電子帳簿保存法は何度か改正されており、2021年にも改正がおこなわれました。
電子帳簿保存法とは領収書や帳簿を電子データで保存する際に重要な法律です。
こちらの記事では、2022年に施行される電子帳簿保存法改正の変更点と、電子帳簿保存法への申請方法や対応方法を解説いたします。
【調査レポート】2022年「改正電子帳簿保存法」に向けた各社の現状とは?
一部猶予が与えられた改正電子帳簿保存法ですが、各社の対応状況はいかがなのでしょうか。
そこで電子帳簿保存法に対応したシステムを提供するjinjer株式会社では「改正電子帳簿保存法対応に向けた課題」に関する実態調査を実施いたしました。
調査レポートには、
・各企業の電帳法対応への危機感
・電帳法に対応できていない理由
・電帳法の対応を予定している時期
・電帳法対応するための予算の有無について
などなど電子帳簿保存法対応に関する各社の現状が示されています。
「各社の電帳法の対応状況が知りたい」「いつから電帳法に対応しようか悩んでいる」というご担当者様はぜひご覧ください。
目次
1. 2020年10月の電子帳簿保存法改正での変更点
では、2020年の電子帳簿保存法改正で、具体的にどのようなポイントが変更されたのでしょうか。
電子的記録の保存要件の選択肢が増えたのが改正の内容です。
さっそく今回の電子帳簿保存法改正の重要な2つのポイントを見ていきましょう。
1-1. 受領側のタイムスタンプ付与が一部不要に
まず非常に重要なポイントは、電子取引において電子的記録の保存要件が緩和されました。
これまでも電子取引において、電子的記録の保存は認められていましたが、保存要件が厳しく企業によっては導入することが難しい状況でした。
① 改正前のタイムスタンプ要件
改正前には、発行者がタイムスタンプを付与した請求書や納品書を送付し、受領者はデータの受領後速やかにタイムスタンプを付与しなければなりませんでした。
このタイムスタンプは、ある時刻に該当する電子データが確かに存在していたこと、スタンプに記載されている時刻以降訂正・追加・削除されていないことを示すものです。
改正前では領収書などの書類を受領後、タイムスタンプを3日以内に付与しなければなりませんでした。
もし3日以内にタイムスタンプが付与できない場合、その書類は電子データとして保存することができなくなってしまっていたのです。
請求書を受領する企業からすると、このタイムスタンプは負担となってきました。
もし金額の大きい請求書があった場合、タイムスタンプの付与を忘れるとその後の手続きが面倒だったからです。
② 改正後のタイムスタンプ要件
しかし、2020年の電子帳簿保存法改正により、この点が大きく変わりました。
2020年10月より、請求書などに発行者側でタイムスタンプを付与すれば、受領者はタイムスタンプを付与する必要がなくなりました。
発行者側がタイムスタンプを付与していてくれれば、受領者側は受け取った書類をそのまま電子保存することができるようになったのです。
1-2. 領収書が一部不要に
2020年の電子帳簿保存法改正によって変更となったもう一つの点は、データを自由に改変できないシステムやクラウドサービスを利用している場合、利用明細を領収書の代わりとして使用することができることです。
① 改正前の保存要件
電子データを保存する場合、どうしても改ざんのリスクがあります。
税務署の目をごまかすために電子データを改ざんしてしまう企業が出てこないという保証はありません。
そのため、帳簿や領収書などを電子データとして保存するためには、書類を改ざんできないようなルール作りが必須でした。
電子帳簿保存法では、訂正や追記、削除の履歴を残し、正当な理由なく訂正・削除した場合の事務処理規定を定めることを企業に求めていました。
企業はこの事務処理規定を定めたうえで、それに沿った運用をおこなうことで電子帳簿保存法の要件を満たしていたのです。
② 改正後の保存要件
しかし2020年の電子帳簿保存法改正により、データを自由に改変できない経費精算システムやクラウドサービスを使用すれば、電子データをそのまま保存してもよいことになりました。
たいていの場合、経費精算システムやクラウドサービスでは、データを訂正・追加・削除した際に履歴が残るようになっています。
これにより正当な理由なくデータを訂正・削除することができなくなったため、電子データを保存するハードルが下がったといえるでしょう。
関連記事:【2021年】電子帳簿保存法の緩和で変わる領収書の管理と注意点
2. 2021年電子帳簿保存法改正での変更点(2022年1月施行)
電子帳簿保存法は継続して改正がおこなわれていますが、2021年に再度改正され、
2022年1月よりあらたに施行されます。
2-1. 要件を緩和する背景
電子帳簿保存法はスキャン保存制度による納税者の負担軽減や従業員の生産性向上などを目的としていましたが、対応するハードルが高いことが大きな問題となっておりました。
電子保存をおこなうために事前申請が必要なことや、定期検査時の原本の確認といった煩雑な作業は引き続き必要だったため、実際の利用率が低いという実態がありました。
これらの実態を改善し、より利用率を向上するために今回の改正が行われました。
今回の改正によるメリットはいくつかありますが、大きく分けて「電子帳簿保存法の申請準備が不要になる」「タイムスタンプが実質不要になる」「機能要件の緩和によって対応可能なシステムが普及する」の3つです。
1点目の「電子帳簿保存法の申請準備が不要になる」は特に重要なポイントです。
これまで電子帳簿保存法に対応するためには、税務署の承認が必要でしたが、これが不要とり、電子帳簿保存法に対応した準備が整えば、すぐに電子帳簿保存することが可能となりました。
加えて、電子帳簿保存法の中でも書類のスキャナ保存制度と電子取引データ保存に関して大きく緩和が行われたので、この2点を中心に解説します。
2-2. 書類のスキャナ保存制度の緩和要件
ここでは、2022年の1月1日から施行されるスキャナ保存制度の緩和要件に関して解説します。
① タイムスタンプ要件の緩和
1つ目はタイムスタンプ要件の緩和です。
画像データの修正や削除などの変更した履歴が残るシステムを利用している場合は、タイムスタンプ要件が廃止になります。つまり、電子帳簿保存法に対応している経費精算システムを使用すれば、タイムスタンプは不要になるということです。
② 検査などが不要となり、1人でデータ化と書類の廃棄が可能に
これまでは「適正事務処理要件」として、事務処理の定期検査や相互けん制が必要でしたが、2022年1月1日からはこれらも不要となります。
これによって、担当者は1人でデータ化や書類の破棄が可能になります。
③ 書類の入力期限が書類の受け入れた時から「2ヶ月以内」に変更
書類の入力に関して、入力の期限が書類を受け入れてから2ヶ月以内の入力に統一されます。
④ 検索要件の緩和
これまでの検索要件では、さまざまな項目での検索が可能な状態を求められていましたが、今後は「取引年月日・取引金額・取引先名称」の最低3項目に緩和されます。
このように、電子帳簿保存法に対応した経費精算システムを使用することで、これまでかかっていた手間や煩雑な管理を必要とせずに電子帳簿保存法へ対応できるように法律の内容が変化しています。
2-3. 電子取引のデータ保存規程のポイント
ここでは、2022年1月1日から施行される電子取引のデータ保存規程の緩和要件を解説していきます。
① クラウドサーバ上での保存が可能に
電子取引のデータを定められた納税地で保存、閲覧ができれば、要件を満たしたことになり、クラウドサーバー上でのデータ保存が可能になります。
② データを保存する際の措置
【1】送信者側、受領者側においてタイムスタンプの検証および、受領者側においてタイムスタンプの検証と一括認証機能が必要になります。
【2】送信者と受信者において取引データにおいて遅延なく、タイムスタンプを付与する。令和4年の1月1日以降は、約2月以内にタイムスタンプを付与する。
【3】適切なシステムを選定し、利用する必要があります。電子取引データを訂正したり、削除できないシステム、またはデータを削除したり、訂正した際の履歴が残り、変更内容を確認できるシステムを使用すること(主にクラウドシステム)。
【4】訂正や削除等の防止に関する事務処理規程を作成する必要があります。正当な理由がない訂正及び削除に対する防止のための事務処理の規程を定めていきましょう。
③ 電子取引データの保存要件
【1】関連書類の備付けが必要になります。電子取引データの授受システム等のシステム概要書や操作マニュアルなどを準備しておきましょう。
【2】見読性の確保が必要です。保存期間中、電子取引データは整然とした形式で明瞭な状態で出力ができる必要があります。
【3】電子取引データに対しては、取引データの種類ごとに「取引年月日」・「取引金額」・「取引先名称」のほか、主要な項目で検索することが可能です。
[参照] 国税庁:電子帳簿保存法改正
3. 電子帳簿保存法とは
今回の電子帳簿保存法の改正だけでなく、電子帳簿保存法はこれまで何度か改正されてきました。
電子帳簿保存法全体を理解しておくことは大切になるので、ここで理解しておきましょう。
関連記事:電子帳簿保存法とは?その重要性や手続きの流れなど基本を解説
3-1. 電子帳簿保存法とこれまでの経緯
電子帳簿保存法とは、帳簿や領収書などの処理にかかる負担軽減のために電子データでの保存を認めた法律です。
電子帳簿保存法は1998年に制定された法律で、その後何度か改正がおこなわれてきました。
たとえば、2005年にはスキャンしたデータで書類を保管するも可能になりました。
続いて2015年には、保存要件が緩和され企業が電子データの保存に取り組みやすい改正がおこなわれています。
その後2016年に大幅な要件の緩和が行われ、経費精算の手間が大幅に削減できるようになりました。
スマートフォンやデジカメで撮影した領収書であっても、電子保存が可能になったのです。
これは企業にとって非常に大きな変化でした。
そして今回の2020年10月の改正に至ります。
このように電子帳簿保存法は改正を繰り返して、企業がより簡単に電子データの保存に取り組めるようになってきました。
3-2. 電子帳簿保存法のメリット
電子帳簿保存法のメリットに関する別記事でも解説しておりますがこの記事でも解説致します。電子帳簿保存法のメリットは以下の通りです。
① オフィスの省スペース化
日本では、法人は取引記録を帳簿につけ、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間にわたって保存することが義務づけられています。[注1]
なお、赤字経営で繰越欠損金が出た場合は、平成20年4月1日以後に修了した欠損金の生じた事業年度については9年間、平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度については10年間にわたり、帳簿の保存が必要になります。
国税帳簿書類は一般的にファイルやバインダーなどに綴じ、キャビネット等で保管しますが、7年ないし10年もの間保管し続けるとなると、書類の数は膨大になり、少なからずオフィスのスペースを占有してしまいます。
帳簿書類を電子データ化すれば、紙で残す必要がなくなり、オフィスの省スペース化を図ることができます。
② 経理業務の効率化
大半の企業は帳簿書類を年度ごとに分けて保管しますが、たくさんある書類の中から目当ての一枚を探し出すのはかなりの手間と時間がかかります。
書類探しに手間取っていると、そのぶん他の作業が滞ってしまうため、業務効率が低下する一因になることも。
その点、帳簿書類を電子データとして保存しておけば、検索機能を使って目当ての書類を簡単に探し出すことができます。
業務効率が上がれば、生産性アップにもつながり、売上や業績にも良い影響をもたらします。
また、紙の帳簿を閲覧するのはオフィス内に限られますが、帳簿書類を電子化してクラウド上に保管しておけば、場所や時間を問わず帳簿書類にアクセスできるようになります。
たとえばスマホやタブレットなどを使って帳簿書類の電子データを呼び出せば、取引先や出張先からでも簡単に帳簿書類を閲覧することが可能です。
いちいちオフィスに戻る手間がなくなり、時間を効率よく使えるようになるところも電子帳簿保存法を適用する大きなメリットといえます。
③ コスト削減
紙の帳簿を作成するには、用紙のほか、印刷に使うインクも用意しなければなりません。
さらには、保管用としてファイルやバインダー、キャビネットなども購入する必要があり、保管が長期間に及ぶほど経費もかさむ傾向にあります。
帳簿書類を電子データとしてコンピュータに保存すれば、印刷や保管にかかるコストを大幅に節約できるため、経費削減につながります。
④ 環境問題への配慮
企業は自社の利潤を追求するだけでなく、消費者や投資家、さらには社会全体からの要求に対して責任を果たす姿勢を求められます。
これを企業の社会的責任(CSR)といい、昨今では企業イメージの向上や取引先との関係強化に欠かせない活動とされています。
CSR活動の種類は多岐に亘りますが、中でも代表的なものがエコ活動による環境問題への貢献です。
電子帳簿保存法の適用により、企業のペーパーレス化が進めば、貴重な紙資源を節約して省エネ・エコを推進することができます。
⑤ セキュリティの強化
帳簿書類はオフィス内のキャビネット等に保管し、無人になる時はオフィス・キャビネットの双方を施錠して盗難に備えます。
ただ、鍵が物理的にこじ開けられてしまった場合、悪意ある第三者に帳簿書類を盗まれてしまうおそれがあります。
盗難だけでなく、オフィスレイアウトを変更する際や、引っ越しの際に書類を紛失してしまう可能性もゼロではありません。
帳簿書類を電子データ化し、クラウド上で保存したうえで閲覧制限を設ければ、第三者にデータを盗まれる心配がなく、セキュリティを強化できます。
クラウド上のデータはIDやパスワードを管理していれば、いつでも引き出すことができるので、引っ越しやレイアウト変更にともなう紛失のリスクも少なく、安心してデータを保管できます。
4. 電子帳簿保存法に対応するには申請が必要
※2021年の電子帳簿保存法改正により、税務署長への事前承認制度が廃止されました。
よって2022年の施行より申請が不要となります。
2020年の電子帳簿保存法の改正によって、企業はよりペーパレス化や電子化を進めることができるようになりました。
今後企業が、より電子帳簿保存法のメリットを受けることができるように、対応方法と申請方法について解説いたします。
電子帳簿保存法を適用するためには、帳簿、書類、スキャナ保存についてそれぞれ申請しなければなりません。
電子帳簿保存法を開始する3カ月前までには申請をおこなうようにしましょう。
4-1. 帳簿のデータ保存について申請する方法
仕訳帳や売上台帳、仕入れ台帳などの帳簿類をデータで保存する場合は、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」で申請します。
すべての帳簿を申請することも、帳簿の一部だけを申請することもできます。
そのため、一部の帳簿はデータで保存し、残りは従来どおり紙で保存するといった運用も可能です。
申請書には以下の3点について明記しなければなりません。
- 承認を受けようとする帳簿の種類、備付け開始日、保存場所
- 帳簿の作成・保存に使用する機器の概要(パソコン・プリンタ・サーバーなど)
- 承認を受けようとする帳簿の作成・保存に使用するプログラム(ソフトウェア)の概要
4-2. 書類のデータ保存について申請する方法
貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、請求書や注文書、納品書などの取引関係書類など、帳簿以外の書類をデータ保存する場合は、「国税関係書類の電磁的記録による保存の承認申請書」で申請します。
こちらも、対象となる書類を指定できるため、一部の書類は紙で保存し続けることが可能です。
申請書には以下の3点について明記しなければなりません。
- 承認を受けようとする書類の種類、データ化した書類の保存開始日、保存場所
- 書類の作成・保存に使用する機器の概要(パソコン・プリンタ・サーバーなど)
- 承認を受けようとする書類の作成・保存に使用するプログラム(ソフトウェア)の概要
なお、この申請では自社で発行した書類のみが承認の対象となることに注意しましょう。
取引先から受け取った書類をデータ保存する場合は、次の「スキャナ保存した書類について申請する方法」によって申請する必要があります。
4-3. スキャナ保存した書類について申請する方法
取引先から紙で受け取った領収書や請求書、契約書、発注書などの書類を、スキャナで読み取ってデータ化し保存したい場合は、「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」で申請します。
申請書には、それぞれ以下の3点について明記しなければなりません。
- 承認を受けようとする書類の種類、データ保存の開始日、保存場所
- 書類のデータ化・保存に使用する機器の概要(スキャナ・スマホ・デジカメなど)
- 承認を受けようとするスキャナ保存に使用するプログラム(ソフトウェア)の概要
上記のように、保存データにはスキャナやデジカメ、スマホなどで撮影した画像データが使えますが、解像度や色調などの要件を満たす必要があります。
【国税庁】電子帳簿保存法関係書類
5. 電子帳簿保存法改正のメリットを最大限活用しよう
今後多くの企業が、帳簿や書類を電子保存していく方向へシフトしていきます。
前回2020年の法改正によって、社内のペーパーレス化の促進や経理担当者の負担軽減、リモートワークの促進など、さまざまなメリットがもたらされました。
しかし、電子保存できる文書とスキャナ保存できる文書には違いがあったり、タイムスタンプに対しての従業員の理解が追い付いていなかったりと、不安があると思います。
いきなりすべての書類を電子保存する必要はないので、できるところから徐々に申請してみるのもよいでしょう。
2020年、2022年の電子帳簿保存法改正を
わかりやすく総まとめ!
1998年に制定された電子帳簿保存法ですが、2020年10月や2021年の改正によって企業が電子帳簿保存法に対応するハードルが格段に下がりました。
しかし、電子帳簿保存法に対応すれば業務が効率化されると言っても、要件や法律そのものの内容、対応の手順など理解しなければならないことは多いです。
「どうにか電子帳簿保存法を簡単に理解したいけど、自分で調べてもいまいちポイントがわからない・・・」とお悩みの方は「5分で読み解く!電子帳簿保存法まとめbook」をぜひご覧ください。
資料では
・電子帳簿保存法の内容に関するわかりやすい解説
・2020年10月改正内容と2022年の最新内容のポイント
・今後電子帳簿保存法に対応していくための準備や要件
など、電子帳簿保存法に関する内容を総まとめで解説しています。
「電子帳簿保存法への対応を少しずつ考えたいが、何から始めたらいいかわからない」という経理担当者様は「5分で読み解く!電子帳簿保存法まとめbook」をぜひご覧ください。