変形労働時間制で従業員のシフト変更は可能?注意点を解説
更新日: 2026.4.24 公開日: 2021.9.1 jinjer Blog 編集部

変形労働時間制でシフトを組むときは、あらかじめ繁忙期や閑散期の業務量に応じて各従業員の労働時間を決めていきます。しかし、いくら平均的な業務量を予想できても、突発的な理由や変化のせいで突然シフトを変更しなくてはいけなくなるケースも少なくありません。
そもそも、変形労働時間制の企業がシフトを変更することは認められているのでしょうか。この記事では、シフト変更の正当な理由にならないケースや変形労働時間制でシフト変更をするときの注意点などを解説します。
目次
変形労働時間制は、通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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1. 変形労働時間制で従業員のシフト変更は可能?

変形労働時間制を採用する企業では、従業員の労働時間が不規則になりやすい傾向にあります。従業員の勤務時間を管理するためには、シフト表を作成して運用していくことが大切です。
変形労働時間制では、あらかじめ繁忙期や閑散期の業務量に応じてシフトを組むとはいえ、思わぬトラブルでシフトの変更が必要になることは多々あります。こういった場合、シフトを変更することは労働基準法に違反しないのでしょうか。
まずは、変形労働時間制でシフトを変更することの可否について見ていきましょう。
1-1. 原則変形労働時間制のシフト変更は認められていない
結論から言うと、変形労働時間制の企業において、あらかじめ決められている勤務シフトを会社が業務上の都合によって変更することは認められていません。このことについては改正労働基準法の変形労働時間制の項目に規定されており、以下のような条文が記載されています。
ロ 労働時間の特定
一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるもの(改正前の労働基準法第三二条第二項における「就業規則その他」と内容的に同じものである。以下同じ。)により、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週四〇時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること。
なお、法第八九条第一項は就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているので、就業規則においては、各日の労働時間の長さだけではなく、始業及び終業の時刻も定める必要があるものであること。
条文のとおり、変形労働時間制で使用者の業務の都合でシフト変更をした場合、違法となる可能性もあります。会社の都合でシフト変更をしてしまうと、変形労働時間制の要件を満たせなくなってしまうということなのです。
そのため、事前に組んだスケジュールが後から変更になることが多い職場には、変形労働時間制は適していません。もしもシフトを変更しながら運用したいのであれば、通常の法定労働時間内でシフト制を採用したほうがよいでしょう。
1-2. 正当な理由があれば変更することができる
普段は適切に変形労働時間制を運用できている企業でも、やむを得ない理由でシフトを変更しなくてはならないこともあるでしょう。変形労働時間制のシフト変更は原則認められないと紹介しましたが、過去の判例では正当な理由があればシフトの変更が認められています。
正当な理由の一例としては、天災地変や機械の故障などといった緊急かつ、不可避の事情が挙げられます。また、予定していた業務の大幅な変動があったときなど、例外的な事由に基づく場合は認められるといった判例もありました。
このようにやむを得ない理由があるときは、従業員の同意を得て、特例としてシフトを変更しましょう。
参考:全国労働基準関係団体連合会 | JR西日本(広島支社)事件第一審判決
2. シフト変更が「正当な理由」と認められにくいケース

変形労働時間制では、あらかじめ労働日や労働時間を特定しておくことが制度の前提となります。そのため、使用者の判断で安易にシフト変更をおこなうと、労働基準法上の要件を満たさない運用と評価されるおそれがあります。
特に、変更理由や経緯が不明確な場合や、変更が常態化している場合には、変形労働時間制そのものの適用が否認されるリスクも否定できません。
ここでは、実務上でシフト変更が「正当な理由」とは認められにくいケースを解説します。
2-1. 人手不足や欠勤対応を理由としたシフト変更
突発的な欠勤や慢性的な人手不足を理由に、予定していたシフトを変更するケースは多く見られます。しかし、これらは原則として使用者側の人員配置や採用計画の問題と評価されやすく、変形労働時間制における「正当な理由」としては認められにくいのが実情です。
労働基準法では、変形労働時間制は業務量の繁閑に対応するための制度とされており、突発的な欠勤対応を前提とした柔軟な変更を許容する趣旨ではありません。欠勤が発生した都度シフト変更をおこなっている場合、事前確定要件を満たしていないと判断され、時間外労働として割増賃金の支払いが必要となる可能性があります。
そのため、人手不足への対応は代替要員の確保や応援体制の整備など、別の管理手法でおこなうことが求められます。
2-2. 業務量の見込み違いによるシフト変更
業務量を正確に把握できていなかったことを理由に、変形期間の途中でシフトを変更する運用も注意が必要です。
変形労働時間制では、制度導入時点で期間内の業務量を見込み、労働時間配分を計画的に設計することが求められます。そのため、「想定より忙しくなった」「業務が早く終わった」といった見込み違いを理由とする変更は、制度の前提を欠くものと判断されやすくなります。
このような変更が繰り返されると、実質的に通常の労働時間制と変わらない運用と評価され、変形労働時間制の適用が否認されるリスクが高まります。
業務量の見込み違いが生じた場合には、変更で対応するのではなく、次回の変形期間に反映させるなど、制度の枠内で是正することが重要です。
2-3. 会社都合でおこなう安易なシフト変更
経営判断や業務指示の変更といった会社都合を理由に、労働者の同意なくシフト変更をおこなうケースも正当な理由とは認められないのが一般的です。
変形労働時間制は、労使協定や就業規則に基づき、労働条件をあらかじめ明確にすることで成り立つ制度です。使用者の都合で一方的に変更をおこなってしまうと、労働者の生活設計を不安定にし、制度趣旨に反する運用と評価されます。
特に、コスト調整や管理の簡便化を目的とした変更は、合理性や必要性を欠くと判断される可能性があります。このような場合、変更後の労働時間は法定労働時間を超えた部分が時間外労働として扱われ、割増賃金の支払い義務が生じるケースも少なくありません。
会社都合による変更は慎重に判断し、制度の枠組みを逸脱しない運用が求められます。
2-4. 労働時間と残業時間の明確な区別を保つ
変形労働時間制でシフト変更をおこなう場合は、所定労働時間と法定労働時間、そして時間外労働を明確に区別して管理することが不可欠です。
変形労働時間制では、特定の日や週に8時間や40時間を超える所定労働時間を設定できますが、それはあらかじめ制度に基づき確定している場合に限られます。シフト変更により当初予定していなかった時間が追加された場合、その超過分が法定労働時間を上回れば時間外労働として扱われ、割増賃金の支払いが必要です。
所定労働時間の範囲内だから残業ではないと誤認する運用は、未払い残業の原因となります。日単位・週単位の実労働時間を常に確認し、どこまでが制度内の労働時間で、どこからが残業に該当するのかを客観的に区別できる体制を整えることが重要です。
3. 変形労働時間制でシフト変更するときの注意点

変形労働時間制のシフトは原則変更してはいけませんが、正当な理由があれば例外として変更が認められると紹介しました。
しかし、いくら変更が認められるからといっても、会社が自社の都合に合わせて自由にシフトを変更することはできません。知識がないままシフトを変更してしまうと、労働基準法違反になってしまう恐れがあります。
ここでは、変形労働時間制でシフトを変更するときの注意点を解説します。
3-1. 変形労働時間制の適用が否認される可能性がある
前述の通り、変形労働時間制のシフト変更はやむを得ない理由があるときのみ可能です。どのような事態がやむを得ない理由に該当するかは判断が難しいですが、例えば以下のような理由でシフトを変更することはできません。
- 客足が少ないから今日はシフトを削ろう
- この業務を早く終わらせたいから休日振替にしよう
上記のようなシフト変更は、企業にとっては正当な理由に該当するかもしれません。しかし、こういった会社都合のスケジュール変更をおこなってしまうと、変形労働時間制の要件を満たせなくなります。
最悪の場合、変形労働時間制の適用が否認されてしまい、所定労働時間を超過した分の割増賃金が発生してしまう危険性もあるため注意しましょう。
3-2. シフト変更の履歴を追えるようにしておく
変形労働時間制を導入するときは、必ずシフトの変更履歴を追えるようにしましょう。例えシフトの変更があった場合でも、日頃適正にシフトを運用しており、変更があったときはやむを得ない理由があったことを証明できれば、変形労働時間制の適用が認められるためです。
シフトの変更履歴が追えないと適切な変形労働時間制の運用が証明できなくなり、労働基準監督署に指摘されてしまう恐れがあります。また、従業員から不信感を抱かれることにもつながります。
そのため、「シフトが変更されていないこと」「もし変更した場合も、どのような理由でどこのシフトを変更したのか」について、必ず記録を残しておきましょう。
3-3. 時間外労働による割増賃金が必要になるケースがある
変形労働時間制を採用している場合でも、休日の振替やシフト変更の結果として法定労働時間を超えたときは、時間外労働として割増賃金の支払いが必要になります。
労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めており、変形労働時間制は一定期間内でこの上限を調整できる制度にすぎません。そのため、当初設定された労働時間が8時間以下、または週40時間以下であった日に休日振替をおこない、結果としてその日や週の実労働時間が法定上限を超えた場合には、超過分に対して25%以上の割増賃金が発生します。シフト変更により所定労働時間の枠を超えた場合も同様です。
制度を導入していることが割増賃金が不要になる理由ではないため、変更前後の労働時間を必ず確認し、法定基準を超過していないかを精査することが重要です。
関連記事:変形労働制でも残業代は出さないとダメ!知っておくべきルールとは
4. 変形労働時間制でシフト表を作成するときのポイント

適正に変形労働時間制を運用するためには、シフト表を作成する段階でさまざまなポイントに気をつけなくてはいけません。
ここでは、変形労働時間制のシフト表作成で押さえておきたいポイントを解説します。
4-1. 期間内の業務量をしっかりと把握しておく
変形労働時間制ではシフトの変更がないことが大前提なので、スケジュール変更がないようにシフト表を作成する必要があります。あとから人手不足になってしまってもシフトの変更は難しいため、しっかりと事前に適用期間内の業務量を把握しておき、適正なシフトを作成することが重要です。
制度の導入前に業務量や業務フロー、工数などを洗い出し、いつどれくらいの人材が必要なのかについてしっかりと把握しておきましょう。
4-2. あらかじめシフト表を作成しておく
変形労働時間制でシフト表を作成するときは、必ずあらかじめシフトを決めておくことが大切です。
例えば、変形期間を4週間と規定する1ヵ月単位の変形労働時間制を導入している店舗において、「2週間ごとのシフトを作成している」という場合は、変形労働時間制の要件を満たすことができません。なぜなら、変形労働時間制を導入する場合、その運用が始まる前までに変形期間の「労働日」と「労働日ごとの労働時間」を決めて周知しなくてはいけないためです。このケースでは変形期間は4週間なので、2週間ごとのシフトではなく変形期間である4週間ごとのシフトを作成する必要があります。
変形労働時間制を導入するときは、シフト表の作成・周知と導入のタイミングに気をつけましょう。
関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制とは?採用事例や4つの導入ステップを紹介 | jinjerBlog
4-3. シフト表と勤怠管理システムを連携させておく
変形労働時間制を導入するときは、勤怠管理システムを活用してシフト表と連携させておくことをおすすめします。変形労働時間制は、そもそも「労働時間」と「残業時間」の区別がつきにくいというデメリットがあるため、適切に労働時間を管理するための勤怠管理システムは欠かせません。
また、やむを得ない理由でシフトの変更や休日振替をおこなうときは、紙の管理だけでは記載漏れや記載ミスが生じてしまう可能性があります。
残業時間やシフトの変更があったときに正しく勤務時間を把握するためにも、シフト表と勤怠管理システムの連携が重要です。
5. シフト変更をする場合の法的リスクへの対策

変形労働時間制のもとでシフト変更をおこなう場合、制度要件を満たさない運用と評価されるリスクがあります。
特に問題となるのは、あらかじめ特定していた労働日・労働時間を使用者の判断で頻繁に変更しているケースです。このような運用は、事前確定の原則に反すると判断され、変形労働時間制自体が否認される可能性があります。その結果、本来は期間内で調整されるはずだった労働時間がすべて通常の時間外労働として再計算され、多額の割増賃金の支払いにつながるおそれもあります。
対策としては、就業規則や労使協定の内容を確認し、変更可能な範囲を明確にしておくこと、変更理由と経緯を記録として残すこと、さらに勤怠データとシフト表を突合できる管理体制を整備することが重要です。
労働時間の管理には、専用のシステムの活用が有効です。システムを使用すれば、労働時間の計算や記録が自動化されたり、必要に応じてデータを参照したりすることも容易になります。自社に適切なシステムを選ぶ際には、使用感や機能性、コストなどを総合的に判断しましょう。
関連記事:変形労働時間制とは?1ヵ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説
6. 変形労働時間制のシフト変更には注意が必要!

変形労働時間制のシフトは、原則として変更することができません。ただし、やむを得ない「正当な理由」がある場合は特例として変更が認められているため、状況に応じて判断しましょう。
会社都合でシフトを変更したり適切な管理ができていなかったりすると、変形労働時間制が否認されてしまう恐れがあります。最悪の場合、超過した労働時間の割増賃金が発生することもあるため、運用する際には十分に注意しましょう。
法令を遵守した変形労働時間制の運用を目指すのであれば、勤怠管理システムの導入をおすすめします。
変形労働時間制は、通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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