小口現金と仮払金の違いについて詳しく解説
更新日: 2022.12.7
公開日: 2020.12.1
FURUYA
会社の経理において、従来よく使われるのが「小口現金」と「仮払金」です。ただこれらは仕組みや取引の流れが少し似ているため、違いがわかりづらいと感じる人は多いでしょう。
結論から述べると、小口現金と仮払金は意味も処理方法も異なる別物なのです。そこで今回は小口現金と仮払金の違いと、仮払金の処理方法やメリット・デメリットについて解説します。
「帳簿にズレがないかのチェックが大変で、なかなか仕事が終わらない」「出金や両替で毎回銀行に行くのがとにかくめんどくさい」など、小口現金の管理でお悩みではありませんか?
とはいえ「小口現金を廃止したいけど、どうすればいいのか、そもそもどのような準備が必要なのか・・・?」など、小口現金の具体的な廃止方法や手順がわからないと疑問を抱えている方も少なくないでしょう。
そのような方にむけて小口現金を無くすための手順を解説したガイドブックを用意いたしました。経費精算をラクにしたいという方は、ぜひダウンロードしてご覧ください。
1. 小口現金と仮払金の違い
まずは「小口現金」と「仮払金」の意味から理解していきましょう。企業の経理における両者には、それぞれ以下のような意味があります。
1-1. 「小口現金」とは各部署におかれたまとまったお金
「小口現金」の小口とは、「少額の」という意味を持つことから少額の現金と考えられます。
この小口現金が使われるのは「交通費」「消耗品費(文房具など)」「水道光熱費」「雑費(お茶代など)」であり、多くの場合、月に1度各部署にまとまったお金を支給されます。
各部署で小口現金担当となった人は、それを元手に金銭管理を行い何にどれくらい使ったのかを記帳しておきます。
そして一定期間経った後にその記録とともに企業の経理部に提出するのです。原則として各部署に管理を任せているため、自由度も高いでしょう。
ただ、きちんと記帳し用途を示す証拠を保存しておかないと着服や不正使用などを疑われてしまうので、注意しないといけません。
1-2. 「仮払金」とは事前に従業員へ支給される大まかなお金
仮払金とは、従業員に対して前払いされる大まかなお金のことです。例えば、従業員が長期出張をする場合、仮払金として事前にまとまった金額を支給します。
そして従業員はその仮払金で仕事上のやりくりを行うのです。もちろん余った仮払金は、出張が終わったと同時に返却しなければいけませんし、使った分に関しても、内容証明と証拠になる領収書を提出することになります。
以上のように小口現金と仮払金には、細かな部分で違いがみられます。
1-3. 「仮払金」と「立替金」の違い
「仮払金」には、もう1つ似ていると言われている勘定項目があります。それが「立替金」です。「立替金」とは、従業員や役員が支払うべきお金を企業や事業主が一時的に立て替えたときのお金のことです。
「企業や事業主が従業員に貸しているお金」「金券債権」とも考えられます。あくまで従業員が支払うはずだったものに対する立替であるため、会社が支払うべきお金を事前に経費として渡す「仮払金」とは、用途も意味も異なるのです。
小口現金と同様によく用いられる勘定項目なので、一緒に違いを理解しておくと良いでしょう。
関連記事:小口現金の仕組みや仕訳の方法など基礎知識を詳しく紹介
2. 仮払金を採用するメリット・デメリット
仮払金の採用には以下のようなメリット・デメリットがあります。今後採用するかどうか迷っている人は、下記内容をしっかり把握したうえで検討してみることをおすすめします。
2-1. 従業員への高額負担を避けられる
仮払金、最大のメリットは従業員への高額負担が避けられるという点です。
もし仮に仮払金が採用されていないと、一度従業員に建て替えてもらい立替金として清算することになります。高額であるほど従業員に対する負担も大きくなるでしょう。
しかし、上述したように「仮払金」は事前に従業員に大まかなお金を渡すため、従業員が立て替えるといった行為は原則として起きません。よって従業員の高額負担をしなくて済むのです。
2-2. 出金・清算時の作業が多くなる
ただ仮払金として従業員に事前に支払う側にはデメリットがうまれます。
まず1つ目は現金出金の作業や仕分け作業が増えるという点です。そもそも仮払金は小口現金ではなく現金で支払うため、キャッシュレス化をしていない場合出金作業がついてまわります。
出金作業には必ず仕分け作業が付いてきますし、その対象となる従業員が何人もいた場合、支払う側の負担はかなり増えると考えられます。
また出金作業をした日は入念に残高確認をしなければいけないため、精神的に疲れが出やすくなるでしょう。
2-3. 現金扱いであるため、清算漏れなどが起きると面倒
上述したように、仮払金は現金扱いとなるため作業がとても面倒です。また面倒でありながら作業は同じことを繰り返すため、清算漏れや記載ミスなどが起きるとより面倒なことになりかねません。
ただ近年は経費精算システムの導入や仮払金のキャッシュレス化(事前に給与支払いするなど)が進んでいるため、漏れを軽減させることはできつつあります。
システム導入やキャッシュレス化といっても実際に導入するには事前に準備が必要になります。現状把握や従業員周知、システム選定などさまざまです。
現金を廃止して、システムを選定するまでの手順を幅広く知りたい方は資料を用意しておりますので、こちらから無料で「目的別!小口現金廃止を実現するためのガイドブック」をダウンロードして読んでみてください。
以上のようなメリット・デメリットを踏まえた上で仮払金を採用するか決めましょう。
3. 仮払金清算の流れと仕訳方法
では実際に、仮払金の処理(清算)方法について学んでいきましょう。基本的には以下のような手順で進めていきます。処理する際の参考にしてみてください。
3-1. 仮払金を受け取る担当者に「仮払金申請書」を記入・申請をしてもらう
ここは企業によって順番が異なるかもしれませんが、基本的に仮払金を受け取る担当者に「仮払金申請書」を記入、経理部に申請してもらいます。
経理部はその申請書を参考に仮払金額等の確認を行います。確認する内容は「記載内容にミスはないか「記載漏れが無いか」が中心です。
3-2. 仮払金を渡す
対象となる従業員に仮払金を渡します。方法としては原則「現金」ですが、企業によってはキャッシュレス化を図り、事前に給与清算することもあります。
ただ、そのやりとりを記録するために、会社ごとの指定の書類にサインと捺印をすることに変わりはありません。
3-3. 仮払金清算書の受取、余剰金の返金、証明となるものの提出
例えば、仮払金を受け取った人が出張していた場合、仮払金の処理は出張後になります。
その際、「使用用途」や「使用金額の提示」を「仮払金精算書」にまとめて提出してもらいます。また仮払金が余っていた場合は返金してもらいましょう。
一方、仮払金が足りなくなり一部の費用を出張した従業員が立て替えた場合は、会社から返金が必要です。それも「仮払金精算書」に立て替えた費目と金額を記載して提出してもらうのが一般的な処理方法です。
3-4. 仮払金の清算・処理
仮払金精算書を受け取った後は、その清算に過不足がないかを必ず確認します。
この確認が済めば、今まで曖昧だった仮払金の勘定項目が明確になり、金額もしっかり記載できるようになるでしょう。ここで記載漏れやミスが発覚すると、仕訳に進めないので慎重に行うように。
3-5. 仮払金の仕分け作業にうつる
まずは仮払金を対象者に渡した場合を見てみましょう。以下のように仕訳を行います。
ここでは、出張する従業員に5万円を仮払金として渡した場合の仕訳例を考えてみましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仮払金 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
従業員に渡している時は、まだこれらの勘定項目がしっかり判明していないため、仕訳の際も「仮払金」として記載します。詳細が分かるのは出張後になるため、出張後にもらう「仮払金精算書」をもとに詳しい勘定項目をつけていきます。
ここでは交通費35,000円、交際費に10,000円かかったとします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費 | 35,000 | 仮払金 | 50,000 |
交際費 | 10,000 | ||
現金 | 5,000 |
表中の「現金」は余ったお金であり、返金したことを示しています。もし清算時に仮払金の不足があり、出張担当者が25,000円ほど立替を行なったと申請があった場合は以下のように貸方に不足分を記載し、仕訳しましょう。
借方 |
金額 |
貸方 | 金額 |
旅費交通費 | 65,000 | 仮払金 | 50,000 |
交際費 | 10,000 |
現金 |
25,000 |
4. 小口現金と仮払金は用途も内容も異なる!区別できるようになろう
上述したように小口現金と仮払金は、内容も用途も異なります。また仮払金は立替金とも混同しやすいのでそれぞれの区別をしっかりつけておくことが大切です。
ぜひこの記事を参考にそれぞれの違いを理解し、仮払金の違いも理解しておきましょう。
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