管理職の勤怠管理は義務!管理監督者の労働時間ルールと実務を解説
更新日: 2026.5.21 公開日: 2020.3.3 (特定社会保険労務士)

管理職は勤怠管理が不要と思われがちですが、実際には管理職であっても勤怠管理は必要です。労働基準法上の管理監督者は、一般社員のように労働時間の規制が適用されませんが、何も管理しなくてよいわけではありません。少なくとも、労働時間の「把握」や健康管理の観点での対応は、企業に求められています。
「管理職だから記録しない」という運用は、法令遵守の観点からもリスクがあります。
本記事では、「管理職」と「管理監督者」の違いや管理監督者の判断基準を整理したうえで、管理職に求められる勤怠管理の考え方と実務対応を解説します。
関連記事:労働時間と労働基準法の基礎知識をわかりやすく解説!休憩や残業の計算方法とは
目次
管理監督者に残業の上限規制は適用されませんが、労働時間の把握は管理監督者であってもしなくてはならないと、法改正で変更になりました。
この他にも、法律の定義にあった管理監督者でなければ、残業の上限超過や残業代未払いとして違法になってしまうなど、管理監督者の勤怠管理は注意すべきポイントがいくつかあります。
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1. 管理職(管理監督者)の勤怠管理は必要で義務!


労働基準法上の「管理監督者」に該当する管理職は、「労働時間・休憩・休日」の規制が適用されない立場にあります。しかし、それを理由に勤怠管理が不要になるわけではありません。
2019年4月の働き方改革関連法により、労働安全衛生法が改正され、「客観的な方法による労働時間の把握」が企業の義務となりました。この義務は、管理監督者やみなし労働時間制の対象者も含め、すべての労働者に適用されます(高度プロフェッショナル制度の対象者は除く)。
背景にあるのは、長時間労働による健康障害の防止です。時間外・休日労働が一定基準を超えた場合には医師の面接指導が必要となるため、その前提として労働時間を正確に把握しておく必要があります。
したがって、「管理職だから勤怠を管理しない」という運用は認められません。タイムカードや勤怠管理システムなどを活用し、客観的な記録に基づく労働時間の把握が求められます。
また、管理監督者は業務範囲が広く、長時間労働に陥りやすい傾向があります。過重労働は労災リスクにも直結するため、労働時間の状況を継続的に確認し、早期に是正できる体制を整えましょう。
関連記事:労働時間の上限規制は管理職にもある?管理監督者との違いを理解しよう
2. 「管理職」と「管理監督者」の違いとは?


「管理職」と「管理監督者」は似た意味でよく使用されますが、厳密には異なります。「管理職」は企業内の役職者を広く指す言葉であるのに対し、「管理監督者」は労働基準法上で明確に定義されたものです。両者を混同したまま運用すると、未払い残業代のリスクにつながるため、正しく区別しておかなければなりません。ここでは、それぞれの違いを整理します。
2-1. 管理職とは
管理職とは、部門やチームの運営を担い、部下の指導や業務管理をおこなう役職のことです。一般的には、部長・課長・マネージャーなど、肩書を持つ者を広く指すことが多いでしょう。
この「管理職」という呼称には、法的な定義はありません。そのため、管理職であっても、実態として労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合は、一般従業員と同様に労働時間・休憩・休日の規制が適用されます。
つまり、役職はあるが、労働時間の裁量がほとんど無かったり、経営判断に関与していなかったりするなど、待遇が一般社員と変わらない場合は注意が必要です。このようなケースは、いわゆる「名ばかり管理職」と判断される可能性があり、残業代の支払い対象となります。役職名だけで労働時間管理をゆるめるのではなく、実態に応じた運用をおこないましょう。
2-2. 管理監督者とは
管理監督者とは、経営者と一体的な立場で業務を遂行し、企業の重要な意思決定に関与する者を指します。労働基準法第41条第2号に基づき、労働時間・休憩・休日の規制が原則として適用されない(残業代や休日手当の支払い義務がない)のが特徴です。
ただし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。該当するかどうかは、次のような要素を総合的に見て判断されます。
- 職務内容や権限
- 労働時間の裁量の有無
- 職務に見合った賃金・待遇
例えば、部長であっても実質的な権限が限定されていれば該当しない場合があります。反対に、役職名はついていなくても、経営に近い立場で大きな裁量を持つ場合は該当する可能性もあるのです。
なお、管理監督者であっても、深夜労働の割増賃金(22時〜翌5時)や年次有給休暇の付与義務は適用されます。また、労働安全衛生法に基づき、労働時間の適正な把握は必須です。
関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説
3. 管理監督者に該当する3つの判断基準


2章で、企業内で「管理職」とよばれていても、必ずしも労働基準法上の「管理監督者」に該当するとは限らないことを解説しました。「管理監督者」は、経営者と一体的な立場で重要な判断を担い、その責任を負う者を指します。該当性の判断は、主に3つの要素を総合的に見ておこなわれます。
- 職務内容・責任と権限
- 勤務態様(労働時間の裁量)
- 待遇(賃金・手当など)
ここでは、それぞれの判断基準を詳しく解説します。
3-1. 職務内容・責任と権限
管理監督者は、経営者と一体的な立場で、採用・解雇・人事考課などの人事権や、予算編成、大型取引の決定など、企業の経営や組織運営に関わる重要事項に関与している必要があります。
例えば、次のような要素があるかがポイントとなります。
- 部門の方針決定や業績管理に関与している
- 人事評価や配置、採用などに関与している
- 業務の進め方について広い裁量を持っている
単にチームをまとめるだけでなく、経営側の視点で判断を下す立場にあるかどうかがポイントです。上司の指示を忠実に実行するだけの立場や、決裁権が極めて限定的な場合は、管理監督者とは認められにくくなります。権限が形式的に与えられているだけでは足りず、実質的な裁量が伴っているかが重要です。
3-2. 勤務態様(労働時間の裁量)
管理監督者は、その職務の性質上、労働時間・休憩・休日の規制になじまない働き方をしていることが求められます。
具体的には、次のような状態が想定されます。
- 出退勤時刻を厳密に管理されていない
- 業務の都合に応じて自ら働き方を調整できる
- 遅刻や早退によって賃金が控除されない
反対に、始業・終業時刻が厳格に定められ、一般社員と同様に勤怠管理されている場合は、管理監督者とはいえません。ただし、管理監督者であっても深夜労働(22時〜翌5時)の割増賃金は発生します。また、健康管理のための労働時間把握は義務付けられています。
3-3. 待遇(賃金・手当など)
管理監督者は、その職務と責任の重さにふさわしい待遇を受けている必要があります。
例えば、次のような点が判断材料となります。
- 月給や賞与が一般社員と比較して十分に優遇されている
- 役職手当などが支給されている
- 経営に近い立場として相応の処遇がなされている
もし残業代が支給されないことで、部下よりも総年収が低くなっているような場合は、「待遇が不十分」とみなされ、管理監督者性が否定されるリスクが高まります。
4. 名ばかり管理職に注意!リスクと実務上の注意点


「名ばかり管理職」とは、肩書は店長や課長などであっても、実態としては労働基準法上の「管理監督者」に該当しない労働者を指します。これは単なる名称の問題ではなく、労働基準法違反に直結する極めてリスクの高い状態です。
法的な判断基準は、主に次の3点に集約されます。
- 職務内容と権限
採用・解雇などの人事権や、経営上の重要事項への決定権を持たず、上司の指示を遂行するだけの立場である。 - 勤務態様
出退勤時刻を自ら決定する裁量がなく、タイムカード等で厳格に管理されており、遅刻や早退による賃金控除がある。 - 待遇
役職手当等を含めた月給や賞与が不十分で、残業代が支払われない結果として一般社員より総年収が低くなっている。
これらの実態が認められる場合、その労働者は一般従業員と同じ扱いとなり、企業には過去に遡って残業代や休日手当を支払う義務が生じます。
名ばかり管理職と認定された場合、企業が負うリスクは甚大です。未払い賃金の請求権は、過去5年(当分の間は3年)分に延長されており、対象者が多い場合は数千万円〜数億円規模の支払い義務が生じます。さらに、年3%(退職者は年14.6%)の遅延損害金や、裁判所から悪質と判断されると未払い金と同額の付加金の支払いを命じられることもあります。
これに加え、労働基準監督署からの是正勧告に従わない場合の書類送検や企業名の公表、SNS等での不名誉な拡散など、社会的信用の失墜というリスクも無視できません。企業は役職名ではなく、常に実態に基づいた適切な労務管理をおこなう必要があります。
参考:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省
5. 管理監督者の勤怠管理で押さえるべき5つのポイント


管理監督者には、労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が原則として適用されません。しかし、労働時間の把握や健康管理の義務は免除されないため、管理監督者についても労働時間や勤務状況を客観的に把握し、過重労働を防止する体制を整える必要があります。ここでは、実務上押さえておくべき5つのポイントを解説します。
5-1. 労働時間の上限規制は適用されないが健康管理は必須
一般の労働者に適用される「1日8時間・週40時間」の法定労働時間や残業代の支払義務、時間外労働の上限規制は、管理監督者には適用されません。そのため、管理監督者には通常の残業代や休日勤務手当は支給されないこととなります。
しかし、2019年の法改正により、長時間労働による健康障害を防ぐため、管理監督者を含む全労働者の労働時間を客観的に把握することが法律で義務付けられました。
管理監督者であっても、出勤・退勤時刻を打刻し、長時間労働の兆候があれば早期に対応できる体制を整えなければなりません。
5-2. 深夜労働の割増賃金は支払いが必要
管理監督者であっても、22時から翌朝5時までの深夜労働には25%以上の割増賃金の支払いが必要です。「残業代が不要=深夜手当も不要」と誤解されやすいため注意しましょう。
深夜労働は健康への影響も大きいため、単に割増賃金を支払うだけでなく、発生状況をリアルタイムで把握し、連続しないよう配慮することも大切です。
5-3. 休憩時間の規定は適用されないが配慮は不可欠
管理監督者には労働基準法上の休憩規定(労働時間6時間超で45分、8時間超で1時間)が適用されません。これは「いつ休憩を取るか」も本人の裁量に委ねられているためです。
ただし、健康管理の観点から適切な休息を取ることは欠かせません。長時間勤務が続く場合は、業務分担の見直しなどにより、過度な負担がかからない環境整備が求められます。
5-4. 法定休日の規定は適用されないが休日管理は重要
休日に関する規定も、管理監督者には適用されないため、休日出勤手当の支払いは不要です。
しかし、企業には労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」があるため、管理監督者であっても過度な連続勤務や休日のない労働を課すことはできません。心身の健康を損なわないよう、休日の取得状況を把握し、必要に応じてリフレッシュを促す運用が望ましいです。
参考:労働基準法第35条、第37条|e-Gov法令検索
参考:労働契約法第5条|e-Gov法令検索
関連記事:休日手当とは?休日出勤の割増率の種類や正しい割増賃金の計算方法を解説
5-5. 有給休暇は管理監督者にも取得義務がある
年次有給休暇の付与義務は、管理監督者にも一般の労働者と同様に適用されます。また、年10日以上の有休が付与される際の「年5日の取得義務」も対象です。
管理監督者は業務の裁量が大きい反面、自身の休暇取得が後回しになりがちです。取得義務を怠った場合は企業に罰則(30万円以下の罰金)が科される可能性があるため、計画的な取得を促しましょう。
関連記事:年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数や取得要件も紹介
6. 管理監督者の労働時間を管理する方法


管理監督者の労働時間を把握する目的は、単なる法令遵守にとどまりません。長時間労働の兆候を早期に把握し、面談や業務調整へつなげることで、過重労働の防止や組織全体の健全な運営、管理監督者のモチベーション維持にもつながります。
労働時間の代表的な管理方法の3つは次のとおりです。
| 方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
| タイムカード | 打刻機で出退勤時刻を記録 | 操作がシンプルで現場に浸透しやすい | 集計作業に手間がかかる
テレワークに対応できない |
| エクセル管理 | 各自で出勤簿を作成・入力 | 低コストで項目を自由に設定できる | 客観性に欠ける 自己申告のため不正・ミスが発生しやすい |
| 勤怠管理システム | クラウド等で自動集計・分析 | 客観性が最も高く、リアルタイムでの集計やアラート機能が充実 | 導入コストや事前の運用設計が重要 |
比較検討すると、正確性・効率性・実務対応力のすべての観点において、勤怠管理システムの活用が最も有効です。
勤怠管理システムであれば、長時間労働や深夜労働の傾向を自動で可視化でき、アラート機能により早期対応が可能になります。また、ICカードやスマートフォン打刻、PCログ連携などを活用することで、厚生労働省のガイドラインが求める「客観的な記録」を容易に確保できます。
テレワークや直行直帰など働き方が多様化する現代において、アナログな管理方法には限界があります。管理監督者を含む全従業員の労働時間把握を形骸化させず、実効性のあるものにするためには、自社の運用に即した勤怠管理システムの導入が不可欠といえるでしょう。
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
管理監督者の労働時間把握で実務上多いのが、「打刻はしているが、その後のフォローがない」ケースです。特に管理監督者は直属の上司が役員となることも多く、現場レベルで是正がかかりにくいため、長時間労働が見過ごされやすい傾向があります。
そこで有効なのが、勤怠管理システムのアラート機能の活用です。一定時間を超えた段階で人事へ自動通知する、ダッシュボードで可視化するなど、第三者の立場で「気づける仕組み」を設けておくことが重要です。
管理監督者は自らブレーキをかけにくい立場でもあるため、組織としてチェックし、必要に応じて業務調整まで踏み込むことが、過重労働防止の鍵となるでしょう。
7. 【2026年最新】労基法改正で管理監督者の取り扱いはどう変わる?


現在、厚生労働省では、約40年ぶりとなる労働基準法改正に向けた議論が継続されています。その中でも、管理監督者の取り扱いは重要な論点のひとつです。
「労働基準関係法制研究会」の報告書では、管理監督者制度について次の大きな課題が指摘されています。
- 管理監督者が労働時間の把握が義務化され、長時間労働の面接指導対象になったにも関わらず、特別な健康・福祉確保措置が設けられていない
- 本来は管理監督者に当たらない労働者が、管理監督者として扱われている場合がある
そのため、管理監督者へのより効果的な健康・福祉確保措置の導入と、管理監督者の要件の明確化が検討されています。
当初、これらを含む改正案は2026年の通常国会への提出が予定されていました。しかし、政権の方針と審議会での議論の調整、および実務への甚大な影響を考慮し、2025年末に法案提出の見送りが決定されました。 現在は、2027年以降の法案提出・施行を目指し、さらに詳細な議論が進められています。
企業としては、「法改正が先延ばしになった」と静観するのではなく、将来の厳格化を見据えた準備が必要です。現時点で義務化されている「客観的な労働時間の把握」を徹底し、現行の管理監督者の運用が実態に即しているかを再点検しておくことが、施行時のスムーズな移行と将来的な法的リスクの回避につながるでしょう。
参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
関連記事:2026年の労働基準法の改正は見送り?施行時期や議論中のテーマを解説
8. 管理職(管理監督者)の労働時間も適切に管理しよう


「管理職」とよばれていても、すべてが労働基準法上の「管理監督者」に該当するわけではありません。まずは両者の定義を正しく理解し、自社の実態が法的な基準を満たしているかを客観的に判断することが、労務管理の第一歩です。
また、管理監督者に該当する場合でも、労働時間の把握や健康管理の義務は免除されません。「管理監督者だから勤怠管理は不要」という誤った運用は、過重労働による健康障害や、将来的な未払い残業代請求といった甚大なリスクを招くおそれがあります。
これからの労務管理には、単に労働時間を記録するだけでなく、長時間労働の兆候を早期に把握し、是正につなげる運用が求められています。そのために、勤怠管理の仕組みを整え、組織として継続的にチェックできる体制構築が不可欠といえるでしょう。
すべての従業員が健康で安心して働ける職場づくりのためにも、管理監督者を含めた全労働者の労働時間を正確に把握し、コンプライアンスを遵守した健全な企業運営を目指していきましょう。
管理監督者に残業の上限規制は適用されませんが、労働時間の把握は管理監督者であってもしなくてはならないと、法改正で変更になりました。
この他にも、法律の定義にあった管理監督者でなければ、残業の上限超過や残業代未払いとして違法になってしまうなど、管理監督者の勤怠管理は注意すべきポイントがいくつかあります。
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