の仕訳とは
減価償却の仕訳とは、資産を新たに購入した際や減価償却費を計上する際に、その取引を記帳する作業のことを指しています。仕訳の方法としては直接法と間接法があり、自社に適した方法で作業を進めていきます。2つの方法の違いについては後ほど具体例を交えながら解説します。
2-1. 仕訳とは
仕訳とは、事業運営にともなう全ての取引について、その内容とお金の流れを記載する作業のことです。確定申告の申請書類、貸借対照表や損益計算書などの決算書類を作成するのに必須の作業でもあります。会社の担当者は、自社商品が販売されるたび、経費の支払いが発生するたびに取引を記録して仕訳していきます。具体的には、上記のような全ての取引を借方・貸方に分類し、その取引に適した勘定科目と金額を記帳する作業になります。
3. 「減価償却費」 と 「減価償却累計額」の違いとは
減価償却に利用する勘定科目に「減価償却費」と「減価償却累計額」があります。どちらも減価償却費用を計上するものであるため使い方に迷ってしまいそうですが、両者には明確な違いがあります。確認してみましょう。
関連記事:減価償却累計額とは?減価償却との違いや直説法・間接法の違いを解説
3-1. 勘定科目
まずは勘定科目としての違いです。「減価償却費」は費用の勘定科目として扱うのに対して、「減価償却累計額」は資産の勘定科目として利用します。「減価償却費」はその年の資産の価値がどれだけ下がったのかを、1年分の費用として計上します。対して「減価償却累計額」は、毎年計上していた減価償却費の合計金額を計上しています。複数年にわたって積み上げてきた費用の金額を確認するためのものであるわけです。
3-2. 財務諸表
続いて財務諸表の記載箇所の違いです。「減価償却費」は費用の勘定科目ですので、損益計算書を作成する際に利用します。一方「減価償却累計額」は資産の勘定科目ですので、貸借対照表を作成する際に利用します。単年の費用を損益計算書に記載するのが「減価償却費」、複数年の費用の合計額を貸借対照表に記載するのが「減価償却累計額」ということになります。
4. 資産の種類に対する仕訳方法
減価償却する資産にはいくつか種類がありますので、それぞれの内容と仕訳方法を確認してみましょう 。
4-1. 減価償却資産
一つ目は通常の減価償却資産です。事業に使われることを目的とした資産のことで、1単位あたり10万円以上の資産を指しています。減価償却資産には、有形の建物・機械・車・備品、無形のソフトウェア・特許権・商標権などがあります。ちなみに、土地は経年劣化のない資産になりますので、減価償却の対象となる資産には含まれません。直接法か間接法を選んで仕訳をします。
4-2. 一括償却資産
二つ目は一括償却資産です。一括償却資産とは取得価額が10〜20万円の資産のことです。工場で使う工具や事務所の備品などが該当します。通常の減価償却の場合は月割で費用を計算しますが、一括償却資産の場合はいつ購入しても1年分の費用を一括で計上できる制度です。一括で償却された資産の場合、固定資産税がかからないため節税効果が期待できます。減価償却資産と同様に直接法か間接法を選んで仕訳をします。
4-3. 少額減価償却資産
三つ目は少額減価償却資産です。少額減価償却資産とは、取得価額が10〜30万円の資産のことです。300万円を上限として、資産取得にかかった費用をその年の経費として一括で計上することができます。ただし、青色申告をしている中小企業や個人事業主のみに認められた特例でもあります。仕訳方法については、期末にまとめて経費計上します。
5. 減価償却「直接法」「間接法」2種類の仕訳方法
減価償却をおこなう際は2種類の仕訳方法から選んで処理します。ここでは例を交えて解説します。
関連記事:減価償却費の計算方法とは?「定率法・定額法」など計算方法を詳しく解説
5-1. 直接法
1つ目は、購入した資産から直接費用を差し引く方法です。借方に減価償却費と金額を、貸方に建物(購入した資産)と金額を記載します。
借方:減価償却費-20万円 貸方:建物-20万円
帳簿上で現在の資産価値が減少していることを確認できる方法です。ただし、取得価額を確認することはできません。取得価額は資産帳などで確認します。
5-2. 間接法
2つ目は、資産購入時に新たな勘定科目として減価償却累計額を設定し、間接的に費用を差し引く方法です。借方に減価償却費と金額を、貸方に減価償却累計額と金額を記載します。
借方:減価償却費-20万円、貸方:減価償却累計額-20万円
資産の取得価額をすぐに確認でき、現在価格は資産から減価償却累計額を差し引いて確認します。
6. 減価償却の仕訳は勘定科目の混合に注意する
仕訳は確定申告の申請書類や決算書類を作成するのに欠かせない会計業務です。減価償却の仕訳をする際は、勘定科目の混合に注意して作業をするようにしましょう。事業の状況に合わせて直接法・間接法を選択して業務を進めていきます。本記事を参考に減価償却作業を進めていきましょう。
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