インボイス制度が美容室に与える影響や対策について解説
更新日: 2024.1.17
公開日: 2022.2.5
jinjer Blog 編集部
2023年10月1日から導入されるインボイス制度によって、さまざまな事業が影響を受けることが予測されています。美容室は、その事業の1つです。課税事業者あるいは免税事業者を問わず、インボイス制度はすべての事業者が正しく理解おくことが大切です。
本記事では、インボイス制度の導入によって、美容室が受ける影響や対策について解説します。とくに、収入が変化する可能性がある業務委託美容師の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
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1.インボイス制度が美容室に与える影響とは?
インボイス制度が導入されると、課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、仕入れ先から適格請求書等を発行してもらう必要が出てきます。美容室の場合、営業のために品々を仕入れる際に、仕入れ先から適格請求書等を発行してもらうことになります。
本来、消費税とは仕入れた際に払った分と商品やサービスを提供した際に相手から受け取った分を差し引きし、残った額を改めて納める、あるいは還付してもらう仕組みです。これは、すべての課税事業者に当てはまります。
しかし、比較的規模の小さい企業やフリーランスで事業をおこなっている場合、納税が大きな負担となる場合があります。そのため、これまでは年間の売り上げが1,000万円以下なのであれば、免税事業者とされて消費税を改めて納めることを免除されてきました。
免税事業者に関しては、今後も消費税の納税が免除されます。ただし、適格請求書等を発行する権利がありません。
そのため、課税事業者が免税事業者に仕事や仕入れを発注すると、適格請求書等が発行してもらえないため、仕入税額控除が受けられなくなってしまいます。結果的に税負担が増えてしまうため、課税事業者としてはわざわざ免税事業者に仕事を依頼する必要がなくなります。
すでに店舗で美容師を雇用している課税事業者の美容室であれば、今後仕入れの際に取引先が適格請求書等の発行に対応しているかよく確認することが必要となります。発行してもらえないと税負担が増えてしまうので、十分に気を付けてください。
2.業務委託美容師の収入はどう変化する?
美容室のなかには、店舗の運営や集客、在庫といった部分を事業者側でおこない、美容師と業務委託契約を結んで営業しているケースもあります。この場合、働いている美容師は事業者側に所属しているわけではありませんので、通常よりもインボイス制度の導入による影響が大きくなるかもしれません。
もし、業務委託契約を結んでいる美容師が免税事業者なのであれば、このままだと美容室側は仕入税額控除が受けられなくなります。そのため、美容師と美容室側とで交渉をおこなう必要が出てくるでしょう。
美容室側がこれまで通り仕入税額控除を受けながら営業を続けていくには、業務委託契約を結んでいる美容師に適格請求書等が発行できるようになってもらわなければなりません。しかし、適格請求書等を発行するには、課税事業者になる必要があります。
必要な申請をおこなうことで、免税事業者だったとしても課税事業者と同じ扱いになることは可能です。ですが、そうなると当然、課税事業者としてこれまで免除されていた消費税を納める必要が出てきます。控除を受けるためには同様に経理作業が増えてしまうため、税負担だけでなく事務負担も重くのしかかります。
2-1.税負担や事務負担を軽くしてくれる簡易課税制度について
そのため、業務委託契約を結んでいる美容師との交渉は慎重におこなう必要があります。そこで選択肢として検討できるのが、簡易課税制度についてです。これは、納める消費税の額の算出方法を簡易的にするための制度です。
通常、納める消費税を算出する際は、支払った消費税と受け取った消費税を差し引きします。簡易課税制度の場合、業種と売り上げからざっくりとした消費税を算出し、その分の控除を適用します。
わざわざ書類を集めて細かく計算する必要がないため、事務負担を大幅に軽減できます。加えて、納税額はみなし仕入れ率を用いてざっくりと計算するため、本来の計算方法を使うよりも少なくなる場合があります。
簡易課税制度において適用されるみなし仕入れ率は、業種を6つに分けてそれぞれ決められています。このうち美容師は第五種事業に該当するため、適用されるみなし仕入れ率は50%です。
一方で、簡易課税制度を用いることで必ずしも税負担が減るわけではないことも合わせて覚えておきましょう。細かく計算した結果簡易課税制度を用いないほうが納税額が少なくできるケースも想定されます。
業務委託契約を美容師と結んで経営をおこなっている美容室は、簡易課税制度の存在を踏まえたうえで、交渉することをおすすめします。
3.インボイス制度に向けて美容室が準備すべきこと
インボイス制度の導入に向けて、すでに課税事業者なのであれば、早い段階で適格請求書発行事業者になるための申請を行いましょう。
税区分を明確にした請求書の発行に関しては、すでに2019年10月から義務付けられています。この段階では免税事業者からの仕入れに関しては消費税の全額控除が認められています。
その後、2023年10月からインボイス制度が実際に導入され、仕入税額控除のために的確請求書発行事業者として登録した事業者から適格請求書等を発行してもらう必要が出てきます。
制度が導入される2023年10月から早速適格請求書等を発行してもらうためには、同年の3月31日までに適格請求書発行事業者になるための登録手続きをおこなわなければいけません。期限を超えてしまっても登録はおこなえますが、適格請求書等の発行開始までに時間を要するでしょう。
※令和5年度税制改正の大綱にて、9月30日までの申請は2023年10月1日を登録開始日となることが発表されました。
業務委託契約を結んで美容師を雇用している美容室は、早い段階で交渉をまとめることを心がけましょう。
なお、制度が導入されてすぐの段階では免税事業者からの仕入れでまったく控除が受けられなくなるわけではありません。経過措置が設けられており、2026年9月30日までは80%、2029年9月30日までは50%まで免税事業者からの仕入れでも消費税が控除されます。
こういった期間も含めて、今後の経営をどうするか踏まえて検討や交渉を進めましょう。
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4.増える税負担や事務負担を踏まえたうえで制度に対応することが大切
インボイス制度が導入されることで、多くの事業者の税負担や事務負担が増えてしまうことが予測されます。とくに、今の段階で業務委託契約を結んで働いている美容師は、適格請求書発行事業者になるかどうかを検討しなければいけないでしょう。
美容室側が同じ形態で経営を続けていくのだとすれば、簡易課税制度を利用するなど少しでも税負担や事務負担を軽くする工夫についても合わせて考えてみてください。
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