会計帳簿とは?種類や会計帳簿をつける際の手順・ルールも解説
更新日: 2024.5.23
公開日: 2022.4.19
jinjer Blog 編集部
会社の運営に会計帳簿は必要不可欠なものですが、記入項目が多く複雑な部分が多いです。
しかし、会社の経理の基本であり、経営戦略を立てる際にも重要であるため、正しく記録して管理しなければなりません。
今回は会計帳簿の必要性や種類、会計帳簿の書き方やルールについて解説します。
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1. 会計帳簿とは?
まずは会計帳簿がどのようなものなのか知っておきましょう。似ている帳簿や関係する権利とルールも合わせて解説します。
1-1. 経営状況を明らかにする重要な帳簿
会計帳簿は一種類の帳簿を指すのではなく、取引による資産の変化や経営状況を明らかにするための帳簿を総称したものです。
どれくらい儲かっているのか、経費はどれくらいか、資金繰りに問題はないかなども明確にわかります。そのため、会計帳簿は会社の経営がどのような状況にあるのかを正確に把握するために欠かせません。
また、賃借対照表や損益計算書をはじめとした、決算書を作成するためにも重要なものであり、法律によって作成して保存することが義務付けられています。
1-2. 会計帳簿と決算書(財務諸表)の違い
会計帳簿とは企業の日々の資産やお金のやり取りを記録する役割を持っている書類の総称です。
一方で決算書(財務諸表)は、企業が期末に決算報告をする際に、企業の経営状況を把握するために作成する書類です。
どちらも経営状況を把握するために、決算と関連して作成する書類ですが役割や作成するタイミングに違いがあります。どちらか片方のみの作成では会社法に違反するため、必ず両方作成しましょう。
1-3. 会計帳簿の保存期間
会計帳簿には保存が義務付けられている期間があります。
法人税法では、帳簿書類の保存義務期間は7年と決められています。しかし会社法では決算書類や総勘定元帳、会計帳簿等の各種補助簿の保存義務期間は10年となっています。
会計帳簿の保存期間は10年と考えておくとよいでしょう。
1-4. 会計帳簿閲覧請求権とは
会社法第433条では株主に会計帳簿の閲覧等の請求を認めています。
100分の3以上の株式を保有する株主は請求すると会計帳簿、及びそれに付随する書類(伝票、受取証、契約書、信書)を閲覧することが出来ます。
株主には、取締役の違法行為差止め請求権や損害賠償請求権が与えられており、責任追及の訴えの提起等監督是正権の行使の検討のため請求するといった理由で会計帳簿の開示を求めることがあります。
しかし、株主が調査目的で請求をおこなっている場合など正当な請求理由と認められない場合には、企業にはこの請求を拒否する権利があります。
2. 会計帳簿が必要な3つの理由
会計帳簿は会社が必ず作成し、保管しなければいけない帳簿です。その理由を把握して会計帳簿の重要性を理解しておきましょう。
2-1. 正確な経営状況を把握できる
会計帳簿に含まれる帳簿類には、会社の収支や借入、資金の動きなどさまざまな情報が記録されています。それらを見れば会社の経営状況がわかり、自社がどのような状態にあるのか正確に把握できます。
資金繰りや今後の経営方針、開発や人事など会社を支える大部分に関係するデータであるため、健全かつ安定した経営を続けるには欠かせません。
2-2. 青色申告で税制上のメリットが受けられる
企業の所得申告には白色申告と青色申告がありますが、青色申告の方が税制上のメリットが大きくなります。
ただし、青色申告するには、日々の取引を記録した一定の帳簿が必須であり、会計帳簿をつけることで青色申告しやすくなります。
2-3. 金融機関から融資を受ける際に必要になる
銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける際は正しい財務諸表の提出を求められます。
その際に会計帳簿があれば信憑性の高い情報として提示することができ、融資を受けやすくなることがあります。
3. 会計帳簿は主要簿と補助簿の2種類に分類される
会計帳簿には、記載する内容によって主要簿と補助簿に類別されます。それぞれの書類の種類や役割をみていきましょう。
3-1. 主要簿とは
主要簿は会社の取引全体を記録・計算する帳簿であり、複式簿記では必ず作成しなければなりません。
「日記帳」「仕訳帳」「総勘定元帳」の3種類がありますが、そのうち仕訳帳と総勘定元帳は会社法でも作成が義務付けられています。
日記帳 | 日記帳は取引日の発生順に取引を記載するもので、仕訳帳に記録する前のメモ書きの役割を果たしています。 他の2つの記録ミスを防ぐためにも記録することをおすすめします。 |
仕訳帳 | 仕訳帳は、取引内容を発生順に記載した上で借方・貸方にわけて適当な勘定科目へ仕分けする帳簿です。 借方には資産の増加や費用を、貸方には負債や純資産の増加と収益を記載し、この2つは金額が必ず一致しなければなりません。 |
総勘定元帳 | 総勘定元帳は仕訳帳をもとに収益・費用・資産・負債・純資産といった5つの勘定科目に分類したものです。 決算書となる貸借対照表や損益計算書を作成するベースとなるため、主要簿の中でも特に重要です。 |
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3-2. 補助簿とは
補助簿は主要簿の補助の役割があり、それぞれの名称と内容は以下のとおりです。
補助記入帳
補助記入帳は以下の7種類です。
現金出納帳 | お金の入出金を記録し、帳簿の残高と現金残高が一致しているかどうかを確認する帳簿のことです。 |
当座預金出納帳 | 当座預金の増減を詳細に記録する帳簿です。 |
小口現金出納帳 | 旅費交通費、通信費、雑費など日常的な現金の出入りを記録する帳簿です。 |
仕入帳 | いつ・誰から・何を・いくらでの仕入れたのか仕入の明細を記録する帳簿です。 |
売上帳 | いつ・誰に・何を・いくらで売り上げたのか売上の明細を記録する帳簿です。 |
支払手形記入帳 | 支払手形の増減を記録する帳簿です。 |
受取手形記入帳 | 受取手形の増減を記録する帳簿です。 |
補助元帳
補助元帳は以下の4種類です。
商品有高帳 | 商品ごとの受払・現在の在庫数や在庫原価を記録する台帳です。 |
仕入先元帳(買掛金元帳) | 仕入先ごとに取引の内容・金額を分類して記録する台帳です。 |
得意先元帳(売掛金元帳) | 仕入先ごとに取引の内容・金額を分類して記録する台帳です。 |
固定資産台帳 | 固定資産ごとに取得・減価償却・売却・除却などを記録する台帳です。 |
4. 会計帳簿の書き方とルール
会計帳簿はルールに従って記帳しなくてはなりません。
また、手順を間違えると余計な手間が増え、ミスの原因となる可能性もあるため、注意が必要です。
会計帳簿をつける際の重要ルールは3つあります。
会計帳簿をつける際は必ず以下のルールに従いましょう。
- 数字はアラビア数字を使用
- 略字は決められた表記で記載
- 訂正は2本線を引き、線の右側に訂正印を押印
帳簿には必須の数字ですが、「二」や「五」といった漢数字ではなく、「2」や「5」といったアラビア数字で記載します。
また、略字を使用するときは決められた略語は統一して使います。
(例)円を「¥」、単価を「@」など
会計帳簿で記入ミスなど訂正が必要となった場合は、訂正箇所に平行な2本線を引き、線の上下左右どこかの余白に正しい内容を記載し、線の右側に訂正印を押します。
修正ペンなどは使用できません。
なお、会計ソフトを使用している場合は、経理担当者が上司の承認をもらったのちデータ修正するのが一般的となっています。
5. 会計帳簿の作成手順は4ステップ
会計帳簿を作成する手順は以下のとおりです。
会計帳簿には非常に重要なデータが詰まっています。まとめてではなく、日々しっかりと記録することで正確性を上げられます。
5-1. 経費に関するレシートや領収書を整理して出納帳へ記載
日々の経費に関するレシートや領収書を、まず現金で支払ったものと口座から支払ったものに分類します。
現金で支払ったものは現金出納帳に、口座からの支払い分は預金出納帳に記入します。
仕入れによる買掛金がある場合は、買掛帳に記載します。
5-2. 売上明細を整理して売掛帳に記載
売上明細を整理する際は、レシートや領収書、PDFやメールなどのデータ明細も忘れずに保管して整理してから、売掛帳に記入します。
電子帳簿保存法改正により電子取引データの保存が義務化となったため、PDFやメールなどの明細は印刷せずに適切な保管をしなければなりません。注意しましょう。
5-3. 月1回の締め日に経費・売上の整理と記載をおこなう
毎月1回締め日を設定し、経費と売上の整理と記載をおこないます。
帳簿に記載が済んだレシートや領収書は、種類別に仕分けファイルを作成してまとめて保管しておきましょう。
処理漏れや記載ミスの発生率を抑えるためにも、処理は当月中に済ませておくことをおすすめします。
5-4. 決算に必要な会計帳簿を用意する
毎月3.の処理をしっかりおこなっておけば、年1回の決算に必要な会計帳簿(主要簿・補助簿)もスムーズに用意できます。
2.で整理しておいたレシートや領収書なども必要に応じてすぐに出せるように準備をします。
会計ソフトを使用している場合は、必要な書類を印刷します。
6 . 会計帳簿をつけないリスクとデメリット
会計帳簿は記録する内容が細かく、負担になりやすい業務です。しかし、会計帳簿をつけないとさまざまなリスクやデメリットを抱えることになります。
6-1. 日記帳がないと記帳ミスに気づきにくくなる
日記帳は日々の取引を時系列で記載する書類です。仕訳帳への記録の際に必要ですが、作成が義務付けられていません。
しかし、日記帳がないと過去のやり取りを日単位でさかのぼることができなくなり、記帳ミスが発覚しにくくなってしまいます。
6-2. 法律を守れなくなる
会計帳簿は法律で作成が義務付けられています。不足や記載漏れがあれば、それは法律違反をしたことになってしまいます。
帳簿に記帳漏れやミスがあった場合はペナルティとして納税額の35〜40%が重加算税として課される可能性があります。もし、貴重漏れやミスが「虚偽の隠蔽」とみなされた場合、会社法で定められた会計帳簿の作成義務を怠った罰則として、100万円以下の罰金が課せられます。
6-3. 取引の内容を把握しきれなくなる
会計帳簿のうち、得意先元帳や仕入先元帳は取引の内容を確認するために非常に重要なものです。
会計帳簿がないと、取引先別の売上や仕入れを把握できなくなり、お金の動きや取引先との関係もあいまいになってしまうでしょう。
短期間の不十分なデータや直観任せの経営になってしまうため、安定した経営がしにくくなる恐れがあります。
7. 会計帳簿は青色申告や金融機関とのスムーズなやり取りのために必要なもの
今回は会計帳簿をつける際のルールや手順について解説しました。
会計帳簿は会社の日々の取引を正しく記載する必要があり、レシートや領収書などの整理も必要となるため手間もかかります。しかし、青色申告をするためや、金融機関に融資を申し込む際に必要な書類をスムーズに作成できるなどの大きなメリットがあるため、会計帳簿への記載は正しくおこないましょう。
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