インボイス制度導入によるメリット・デメリットを徹底解説
更新日: 2024.1.17
公開日: 2021.11.26
jinjer Blog 編集部
2023年10月1日から「インボイス制度」が導入されます。インボイス制度については、なんとなく理解している程度の方も少なくないでしょう。インボイス制度の理解を深めるには、メリット・デメリットを知ることが役立ちます。
本記事では、インボイス制度導入にあたって企業が受けるメリットとデメリットの他に、インボイス制度に上手く対応するためのポイントについても紹介します。
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1.インボイス制度導入によるメリット
インボイス制度は、請求書の複数税率(8%・10%)を明確に表記し、消費税納税の透明性を図るための制度です。インボイス制度が導入された後は、企業にとってどのようなメリットが期待できるのでしょうか?
インボイス制度導入によるメリットについて、次に詳しく解説します。
1-1.電子インボイスの導入がしやすくなる
電子インボイスとは、電磁的記録(電子データ)によって送付された適格請求書のことををいいます。今回のインボイス制度では、電子インボイスでの送付や保管が認められています。
ただし、保管にあたっては電子帳簿保存法に則った方法によっておこなわれなければなりませんので注意が必要です。
電子インボイスでの送付・保管ができるようになると、企業にとって次のようなメリットがあります。
- 郵送や印刷が不要となることによりコスト削減の効果が期待できる
- 紙での保管が不要となるため、保管場所の確保が不要となる
- 請求書発送にかかる手間が無くなることで、業務の効率化が図れる
2020年7月には、電子インボイス普及を目的とした「電子インボイス推進協議会」が発足しました。これにより、企業間における電子インボイス導入が、今後より一層活発化していくことが想定されます。
1-2.インボイス制度導入後も取引の継続が見込める
「適格請求書発行事業者」の登録をすることで、取引先から契約を継続してもらえることが期待できます。
登録していない事業者が発行した請求書では、仕入にかかる消費税の免除制度である「仕入税額控除」を受けることができないため、取引先が他の適格請求書発行事業者に取引変更する可能性がでてくるのです。
仕入税額控除を受けるには、適格発行事業者が発行した適格請求書が必要となってくるため、取引先の選定にあたっては「適格請求書発行事業者であるかどうか」も今後重要なポイントになってくるでしょう。
適格請求書発行事業者になるには、課税事業者でなくてはなりません。また、2023年10月1日のインボイス制度開始に間に合わせるには、事前に申請書を納税地を所轄する税務署に提出して、登録番号を通知を受け取る必要があります。
2023年9月30日までに申請すれば、2023年10月1日から発行事業者として登録できますが、登録番号がない場合はすぐにインボイス発行をおこなえません。その場合は、登録番号の通知を受けた後に、さかのぼって適用させる必要があります。
2.インボイス制度導入によるデメリット
インボイス制度導入によって、業務の効率化や費用削減につながるメリットがある一方で、経理業務の負担増加や売上減少などのデメリットもあります。
インボイス制度導入によるデメリットについて詳しくみていきましょう。
2-1.経理業務が煩雑になる
インボイス制度では、請求書の記載事項の追加や仕入税額控除を受ける為の要件が変わることから、経理担当者の業務が増えることが想定されます。
たとえば、仕入税額控除の計算をおこなうために、適格請求書とそうでない請求書の振り分けや管理するための業務が必要となってきます。
また、請求書のフォーマットが従来のものと変わり、記載する項目も増えますので、請求書作成業務の負担が増えます。
ほかにも、売上税額と仕入税額の計算に現行の「割戻し計算」に加え、取引ごとに税額を計算する「積上げ計算」を選択できるようになることから、自社にとって「積上げ計算」が良い場合は、税額の計算方法が変わる可能性もあります。
このように、インボイス制度導入によって新たな業務が発生しますので、どういった業務が増えるのか事前に想定しておいた方が良いでしょう。
2-2.消費税の控除額が減少する可能性がある
インボイス制度が導入されると、取引先が適格請求書発行事業者でなければ、仕入税額控除を受けることができなくなりますので、消費税の控除額が減少する可能性がでてきます。
仕入税額控除を受けるには、取引先にも適格請求書発行事業者になってもらえ良いのですが、そう簡単にはいかない事情もあります。
取引先が免税事業者である場合、適格請求書発行事業者になるには、まず課税事業者へ変更する必要があります。
しかし、今まで免除されていた消費税の納税義務が発生し、免税事業者にとって大きな負担が生じます。このため、適格請求書発行事業者になることを簡単には決められません。
ただし、インボイス制度導入後の6年間は経過措置として、免税事業者との取引で一定の割合を仕入税額として控除することができます。
導入後3年間は80%、残りの3年間は50%の控除が可能となります。経過措置があったとしても控除額が減少することに変わりはありませんので、取引相手の選定には今後慎重な判断が必要になるでしょう。
3.インボイス制度に上手く対応するポイント
インボイス制度導入によって経理の負担増加や売上の減少などが想定されることから、早い段階で対策を講じておいた方が良いでしょう。
次に、インボイス制度に上手く対応するためのポイントについて解説します。
3-1.請求書のフォーマットを変更する
適格請求書は、従来の請求書から記載しなくてはいけない項目が増えますので、事前に請求書のフォーマットを変更しておくと良いでしょう。
適格請求書として認められるには、以下の必須項目を記載していなければいけません。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の公布を受ける事業者の氏名又は名称
現行のフォーマットを修正するだけで対応できそうか、または新たに作成し直さなければならないか、事前に確認しておきましょう。
3-2.経理業務のワークフローの見直しを図る
上述でも触れましたが、インボイス制度導入によって請求書の様式や仕入税額控除を受けるための要件などが変わることから、経理業務の負担の増加が想定されます。
なお、適格請求書発行事業者の義務として以下の4点が課せられることになります。
- 適格請求書の交付
- 適格返還請求書の交付
- 修正した適格請求書の交付
- 写しの保存
上述の義務化によって、どのような業務が増加するのか事前に洗い出しておき、経理業務のワークフローを整備しておくと良いでしょう。
3-3.インボイス制度に対応したシステム導入を検討する
この機会に、インボイス制度に対応した会計システムや請求書作成ソフトの導入を考えても良いでしょう。
インボイス制度導入後は、経理業務の負担が増えること想定されますが、システムを導入によって経理業務の効率化が期待できます。
また、電子インボイスでの送付・保管が可能となることから、システムを通じて送付・保管ができるようになれば、費用の削減にもつながります。
すでに、会計システムや請求書作成ソフトを導入している場合は、現行のシステムがインボイス制度に対応したシステムに改修が可能かどうなのか確認をしておいた方が良いでしょう。改修が難しいようであれば、新たにシステムを導入する必要があります。
4.インボイス制度導入のポイントを抑えて適切に対応しよう
インボイス制度導入のメリットは、電子インボイスの導入がしやすくなる、適格請求書事業者になることで取引継続が期待できるといったことが挙げられます。
一方で、制度が変わることによって経理業務が煩雑化することや、消費税の控除額が減少する恐れがあるなどのデメリットもあります。
メリット・デメリットをしっかりと把握した上で、インボイス制度に上手く対応するには、インボイス制度に対応した請求書のフォーマットを予め準備し、経理業務のワークフローを整えておくと良いでしょう。また、インボイス制度に対応したシステムの導入するという手もあります。
インボイス制度導入まで時間がありますので、スムーズに移行できるように今からしっかりと対策を検討しておきましょう。
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