電子記録債権とは?誕生の背景、仕訳と会計処理について解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.7.8
MEGURO

経済産業省が2026年までに約束手形の廃止を目指す方針を発表しました。
手形に代わる決済手段として期待されているのが、金銭債権を電子化した「電子記録債権」です。
電子記録債権は全国銀行協会が提供するでんさいネットなどで管理できるため、手形のように「手形用紙に記入し、交付する」「受け取った手形を保管する」といった事務作業が発生しません。
この記事では、従来の手形や売掛債権の問題点を克服した電子記録債権の特徴や誕生の背景、仕訳方法を解説します。
1. 電子記録債権とは?

2008年12月に電子記録債権法が施行され、新たに「電子記録債権」が創設されました。
電子記録債権は、これまでの金銭債権を電子化し、全国銀行協会のでんさいネットなどで管理できるようにした利便性の高い金銭債権です。
金融庁・法務省は、電子記録債権を以下の通り定義しています。
「電子記録債権」とは、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録をその発生・譲渡等の要件とする、既存の指名債権・手形債権などとは異なる新たな金銭債権です。
引用:金融庁・法務省|電子記録債権
つまり、電子記録債権はでんさいネットなどの電子債権記録機関に登録することで効力が発生し、他者に譲渡することが可能になる金銭債権を指します。
1‐1. 電子記録債権を利用した取引の流れ
電子記録債権を利用した取引は大きく3つのステップに分かれます。
・電子記録債権の発生
取扱金融機関の窓口を通じて、でんさいネットなどの電子債権記録機関で「発生記録」を行い、電子記録債権を登録します。
・電子記録債権の譲渡
電子債権記録機関で「譲渡記録」を行い、登録した電子記録債権を他者に譲渡します。このとき、電子記録債権を分割して譲渡することも可能です。
・電子記録債権の支払
手形と同様に、支払期日になると電子記録債権の引き落としが行われ、取引先の銀行口座に払い込まれます。支払いは電子債権記録機関が自動的に行い、「支払等記録」として記録が保管されます。
2. 電子記録債権が誕生した背景

そもそも、なぜ電子記録債権が誕生したのでしょうか。
電子記録債権が誕生した背景は、2003年7月の「e-japan戦略II」まで遡ります。
金銭債権を電子化し、従来の手形や売掛債権の問題点を解決するというアイデアは、2008年12月の電子記録債権法の施行によって実現しました。
電子記録債権制度が創設されるまでの沿革は以下の通りです。[注2]

電子記録債権が誕生した背景には、従来の手形や売掛債権が抱えるリスクがあります。
電子記録債権を利用すれば、以下の6つのリスクを全て克服することが可能です。

3. 電子記録債権の仕訳と会計処理

手形や売掛債権のやりとりと同様に、電子記録債権で取引を行った場合は、帳簿への記録が必要です。
電子記録債権の仕訳処理では、「電子記録債権」「電子記録債務」の2つの勘定科目を利用します。
ここでは、電子記録債権の支払企業(債務者)・納入企業(債権者)それぞれの会計処理を解説します。
3‐1. 電子記録債権の支払企業の会計処理
電子記録債権で仕入代金を支払う場合、会計上は一旦「仕入」の勘定科目で記帳してから、改めて「買掛金」を「電子記録債務」に振り替える処理を行うのが一般的です。
たとえば、100万円の買掛金の支払いを電子記録債権で行った場合、以下のように記帳します。
仕入 1,000,000円 / 買掛金 1,000,000円
買掛金 1,000,000円 / 電子記録債務 1,000,000円
3‐2. 電子記録債権の納入企業の会計処理
電子記録債権を売掛金の支払いを受けた場合も、同様に一旦「売掛金」として記帳し、売掛金を「電子記録債権」に振り替えます。
たとえば、100万円の売掛金を電子記録債権として受け取った場合、以下のように記帳してください。
売掛金 1,000,000円 / 電子記録債権 1,000,000円
売 上 1,000,000円 / 売 掛 金 1,000,000円
4. 電子記録債権のメリットとデメリット

電子記録債権には、支払企業(債務者)・納入企業(債権者)それぞれにメリットがあります。
たとえば、紙の手形を発行する日梅雨がないため、支払事務のペーパーレス化が可能です。
一方で、電子記録債権にはデメリットもあります。
電子記録債権のメリットとデメリットを比較し、自社に合った決済方法を選びましょう。
4‐1. 電子記録債権の6つのメリット
電子記録債権の支払企業(債務者)のメリットは以下の通りです。
ペーパーレス化や支払業務の一本化により、バックオフィス部門の業務効率化を実現できます。
また、印紙税が課税されないのも電子記録債権の長所です。
支払企業(債務者)のメリット
・手形の記入・発行や銀行振込などの事務作業から開放される
・電子記録債権は課税文書ではないため、収入印紙代を節約できる
・複数の支払いをでんさいネットなどのサービス上で一本化できる
電子記録債権は、支払企業だけでなく納入企業(債権者)にもメリットがあります。
電子記録債権はでんさいネットなどのサービス上で管理されるため、手形のように紛失・盗難のリスクがありません。
また、必要な分だけ債権の分割や割引を行えるため、柔軟な資金調達が可能です。
納入企業(債権者)のメリット
・電子記録債権には紛失リスクがないため、管理コストを削減できる
・必要な分だけ債権の分割・割引を行い、資金繰りに有効活用できる
・支払期日に自動で入金されるため、金融機関に取立の依頼を行う必要がない
4‐2. 電子記録債権の2つのデメリット
一方、電子記録債権にはデメリットもあります。
支払企業・納入企業のいずれかがでんさいネットなどのサービスに加入していない場合、電子記録債権で取引を行うことはできません。
また、手形取引から電子記録債権での取引に切り替えると、会計処理のフローが大きく変化します。
会計ソフトを導入している場合は、電子記録債権に対応した製品に更新する必要があります。
・支払企業・納入企業の両方がでんさいネットなどのサービスに加入する必要がある
・手形や売掛債権から電子記録債権に切り替えると、会計処理のフローが大きく変わる
5. 電子記録債権なら支払業務のペーパーレス化が可能!

手形や売掛債権に代わる支払手段として、近年注目を集めているのが電子記録債権です。
電子記録債権を導入すれば、支払企業(債務者)・納入企業(債権者)の両方がメリットを得られます。
手形取引の「手形の作成・交付の手間」「紛失・盗難のリスク」を解消し、支払業務を効率化することが可能です。
経済産業省の意向により、2026年を目処に約束手形の取り扱いが廃止される可能性があります。
手形取引から電子記録債権での取引へ移行する場合は、でんさいネットなどのサービス導入を検討しましょう。
[注1]金融庁・法務省|電子記録債権
[注2]全国銀行協会|電子記録債権とは
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