労働基準法での副業の規定や取り組むメリットについて | jinjerBlog

労働基準法での副業の規定や取り組むメリットについて

法律家

政府は平成30年1月、働き方改革の一環として「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定すると共に、モデル就業規則にあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業の普及促進を図る方針を固めました。[注1]

こうした政府の動きにならい、国内でも副業・兼業を容認する企業が増えてきましたが、副業については労働基準法による規定があり、これに違反した使用者(企業)は罰則を受ける対象となります。

副業の促進は企業・労働者双方にメリットがありますが、一方でトラブルを招く要因にもなり得ますので、副業・兼業を容認する場合は何らかの対策を講じることが大切です。

今回は、労働基準法での副業の規定や、副業促進によるメリット、企業側が行うべき副業のトラブル対策をご紹介します。

[注1]副業・兼業|厚生労働省

1. 労働基準法での副業の規定

ルール

従業員の副業を容認するにあたり、特に注意しておきたいのが本業・副業を通算した労働時間です。

労働者の労働時間は労働基準法第32条において、以下のように定められています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

労働基準法第32条で定められた労働時間は「法定労働時間」と呼ばれ、使用者は原則として、これを超えて従業員を仕事に従事させることを禁じられています。

一方で、労働基準法第38条1項では、労働時間について「事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。

つまり、法定労働時間は事業場ごとに定められるものではなく、あくまで労働者個人が1日あるいは1週間にどのくらい働いたかが基準となります。

たとえば、本業で休憩時間を除き1日8時間、週40時間働いている状態で、新たに別の事業場で副業を行った場合、法定労働時間をオーバーし、労働基準法第32条に違反することになります。

注意したいのは、労働基準法第32条違反で罰せられるのは労働者ではなく、法定労働時間を超えて仕事に従事させた使用者側だということです。

労働基準法第32条に違反すると、同法119条の規定により、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されるほか、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。

1-1. 36協定を締結すれば法定労働時間を超えて仕事に従事させることも可能

本業の所定労働時間が休憩時間を除いて1日8時間、週40時間の場合、すでに法定労働時間の上限に達しているため、副業を行う余地はなくなってしまいます。

しかし、あらかじめ労使間で労働基準法第36条に基づく協定(36協定)を締結しておけば、法定労働時間とは別に、1ヵ月45時間、1年360時間を上限とする時間外労働に従事させることが可能となります。(※2)

36協定を締結するためには、労働者の過半数で組織する労働組合か、あるいは労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定をし、行政官庁に届け出る必要があります。

ダブルワークをしている従業員を雇用する場合や、従業員を法定労働時間を超えて残業・休日出勤させる可能性がある場合は、必ず労働組合または労働者の代表と36協定を締結しておきましょう。

2. 副業が促進されることでどんなメリットがあるか

メリット

副業・兼業の促進は、労働者だけでなく、企業側にも多くのメリットがあります。

ここでは、副業の促進によって得られるメリットを労働者・企業それぞれに分けてご紹介します。

2-1. 労働者のメリット

労働者側のメリットは、なんといっても所得が増加することです。
本業が固定給の場合、昇給などのチャンスがないと所得はなかなか上がりませんが、副業を行えばプラスアルファの収入を得られるようになり、日々の生活費やマイホームの購入資金、子どもの教育費、老後の生活費などに充てることができます。

また、本業とは別にやりたいこと、チャレンジしたいことがある方にとっては、本業からの収入を活用しつつ、副業として自分の希望する職種に就くことも可能となります。

ゆくゆくは起業や、希望する職種への転職を考えたいという場合も、副業という形で準備や試行を行えば、生活面の心配をすることなく、夢や理想の実現に取り組むことが可能となります。

2-2. 企業側のメリット

企業側が従業員の副業・兼業を促進するメリットは、優秀な従業員を育成・維持できるところです。
従業員が、自社とは異なる業種・職種に従事すれば、新たな知識やスキルの習得につながり、従業員自身の能力向上につながります。

また、社外から持ち込まれた情報や知識、経験、人脈などは、自社にビジネスチャンスをもたらすきっかけになる可能性もあります。

さらに、副業の容認によって働き方の多様化を推進すると、「副業でもっと稼ぎたい」「社外で新しい知識やスキルを獲得したい」といった従業員のニーズを満たすことができ、従業員満足度(ES)が向上します。

ESの高い職場は労働生産性や従業員のモチベーションが高い傾向にあるほか、離職率の低下にもつながるため、優秀な人材の確保・維持に貢献します。

3. 企業側がすべき副業のトラブル対策

悩む様子

副業・兼業の促進は企業側にも多くのメリットがありますが、その一方で、必要な就業時間の把握・管理や、従業員の健康管理、機密漏えいの防止など、さまざまな問題・課題が生じます。

場合によっては副業をめぐるトラブルに発展することもありますので、従業員の副業を容認する場合は、あらかじめ何らかのトラブル対策を講じておく必要があります。

ここでは一例として、企業側が行うべき副業のトラブル対策を4つご紹介します。

3-1. 労働時間の管理体制の確立

労働者の法定労働時間および時間外労働時間は労働基準法によって定められており、これに違反すると罰則の対象となります。

そのため、従業員の副業を容認する場合は、法定労働時間および時間外労働時間を超えることのないよう、1人ひとりの労働時間を的確に把握・管理できる体制を整えなければなりません。

特に時間外労働については、労働基準法第37条によって規定された割増賃金の対象にもなりますので、法定労働時間と区別して把握・管理できるシステムやツールの導入を検討しましょう。

3-2. 評価制度の見直し

副業は新たな知識や情報、スキルの獲得につながる一方、副業に集中するあまり、本業がおろそかになるといった問題も生じやすくなります。

副業の容認は、本業に支障を来さないことを前提としたものですので、本業で一定の水準に達しない労働者の副業・兼業は認めないなど、一定のルールを設けるのもひとつの方法です。

一方で、副業を容認している以上、兼業している労働者がそうでない労働者に比べて不当な評価を受けるのは阻止しなければなりません。

そのためには、既存の評価制度を見直し、副業を推進する企業に見合った新たな制度を導入する必要があります。

3-3. 労働者の健康管理

労働契約法第5条では、使用者が労働者の生命や身体等の安全を確保しつつ労働できる環境を整えることを義務づけています。[注2]

副業を行うと、本業のみに従事している労働者に比べて心身にかかる負担は必然的に大きくなり、場合によっては労働者の健康に支障を来す原因となることもあります。

使用者は労働安全衛生法第66条の規定により、労働者に対して医師による健康診断を行うことが義務づけられていますが、健康診断の結果以外でも、定期的に労働者の様子に気を配り、健康状態に問題があると認められた場合には適切なケアやアドバイスを提供する体制を整えておくことが大切です。[注3]

[注2]労働契約法|e-Gov法令検索
[注3]労働安全衛生法|e-Gov法令検索

3-4. 秘密保持・競業避止の義務の遵守

従業員が副業先で自社の機密情報などを漏えいした場合、企業に多大な損害をもたらすおそれがあります。
また、自社で培ったノウハウや情報をもとに従業員自身が起業すると、競合他社を増やす原因にもなります。

従業員の副業を容認するにあたっては、秘密保持や競業避止の義務を遵守することを書面で誓約させると共に、万一義務に違反した場合は懲戒処分の対象になることをしっかり周知させておきましょう。

4. 副業を容認する場合は労働基準法の規定に注意!

注意

副業を容認・促進することは、労働者だけでなく、企業側にもさまざまなメリットがあります。
近年は政府の後押しもあり、副業を容認する企業も増えてきましたが、兼業によって法定労働時間を超えてしまうと、労働基準法に抵触する可能性があります。

36協定を締結すれば、法定労働時間を超えて時間外労働させることも可能ですが、やはり上限が設けられていますので、本業・副業を通算した労働時間を正確に把握・管理できる体制を整えておく必要があります。

また、「本業に支障を来さない」「機密情報を漏えいしない」といった基本的なルールを遵守させるためにも、評価制度や就業規則の見直しを行うことをおすすめします。