電子帳簿保存法における領収書に署名は不要?要件や改正内容を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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電子帳簿保存法における領収書に署名は不要?要件や改正内容を解説

領収書を見ながら情報を入力する人

改正後の電子帳簿保存法では領収書は署名不要です。しかし、領収書は経理において重要な書類であり、取り扱いを誤ると月末や決算時にトラブルへと発展する可能性も少なくありません。

そのため「本当に署名は不要なのか」「署名なしでは書類として使えないのでは」と疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、領収書を電子保存する際に署名が不要である理由や、電子保存する際の具体的な要件について解説します。

令和5年度税制改正大綱にて発表された、電子帳簿保存法の新たな変更点についても解説するため、ぜひ参考にしてください。

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1. 改正後の電子帳簿保存法では領収書の署名は不要

電子文書に署名をする人

電子帳簿保存法では、2022年以降に発生した領収書をスキャナ保存するにあたり、受領者本人の署名は不要となっています。

2022年以前は、適正事務処理要件とよばれる不正を防止するための要件を満たさなければなりませんでした。

しかし、適正事務処理要件は電子帳簿導入を阻害する大きな要因となっていたため、2022年の法改正にともない廃止されています。結果、領収書の署名をはじめとした複雑な処理が不要となりました。

2. 電子帳簿保存法における領収書の保存方法

領収書の写真を撮る女性

領収書の保存方法を、次に挙げる2つのケース別に解説します。

  • 紙で受領した領収書を保存する場合
  • 電子で受領した領収書を保存する場合

2-1. 紙で受領した領収書を保存する場合

紙で受領した領収書を保存する方法は「紙のまま保存する」「電子データとして保存する」の2つです。

紙のまま保存する場合は特別な手順が必要ありません。一方、スキャナ保存する場合は法が定める保存要件にしたがって保存する必要があります。

名前はスキャナ保存となっていますが、コピー機だけでなくスマートフォンやタブレットなどによるカメラ撮影での保存も対象です。

また、2022年以前はスキャナ保存を実施するにあたって税務署長による事前承認が必要でしたが、現在では不要となっています。

紙・スキャナどちらの保存方法でも、税法で定められた期間(最大7年)は保存が必要です。

2-2. 電子で受領した領収書を保存する場合

2023年内であれば、紙で領収書を受領した場合と同様に「電子データで保存」「紙で保存」のいずれでも問題ありません。

2024年1月以降は電子保存が義務づけられるため、原則として電子データで受領した領収書は電子保存のみ認められることとなります。

ただし、令和4年に発表された令和5年税制改正大綱により、2024年1月以降であっても以下の条件を満たせば紙による保存も可能です。

  • やむを得ない事情がある場合
  • ダウンロードの求め・出力書面の提示または提出に応じられる場合

3. 電子帳簿保存法改正後における領収書の保存要件

リストをマーカでチェックする

受領した領収書を電子保存する場合、受領形態が紙・データのどちらであってもそれぞれに定められた要件に沿って保存しなければなりません。

ここからは「スキャナ保存要件」「電子保存要件」の具体的な内容について解説します。

3-1. 領収書のスキャナ保存における要件

領収書をスキャナ保存する場合、大きく分けて「真実性」「可視性」の2つを確保する必要があります。

スキャナ保存における「真実性」「可視性」を満たす要件は次のとおりです。

真実性の確保 書類の受領や業務の処理に係る通常の期間(最長2ヵ月)を経過した後、速やか(7営業日以内)に入力をおこなう
ただし、事務を処理するための規定を定めている場合に限る
200dpi以上の解像度による読み取り
カラー画像による読み取り
※赤・緑・青それぞれ 256階調(約 1677 万色)以上
タイムスタンプの付与(おおむね7営業日以内)
※書類に係る記録事項の入力が期間内に実施されたことが確認可能な場合は、タイムスタンプの付与に変えられる
解像度および階調情報の保存
大きさ情報の保存
※書類の大きさがA4以下の場合は不要
バージョン管理
※訂正また削除をおこなった事実・内容を確認できるシステムまたは訂正・削除をおこなえない電子計算処理システムを使用する
入力者等情報の確認
※記録の入力者とその者の直接監督者の情報を確認できる状態にしておく
可視性の確保 スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
見読可能装置(14 インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)および操作説明書の備付け
整然とした形式および明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておく
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
検索機能の確保

なお、令和5年度税制改正大綱により、2024年1月以降は次の3点の要件が廃止されるため、満たしていなくても問題ありません。

  • 解像度および階調情報の保存
  • 大きさ情報の保存
  • 入力者等情報の確認

参考:国税庁 | 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

3-2. 領収書の電子保存における要件

PDFなどのデータとして受け取った領収書を保存する場合も、スキャナ保存と同じく「真実性」「可視性」を確保する必要があります。

電子保存における「真実性」「可視性」を満たす要件は次のとおりです。

真実性の確保 次に挙げる4つの措置のいずれかをおこなう
①タイムスタンプが付与されたデータを受領する
②データの受領後速やかにタイムスタンプを付与し、保存をおこなう者・監督者の情報を確認できるようにしておく
③データの訂正や削除をした記録が残るシステムもしくは訂正削除ができないシステムを利用して保存する
④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定し、運用する
可視性の確保 ・自社開発のプログラムを使用する場合、電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
・保存場所に電子計算機、プログラムやディスプレイ、プリンタならびにこれらの操作説明書を備えること
・整然とした形式および明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと
次に挙げる検索機能を確保すること
①取引年月日その他の日付
②取引金額
③取引先名
※小規模事業者で、ダウンロードの求めに応じられる場合は不要

なお、令和5年度の税制改正大綱により、2024年1月以降は次に挙げる条件を満たす事業所で検索機能が不要になります。

  • 判定期間における売上高が5,000万円以下の保存義務者
  • 電子データの出力書面(整然とした形式および明瞭な状態に整理されたものに限る)の提示または提出の求めに応じる保存義務者

参考:国税庁 | 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

4. 令和5年度税制改正大綱におけるスキャナ保存・電子取引の変更点

CHANGEと書かれた積み木

令和4年12月に発表された「令和5年度税制改正大綱」では、電子帳簿保存法についても大きな変更がありました。

この税制改正大綱において、電子帳簿保存法の変更点である次の3つについて解説します。

  • 「優良な電子帳簿」の範囲変更
  • 「スキャナ保存制度」の要件変更
  • 「電子保存要件」の内容変更

4-1. 「優良な電子帳簿」の範囲変更

令和5年度における税制改正大網では、優良帳簿の対象が「すべての帳簿」から次に挙げる帳簿に限定されることとなりました。

  1. 仕訳帳
  2. 総勘定元帳
  3. 次に掲げる事項の記載に係る上記1.および2.以外の帳簿手形
  • 売掛金等
  • 買掛金等
  • 有価証券
  • 減価償却資産
  • 繰延資産
  • 売上げ、その他収入
  • 仕入れ、その他経費

優良帳簿とは、真実性と可視性が担保された国税関係帳簿のことです。税務署に「この企業は優良帳簿である」と認められることで、過少申告加算税を5%軽減できるメリットを得られます。

今回の変更で2024年1月以降、優良帳簿に認められるためのハードルが大きく下がることとなりました。

参考:財務省 | 令和5年度税制改正の大綱(6/10)

4-2. 「スキャナ保存制度」の要件変更

令和5年度における税制改正大網により、2024年1月以降の「スキャナ保存制度」の要件が次のように変更となります。

  • 解像度、階調に関する情報の保存要件を廃止
  • 大きさに関する情報の保存要件を廃止
  • 入力者等に関する情報の確認要件を廃止
  • 相互関連性要件は、対象を契約書•領収書等の重要書類のみに変更

結果、スキャナ保存要件がより実務に則した形となったため、企業にとっても電子帳簿を導入しやすくなったといえるでしょう。

参考:財務省 | 令和5年度税制改正の大綱(6/10)

4-3. 「電子保存要件」の内容変更

令和5年度における税制改正大網で変更された「電子取引保存要件」は次のとおりです。

  • 電子保存要件において「検索機能の確保」が不要となる対象者の変更
  • 電磁的記録の保存をおこなう者等に関する情報の確認要件を廃止
  • 電磁的記録の義務化に対する宥恕措置が2024年1月以降は制度化

従来であれば、タイムスタンプを付与した際に画像と紙が同じであることを確認する者、もしくは直接監督する者の情報確認が必要でした。しかし、2024年1月以降は情報の確認が不要となります。

また、現在2023年12月までとされている電子取引の書面保存が制度化され、一定の要件が必要なものの2024年1月以降も可能となりました。

参考:国税庁 | 電子帳簿保存法の内容が改正されました

関連記事:電子帳簿保存法改正の変更点や目的、メリットをわかりやすく解説

5. 電子帳簿保存法の対応には経費精算システムの利用がおすすめ

経費精算システムを操作する人

電子帳簿保存法の対応に課題を感じている方は経費精算システムの導入を検討してみてください。

経費清算システムは、経費精算を実施する上で発生する申請や承認、仕訳などの業務を効率的におこなうためのシステムです。

近年では、電子帳簿保存法に対応しているシステムも多く、煩雑な準備をせずともシステムを導入するだけでスムーズに対応できます。

また、法対応だけでなく、経理業務を効率化する機能も搭載されているため、経費申請をはじめとした多くの作業効率も向上するでしょう。

関連記事:電子帳簿保存法による経費精算の変化やシステムの選び方を解説

6. 電子帳簿保存法に沿って適切に領収書を処理しよう

経費精算業務をする人

領収書をデータとして保存する場合、本人の署名は不要です。しかし、電子帳簿保存法に定められている要件に沿って保存しなければ国への提出書類として利用できません。

電子帳簿導入後に混乱しないためにも、事前にしっかりと「スキャナ保存要件」「電子保存要件」を確認しておきましょう。

現在、電子帳簿の導入に課題を感じている場合は、経費精算システムの導入も検討してみてください。

関連サイト:郵送で会社に届く請求書や見積書、納品書などのデジタル化・電子帳簿保存ならクラウド郵便メールメイト

【今更聞けない...】
電子帳簿保存法改正をわかりやすく総まとめ!

1998年に制定された電子帳簿保存法ですが、2020年10月や2021年の改正によって企業が電子帳簿保存法に対応するハードルが格段に下がりました。
しかし、電子帳簿保存法に対応すれば業務が効率化されると言っても、要件や法律そのものの内容、対応の手順など理解しなければならないことは多いです。
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