総資産利益率の計算方法や自己資本利益率との違いを解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.19
jinjer Blog 編集部
企業の経営状況を分析する数値のひとつが総資産利益率です。「当期純利益 ÷ 総資産 × 100」で求められ、活用により、総資産を活用し効率よく利益を獲得しているか確認できます。
本記事では、総資産利益率とは何か、概要や計算方法、分析時の注意点、自己資本利益率との違いを解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 総資産利益率(ROA)とは?
総資産利益率とは総資本を効率よく運用し、利益(儲け)を出せているか確認できる財務指標です。
英語では、「Return On Assets」と記載するため、頭文字を取り「ROA」と表記するのが一般的です。
総資産利益率の数値が高いほど、少ない総資本で効率よく利益を獲得できているといえます。
1-1. 総資産利益率(ROA)を活用する場面
総資産利益率は主に以下の場面で活用されます。
- 会社の財務分析を行うとき
- 投資家が投資判断をするとき
企業で総資産利益率を確認すれば、客観的な指標で収益性を理解でき、他の指標と合わせて分析すれば経営判断を行ううえでも役立ちます。
また、投資家が企業への投資判断を行う際にも活用する指標です。
1-2. 総資産利益率(ROA)で分かること
総資産利益率の確認により、企業の総資本を効果的に活用し利益の獲得につなげているか判断できます。経営者の手腕の高さや、保有資産の効率的な運用などがわかるといってもよいでしょう。
なお、総資本とは自己資本と他人資本を合わせたもののため、負債が多い企業でも、利益を上げられていれば数値は高くなります。
2. 総資産利益率(ROA)の目安
総資産利益率で企業の経営状態を計る際は、以下が目安となります。
優良:10%
良好:5%
普通:2%未満
要改善:-〇%(赤字経営)
一般的には5%を目安にするとよいとされています。しかし、総資産利益率は業界によっても平均値は異なり、さらに、社会情勢にも影響されやすい数値です。
たとえば、一般的に情報通信業の総資産利益率は5%を超えることが多いものの、割賦金融業は1%を下回ります。
また、日本企業の平均総資産利益率は5%台ですが、2008年の世界金融危機(リーマンショック)時には0.7~0.8%と1%を切っていました。このように、社会情勢の影響を大きく受ける指標でもあります。
3. 総資産利益率(ROA)の計算方法
総資産利益率は以下の式により求められます。
総資産利益率(%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
たとえば、当期純利益が同じ500万円であったとしても、総資産が5,000万円のA社の総資産利益率は10%、2,000万円のB社では25%となります。
次に、「当期純利益」と「総資産」の計算方法を解説します。
3-1. 当期純利益の計算方法
当期純利益は以下の式により求められます。
当期純利益 = 税引前当期純利益 – 税金(法人税・住民税・事業税他) ± 法人税等調整額
当期純利益は、売上高からすべての経費と税金を引いた数字であり、企業の純粋な儲けを表します。最終的な経営成績と考えてもよいでしょう。
3-2. 総資産の計算方法
総資産は以下の式により求められます。
総資産 = 流動資産 + 固定資産 + 繰延資産
貸借対照表の「資本の部」の合計と考えるとわかりやすいでしょう。また、総資産は総資本と言い換えることもできます。
なお、それぞれの資産は以下が代表的です。
流動資産:
短期間(通常1年以内)に現金化できる資産のこと。
現金、預金、商品、売掛金など。
固定資産:
現金化に時間がかかる(通常1年以上)資産のこと。
土地、建物、車両運搬具、特許権など。
繰延資産:
すでに支払いが済んだ金額のうち、年度をまたいで費用化できるもの。
開業費、株式発行費、繰延税金資産など。
関連記事:純資産とは?総資産との違いや経営指標となる各比率の計算方法も解説
4. 総資産利益率(ROA)を高める方法
総資産利益率を上げる方法は、以下のどちらかとなります。
- 売上に対する利益率を上げる
- 不要な総資産を減らす
それぞれ、詳しく解説します。
4-1. 売上に対する利益率を上げる
売上に対する利益の割合を計る指標に「売上高営業利益」があり、以下の式で計算できます。
売上高営業利益 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
収益性の改善は、総資産利益率の向上にもつながります。
具体的方法としては、販売価格を上げる、商品原価を下げる、宣伝広告費・人件費などの経費を削減するなどです。
4-2. 不要な総資産を減らす
総資産利益率は資産が少ないほど改善します。具体的な方法としては、以下が挙げられます。
- 借入金を減らす
- 遊休資産(使用していない、または、利用価値のない資産)を売却する
- 売掛金を回収する
- 必要以上の在庫を保有しない
総資産の減少は貸借対照表のスリム化とも呼ばれ、財務体質改善の上でも重要な取り組みです。
5. 総資産利益率(ROA)と自己資本利益率(ROE)の違い
総資産利益率(ROA)は分母を総資本(自己資本+他人資本)とするのに対し、自己資本利益率(ROE)は分母を自己資本のみとする点に違いがあります。
5-1. 自己資本利益率(ROE)とは
自己資本利益率とは株主資本利益率とも呼ばれ、自己資本(株主資本)をどれだけ効率的に活用し、利益を上げているかを計る指標です。
英語では「Return On Equity」と表すため、頭文字を取り「ROE」と表記するのが一般的です。
計算方法は複数あり、以下となります。
自己資本利益率(%)=
- 当期純利益 ÷ 自己資本(総資産 – 負債) × 100
- 1株当たり利益 ÷ 1株当たり純資産 × 100
どちらでも計算できるものの、財務分析では1を、投資判断では2により計算することが多いでしょう。
6. 総資産利益率(ROA)を用いるときの注意点
総資産利益率は高ければよい指標ではあるものの、他の指標と合わせて経営の実態を確認する必要があります。そのため、複数の財務指標と組み合わせて分析するとよいでしょう。
6-1. 総資産利益率(ROA)が低いとき
総資産利益率が低いからといって、一概に企業の経営状態が悪いとは断言できません。
たとえば、新規事業の立ち上げによる先行投資で、多額の借入れをすれば一時的に総資産利益率は低下します。しかし、事業が軌道に乗れば次第に総資産利益率は改善するでしょう。
なお、総資産利益率が常にマイナスの状態であれば、経営改善が必要です。
6-2. 総資産利益率(ROA)が高いとき
総資産利益率が高かったとしても、経営の実態がともなわないケースもあります。たとえば、本業の赤字分を固定資産の売却で補ったときなどです。
また、借入金が多いときも注意が必要です。この場合、売上が低迷すれば、返済計画が狂い事業が継続できない恐れもあります。
6-3. 総資産利益率(ROA)のみでは経営状況を判断できない
以上のように、総資産利益率のみでは、企業の経営状況は把握できません。そのため、以下のような財務指標も用い、多面的に経営状態を判断しましょう。
安全性:自己資本比率、流動比率など
成長性:売上高成長率、経常利益成長率など
収益性:自己資本利益率、売上高経常利益率など
効率性:総資産回転率、売上債権回転期間など
なお、投資家などは収益性や安全性により企業を判断するケースが多くなります。しかし、企業の財務分析では、ステークホルダーの印象も左右するため、上記を総合的に意識しなければいけません。
関連記事:財務分析を行うときの5つの方法をわかりやすく解説
7. 総資産利益率(ROA)を経営分析に役立てよう!
総資産利益率は、企業が総資本をどれだけ有効に活用し、利益を上げているか確認できる指標です。そのため、財務分析を行ううえでも重要な指標のひとつです。
なお、総資産利益率は数値のみで一概に経営状況を判断できるものではないため、業界平均と比べなぜ高い(もくしは低い)のか分析することが大切です。分析の際は他の財務指標も活用し、多角的に経営状況を判断する必要もあります。
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